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"Mozart's Maestri"、モーツァルトの師匠たち... [2014]

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18世紀の音楽を、前半のバロック、バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディと、後半の古典主義、モーツァルト、ハイドンで片付ければ、もの凄く分かり易い。が、分かり易い、というのは、時として、真実を歪めてしまう(メルカトル図法の地図に似ているのかも... 球体の地球を無理やり方形の地図として表現すると、極地は異常に拡大され、赤道付近は縮んでしまうという、アレ... )。その顕著な例がモーツァルトかもしれない。バロックの後で、突如、モーツァルトという古典主義の神童が誕生した!みたいな、奇跡のようなイメージ、クラシックの中にはいつも漂っている気がする。もちろん、モーツァルトの天使のような音楽に触れれば、そういうイメージを持ってしまうのも、また自然なことかもしれない。が、実際は、大バッハら、バロックの大家たちがいて、その息子世代がポスト・バロックの道を切り拓き、モーツァルトは、その道を歩んだ、というのが史実であって... そして、今、改めて、その史実に注目してみる。天上から舞い降りた天使ではなく、先人たちからバトンを引き継ぎ、次代へと渡した音楽史の使徒としてのモーツァルトに... 普段、あまり注目されない先人たちも含めて...
ということで、ルカ・グリエルミのチェンバロと、彼が率いるコンチェルト・マドリガレスコの演奏で、前回、聴いたヨハン・クリスティアン・バッハのソナタを、モーツァルトが仕立て直した3つのピアノ協奏曲、K.107を軸に、モーツァルトの音楽をその師から見つめる一枚、"Mozart's Maestri"(ACCENT/ACC 24256)を聴く。

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18世紀、ピアノが表舞台へと出ようとしていた頃... [2014]

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18世紀前半、ロンドンの音楽シーンの顔と言えば、ヘンデル(1685-1759)!そして、後半の顔が、ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735-82)。ズバリ、"ロンドンのバッハ"!バッハ家の末っ子にして、18世紀当時、父、大バッハ(1685-1750)を遥かに凌ぎ、国際的に知られていたのが、この人... ライプツィヒで生れ育ち、父から音楽を学び始めるも、14歳の時、父を亡くし、フリードリヒ大王の鍵盤楽器奏者を務めていた、次兄、カール・フィリップ・エマヌエル(1714-88)に引き取られ、ベルリンで音楽を学ぶ。が、ベルリンで、父や兄の音楽とは一線を画すイタリア・オペラに出会ってしまったヨハン・クリスティアンは、より広い世界を求め、1755年、家出。ベルリンで歌っていたイタリア人女性歌手にくっついて、イタリア、ミラノへ... そこで、首尾よくパトロンを見つけると、その支援で、当時のアカデミックな音楽の権威、ボローニャのマルティーニ神父(1706-84)に師事。しっかりと理論を体得して、1760年、ミラノの大聖堂の第2オルガニストに就任。が、野心的な若き作曲家は、オペラにも乗り出し、1761年、ナポリ楽派の牙城、サン・カルロ劇場で『ウティカのカトーネ』を上演、大成功!その評判はイタリア中に広がり... そんな新しい才能を放って置かないのがロンドンの音楽シーンでして、ロンドンからのオファーを受けたヨハン・クリスティアンは、1762年、ドーヴァー海峡を渡る。
ということで、ヨハン・クリスティアンが、ロンドン、4年目、1766年に出版した鍵盤楽器のための6つのソナタ、Op.5を、古典派のスペシャリスト、バルト・ファン・オールトが、1795年製、ヴァルターのピアノ(レプリカ)で弾いたアルバム(BRILLIANT CLASSICS/BC 94634)を聴く。そう、それは、ピアノが表舞台へと出ようとしていた頃...

