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アルス・スブティリオルの時代を想う、"THINK SUBTILIOR"。 [2017]

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14世紀、中世末、ヨーロッパを一気に暗黒へと突き落とした、ペスト禍... 現代社会からすると、疫病の恐怖というのは、今一、ピンと来ない、なんて、書いておりました、6年前、2014年、アルス・スブティリオルの音楽を取り上げた時。そして、2020年、今、明確に、ピンと来ている。いや、まさか、ピンと来てしまう日が来るとは... 日本は、緊急事態宣言が出されるのか、出されないのか、ギリギリのラインをフラフラしている状態だけれど、世界を見渡せば、ミラノが、パリが、ニューヨークが... 伝えられるニュースは、とにかく衝撃的で、とても現代のこととは思えない。これが一年前だったなら、エイプリル・フールのネタに終わったのに... いや、そこに、現代社会の過信を見る。そして、14世紀も、21世紀も、そう変わらないということを思い知らされる。ならば、今こそ聴いてみよう、アルス・スブティリオルの音楽。ペスト禍を避けて、ひっそりと歌い奏でられた音楽を...
ソラージュ、コルディエ、チコーニア、マッテオ・ダ・ペルージャら、アルス・スブティリオルの作曲家の作品を、即興も挿みつつ取り上げる、ドイツの古楽アンサンブル、サントネーのアルバム、"THINK SUBTILIOR"(RICERCAR/RIC 386)を、ひっそりと聴く。

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ヴァインベルク、室内交響曲。 [2017]

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2019年は、ヴァインベルクの生誕100年のメモリアル。だったのですね... 年明けてから気付きました。で、凹んでおります。毎年末、来年、メモリアルを迎える作曲家には、誰がいるのかなァ~ と、ワクワクしながら調べるのですが、まさか、ヴァインベルクを見落とすとは... いや、まだまだマニアックとはいえ、ここ数年、明らかに再評価の機運が高まっているヴァインベルク。ECMでクレーメルが、CAHNDOSでスヴェドルンドが、積極的にヴァインベルグを取り上げて来て、その音楽の魅力は、ジワジワと知られつつある?いや、ショスタコーヴィチの弟分にして、その延長線上で、もうひとつ洗練されたものを響かせるヴァインベルクの音楽は、なかなか魅力的。何より、20世紀の音楽が音楽史に回収され、現代音楽というフレームを外して見つめることができるようになって、初めて、近代以前の伝統が息衝くヴァインベルクの音楽は、輝き出すように感じる。
ということで、12月8日が誕生日だというから、生誕100年から、まだ2ヶ月は経っていないぞ!と、豪語の追い祝い... ギドン・クレーメル率いる、クレメラータ・バルティカの演奏で、ヴァインベルクの室内交響曲(ECM NEW SERIES/4814604)を聴く。

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2019年、今年の音楽、リヒャルト・シュトラウス、『ばらの騎士』。 [2017]

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今年の漢字、"令"でしたね。いやはや、皆さま、考えてらっしゃらない。令和で、"令"だなんて、もうちょっと2019年がどういう年だったか、考えてみませんこと?などと、突っ込まずいられないのは、例年のことか... ということで、今年も、選びます。音のタイル張り舗道。が選ぶ、今年の音楽!ま、広く募るようなことはせず、独断と偏見、極まっておりますので、毎年、すんごいのを選んでおります。例えば、昨年、2018年は、ベリオのシンフォニア(音楽史をひっくり返して、大変なことになっちゃった、ような音楽... )でした。一昨年、2017年は、リヒャルト・シュトラウスの『サロメ』(お馴染み、退廃の定番。耽美の一方で、ドン詰まり感が半端無い... )。そして、初めて選んだ2016年は、リゲティの『ル・グラン・マカーブル』(終末が訪れるも、死の皇帝がスっ転んで、頭打って死んだもんだから、終末が取り止めとなるトホホ... )。って、ちょっと惨憺たる選びよう?いや、振り返ってみると、惨憺たる状態が続いております。その先に、2019年、どんな年だったろうか?良いことも、悪いこともあって、何より、ひとつの時代が終わり、新しい時代が始まった。そんな一年を、少しセンチメンタルに見つめて...
2019年、今年の音楽は、リヒャルト・シュトラウスのオペラ『ばらの騎士』!カミラ・ニールンド(ソプラノ)の元帥夫人、ポーラ・ムリヒー(メッゾ・ソプラノ)のオクタヴィアン、ピーター・ローズ(バス)のオックス男爵、マルク・アルブレヒト率いるネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、オランダ国立オペラによるライヴ盤(CHALLENGE CLASSICS/CC 72741)を聴く。

