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中世、黄金期、ゴシックの大聖堂を響かせる... [2018]

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今、改めて、ヨーロッパの中世を見つめ直すと、何だか訳が分からなくなってしまう。つまり、それは、これまで、如何に"中世"を軽く見てきたかの表れでございまして... 反省... ということで、中世が覚醒する頃、ロマネスクの時代(11世紀から12世紀... )の表現に迫る、金沢百枝著、『ロマネスク美術革命』を読んでみた。読んでみて、大いに腑に落ちた。もちろん、主題は、中世が折り返した頃を彩るロマネスクについてなのだけれど、ロマネスクというムーヴメントがどういうものであったかを知ることで、中世という大きな展開が掴めた気がする。じわじわと進む古代の崩壊の後、もはや遺跡となってしまった古代ローマを、見よう見真似で復興し始めたのがローマ風=ロマネスク... その延長線上にバブリーなゴシックが花開いて、バブル崩壊(災厄の14世紀!)の後、真に古典を取り戻そうとしたルネサンスが訪れる。そうルネサンスまでを含めて、古代/古典の崩壊と復興の長い道程が中世なのかなと... そう思うと、何だか、凄くドラマティックな気がしてくる。そんな中世に響いた音楽です。じっくりと修道院で育まれた音楽が、より開かれた大聖堂に舞台を移して大きく花開く頃に注目!
ドイツの古楽器奏者、ミヒャエル・ポップ率いる、女声ヴォーカル・アンサンブル、ヴォーカメの歌で、14世紀に編纂されたトゥルネーのミサを軸に、中世、黄金期の大聖堂を響かせる、"CATHEDRALS"(CHRISTOPHORUS/CHR77420)を聴く。

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ベートーヴェン、8番の交響曲。 [2018]

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2020年は、ベートーヴェン・イヤー!ではありますが、コロナ禍は、物の見事に祝祭気分を吹き飛ばす... けど、吹き飛ばされっぱなしじゃ悔しいよね。ならば、当blogは、ステイ・ホームで、ゴールデン・ベートーヴェン・ウィーク!難聴に苦しむ中、ベートーヴェンに新たなインスピレーションを与えただろうエラールのピアノで弾いた、リュビモフによる「月光」に始まって、ハーゼルベック+ウィーン・アカデミー管の"RESOUND BEETHOVEN"(ピリオド・アプローチで、初演時の響きを再現しようという... )のシリーズから、戦時下、一喜一憂する中で書かれただろう「運命」と「田園」7番と「ウェリントンの勝利」を聴いて参りました。普段の、偉大な作曲家、楽聖、ベートーヴェンとしてではなく、ひとりの人間として注目する彼らの視点は、何か、音楽を生々しく息衝かせ、そうしたサウンドに触れれば、いつもより心は揺さぶられ、これまでになく共感を覚えてしまう。というのも、コロナ禍における新たな感覚かもしれない... いや、2020年のベートーヴェン・イヤーは、特別...
、 ということで、ベートーヴェン!マルティン・ハーゼルベック率いるウィーン・アカデミー管弦楽団の"RESOUND BEETHOVEN"のシリーズから、VOL.6、8番の交響曲とヴァイオリン協奏曲のピアノ版(Alpha/Alpha 477)を聴く。5、6、7、そして、8!

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ベルリオーズ、メガロマニアックの先の壮麗... レクイエム。 [2018]

