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パリ、ハイドン... [2005]

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さて、少し、元気を出して行かないと...
ということで、ポジティヴな音楽を探す。で、引っ張り出して来たのが、ハイドンの交響曲。104番(!)まであると、どれがどれだかわからなくなって、どれも同じように聴こえてしまう?けれど、はっきりと言えるのは、ハイドンの交響曲にはポジティヴな気分が溢れている!もちろん短調のものもあるのだけれど、圧倒的に長調。で、時折、おどけて見せて、サービス精神旺盛でもあって、「交響曲」という最も堅苦しいスタイルでありながら、何だか楽しいのがハイドンの交響曲の魅力的なところ。今の季節にはぴったりなのかもしれない。
ということで、ポジティヴ充填... 2005年にリリースされた、ニコラウス・アーノンクール率いる、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの演奏で、ハイドンの83番から86番の交響曲、パリ・セット、全6曲、3枚組(deutsche harmonia mundi/82876 60602 2)を聴き直す。

漠然とハイドンの交響曲を聴いて来たけれど、改めてパリ・セットという括りでじっくり聴いてみると、なかなか興味深い。まず、ハイドンの交響曲がどれも同じように聴こえる... なんてことは、けしてない。交響曲の父として、104番まで交響曲を書いたということは、それそのものが、古典派の交響曲の歩みそのものだったりする。「朝」、「昼」、「晩」で知られる最初期の交響曲、6番、7番、8番が作曲されたのが、まだ前古典派の気分が立ち込めていた頃、1761年。そのスタイルも、小規模で、交響曲というよりは合奏協奏曲的な性格を残すものだった。が、それから、おおよそ30年... 最後の104番を含む、堂々たるロンドン・セットが作曲されたのが、1790年代前半、古典派の爛熟期。目前にベートーヴェンが迫り、その先のロマン主義の萌芽が、すでに見え隠れし始めた頃。改めて、ハイドンの交響曲の30年の飛躍を見つめると、感慨深いものがある。
そして、ここで聴くパリ・セット。パリのオーケストラ、ル・コンセール・ドゥ・ラ・ロージュ・オランピクのために書かれた6つの交響曲は、古典派、全盛の頃、1785年から1786年に掛けての作曲。ロンドン・セットの前段階という点で、交響曲としての風格は、多少、見劣りする?規模も、幾分、小さめだったりということもあるのだけれど、かえってそのあたりが、『ロンドン交響曲』にはないライトさが魅力で。古典派のあっけらかんとした気分は、より出ている。それと、やっぱりパリ向け... というのか、華やか!そして、ヴァラエティに富んでいる!特に、キャラクタリスティックな「熊」(disc.1, track.1-4)、「めんどり」(disc.1, track.5-8)の、ウィット... その後の交響曲では考えられないような、交響曲で遊ぶというセンスは、パリ・セットに限ったことではないけれど、「熊」の終楽章(disc.1, track.4)の、ウーンウーンと唸り声を上げ、「めんどり」(disc.1, track.5)の1楽章の、コッココッココッココーッと鳴くところなど、すっ呆けていて、本当に楽しませてくれる。そう、楽しいのがパリ・セット!そして、この感覚こそが、古典派の交響曲の真骨頂のように感じる。その弾む音楽に、思わずノらずにいられなくなるポップ感。いや、18世紀後半、パリもロンドンも熱狂したハイドンの交響曲こそポップ・ミュージックだった...
という、アーノンクール+ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスによるパリ・セット。実は、アーノンクールのヤリ過ぎ?なあたりが苦手... なのだけれど、このパリ・セットでは、いい具合にそうしたあたりがはまる?実は、ハイドンもヤリ過ぎ?ているようなところがあって、そういうくどさのような部分を、素直にサウンドにして、多少、悪ノリしながらも、しっかりと楽しませてくれる仕上がりに、グっと来てしまう。交響曲というのは、その字面からして気難しさがあるのだけれど、古典派の交響曲というのは、どこか体感型というか、身体に訴え掛けて来るようなところがあって(分かり易い例を挙げるならば、やはりハイドンの交響曲の、「驚愕」とか... ジャン!びっくり!みたいな... )。アーノンクールは、よりそういう部分を強調して、聴く者を少し振り回して、"古典派"、"交響曲"なんて言って、取り澄ましていられないように仕向けておもしろがるのか。また、アーノンクールらしいというのか、繰り返しを端折らず、しっかりと演奏して、またくどい... が、端折らないことで、ハイドンの交響曲の旨味を煮出してゆくようでもあり... これまで、そのライトなあたりを、そのまま颯爽と演奏してしまって、変に軽くなっていたところから、ジワっと、思い掛けない魅力が滴り出す。すると、ある種、ロンドン・セットに劣らない聴き応えがあって、その堂々たる響きにも魅了される。というのも、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスが、すばらしい演奏を繰り広げていて、アーノンクールが、多少、ヤリ過ぎても、どっしりと構えて揺ぎ無い。そして、そのどっしりとしたあたりから、確信犯的に、ヤリ過ぎてゆくことで生まれるスリリングさ!古典派の古典美ではなく、古典派の時代の喧騒、熱狂を追体験するパリ・セットは、刺激に充ち、何だか元気にしてくれる。

HAYDN: THE PARIS SYMPHONIES NOS. 82-87
CONCENTUS MUSICUS ・ NIKOLAUS HARNONCOURT


ハイドン : 交響曲 第82番 ハ長調 「熊」 Hob.I-82
ハイドン : 交響曲 第83番 ト短調 「めんどり」 Hob.I-83

ハイドン : 交響曲 第84番 変ホ長調 Hob.I-84
ハイドン : 交響曲 第85番 変ロ長調 「王妃」 Hob.I-85

ハイドン : 交響曲 第86番 ニ長調 Hob.I-86
ハイドン : 交響曲 第87番 イ長調 Hob.I-87

ニコラウス・アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス

deutsche harmonia mundi/82876 60602 2

4月、古典派でポジティヴになる!
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