ドメニコ・ガブリエッリ、チェロ作品全集。 [before 2005]
北イタリア、アルプスとアペニン山脈に挟まれたポー平原が、クラシックにおける器楽曲の故郷... と言っても、ピンと来ない?やっぱり、音楽の都、ウィーンとか、ベートーヴェン、ブラームスらを輩出したドイツのイメージが前面に立ってしまうのがクラシック。音楽史におけるポー平原の重要さは、普段、あまりに目立たないのが、もどかしい!というポー平原、そのちょうど真ん中には、アマーティ、グァルネリ、そして、ストラディヴァリといった伝説的な名工たちが腕を競った街、クレモナがある。これが、とても象徴的... で、そうした楽器製作に裏打ちされ、平原の東の端、ヴェネツィアで、まず器楽演奏が盛んになり、ルネサンスからバロックへとうつろう頃、器楽曲の端緒が開かれる(それまでの器楽演奏は、歌のスコアを楽器で演奏するというもので... つまり、歌と器楽がリバーシブルなのが常だった!)。そうしたヴェネツィアでの試みは、間もなく平原に点在する宮廷や都市に広がり、やがて、北イタリア各地とイタリア中央部を結ぶ交通の要衝、ボローニャで活躍した、ボローニャ楽派によって、17世紀後半、ソナタ、コンチェルト、我々にとってお馴染みの器楽曲の形が整えられて行く。
ということで、ヴィターリ親子に続いてのボローニャ楽派、チェロのヴィルトゥオーゾ、チェロのための音楽を切り拓いたドメニコ・ガブリエッリに注目!鈴木秀美のチェロで、ドメニコ・ガブリエッリのチェロ作品全集(Arte dell'arco/TDK-AD009)を聴く。
修道院の歌。12世紀の単旋律の聖歌... [before 2005]
古代から中世への長い移行期間を経た先に、8世紀後半、カロリング朝により再統一された西欧。政治的再統一は、西欧の教会にも大きな影響を与え、各地で独自に育まれていた典礼は、ローマ教会の伝統の下に統一されることに... これにより、典礼を織り成す聖歌にも統一規格が整備され... それが、西洋音楽の種、グレゴリオ聖歌。で、興味深いのは、聖歌に関しては、古代以来のローマの伝統に倣うばかりでなく、各地で歌われていた聖歌が総合されたこと... そう、西洋音楽の種は、ゲノム編集で生まれた!なればこそ、ニュートラルに仕上がったグレゴリオ聖歌であって、教皇のお膝元、ローマで歌い継がれて来た古ローマ聖歌の古代地中海文化圏の性格が息衝く、ある種、ワイルドな性格と比べれば、それは、歴然。そして、そのニュートラルさが、西洋音楽の種としての可能性を押し広げたようにも思う。そして、その種を受け取り、発芽させ、育てたのが、修道院。そんな修道院で、じっくりと時間を掛け、ゆっくりと成長した聖歌、12世紀の単旋律の聖歌に注目...
ポール・ヒリアー率いるシアター・オブ・ヴォイセズの歌で、中世、フランスを代表する哲学者にして修道士、アベラールが書いた聖歌と、ラス・ウエルガス写本からの聖歌による"Monastic Song"(harmonia mundi FRANCE/HMU 907209)を聴く。