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大嘗宮、見学、行ってきました!すんごい人で、えげつなく押し合いへしあいの熾烈な撮影大会(嗚呼、ワタクシもそのひとりになってしまった... 反省... )の必死さに、ありがたさもどこか吹っ飛んでしまうようではありましたが、大嘗宮、そのものは、実に、実に興味深かった!それは、神社という建築的なるものより、現代美術のインスレーションを思わせる、彫刻に近い印象があったかもしれない。木が切り出されてそのまま部材に用いられていたりと、極力、意匠が廃された建物は、リズミカルに立つ柱(ちょっぴり、隈研吾ちっく!)が印象的で、その姿を見つめていると、どこか葦原を思わせるようで、もしかして、葦原中国(高天原と黄泉の国の間にあるという、我々の生きる次元とは異なる次元にあるという... )のイメージ?つまり、神と帝が出会われる場は、この世ではないのか... そして、それはまた葦がそよぐ原初の日本の姿なのかも... なんて、想像を膨らませてみたら、感慨。日本における宗教観の根源的なもの、素朴な自然への帰属意識のようなものを目の当たりにするようで、そうしたところから遠く、遠く離れてしまった21世紀を生きる現代人として、いろいろ考えさせられました。
さて、音楽です。大嘗宮とは対極にあるキリスト教の教会に轟くレクイエム!ルドヴィク・モルロー率いたシアトル交響楽団、同合唱団、ケネス・ターヴァー(テノール)らによる、ベルリオーズのレクイエム(SEATTLE SYMPHONY MEDIA/SSM 1020)を聴く。

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ラモーからグルックへ... 奇怪、地獄巡りのミサ、"ENFERS"。 [2018]

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近頃、「ヴィンテージ」とか、「昭和」とか、そういったワードが、何かと視野に入って来る。もちろん、ポジティヴな意味合いで... 時代遅れを乗り越えた古さは、思い掛けなく新鮮に映ってしまう魔法!リヴァイヴァルって、おもしろいなとつくづく思う。そんなリヴァイヴァルは、音楽でも顕著で、また音楽史を紐解けば、いつの時代にもあった。で、興味深いのが、18世紀のフランス... 1750年代、ブフォン論争によって攻撃された、リュリに始まるトラジェディ・リリクの伝統。その矢面に立たされたラモーだったが、その死後、1770年代、ラモーのスタイルは、ウィーンからやって来た改革オペラの旗手、グルックによってリヴァイヴァルされ、疾風怒濤期、フランス・オペラに新たな勢いを生み出す。そして、その勢いは、やがてロマン主義の呼び水となり... 古いものが、新たな使命を与えられ、見事、蘇り、さらには、未来までもがそこに予兆されるというこの刺激的な展開!この価値観がひっくり返る様子は、どこかフランス革命を予感させるところもある。で、価値観がひっくり返ってぶちまけられたのが激情... その激情には、地獄が覗くから、ますます刺激的... いや、これだから音楽史はおもしろい。
ということで、バロックの復讐!ステファヌ・ドゥグー(バリトン)をフィーチャーした、ラファエル・ピション率いるピグマリオンの演奏と歌で、ラモーとグルックによるドラマティックなシーンをまとめた"ENFERS"(harmonia mundi/HMM 902288)を聴く。

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我らに平和を与えたまえ、三十年戦争の音楽。 [2018]

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明日、8月15日は、終戦の日。ということで、改めて、平和について見つめてみたい。というのも、今、世界は、不穏過ぎるほど不穏だから... 戦争への緊張感は各地で高まり、紛争ならばすでに常態化し、国と国の対立が驚くほど安易に煽られ、21世紀、「平和」があまりに軽んじられていることに衝撃を受ける。そういうリアルに対し、日本では、あの戦争を忘れないと、様々に戦争が語られ、平和を喚起することに余念が無いものの、夏だけに語られる戦争、戦争=太平洋戦争という形に、どこか安堵してしまっているようで、何だかもどかしい。近代戦争は、季節を選ばない。そして、1945年の終戦から後、世界は平和だったか?いや、多くの戦争が起こり、戦争はけして過去のものになってはいない。未だ、多くの人々が命を落とし、あるいは家を失い、難民となっている21世紀のリアル。過去を忘れるわけには行かない。が、今、現在の平和が軽んじられている事態にも、あともう少し関心が向かったなら... 何か変わるものもあるような気がするのだけれど... いや、あえて、終戦の日を前に、今から、終戦から、もっともっと遡って、遠い昔の戦争に注目して、そこから、某かの普遍を見出してみたくなる。
アルノ・パドゥハ率いる、ドイツの古楽アンサンブル、ヨハン・ローゼンミューラー・アンサンブルの歌と演奏で、シュッツら、三十年戦争に翻弄された作曲家たちによる作品を集めたアルバム、我らに平和を与えたまえ、"Verleih uns Frieden"(Christophorus/CHR 77424)。そこに響く、戦争と平和は、実にシンプルなものだけれど、なればこその普遍が21世紀に沁みる!

