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ベートーヴェン、第九。 [2019]

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ステイ・ホームなものだから、いつからゴールデン・ウィークで、いつまでゴールデン・ウィークなのか、よくわからなくなって来ている、今日この頃... 何だか、時間が引き伸ばされて行くような、奇妙な感覚を覚えるのです。という中で、第九を聴く。一気に、年末へ!って、時間を壊しに掛かっている?いやいやいや、実は、第九が初演されたのは、1824年の5月7日。そう、196年前の今日なのです!あの歓喜の歌は、年の瀬ではなくて、勢いを増す春の陽気の中で産声を上げたわけです。そういう史実を前にすると、お馴染みのメロディーもまた少し違って聴こえて来るような気がします。そして、今こそ、歓喜の歌、なのかもしれない... おお友よ、このような音ではない!我々はもっと心地良い、もっと歓喜に満ち溢れる歌を歌おうではないか!不安で視野を狭めることなく、不満で日々を無為に送ることなく、しっかりと明日を見据えて、何より、コロナ禍の一日も早い終息を願って、今、肺炎に苦しんでいる人々の快癒を願って、逝ってしまった人々の冥福を祈って、今こその、第九。
鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパン、アン・ヘレン・モーエン(ソプラノ)、マリアンネ・ベアーテ・キーラント(アルト)、アラン・クレイトン(テノール)、ニール・ディヴィス(バス)で、ベートーヴェンの交響曲、第9番、「合唱付き」(BIS/BIS-2451)を聴く。

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モーツァルト、春、 [2019]

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この間、買い物の帰りに、桜の木の下を通ったのだけれど、足元には、まだたくさんのガクが残っていて... それが、とても寂しげで... 毎年、みんなから、綺麗だねぇ~ っと、見上げられる桜が、今年は、愛でられることなく、散ってしまった。桜の木は、いつもと違う、この状況を、どんな風に感じているのだろう?朝からの花見の陣取りに、無粋なブルーシート、アルコール臭漂う夜桜と、例年の騒々しさが、パっと消えてしまった春。何だか、狐に抓まれたかのようで、ウイルスのニュースを知らなければ、薄気味悪いかもしれない。もちろん、これまでにない穏やかな春にもなったのだけれど、賑わいのない春が、思いの外、寂しいことに気付かされる春だったなと... 足元の桜のガクを目にして、そんなことを思う。一方で、桜の木を見上げると、もうすっかりと青々とした葉に覆われていて、すでに前に進んでいる!いや、当たり前なのだけれど、その青々とした姿を見上げて、くよくよしない春のパワフルさに感動を覚える。勇気付けられる。ということで、パワフルな春を聴く。
フランスの新鋭、ヴァン・カイック四重奏団の演奏による、モーツァルトの弦楽四重奏曲、14番、「春」と、15番、それから、K.138のディヴェルティメント(Alpha/Alpha 551)。春の陽気を思わせる、モーツァルトの無邪気なサウンドに触れて、前を向こう!

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レイハ、サロンの大交響曲、ベートーヴェン、七重奏曲。 [2019]

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音楽史から見て、ベートーヴェンは、どんな時代を生きていたのだろう?ベートーヴェンの音楽があまりに揺ぎ無く存在しているものだから、その時代が過渡期だったなんて、普段、あまり考えない。が、その揺ぎ無いあたりから、ちょっと視点をずらせば、ベートーヴェンの時代が過渡期であったことを思い知らされる。そう、古典主義の時代から、ロマン主義の時代へとうつろう時代... で、そういう史実に触れて、ますます興味深く思うのが、ベートーヴェンのあの揺ぎ無さ... あれは、何なのだろう?新しい時代に前のめりになりながらも、実は、しっかりと伝統の上に立脚するという、意外と頑固な保守性... 19世紀を切り拓いたベートーヴェンの音楽ではあるものの、あくまで18世紀の延長線上に存在していて、まさしく、最後のウィーン古典派。しかし、それは、ただのウィーン古典派ではなくて、ウルトラ古典主義!というのが、ベートーヴェンの際立った個性を形作っているように思う。そんな風に、改めて認識するために、ベートーヴェンの周辺にも注目してみたいなと...
ベートーヴェンの弟子、リースに続いて、同い年で、同級生で、同僚でもあったレイハ。ジュリアン・ショーヴァン率いる、ル・コンセール・ド・ラ・ローグの演奏で、レイハのサロンの大交響曲、第1番と、ベートーヴェンの七重奏曲(APARTE/AP 211)を聴く。