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コミタス、生誕150年、アルメニア、苦難の果てのイノセンス... [2017]

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テジュ・コール著、『オープン・シティ』という本を読んでいます。不思議な本です。ニューヨークに住む精神科のインターンの先生(かなりのクラシック・ファン!)が、今に続く世界の様々な傷跡をなぞり、意識の中で漂泊する、小説のようで、小説じゃないような、つまりルポのような... そうした境界は曖昧で、曖昧なればこそ生まれる独特な瑞々しさが印象的で、その瑞々しさが、我々の足元に眠る、かつての闇、傷を呼び覚まし、世界が歩んで来た道程の重さを意識させる。で、かつてがどうのとほじくり返すのではなく、ただその重みを受け止める。受け止めて、そこに某かのセンチメンタリズムを見出し、不思議な味わいを漂わせる。無かったことにする、あるいは、ほじくり返して、再び衝突を呼び覚ます、21世紀、どういうわけか両極端に突っ走ってしまうのはなぜなのだろう?『オープン・シティ』を読んでいて、考えさせられた。いや考えなくてはいけないと思った。今、正義か?悪か?敵か?味方か?線引きばかりが横行し、考えることが許されないような空気感すらある。それで、解決できるのか?答えを出せるのだろうか?我々は、前進するために、一度、立ち止まらなければいけないのかもしれない。ということで、立ち止まって、ちょっと思いを巡らす音楽... 生誕150年、コミタスの音楽に注目してみる。
19世紀末から第1次大戦(1914-18)に掛けて、各地での民族主義の高まりと列強の拡張主義に翻弄され、ディアスポラの悲劇に見舞われたアルメニアの人々... そうした時代を生きたアルメニアの作曲家、コミタスの作品を、アメルニアのピアニスト、ルシン・グリゴリアンがピアノで弾いた作品集、"Seven Songs"(ECM NEW SERIES/481 2556)を聴く。

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ショパンを"Ghosts"として見つめたなら... 前奏曲集。 [2017]

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国民楽派のスターたちを輩出したチェコに、遅れて来た音楽大国、ロシアと、東欧の音楽は、ローカルながら、実に表情豊かで、西欧とは一味違うおもしろさに充ち満ちている!ところで、チェコとロシアのその間、ポーランドは?盛りだくさんの両隣に比べると、何だか凄く視界が悪い。というのは、クラシック界切ってのスター、ショパン(1810-49)の存在があまりに大き過ぎるからか... 前回、聴いた、今年、生誕200年のメモリアルを迎えるモニューシュコ(1819-72)がいて、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、ヴィエニャフスキ(1835-80)がいて、首相にもなったパデレフスキ(1860-1941)に、異才、シマノフスキ(1882-1937)、それから、モダニスト、ルトスワフスキ(1913-94)に、クラスターのペンデレツキ(b.1933)、アンビエントなグレツキ(1933-2010)などなど、丁寧に見て行けば、実に多彩な面々が彩るポーランドの音楽でありまして... かえって、ショパンという大看板は、邪魔?なんて言ったら怒られるか?いや、そもそも、ショパンは、ポーランドの作曲家なのだろうか?改めて、そのルーツ、人生を紐解いてみると、ポーランドとばかりと言えないような気がして来て...
ということで、ポーランド、国民楽派の顔、モニューシュコに続いて、ポーランドの大看板、ショパン。グルジア出身のピアニスト、ニーノ・グヴェタッゼによる、"Ghosts"と銘打たれた異色のショパンの前奏曲集(Challenge Classics/CC 72768)を聴く。