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フランス革命前夜とその後で、パリ、交響曲の諸相... [2018]

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さて、昨日は、フランス革命記念日、パリ祭!つまり、おめでたい日。が、歴史をつぶさに見つめれば、おめでたいとばかりも言えないフランス革命(画期的だった人権宣言、理想に輝いていた自由、平等、博愛の精神は、あっという間に吹き飛んで、暴力と破壊と混乱の日々... )。そもそも、歴史とは、全てが良くて、全てが悪いなどと安易に白黒付けられるシロモノではない。輝きに満ちた瞬間があれば、必ず影があり、また暗闇の中にも光はある。いや、歴史において、善悪は、複雑に絡み合っていることが常(カの国の青い瓦屋根のお屋敷に住まわれている閣下、そういうものです。今こそ、"ありのまま"の歴史と向き合いましょう!さすれば、口だけでなく、本当に未来へと歩み出せるはず... )。そういう真実を踏まえれば、目の前に散在する問題も、的確に片付けて行くことができるように思う。いや、今、世界各地で起きている様々な問題の背景を考えると、歴史をつぶさに見つめる集中力を欠いているように思えてならない。なぜ現状がそうなのかをきちんと把握できず、あっちでも、こっちでも、ただただ、ただただ、駄々を捏ねるばかり... 嗚呼、明けぬ梅雨空の下、鬱々としてしまいますね。
ということで、キャッチーな革命歌をふんだんに盛り込んだ協奏交響曲で、湿気った気分を吹き飛ばす!フランス革命期に活躍した作曲家、ダヴォーとドヴィエンヌの協奏交響曲に、革命前夜、パリで初演されたハイドンのパリ・セットから、82番、「熊」を、ジュリア・ショーヴァン率いる、ピリオド・オーケストラ、ル・コンセール・ドゥ・ラ・ロージュの演奏(APARTE/AP 186)で聴く。

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春の目覚め... ランゴー、芳しき、交響曲。 [2018]

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何だか、万葉への思いが、フツフツと湧いてしまっている、単細胞生物です。
いや、「令和」がなけらゃ、『万葉集』への関心なんて、なかなか沸かなかったよ。と、つくづく... そして、これまでの不勉強をですね、反省するわけです。でね、万葉が素敵過ぎて、今さらながらに、ビックリしております。初春の令月、風和らいで、梅は開花し、蘭が薫るのです(「梅披鏡前之粉」、「蘭薰珮後之香」、この見事な対が、たまらん!)。それも、ファンデみたいな梅の花の色に、フレグランスを付けたアクセサリーからさり気なく薫るみたいに蘭の香りが漂うというね、現代に通じる万葉のお洒落センス!ちょっと、素敵じゃない?「平成」には無かったよ、こういうロマンティック... てか、これまでも無かったのでは?厳めしくて元号、というイメージを覆す、『万葉集』というチョイス。万葉のたおやかさ、におやかさには、現代っ子感覚すら見出せる気がする(花見をしますよ、という扉書きに向かって、やれ国粋主義だ、やれ右傾化だって、アナタ、それこそエイプリル・フールだよ... )。そんな出典のままに、「令和」の時代が、しなやかで、多様性に溢れる時代となって欲しい!
という願いも籠めまして、令月、風和らいで、春が目覚めるブルーミンな音楽を... サカリ・オラモの指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、アヌ・コムシ(ソプラノ)の歌で、ランゴー、交響曲、第2番、「春の目覚め」(DACAPO/6.220653)を聴く。

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交響曲の父の教会での仕事... ラメンタティオーネ、ラ・パッシオーネ、 [2018]

