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チェスティ、没後350年、バロック・オペラ確立前夜のナチュラル... [2013]

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刻々と年の瀬が近付いております。でもって、例年通り、いろいろせっつかれるような状況となりつつありまして、若干、気が滅入って来るような、今日この頃... そうした中、当blog的には、2019年にメモリアルを迎えた作曲家たち、まだ取り上げていない面々を駆け込みで取り上げます(って、これも、例年通りなのだけれど... )。別に、メモリアルなんて意識しなくたって、いつでも取り上げればいい話し... なのだけれど、普段、なかなか視野に入って来ないマニアックな存在は、やっぱり"メモリアル"が絶妙な玄関口に... ということで、今回、取り上げるのは、没後350年のチェスティ!ポスト・モンテヴェルディの時代、バロック・オペラが、よりしっかりとした形を獲得して行く頃に活躍したオペラ作家。つまり、普段、あまり顧みられることのない、バロック・オペラは如何にして全盛期を迎えるのかを窺い知ることのできるチェスティのオペラ... 黎明期と全盛期をつなぐ存在だけに、どうしてもインパクトに欠ける位置にあるのだけれど、間違いなく、オペラ史にとって、かけがえのない存在...
ということで、チェスティに注目!ラケル・アンドゥエサ(ソプラノ)と、ヘスス・フェルナンデス・バエナ(テオルボ)が結成した、スペインの古楽アンサンブル、ラ・ガラニエによる、チェスティのアリア集、"ALMA MIA"(ANIMA e CORPO/AEC 003)を聴く。

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ベルリオーズ、らしさを反転させて輝かせる『キリストの幼時』。 [2013]

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音楽史において、「異端児」という言葉は、この人のためにあるんじゃないかとすら思う、ベルリオーズ... 没後150年のメモリアル、改めてベルリオーズと、ベルリオーズが活きた時代を見つめると、この異端児を生み出した時代性、その時代をも揺さぶるベルリオーズの異端児っぷりが、何だかマンガのようで、21世紀からすると、めちゃくちゃおもしろい(裏を返せば、我々が生きている時代は、あまりに整い過ぎている... ゆえの閉塞感?)。古典主義のカウンター・カルチャーとして登場したロマン主義... ベルリオーズが本格的に音楽を学び始めた頃、ロマン主義はカウンターからメインへとのし上がり、その下克上の波に乗って、さらなる衝撃を与えるベルリオーズ!絶対音楽=交響曲にストーリーを持ち込む掟破り、幻想交響曲(1830)に始まり、ヴァーチャル黙示録?巨大なレクイエム(1837)、2日分?長大なオペラ『トロイの人々』(1858)などなど、それまでの枠組みから逸脱する作品を次々に送り出し、当時の人々を驚かしたわけだが、それらは時代を経た現在に至っても十分に驚かせてくれる規格外!やっぱり、ベルリオーズは異端児... さて、そんなベルリオーズの、ちょっと大人しめの作品、オラトリオ『キリストの幼時』を聴いてみようと思う。この大人しいあたりが、異端児にとっての異端?
ということで、レクイエム荘厳ミサに続いて、ベルリオーズ・メモリアルの総決算に... ロビン・ティチアーティの指揮、スウェーデン放送交響楽団の演奏、スウェーデン放送合唱団、ヤン・ブロン(テノール)、ヴェロニク・ジャンス(ソプラノ)、シュテファン・ローゲス(バリトン)、アラステア・マイルズ(バス)の歌による、ベルリオーズのオラトリオ『キリストの幼時』(LINN/CKD 440)。

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スッペ、生誕200年、オペレッタではなくて、黙示録!? [2013]