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チャイコフスキー、聖金口イオアン聖体礼儀。 [2019]

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今、日本人宇宙飛行士たちへのインタビューをまとめた『宇宙から帰ってきた日本人』(稲泉連著)という本を読んでおります。で、語られる、地球を飛び出して、地球を見つめての、それぞれの印象... 思ったより小さかった、大きかった、ひとつの宇宙船のようだった、ひとつの生命体のようだった、そして、思いの外、儚く感じられた... 宇宙飛行士だからこその知見は実に興味深く、またそこに、今、現在、地球が置かれている状況を重ねれば、感慨を覚えずにはいられない。で、おおっ?!と思ったのが、2015年、国際宇宙ステーションに滞在した油井さんの、宇宙から地球を見つめる感覚は、「ロシア正教の教会に入ったときの感覚」に似ているというもの... スペースシャトル退役後、ソユーズが発射するロシアが宇宙への玄関となり、ロシアでも訓練を受けることになった油井さんは、何度かロシア正教の教会を訪れ、そこにあった厳かさ、静寂が醸し出す神秘が、地球が浮かぶ宇宙空間にも感じられたのだとか... いや、俄然、ロシア正教会が気になってしまうじゃないすか!
ということで、ロシア正教会の教会音楽に注目してみる。シグヴァルズ・クラーヴァ率いるラトヴィア放送合唱団で、チャイコフスキーの聖金口イオアン聖体礼儀と、9つの聖歌(ONDINE/ODE 1336-2)を聴く。そこから、宇宙空間を追体験... できるか?

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シューベルト、19番と20番のピアノ・ソナタ。 [2019]

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冬はピアノ... ということで、ピリオドのピアノによるシューベルトのピアノ・ソナタに始まり、フェルドマンの1950年代のピアノ作品、シャリーノの1990年代のピアノ作品と、ある意味、ピアノの際立った面を聴いて来た今月半ば... 際立ったればこそ、この楽器が持つ表情の幅、あるいは可能性を思い知らされた。ピリオドのピアノの、枯れたようなサウンドだからこそ克明となる作曲家(シューベルト)の心の内、たっぷりと間を取った抽象(フェルドマン)が引き立てるピアノの研ぎ澄まされた響き、研ぎ澄まされた響きを、静けさの中に浮かべて、滲み出す思い掛けない色彩(シャリーノ)。ただ打鍵するだけならば、初めてピアノに触れるキッズも、老練なヴィルトゥオーゾも、まったく同じ音を出せるピアノ。均質に音を出せるマシーンたる所以の凄さなのだけれど、それをも凌駕して行く作曲家たちの仕事であり、ピアニストの腕であり... 凄いピアノに、如何に挑もうか、そういう気概が、マシーンであることを越えてピアノの宇宙を拓き、ますます凄い!そうしたあたり、刺激的だなと...
さて、再び、シューベルトへ。アンドラーシュ・シフが、1820年頃製作のフランツ・ブロードマンのピアノで弾く、シューベルトの19番と20番のピアノ・ソナタに、4つの即興曲、3つのピアノ曲も取り上げる2枚組(ECM NEW SERIES/4817252)を聴く。

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シューベルト、遠くへの渇望。 [2019]