四旬節、教会ソナタ教会コンチェルトと聴いて来たので、次は教会交響曲!
なのですが、ソナタやコンチェルトに比べると、ちょっと影の薄い教会交響曲(という概念自体が、実は心許無いところもあったり... )。というのも、ソナタやコンチェルトから遅れて確立された交響曲でして、確立される18世紀には、ソナタやコンチェルトにあった"教会"と"室内"の線引きは薄れつつあって... となると、交響曲もまたしかり... もはや、"教会"をことさら強調することはまでもなく、教会に相応しい作品は教会で演奏されていた。例えば、モーツァルトの「ジュピター」なども、教会で演奏されたとのこと... いや、絶対音楽=交響曲の神々しさは、教会こそ相応しい気もして来る。一方で、教会っぽさにつながる対位法、フーガを際立たせたり、グレゴリオ聖歌をモチーフにしたり、緩急緩急の4楽章構成による教会ソナタの作法に倣ったりと、単に交響曲であるだけでない、教会交響曲としての性格付けが為された作品が、わざわざ教会交響曲として銘打たれずとも、いろいろ作曲されていた。例えば、交響曲の父、ハイドン!キリストの受難を記念する日、聖金曜日に演奏されたと考えられる49番、「受難」... その後の聖週間に演奏されたと考えられる26番、「ラメンタティオーネ」...
ということで、ジョヴァンニ・アントニーニの指揮、バーゼル室内管弦楽団の演奏で、26番、「ラメンタティオーネ」(Alpha/Alpha 678)と、トーマス・ファイ率いる、ハイデルベルク交響楽団の演奏で、49番、「受難」(hänssler/98.236)の2タイトルを聴く。

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シューベルト、「未完成」を完成させたら... [2018]

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シューベルトの交響曲はいくつある?昔、「グレイト」は、9番だったけれど、いつの頃からか8番に... 現在は、完成された交響曲の8番目が「グレイト」ということになっている。けれど、昔の8番、今の7番は、「未完成」だから、ツッコミを入れずにいられない。そもそもシューベルトには「未完成」ばかりでなく、未完成の交響曲が多い。現在、14曲の存在が確認されているシューベルトの交響曲。内、6曲が未完成(「未完成」も、そこに含む... )。このあたりに、シューベルトのヘタレっぷりを感じずにはいられない。のだけれど、裏を返せば、後の世に、課題を残してくれたと言えるのかも... そして、それら課題は、指揮者や音楽学者、作曲家らによって、様々に取り組まれ、中には、ベリオのレンダリングのように、魔改造というか、魔増築された作品まで出現!未完成であることは、実は、より創造的なのかもしれない。改めて、振り返ってみると、そんな風にも思えて来る。
ということで、「未完成」の完成形!アーノンクール亡き後、シュテファン・ゴットフリートを新たに音楽監督に迎えたウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの演奏で、シューベルトの「未完成」、サマーレとコールスによる補筆完成版(APARTÉ/AP 189)で聴く。

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『クープランの墓』とクープランと、アコーディオンが捉えるそれぞれの素顔。 [2018]

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20日、大寒は過ぎましたが、寒い日が続きます。って、よくよく見てみると、20日は大寒の"入り"であって、節分までが大寒だということを、昨日、知りました。嗚呼... クラシック関連で、降誕節(バッハのクリスマス・オラトリオは、これに沿って歌われる。ので、一夜で、全部やってしまうのは、実は、間違い?)だ、四旬節(本年は3月6日に始まる... でもって、キリスト教徒でもないのに、当blog、オラトリオをいっぱい取り上げちゃう予定だよ!)だと言っている一方で、日本の暦を知らんという無知っぷりに、ため息。と同時に、今、まさに、寒い日が常態であることを思い知らされ、改めて、震える(寒いが、大きい状態で、節分まで続くとは... )。けど、わずかながら陽は伸びた?ような... 立春はまだですが、春はジワジワと近付いているのかなと... そこで、ちょっと春めいたものを聴いてみる。アコーディオン!いや、あの明朗な響きと、明朗さが生む軽やかさ、そして、実際に軽くて、持ち運べて、なればこその気の置けない佇まいもまた、春っぽい?って、勝手なイメージなのだけれど...
ベルギーのベテラン、アコーディオニスト、フィリップ・テュリオの編曲、演奏で、ラヴェルの『クープランの墓』など、ピアノ作品と、クープランのクラヴサン曲集からのナンバーを取り上げるアルバム(WARNER CLASSICS/5419.701254)を聴く。

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