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フランス革命に翻弄されたピアニストの肖像、モンジュルー。 [2017]

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もし生きる時代を選べたら... いつの時代を選ぶだろう?つい、いろいろ夢想してしまう。が、そんなことが叶う人間なんて、誰一人としていない。いや、今、改めて音楽史を振り返ってみると、選べないことの無常を、ひしひしと感じてしまう。モーツァルト(1756-1791)とベートーヴェン(1770-1827)は、わずか14歳の年の差しかない。が、2人の生きた時代は、まったく異なる。短い人生だったとはいえ、18世紀、輝かしき古典主義の時代を、颯爽と走り抜けて行ったモーツァルト... に対し、ベートーヴェンは、モーツァルトが世を去った1年後、1792年にウィーンに移り、遠くパリで始まっていたフランス革命(1789)に大いに刺激を受けたのも束の間、ナポレオン戦争(1803-15)に巻き込まれ、ナポレオンが敗退した後では、保守反動のウィーン体制下、窮屈な思いをしながら世を去った。革命からの戦争、一転、反動という、19世紀、激動の時代を生きたベートーヴェン。その激動があってこそのベートーヴェンの音楽だったのだろうな... という思いにもなるのだけれど、時代が違えば、ベートーヴェンにも、もっと穏やかな人生があったかもしれないと思うと、ちょっと切なくなる。
そして、さらに激動を生きたひとりの女性に注目したいと思う。激動の震源地、フランスで、たくましく生きた侯爵夫人... ピアニストにして、作曲家にして、コンセルヴァトワール、初の女性教授となった、エレーヌ・ド・モンジュルー。エドナ・スターンが弾く、1860年製、プレイエルのピアノで、モンジュルーのピアノ作品集(ORCHID CLASSICS/ORC 100063)を聴く。

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新しい時代の始まりに... 戴冠ミサ。 [2017]

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改まりまして、おめでとうございます。って、もうなんか、お正月のスペシャル版みたいな心地で迎えております、5月1日。テレビで、カウント・ダウンの中継を見ながら、すっかりテンションも上がってしまいました。いや、本当に良い時代になって欲しい!令月風和む世の中になって欲しい!そんな思いを強くした「時代越し」でした。そして、歴史が動きましたよ!歴史の教科書の裏の年表で言ったら、○○時代という区切りの線を乗り越えちゃったわけです。凄い!って、昭和から平成というのも経験しているのだけれど、当時は、そこまで、いろいろ見据えることができるほど、成熟していなかった、というよりこどもだったなと振り返る。でもって、まだまだ未熟であります。もっともっと、しっかりしたい、がんばりたいと思う、晴々しい令和一日目でもあります。そうそう、晴々しいと言ったら、もう、天照大神さまもがんばられたみたいで、天気予報、曇りとか雨だったように思うのだけれど、即位の礼が始まる前には、晴れちゃった!そりゃ、ハレの日だものね。そんなプチ・ミラクルにも、ときめく。
ということで、令和元年の最初は、やっぱりこれかなと。新天皇陛下のご即位をお祝いして、ロランス・エキルベイ率いる合唱団、アクサンチュスと、サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ)、レナータ・ポクピチ(アルト)、ベンジャミン・ブルンス(テノール)、アンドレアス・ヴォルフ(バス)の歌、インスラ・オーケストラの演奏で、モーツァルトの戴冠ミサ(ERATO/90295 87253)を聴く!

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春を接いで、ドビュッシー、ラフマニノフ、ストラヴィンスキー... [2017]