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これもまた、旅なのかもしれない。冬の旅、ではなくて、シューベルトのアイスランドへの、あるいは、フォークロアへの旅... アイスランド出身のテノール、クリスチャンソンが、シューベルトの歌曲とアイスランドの民謡を並べるという、大胆な1枚を聴いてみようと思うのだけれど、元来、並ばない音楽が並んで生まれるケミストリーは、実に刺激的で、様々な想像を掻き立てる。シューベルトは、南への憧れを、その音楽に、様々に籠めている。君よ知るや南の国... ミニョンの歌(ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』から採られた詩、故郷、南の国から離れたミニョンが、その故郷の美しい情景を想って歌う... )は、まさに象徴的。で、ミニョンにシューベルトの姿が重なる?アルプスを越える経済力も行動力も無かったシューベルトだったけれど、知らない南の国を夢想しながら書いた音楽、例えばイタリア風序曲だとかを聴いていると、何だか切なくなってしまう。音楽の中で旅したシューベルト... そのシューベルトが、南ではなく北へと旅したら、どうだったろう?と、夢想しながら...
ベネディクト・クリスチャンソンのテノール、アレクサンダー・シュマルツのピアノで、遠くへの憧れを歌う、アイスランド民謡、そして、シューベルトの歌曲を、大胆にひとつにまとめたアルバム、"Drang in die Ferne"(GENUIN/GEN 19645)を聴く。

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ダ・ヴィンチ、没後500年、その絵画を音楽で再構築したならば... [2019]

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さてさて、2019年も、残すところ2週間... 良いことも、悪いことも、凄過ぎた年だっただけに、いつもの年の瀬より、何だか感慨は深くなる。いや、感慨に耽っている場合でなくて、やることいっぱいの年の瀬でありまして... 当blog的には、2019年にメモリアルを迎えた作曲家たち、まだ取り上げ切れていなかったあたりを、駆け込みで取り上げております。で、没後150年、ベルリオーズの大作に続いて、没後350年、チェスティに、生誕150年、コミタスと、メモリアルならではのマニアックな存在に注目。そして、その締めに、ある意味、最もビッグな存在を取り上げてみたいと思う。没後500年、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)!てか、画家でしょ?いや、マルチ・クリエイターとしても近年は注目されてますよね... で、実は、ダ・ヴィンチ、音楽もやっておりまして、当時、その名は、音楽家としても知られており... だからか、その絵画には音楽が籠められている?という、大胆な解釈の下、ダ・ヴィンチが活躍した時代の音楽を取り上げる意欲作を聴いてみようかなと...
ドニ・レザン・ダドル率いる、フランスの古楽アンサンブル、ドゥルス・メモワールの歌と演奏で、ダ・ヴィンチが生きた時代の音楽を用い、大胆にその絵画を構成する、"LEONARDO DA VINCI LA MUSIQUE SECRÈTE"(Alpha/Alpha 456)を聴く。

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ベルリオーズ、その特異なる芸術の種... 荘厳ミサ。 [2019]

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12月に入りまして、2019年を振り返ってみるのですが、いやー、今年も、メモリアルを迎えた作曲家、いろいろ取り上げて来たなと... 生誕300年のバルバラ・ストロッツィ(1619-77)、生誕200年のスッペ(1819-95)、オッフェンバック(1819-80)、グヴィ(1819-98)、モニューシュコ(1819-72)、没後150年のゴットシャルク(1829-69)、生誕150年のプフィッツナー(1869-1949)、ルーセル(1869-1937)... それから、生誕300年のモーツァルトの父、レオポルト(1719-87)、生誕200年のシューマンの妻、クララ(1819-96)など、ヴァラエティに富み、実に興味深かった!のだけれど、やっぱり、2019年のクラシックの顔は、没後150年、ベルリオーズ(1803-69)だったかなと... 当blogでも、ハーディングネゼ・セガンの幻想交響曲、ロトの「イタリアのハロルド」、そして、前回のモルローによるレクイエムと、かなりの推しでして... 翻ってみれば、自分、ベルリオーズ、好きなんだなと、改めて思ったり... で、改めて、この異端児と向き合ってみて、凄い人だったなと、感服してしまう。ということで、2019年が終わらない内に、ベルリオーズの大作を、ドン!ドン!と、並べてみる。
エルヴェ・ニケ率いるル・コンセール・スピリチュエルの合唱と演奏、アドリアーナ・ゴンサレス(ソプラノ)、ジュリアン・ベーア(テノール)、アンドレアス・ヴォルフ(バス)のソロで、かのレクイエムの素となったベルリオーズの荘厳ミサ(Alpha/Alpha 564)を聴く。