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11月も今日で終わり、明日から12月ですよ... あっという間の11ヶ月だったけれど、11ヶ月前、1月を振り返ってみれば、それはあまりに遠く、数年前にすら感じられる。この「あっという間」の"速さ"と、11ヶ月前の"遠さ"に君妙なズレが感じられて、不思議。まるで、タイム・マシーンにでも乗って来たみたいな感覚すらある。いや、2019年は、明らかにいつもと違う一年(って、まだ一ヶ月、残ってる!)だったなと... さて、その遠い1月、当blogは、何で始まったかなと見てみたら、スッペだった(なんか、遠い目... )。そうそう、今年はスッペの生誕200年のメモリアルでした!『軽騎兵』序曲とか、キャッチーで楽しい音楽、ライトなウィンナー・オペレッタの作曲家として知られるスッペだけれど、改めて、この人について見つめれば、かなりおもしろい。そもそも、ウィーンの人ではなくて、クロアチアは、ダルマチア地方、スプリトの出身。でもって、"ウィンナー・オペレッタの父"と呼ばれるわけだけれど、オペレッタばかりを書いていたわけではなく... というあたりに注目してみる。
で、エルガーのオラトリオに続いての、スッペのオラトリオ?!アドリアーノ・マルティノッリ・ダルシーの指揮、グラーツ歌劇場による、スッペの異色作、レクイエム・オラトリオ『最後の審判』(cpo/777842-2)を聴く。オペレッタじゃない、スッペのもう一面...

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エルガーのあの世を巡るオラトリオ、『ゲロンティアスの夢』。 [2013]

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なんちゃって多神+仏教徒ではございますが、ローマ教皇の来日に、何だかテンション上がる!のは、クラシック、音楽史界隈をウロチョロしていると、時折、聖下のお姿をお見掛けするからでしょうか?例えば、パレストリーナの教皇マルチェルスのミサとか... いや、多くの教会音楽の名作をレパートリーとしているクラシックであり、音楽史においては、グレゴリオ聖歌(7世紀を迎える頃の教皇、グレゴリウス1世によって編纂された、と考えられていたので、そう呼ばれる... )の整備(9世紀を迎える頃?)に始まり、中世、教会こそが音楽の保育器であり、フランス革命に至るまで、教会は音楽センターでもあった史実。当然、教会を主導する教皇の存在は、様々に音楽に影響を与えた。全盛のルネサンス・ポリフォニーに圧力を加えたり(対抗宗教改革の始まりの頃、神の声を多声で歌うことに疑義が申し立てられたため... )、聖都、ローマで、オペラを禁止(オペラは風紀紊乱の元凶!)したり... 一方で、そういうある種の頑固さが、古き伝統を守る砦にもなり... かと思えば、新しい音楽(オペラとか... )に力を入れた聖下もおられまして、力入れ過ぎて、聖下が逝去された後、御一族がローマを追放されるという事態になったことも... 教皇と音楽の長い付き合いを改めて振り返ってみると、なかなか興味深い。
ということで、実はカトリックだった、エルガーによるオラトリオ... エド・デ・ワールトの指揮、ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、ピーター・オーティ(テノール)、ミシェル・ブリート(メッゾ・ソプラノ)、ジョン・ハンコック(バリトン)、コレギウム・ヴォカーレ(合唱)の歌で、エルガーのオラトリオ『ゲロンティアスの夢』(Penta Tone/PTC 5186472)を聴く。

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エルガー、チェロ協奏曲、ケラスが見据える、慟哭、諦念... [2013]

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グンと気温が下がって参りました。気が付けば、11月も下旬です。まさに、晩秋... そこに、しとしと雨に降られたりすると、寂寥感がひたひたと迫って来るようで、身に沁みます。何だか、冬より寂しい感じ... さて、この秋の深まりゆく中、秋はチェロ、あるいは、ヴィオラ・ダ・ガンバ... そんなイメージを持って、いろいろ聴いて来たのですが、それぞれに深い世界(バッハの無伴奏チェロ組曲の、そのミクロコスモスに見えて来る、マクロコスモス... )を味わい、広がる歴史(文明の枠組みを越えて求めることのできる、ヴィオラ・ダ・ガンバの起源... )を見出し、今、新たにその魅力に惹き込まれた。で、振り返ってみると、この季節だからこそ、より向き合えた、チェロであり、ヴィオラ・ダ・ガンバだったかなと... その低音が、より身体に響いて来る季節とでも言おうか... 秋の夜長に読書の秋、じゃないけれど、いつもより落ち着いた空気感の中で聴くからこそ、その存在を丁寧に、繊細に捉えることができるような気がする。音楽は、空気が在って、初めて成り立つもの、ならば、それぞれの楽器に合う空気感もあるのかもしれない。うつろいゆく季節の中で、それぞれに合った楽器を聴くというのも、乙なのかも...
ということで、晩秋、寂寥感を掻き立てるようなエモーショナルなチェロを聴いて、締めます。ジャン・ギアン・ケラスのチェロ、イルジー・ビエロフラーヴェクの指揮、BBC交響楽団の演奏で、エルガーのチェロ協奏曲(harmonia mundi/HMC 902148)。

