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1620年頃、ローマ、新旧競演の豪華なクリスマス! [before 2005]

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さて、クリスマス・イヴです。それが何か?みたいな状況を生きておりますが、音楽くらいはクリスマスで... ということで、1707年、ローマ、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂のクリスマス・ミサに続いて、1620年頃、同じく、ローマ、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂におけるクリスマスのミサを再現した興味深いアルバムを聴いてみる。のだけれど、その前に、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂とは?教皇の御膝元、サン・ピエトロ大聖堂とともに、ローマの四大バシリカ(最上級の特権を持つ教会=バシリカ)に数えられる由緒正しき大聖堂は、一時期、教皇の宮殿にも使われたことがあるほどで、教皇にとって極めて重要な大聖堂。現在もヴァティカン市国外に在りながら、教皇庁の行政権が及ぶという特殊な地位を保っている。そして、アレッサンドロ・スカルラッティが楽長を務めた大聖堂である。音楽史においても輝かしい存在!そのクリスマスのミサともなれば、また、豪華...
ということで、ポール・マクリーシュ率いる、ガブリエル・コンソート&プレイヤーズによる歌と演奏で、この人も楽長でした、パレストリーナのミサ「今日キリストは生まれたまいぬ」を軸に、ルネサンスからバロックへとうつろう時代の多彩な作曲家たちの作品で織り成される、1620年頃のサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂のクリスマスのミサ(ARCHIV/437 833-2)を聴く。

始まりはジョスカン・デプレ(ac.1440-1521)のモテット... 重々しいルネサンス・ポリフォニーでの幕開けは、聖都、ローマの伝統をひしひしと感じさせるもの。サンタさんがそりに乗ってやって来る!なんてイメージはあり得ない、本物のクリスマス感に圧倒される。というより、1620年頃になっても、ジョスカンなの?!すでにオペラが誕生して四半世紀近く、つまり時代はバロックなのに... いや、このオールド・ファッションこそ、ローマの特性だったのだろう。そこから、グレゴリオ聖歌の入祭唱(track.2)、フレスコバルディのオルガン(track.3)を挿み、パレストリーナのミサ「今日キリストは生まれたまいぬ」のキリエ(track.4)が始まるのだけれど、パレストリーナ様式による整理されたルネサンス・ポリフォニーの響きは、思いの外、力強く、明朗で、新しい時代を予感させる(とはいえ、1620年頃には、その新しい時代となっていたのだけれど... )。また、キリエに限らず、続くグローリア(track.5)、クレド(track.8)でも、表情に富む軽やかな音楽が繰り出され、ルネサンスを脱する新しさに、クリスマスの喜ばしさが重なって、絶妙。一方で、サンクトゥス(track.11)、アニュス・デイ(track.15)では、美しいポリフォニーがふわっと響き、古雅な雰囲気を醸して、これまたクリスマスの気分を彩るのか... その後の、パレストリーナに師事しただろうビクトリアの「おお大いなる神秘よ」(track.16)では、よりルネサンス色が強まり、その手堅いポリフォニーから繰り出される荘重さには、聖都、ローマのオーラのようなものを感じ、清められるよう。
ジョスカンで始まり、パレストリーナを軸に展開される、1620年頃、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂でのクリスマスのミサ。それは、ルネサンスに重心を置いた構成と言えるのだけれど、後半に進むにつれて、1620年頃の当世風の音楽も聴こえ出す。まず印象に残るのが、フレスコバルディの「おお限りなくやさしいわがイエスよ」(track.13)。テノールが切々と歌い上げる姿は、初期バロックのオペラのアリアのようで、聴き入ってしまう。それから、アネーリオの「永遠の太陽が現れる時」(track.20)。2人のソプラノとテノールで歌われる、マドリガーレのような展開は微笑ましく、マッツォッキのモテット「祝福されるべき男子よ、汝生まれたまいぬ」(track.21)では、2人のソプラノにより歌われるのだけれど、こちらは、まるで、オペラのワン・シーンのよう。そして、印象的なメリスマ!コロラトゥーラに昇華される目前の歌いが、何か魔法めいて、クリスマスのミラクルを息衝かせる。最後のカリッシミの2つのモテット(track.22, 23)も、印象的にメリスマが用いられ、「ノエル!」と繰り返されるのが、何とも言えず愛らしく、その愛らしさのまま、ふわっと全体が締め括られるのが、また素敵!もうジョスカンの重々しさなど、遠い過去に感じられる... いや、そういう過去を含め、ひとつにまとめ上げてしまう巧さ!
マクリーシュは、「1620年頃」と、アバウトに括ることで、より幅を持たせてルネサンスからバロックへのうつろいを響かせる。1620年、最後に取り上げられるカリッシミは、まだ10代半ば、音楽を学んでいた頃だろう。しかし、ルネサンス・ポリフォニー、パレストリーナ様式の先に、カリッシミのオラトリオがあるわけで、ローマ楽派の系譜は、このアルバムに、見事にひとつに結ばれている。何より、「1620年頃」のローマのオールド・ファッションのおもしろさ!1620年代にして、ジョスカンあり、パレストリーナ、ビクトリア、なのである。またそうした古さに包まれながら、春の芽ぶきのように現れる新しい世代!この新旧が混在するクリスマスの風景は、殊の外、魅力的。何より盛りだくさんで、結果的に、クリスマスのスペシャル感を際立たせている。まるで、音楽のクリスマス・ツリーに、昔々からのオーナメント、真新しいオーナメントが飾られるようで、ワクワクさせられる。
そんなクリスマスを、器用に、それでいて、雰囲気を以って瑞々しく歌い奏でる、ガブリエル・コンソート&プレイヤーズが見事!マクリーシュの意欲的な構成を、真摯に、それでいて、伸びやかに歌う、歌手陣。そこに、しっかりと寄り添う、器楽アンサンブル。派手なところは一切無いのだけれど、ひとりひとりの確かな歌と演奏が、聖都、ローマの荘重さから、クリスマスならではのハッピー感まで、巧みに聴かせてしまう卒の無さ... ジョスカンからカリッシミまで、というのは、ただならない幅に思うのだけれど、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂のクリスマスのミサという形に収めてしまうのだから、凄い。

PALESTRINA: MISSA HODIE CHRISTUS NATUS EST
GABRIELI CONSORT & PLAYERS/PAUL McCREESH


1620年頃、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂におけるクリスマスのミサの再現。

ポール・マクリーシュ/ガブリエル・コンソート&プレイヤーズ

ARCHIV/437 833-2




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