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ワーグナー、交響曲。 [2014]

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5月22日、ワーグナーの誕生日でした。そんなこととはつゆ知らず、今月、聴いて参りました、若きワーグナーの音楽。そうか、ワーグナーは5月生まれだったか... いや、18歳で書いたピアノ・ソナタ、19歳で書いた『妖精』、20歳で書いた『恋愛禁制』と聴いて来て、振り返れば、その音楽、5月をイメージさせる気もする。若々しく、フレッシュで、それでいて、夏に向けての勢いを感じるような、ポジティヴなパワーに充ち溢れている!普段、「ワーグナー」という名前を聞いて思い浮かべる音楽とは一線を画す、真っ直ぐな音楽... そんな音楽に触れれば、ワーグナーにも若い頃が確かに存在したのだなと感慨を覚えずにいられない。一方で、ワーグナーは、若くても「ワーグナー」と言おうか、すでにそこには、後のワーグナーを思わせる在り方が示されていて、なかなか興味深い。が、何に措いても驚かされるのは、若いなんて言わせない、その音楽の充実っぷりと雄弁さ!特に、2つのオペラには目を見張るばかり... もし、『妖精』(女優として活躍していた姉、ロザリエが奔走するも、上演に至らず... )が、『恋愛禁制』(ベートマン一座の力量不足、準備不足があって、敢え無く失敗... )が、然るべきオペラハウスで初演されていたならば、ワーグナーのオペラ作家としての歩みは、また違ったものになった気さえする。
で、もうひとつ違った歩み、シンフォニスト・ワーグナーというパラレル(?)について... オランダのマエストロ、エド・デ・ワールトの指揮、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ワーグナーが19歳の時に書いたハ長調の交響曲(CHALLENGE CLASSICS/CC 72649)を聴く。てか、ワーグナーの交響曲なんて、想像が付かないのだけれど、これがまた侮れない...

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クープラン、ルソン・ド・テネブル。 [2014]

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音楽室に居並ぶ肖像画に、女性はひとりもいなかった。クラシックは、やっぱり、男の世界なのだ。という固定概念が、数こそ少ないものの、音楽史上における女性たちの活躍を、隠してしまってはいないだろうか?前回、聴いた、17世紀、イタリアのシスターたちの作品に触れると、ふとそんなことを思う。いや、音楽史における女子修道院の存在が気になってしまう。中世には、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンという伝説的なシスターもおりました。教会での祈りに音楽が欠かせなかったことを鑑みれば、シスターたちによる独自の音楽文化は脈々と紡がれていたはず... また、そこから生まれた音楽が、出版という形で広く世に知らされていた史実もあって、今年、生誕400年を迎えたシスター、イザベッラ・ベルナルダの、1693年に出版されたソナタなどに触れれば、女子修道院における音楽環境の充実を窺い知ることができる。ということで、イタリアからフランスへ... フランスの女子修道院、さらに、女子寄宿学校で歌われた、聖週間のための音楽を聴いてみる。
ということで、女声による美しい音楽... ヴァンサン・デュメストル率いる、ル・ポエム・アルモニークの歌と演奏で、クレランボーのミゼレーレと、クープランのルソン・ド・テネブル(Alpha/Alpha 957)。この四旬節、美しい祈りの音楽で乗り越えましょう。

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"EXPLORING TIME WITH MY PIANO"、バロックをピアノで探検。 [2014]

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さて、2020年は、ポーランド出身(とはなっているものの、生まれはリトアニアというね、東欧の歴史の複雑さ... )で、やがてアメリカに渡り活躍するピアノのヴィルトゥオーゾ、ゴドフスキー(1870-1938)の生誕150年のメモリアル!インドネシア、ジャワ島を旅して生み出されたジャワ組曲(1925)、その究極的な超絶技巧が、一昔前(?)、マニアックな界隈で話題となったこともありましたが、普段、なかなか注目されることの少ないコンポーザー・ピアニスト... ショパンに、オペラに、ウィンナー・ワルツなどなど、多くのトランスクリプションを残し、やはりその超絶技巧で以って驚かせてくれるのだけれど、一方で、その超絶技巧から生み出される繊細さを持った響きに触れると、ゴドフスキーのピアノに対する鋭敏な感性が感じられ、魅了されずにいられない。それは、美しい響きへの強いこだわりに裏打ちされたもの... いや、ゴドフスキーのピアノは美しい!超絶技巧にして、そこに留まらない、その美しさ、このメモリアルで注目されたらなと、隠れゴドフスキー・ファンは願います。
そんなゴドフスキーによるトランスクリプションも含めての、ピアノから見つめるバロック... セルゲイ・カスパロフが、ピアノで弾く、ルイエ、ラモー、ドメニコ・スカルラッティ、バッハ、"EXPLORING TIME WITH MY PIANO"(Alpha/Alpha 606)を聴く。

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ショスタコーヴィチ、13番の交響曲、バビ・ヤール。 [2014]