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秋に聴くヴァイオル... ファビュラス!コンソート・ミュージック。 [2013]

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ヴィオラ・ダ・ガンバの起源は、アラブの民俗楽器、ラバーブ(三味線に似ていて、弓を用いて鳴らす擦弦楽器... )に求めることができる。8世紀、イスラム勢力がイベリア半島に進出すると、ラバーブも地中海を渡り、10世紀には、キリスト教諸国にも伝えられたと考えられている。そこから、レベックやヴィエールといった中世の楽器が派生... やがて、ヴィエールは、ヴィオールに進化し、その低音域を担う大きなサイズのヴィオールを、足=ガンバで挟んで奏でたのが、ヴィオラ・ダ・ガンバ。いや、ラバーブがヴィオラ・ダ・ガンバに... この展開が、実に興味深い。普段、音楽史を見つめていると、どうしても、イタリア、ドイツ、フランスあたりに集約されて来るのだけれど、民俗音楽/芸術音楽の枠組みを取っ払って、楽器の歴史まで視野を広げれば、音楽の文明間の交流まで浮かび上がり、とても刺激的なものを感じる。音楽はひとつながりなのだなと、まさに"ワールド・ミュージック"だなと... ならば、"ワールド・ミュージック"として、アカデミックな音楽を、クラシックを見つめると、また違った可能性が拓けるのかもしれない。が、そう、やわらかくないのがアカデミズムであって、クラシックか...
は、さて置き、ヘフラーシェンクフィンガーとドイツ・バロックにおけるヴィオラ・ダ・ガンバのいろいろを聴いて来たので、仕上げに、本家、イングランドへ!ドイツのヴィオール・コンソート、レゼスカパードの演奏で、ギボンズ、シンプソン、バードらの作品を集め、ヴァイオル黄金期を再現する、"Fabulous London"(CHRISTOPHORUS/CHR 77369)を聴く。

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秋に聴くガンバ... シェンクの実直、フィンガーの充実。 [2013]

ヴィオラ・ダ・ガンバはチェロに似て、まったく異なる楽器である。ヴィオラ・ダ・ガンバが古楽器であるがゆえに、うっかりチェロの古い形だと錯覚してしまいそうになるのだけれど... チェロは、ヴァイオリン属の楽器(ちなみに、我々にとってお馴染みのヴィオラは、ヴァイオリン属... )で、ヴィオラ・ダ・ガンバは、ヴィオラ・ダ・ガンバ属の楽器(チェロに似たサイズのものだけがヴィオラ・ダ・ガンバではなく、ヴァイオリン属のように大小4種類の楽器がある... )、まったく別系統ということになる。いや、その音色に耳を澄ませると、その違いは、結構、大きなものとして感じられる。チェロの懐の深い音色には、どこか冬を待つような寂しさがあるのか... その寂しさは、意外とエモーショナル。一方で、ヴィオラ・ダ・ガンバの繊細な音色には、秋の紅葉の鮮やかさと、その散る前の刹那に似た儚さがある。そして、その儚さには、どこか夢見るようなファンタジーが漂い... よく、チェロは、人の声に近い、というようなことを言われるけれど、ヴィオラ・ダ・ガンバからすると、ある意味、それは、生々しい、ということのように思う。そして、生々しさの対極にあるのが、ヴィオラ・ダ・ガンバか... で、何だか、今、そういう音色を欲していて... 前回、聴いた、ドイツ・バロックのガンビスト、ヘフラーに続いての、ヴィオラ・ダ・ガンバ尽くし!
ヴィーラント・クイケンとフランソワ・ジュベール・カイエによるバス・ヴィオールで、2挺のヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ集、『ラインのニンフ』から6曲(RICERCAR/RIC 336)と、ペトル・ヴァクネルのヴィオラ・ダ・ガンバとアンサンブル・トゥールビヨンの演奏で、フィンガーのヴィオラ・ダ・ガンバのための作品全集(ACCENT/ACC 24267)の2タイトルを聴く。

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秋に聴くガンバ... へフラー、竪琴からとれた初物の果物。 [2013]