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ハーディ・ガーディが描き出す、シェトヴィル版、『四季』。 [2019]

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18世紀、ヴィヴァルディのオペラは、ヨーロッパを席巻するには至らなかったものの、コンチェルトは、ヨーロッパ各地で大人気となった。なぜか?観光都市、ヴェネツィア(地中海の制海権を失い、海運業がままならなくなると、観光業に活路を見出したヴェネツィア共和国!)の音楽シーンを彩る、ヴィヴァルディが率いたレディース・オーケストラ、ピエタの"フィーリエ"のコンサート、そこで演奏されたヴィヴァルディのコンチェルトのおもしろさが、ヨーロッパ各地からやって来た観光客のみやげ話として拡散、その評判は、じわじわと高まって行く。そこに乗っかったのが、各国の楽譜出版業者たち... 著作権なんて概念があるんだか、ないんだかという時代、アムステルダムで、ロンドンで、パリで、公認、非公認、ヴィヴァルディの楽譜は次々に売り出され、ヴィヴァルディ・ブームがあちこちの都市で巻き起こる!当のヴェネツィアでは、ナポリ楽派に押され、居場所が無くなりつつあったヴィヴァルディだけれど、イタリアの外では、思い掛けなく、国際的な名声を確立してしまう。
というあたりを垣間見る、1739年にパリで出版されたシェドヴィル版、『四季』。ハーディ・ガーディ奏者、トビー・ミラー率いるアンサンブル・ダンギーの演奏で、ハーディ・ガーディが活躍する、『春、または愉快な季節』(RICERCAR/RIC 398)を聴く。

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"RESOUND BEETHOVEN"、戦時下のベートーヴェンを追って、 [2019]

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間もなく8月が終わります。いやはや、温暖化の夏の強烈さが身に沁みる日々でありました。それでいて、大気ばかりでなく、世界も、日本も、やたら熱くなって、炎上しまくった日々でありました。身体ばかりでなく、精神的にも夏バテを起こしてしまいそうな惨憺たる8月... こんな8月、早く終わっちまえ!の一方で、終わるとなると、何だか寂しさを覚えてしまうのが8月でもあって... 遠い夏休みの記憶は、未だに意識下で息衝いているのか、夕暮れ、たなびく雲に秋の気配なんかを見つけたりすると、センチメンタルが滲むような、滲まないような、8月末。このセンチメンタルが、いろいろな温度を下げてくれれば、いいなァ。そうして、落ち着いて、秋を迎えたい。いやいや、クラシックからすると、秋は落ち着いてなどいられない。9月はシーズン開幕!ということで、前回、シーズン・インに向けての準備体操として、ベートーヴェンの1番、2番3番の交響曲を聴いたので、勢い4番も!でもって、"RESOUND BEETHOVEN"の4番... この意欲的なシリーズの最新盤を聴く。
マルティン・ハーゼルベック率いるウィーン・アカデミー管弦楽団の演奏、ゴットリープ・ヴァリッシュが弾くピリオドのピアノで、ベートーヴェンの4番のピアノ協奏曲と、4番の交響曲(Alpha/Alpha 478)。ウィーンのベートーヴェンで、8月を締め括ります。

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