今、改めて、ソヴィエトの音楽を振り返ってみると、実に興味深いなと感じる。ロシア革命(1917)に呼応するように、ロシア・アヴァンギャルドが炸裂した1920年代、刺激的な音楽が次々に生み出されるも、そうした自由は長く続かず、1930年代、スターリンが政権を掌握すれば、革新は嫌悪され、伝統回帰へ... やがて「社会主義リアリズム」という名の検閲が始まる。さらに、第二次大戦を経て冷戦が始まれば、西側の最新の音楽(いわゆる"ゲンダイオンガク"... )からは切り離され、旧時代が奇妙な形で保存される。それは、極めて抑圧的な状況... が、プレッシャーが加えられての表現は、他ではあり得ないセンスを育んで、ソヴィエトならではのテイストを聴かせてくれる。いや、クリエイターとは、どんな状況下に在っても、オリジナリティというものを模索し、形作って行くのだなと... かつては体制に即した音楽だ、プロパガンダだと言われながらも、その体制が消滅し、プロパガンダが無意味となった今こそ、ソヴィエトの音楽の特異性は解き放たれるのかも... ということで、ヴァインベルクを聴いたら、やっぱりショスタコーヴィチも... で、山あり谷あり、苦闘の果ての、晩年の交響曲に注目。
ヴァシリー・ペトレンコ率いる、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団の、ショスタコーヴィチのシリーズから、13番の交響曲、「バビ・ヤール」(NAXOS/8.573218)と、14番の交響曲、「死者の歌」(NAXOS/8.573132)の2タイトルを聴く。

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新しい時代、令月風和む詩情礼賛!詩神ポリムニの祭典。 [2014]

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令和はどんな時代になるのだろう?と考えて、すぐに思い付くのは、AI... 否が応でもその存在が高まることは間違いない。けれど、現代人のAIに対するイメージは懐疑的。そもそも信頼していない。あるいは、人間の悪い癖で、"万物の霊長"という上から目線が、優れたものは必ず人間に似ているはず... という自意識過剰に絡め取られて、AIのイメージを歪めてしまっているように思う。しかし、AIは、こども騙しでもなければ、人間のように愚かしくもあり得ない。0か1かのデジタルによる計算(量子コンピューターが実現すれば、0と1なんてもんじゃない凄い世界が拓ける!)が生み出す確率が全て... それは、『ターミネーター』だとか、『マトリックス』のような恐ろしいイメージではなく、エヴァのマギ・システムや、『her/世界でひとつの彼女』のOS、サマンサみたいなものになるのだろう。そんなAIがガイドする、感情に左右されない、効率的でスマートな世界が実現されて行く中で、さて人間はどう生きる?そこで求められるのが、"情緒"、なのかなと... それを象徴的に物語っているのが、「令和」、という言葉のように感じる。これまでの漢籍による堅苦しい元号から、万葉集という歌集を典拠とする極めて情緒的な元号が選ばれた驚くべき革新!そこには、人間としてAIの時代をどう生きるべきかが示されているかのように思えて... 令月風和む... 月を見上げて、その凛とした美しさを味わえる、風が和んだことを鋭敏に感じられる人間となれ... AIが社会を補完する時代、人間はクリエイティヴに生きてこそ、なのだと思う。
ということで、新しい時代、令和を音楽で寿ぐ!山田耕筰ヒンデミットに続いてのラモー... ジェルジュ・ヴァシェジ率いるオルフェオ管弦楽団の演奏、ヴェロニク・ジャンス(ソプラノ)らの歌による、ラモーのオペラ・バレ『詩神ポリムニの祭典』(GLOSSA/GCD 923502)を聴いて、令和の典拠、万葉集にオマージュ(詩神ということで、ほとんどこじつけ... 汗... )を捧げる!

