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楽器博物館に迷い込んでみれば... [2009]

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ピリオド界切っての鬼才、ヨス・ファン・インマゼールと、彼が率いるピリオド・オーケストラ、アニマ・エテルナ。"ピリオド"の枠組みを拡張し続ける異端児たちによるアルバムの数々というのは、毎回、どう接していいのかと、戸惑うこと、度々... が、その戸惑いの向こうに大いに感心させられることあり、新鮮な驚きもあり、時に、肩透かしを喰らってしまったり。インマゼール+アニマ・エテルナのスタイルというものを、漠然とイメージすることができても、必ずしも、そう簡単に形になってくれないのが、インマゼール+アニマ・エテルナのように感じる。だからこその異端児であって... 物議を醸してこそ、彼らなのかもしれない。
そんな、異端児たちの最新盤が、ベルリオーズの幻想交響曲(Zig-Zag Territoires/ZZT 100101)。オーケストラには欠かせないレパートリーだが、音楽史の流れからすれば、異端とも言える交響曲... インマゼール+アニマ・エテルナ、とうとう、ここに来たかと、感慨も。しかし、安易に期待を掛けられないのが彼らでもあり。楽しみにしつつも、多少、遠巻きに、距離を取りながら、聴いてみることに。

作為的に見えて、実は作為の無い音楽を生み出している?
インマゼール+アニマ・エテルナの、Zig-Zag Territoiresに移ってからの仕事ぶりを振り返ると、そんなことを、ふと思う。"ピリオド"の枠組みを拡張する、挑戦的な選曲(ベートーヴェンはもちろん、リスト、リムスキー・コルサコフ、ラヴェルまで... )に、奇天烈なものを感じ、モダン・オーケストラでは味わえない刺激を求め、インマゼール+アニマ・エテルナのアルバムを手に取る。が、必ずしも「奇天烈」というほど、振り切れた個性が存在しないこともある。ような。で、そのあたりに、戸惑いを覚えたりもする... 灰汁の強さこそ楽しみな"ピリオド"(なんて言ってしまっては、怒られそうだが... )にありながら、灰汁が強そうでいて、でもない?いや、灰汁が強いのは、"ピリオド"の楽器そのものが放つ個性か?
インマゼール+アニマ・エテルナによる最新盤、ベルリオーズの幻想交響曲の解説には、アニマ・エテルナの奏者(で良いのか?)による、各楽器の丁寧な解説(日本語訳あり!キング・インターナショナル、心意気を見せる!)が付いている。コール・アングレ(は、ピリオド楽器というわけではないが... )、オフィクレイドなどなど、"ピリオド"の楽器が並び、なかなか興味深い。それほどに、楽器のチョイスのこだわりを見せるアニマ・エテルナなわけだ。そして、そうした解説が必要な楽器たちが、それぞれに個性的で、尖がったサウンドを発しながら、ひとつの交響曲を奏でるわけだ。モダン・オーケストラの洗練された響きに慣れた耳には、それは、不揃いというのか... どこか座りの悪いハーモニー?いつもと違うということで、掴みどころを得ず、戸惑う。もちろん、ピリオド・アプローチによる幻想交響曲というのは、いくつか聴いているわけだけれど、アニマ・エテルナの響きは、それが、間違いなく際立っている。また、「幻想交響曲」という作品が、そうした楽器の個性を巧みに利用しつつ、独特(異端?)の世界観を繰り広げていることを確認させられるもする。
洗練された響きに比べれば、鈍さも感じる古い楽器... その鈍さと、インマゼールが導く重い足取りが、妙に低音部の迫力を増し。その上に、弦楽のノン・ヴィブラートの澄んだ音が乗り、何とも妙な心地にさせられる。さらに、ところどころ能天気とも言えるアンティークな管楽器がアクセントを付けて、ティンパニはくすんで轟き、ハープは少し乾いたサウンドで力強く。何より、驚くべきは、終楽章(track.5)の鐘だ。ピアノで奏でるのだ!何でも、ベルリオーズは、本物の鐘を用いていなかったらしく... エラールの古い2台のピアノで奏でられる鐘の音は、くぐもって荘重に響き、なんとおどろおどろしいこと!間違いなく、効果抜群。驚かされる。
何かこう、ひとつのオーケストラとして齟齬すら感じてしまうような、不器用で、無骨な響き... "ピリオド"を突き詰めてゆくと、こういう響きに至るのか?そうしたあたりに戸惑いを感じつつも、それが、この交響曲の危うげな表情に、絶妙にフィットしていることに気が付く。となれば、戸惑いなどまったく意味を成さず、不可解で奇妙な音楽世界が、ただただ滴る。また、滴りながらも、そこにはベートーヴェンからそう遠くない音楽が聴こえてもいて、妙にクラシカルな印象が浮き上がり、「幻想交響曲」という作品に、あらゆるものが渦巻いていることを知るような... ワーグナーやリストに影響を与えた先進性、フランスならではの色彩感、ベルリオーズならばこその異形の交響曲、そして古典派の残り香...
何なのだろう?この感覚... 21世紀というあらゆるハイテクに囲まれ、補完される時代に生きているからこそ、そこに展開される、不器用で、無骨な響きに、たまらなく幻惑されてしまう。まるで、古ぼけた、怪しげな楽器博物館に迷い込んでしまったような。そして、時を経て、楽器ひとつひとつに宿った魂が、聴く者に忍び寄り、この世のものとは違う、暗闇を垣間見せる?ストイックにベルリオーズの時代と向き合うインマゼールのこだわりが、現代との違いを明確に描き出し、その差異が驚くほど刺激的なものに昇華される。これぞ、"ピリオド"の本領発揮!なのかもしれない。

BERLIOZ | SYMPHONIE FANTASTIQUE | LE CARNAVAL ROMAIN | ANIMA ETERNA BRUGGE

ベルリオーズ : 幻想交響曲 Op.14
ベルリオーズ : 序曲 「ローマの謝肉祭」 Op.9

ヨス・ファン・インマゼール/アニマ・エテルナ

Zig-Zag Territoires/ZZT 100101(KKC 5074)




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