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春は曙、秋は夕暮れ、みたいに、四季を楽器で語ったら、どんな感じになるかな?と、この間、秋の夕暮れ間近、差し込む陽の光がこそばゆい電車のシートに揺られながら、何となく考えていた。秋はチェロ。あの少し枯れたようで艶やかな音色は、秋の陽の光に似て、やさしいから... というチェロと対になるのが、春はヴァイオリン。明るく、クリアな音色は、花々しい!けど、より春のふんわりとした空気感を響かせるなら、フルートかもしれない。じゃあ、夏は何だろう?近頃の酷暑を思うと、オンド・マルトノとか思い浮かぶのだけれど... それじゃあ、ちょっと、あれなので、初夏ならホルン。夏の夜ならトランペット。夏の終わりにトロンボーンとか、意外と金管のイメージ。で、冬はピアノ。もしくは、チェンバロ。冬の澄んだ大気は、鍵盤楽器の、ひとつひとつの音が独立して響く凛とした表情がしっくり来る。ということで、秋はチェロ。前回、バッハの無伴奏チェロ組曲を聴いて、ますますそんな思いに... そこで、より秋を深めるために、ヴィオラ・ダ・ガンバなんか聴いてみようかなと...
グイド・バレストラッチのバス・ヴィオールを中心としたアンサンブルで、バロック期、ドイツのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、ヘフラーのヴィオラ・ダ・ガンバのための組曲、『プリミティアエ・ケリカエ』から、前半、6曲(PAN CLASSICS/PAN 10275)を聴く。

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フランス、いともオシャンティーなサン・サーンスのコンチェルト。 [2013]

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ハロウィンのひと騒動が終わり、気が付けば、秋も深まっていて、昨日は立冬でした。今年も、そろそろ終わりが見えて参りましたね... 秋の夜長に、読書の秋、芸術の秋だと、まったり気分にひたるのも束の間、年の瀬へと追い立てられて行くわけです。でもって、今年は、いつまでも夏日が続く中、ラグビー・ワールドカップの熱狂の日々が始まり、スーパー台風に打ちのめされ、即位の礼の虹に某かの希望を見て、上がったり、下がったりのジェット・コースターに乗せられたような、ドラマティック過ぎの秋です。秋っぽく、センチメンタルな気分に染まる余裕など無かった... だから余計に急かされているようで、精神的に息が上がってしまいそう... てか、大晦日まで、走り切れるだろうか?なので、ちょっと立ち止まり、深まりゆく秋をしっかり味わうような音楽を...
リオネル・ブランギエの指揮、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団の演奏、ルノー(ヴァイオリン)と、ゴーティエ(チェロ)のカピュソン兄弟による、サン・サーンスの3番のヴァイオリン協奏曲と1番のチェロ協奏曲(ERATO/999934134)を聴く。

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フランスにおける"交響曲"とは... フランスの山人の歌による交響曲。 [2013]

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交響曲というと、やっぱりドイツ―オーストリアのイメージが強い... で、フランスはというと、やっぱり影が薄い。けど、音楽史を紐解けば、交響曲が形作られて行く18世紀、パリの音楽シーンが担った役割は、けして小さくは無い。当時、パリを代表するオーケストラ、ル・コンセール・スピリチュエルは、ゴセックルデュクらフランスの作曲家はもちろん、マンハイム楽派の交響曲やモーツァルトのパリ交響曲をも演奏し、交響曲の父、ハイドンに関しては、1780年代、ライヴァル、コンセール・ド・ラ・ロージュ・オランピークと競って取り上げ、一大ブームを巻き起こす(そうした中から、かのパリ・セットが委嘱され、偽ハイドンまで登場... )。が、19世紀に入るとフランスの作曲家たちは、交響曲よりもオペラでの名誉に傾倒、幻想交響曲(1830)という突き抜けた作品を生み出すも、フランスにおける交響曲は下火に... そんな空気を大きく変えたのが普仏戦争(1870-71)。この戦争でフランス帝国は瓦解し、ドイツ帝国が成立するわけだけれど、その事実を目の当たりにしたフランスの作曲家たちは、やがて音楽でドイツを克服しようと覚醒!1880年代、フランスの交響曲の名作が、次々に誕生する。
ということで、フランスにおける交響曲の覚醒に注目してみようと思う。ラモン・ガンバが率いたアイスランド交響楽団による、ダンディのオーケストラ作品のシリーズから、第5弾、フランスの山人の歌による交響曲(CHANDOS/CHAN 10760)を聴く。

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