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ロマン主義を古典美に昇華する、シュポーア、『最後の審判』。 [2014]

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さて、桜、見て来ました!でもって、何だかフワァーっとしてしまう(って、飲んではいませんよ... )。いや、桜には、ある種の陶酔を引き出す、何かがあるような気がする。とかく、情緒やら、その精神性について語られることの多い桜だけれど、実際に、その姿を前にすると、理屈抜きの多幸感に包まれるようで... 桜の下のドンチャン騒ぎも、日本人に限らず、桜に熱狂してしまうあたりも、桜という木が持つ某かの力を感じてしまう。そもそも、木が丸ごと花だらけって、ちょっと尋常じゃない... ほんのり桜色とかで、巧みにごまかされているけれど、桜という花木は、どこか超現実的な気がしてしまう。ぱっと散ってしまうところも、夢幻を見るようで、超現実感を際立たせるし... 何よりも、その中毒性たるや!何だかんだで、毎年に見に行っている... 毎年、同じなのに... 美しいものを愛でる、というのは、当たり前にしても、桜には、それ以上の何かがあるのかも?そんなことをふと思った平成最後の桜、花見(って、桜じゃなくて、梅だけど... )の扉書きに因む新元号、令和の発表もあり、いつもより、桜パワーが効いて、よりフワァーっとしてしまったか?いやいやいや、気を引き締めて行かねば!まだまだ四旬節期間中(思ったより長い印象... )であります。ということで、ガツンと気を引き締めるために、カタストロフ...
前々回、アイブラーに続いての終末オラトリオ... フリーダー・ベルニウス率いる、シュトゥットガルト室内合唱団、ヨハンナ・ヴィンケル(ソプラノ)、ソフィー・ハームセン(アルト)、アンドレアス・ヴェラー(テノール)、コンスタンティン・ヴォルフ(バス)、そして、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の演奏で、シュポーアのオラトリオ『最後の審判』(Carus/83.294)を聴く。

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いろいろあって、ローマ、修道院にて... ベートーヴェンと向き合うリスト、 [2014]

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1月も終わりが見えて参りました。てか、早い!何だか、お正月がもの凄い勢い遠ざかっている感じ... いや、2019年は、まだ始まったばかりだけれど、平成は刻一刻とその終わりへと歩みを進めているわけで、始まったばかりなのに、終わりに向かうという、不思議な感覚。こんな感覚、もう二度と体験できないだろうなァ。そうした中、トランスクリプションに注目しております。中世の聖歌を弦楽四重奏で奏でると、まるでミニマル・ミュージックのように響き... ラヴェルのピアノ作品、クープランのクラヴサン曲集をアコーディオンで奏でると、時代を越えて通底するフランスらしさが浮かび上がり... ドメニコ・スカルラッティの鍵盤楽器のソナタをヴァイオリンで奏でれば、先進的だったドメニコの音楽に古風な表情が見て取れて... 奏でる楽器を変えることで生まれるケミストリーのおもしろさ!そして、演奏家たちのトランスクリプションの妙に感心。いや、トランスクリプションは刺激的。時代が改まろうという中で聴くからか、余計に変容することが刺激的に感じられる?のかも...
さて、トランスクリプションの"古典"を取り上げたいと思います。リストによるベートーヴェン!異才、ユーリ・マルティノフがピリオドのピアノで弾くリスト版のベートーヴェンの交響曲のシリーズから、「英雄」と8番(Zig-Zag Territoires/ZZT 336)を聴く。

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没後50年、リャトシンスキー。 [2014]

メモリアルを派手に祝われる大家の一方で、メモリアルを切っ掛けに、再発見する作曲家もいる。いや、普段、なかなか注目され難いマニアックな存在こそ、メモリアルの意味合いは重要になって来ると思う。でもって、当blog的には、マニアックなメモリアルこそ祝いたい!ということで、没後50年のピツェッティ(1880-1968)、カステルヌウォーヴォ・テデスコ(1895-1968)、生誕100年のツィンマーマン(1918-70)と、注目して来たのだけれど、いずれもメインストリームから外れた存在で、普段ならスルーされがち?なのだけれど、改めて見つめるその存在は、思い掛けなく味わい深かったり、インパクトを放っていたりで... またその音楽に、より時代を感じるところもあって... いや、この3人が歩んで来た激動の20世紀に、感慨を覚えずにいられない。そして、翻弄される作曲家たちが愛おしくなってしまう。で、もうひとり、激動の20世紀を生き作曲家に注目してみる。
没後50年を迎える、ロシア革命の混乱を乗り越え、ソヴィエトを生きた、ウクライナの作曲家、リャトシンスキー... テオドレ・クチャルの指揮、ウクライナ国立交響楽団の演奏による、リャトシンスキーの全5曲の交響曲、1番(NAXOS/8.555578)、2番と3番(NAXOS/8.555579)、4番と5番、「スラビャンスカヤ」(NAXOS/8.555580)の3タイトルを聴く。

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