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音楽と四季の相性は、良いように思う。ヴィヴァルディの『四季』という傑作もあるし... いや、四季のうつろいは、目で認識されるものだけれど、四季を創り出すのは大気であって、大気を震わせる芸術、音楽は、より根源的に季節を表現できるのかもしれない。ふと、そんなことを考えたのは、4月に入って、音楽における"春"に注目してみて... 桜が象徴するように、春ほど視覚に訴えて来る季節は無い。が、春の麗(うるわ)しさ、麗(うら)らかさは、活き活きと音楽でも表現される。例えば、先日、聴いた、ランゴーの「春の目覚め」や、ベートーヴェンの「春」。そこから聴こえて来たのは、春ならではの空気感を知るからこそ感じられる、音楽が紡ぎ出す春らしさか... 特に、ベートーヴェンの「春」は、"春"を念頭に作曲されていなかったものの、後世、それを「春」と呼ばずにいられなかったことを思うと、人間は、季節の表情に、某かの音楽を聴いているのかもしれない。
ということで、春尽くしの1枚... ヴァシリー・ペトレンコ率いる、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ドビュッシーの交響的組曲『春』、ラフマニノフのカンタータ『春』、そして、ストラヴィンスキーの『春の祭典』(onyx/ONYX 4182)を聴く。

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解放区... 17世紀、ヴェネツィア、オラトリオ、華麗なる進化。 [2017]

クラシックでオラトリオというと、やっぱり、お馴染み『メサイア』(1742)を書いたヘンデルのイメージが強い。が、17世紀半ば、ローマで誕生したオラトリオの歩みをつぶさに辿ると、オラトリオ作家、ヘンデルの存在が、少し異質に思えて来る。てか、ヘンデルの、イタリア・オペラ・ブームが去ったら英語のオラトリオ、どうでしょう?みたいなスタンスが、何か引っ掛かる... オラトリオって、そんなもんかァ?いや、18世紀、盛期バロックを迎え、時代はうつろって行く。ヘンデルの、華麗かつ、ダイナミックで、時としてエンターテイメントになり得てしまうオラトリオの姿に、感慨... 対抗宗教改革の熱、未だ冷めやらず、バロックの革新が生々しさを残していた頃の、如何ともし難い狂おしさのようなものが産み落としたオラトリオ。ヘンデルとはまた違ったベクトルで、聴き手に迫る音楽が展開されていたわけだけれど、次第に、あの狂おしさは失われて行って、何を得たか?答えはヘンデル... ということで、ヘンデルに至るオラトリオの道程を追いながら、盛期バロックへの展開を探ってみる。
アンドレア・デ・カルロ率いる、アンサンブル・マレ・ノストルムで、ストラデッラのオラトリオ『聖ペラージャ』(ARCANA/A 431)と、ダミアン・ギヨン率いる、ル・バンケ・セレストで、カルダーラのオラトリオ『キリストの足元のマッダレーナ』(Alpha/Alpha 426)を聴く。

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第九、日本初演、100年目の年の瀬に聴く、第九。 [2017]

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没後150年のロッシーニに、没後100年のドビュッシー... 2018年のクラシックの顔を、改めて見つめた今月半ば。ここで視点を変えまして、今年、日本初演100年のメモリアルを迎えた、あの年末の定番に注目!そう、第九です。1824年、ウィーンで初演されて以来、間もなく2世紀が経とうという中、ウィーンから遠く離れた東の果て、日本で、今や1万人で歌えてしまうほどの知名度を得た事実... 楽聖は、あの世から、どんな風に見つめているだろう?初演時、すでに耳が聴こえなくなっていたベートーヴェン、第九に熱狂する客席に気付かず、アルト歌手に促され、初めて客席の方へと向き直り、その大成功を知ったというエピソードを思い起こすと、日本の年末の様子も、感慨を以って見つめてくれる気がする。1万人なんて、コンサートという観点からすれば、正気の沙汰ではないけれど、1万人もの人々がひとつ声を揃えて歌うことは、まさに第九の精神を具現化したと言えるわけで... 何なら1万人なんて限ることなく、日本全国で、同時刻、それぞれの場所で、一斉に歌い出せばいい... いや、日本に限らず、全世界で歌えば、このギスギスとした21世紀の空気感も変わるかもしれない。
なんて夢想しながら、改めて第九を味わう。マルティン・ハーゼルベックが率いるピリオド・オーケストラ、ウィーン・アカデミー管弦楽団による、ベートーヴェンの初演時の響きに、初演会場まで考慮して可能な限り迫ろうという実にチャレンジングなシリーズ、"RESOUND BEETHOVEN"から、VOL.5、ベートーヴェンの交響曲、第9番、「合唱付き」(Alpha/Alpha 476)を聴く。

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