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フランス、古典派、再発見。 [2007]

例年恒例の渋滞のニュース... で、伝えられる渋滞の長さの、凄い数字を見せられると、それでも遠出するのかよ?!と、ツッコミを入れたくなる。はずが、何かホッとさせられる、今年の夏。それだけの人々が帰郷し、家族と再会し。と思うと、何だか温かな気持ちになる。そして、これだけの人々が、帰郷のみならず、例年通り移動していることに、ちょっと勇気付けられもする。これも、ひとつの復興なのかも。
一方で、家にいる... 墓参りは渋滞を避けて、すでに済ませておいたので... さて、家にいて、どーしよう?となる。やっぱり、音楽を聴く... カンプラのレクイエムを聴いたので、そのままフランスの18世紀をいろいろ聴いてみることに。ということで、2007年にリリースされた、オリヴィエ・シュネーベリ率いる、ヴェルサイユ・バロック音楽センター付き聖歌隊、レ・シャントルによるリジェルの3つのヒエロドラマ(K617/K617198)と、ミヒャエル・シュナイダー率いる、ドイツのピリオド・オーケストラ、ラ・スタジォーネ・フランクフルトによるル・デュクの交響的作品全集(cpo/777 219-2)を聴き直す。


リジェル、再発見!3つのヒエロドラマ...

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このアルバムで初めてその存在を知ったリジェル... その充実した音楽に、まずびっくりしたことを覚えている。いや、フランスの音楽は侮れない!改めて、聴き直して、そう強く感じてしまう。リュリ、ラモーと来て、その後は?というのが、漠然としたフランスの18世紀の音楽のイメージ。19世紀のベルリオーズまで、すっぽりと古典派の時代が抜けてしまっていたり... もう少し深く掘り下げるならば、国際音楽都市パリの、ゴージャスを極めるインターナショナル級スター作曲家たちの競演があって。かのモーツァルトすら苦戦した厳しい競争の中、フランス人によるフランスの音楽というのは、当時の外国人スターに隠れてしまって、なかなか見えてこない。が、そういうところにこそ、目ざとくスポットを当てるのがシュネーベリ!で、そのリジェルなのだが...
アンリ・ジョセフ・リジェル(1741-99)。実は、ドイツ出身とのこと。ドイツで音楽を学び(ヴュルテンベルク公のカペルマイスターであった、ナポリ楽派の巨匠、ヨンメッリにも師事... )、1767年にフランスへ移住。やがて、18世紀、パリの音楽シーンを牽引したオーケストラ、コンセール・スピリチュエルのために作品を書くようになり... ここで聴く、旧約聖書からのエピソードを描くヒエロドラマ(≒オラトリオ)を作曲し、好評を博す。で、今、改めて取り上げられても、好評を博すはず!パリを席巻したグルックの疾風怒濤のオペラに刺激を受け、そのグルックにも評価された、ドラマティックに濃密なシーンを綴るリジェルのヒエロドラマ。グルックの濃密さに、ハイドンのオラトリオのような、古典派ならではの端正なサウンドでまとめられ、フランス語にフィットした流麗なメロディあり、思い掛けなく魅力的。何より、旧約聖書のドラマティックなシーンを、キュっと濃縮して展開するコンパクト感(ひとつのヒエロドラマが20分から30分... )が、絶妙!壮大なオラトリオとは違う、いい意味での手軽さがあって。その手軽さがキャッチーでもあり、そのあたりに、フランス流を感じもし、おもしろい。
で、そのキャッチーさを余すことなく活かして来るシュネーベリ。レ・シャントルの透明感、ドラマを盛り上げるレ・フォリ・フランセーズの演奏、ドラマティックさと美しさをきちっと聴かせる歌手陣... ソロとコーラス、オーケストラが相俟って、雄弁な音楽を聴かせ、リジェルという存在をしっかりと輝かせる。

HENRI-JOSEPH RIGEL Trois hiérodrames

リジェル : ヒエロドラマ 『出エジプト』
リジェル : ヒエロドラマ 『ジェフテ』
リジェル : ヒエロドラマ 『ジェリコの陥落』

イザベル・プルナール(ソプラノ)
フィリップ・ドー(テノール)
アラン・ビュエ(バス)
レ・シャントル(コーラス)
オリヴィエ・シュネーベリ/レ・フォリ・フランセーズ

K617/K617198




ル・デュク、再発見!交響的作品全集。

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やはり、このアルバムで初めてその存在を知ったル・デュク。じわりじわりと、18世紀のフランスを彩った作曲家たち、ゴセック(1734-1829)や、グレトリ(1741-1813)らが、より紹介されつつある中で、さらなる存在に触れるのは、とても刺激的。そして、今、改めてル・デュクの交響曲を聴き直すのだけれど、その上質な古典派の交響曲を聴けば、18世紀のフランスの音楽が、インターナショナルにも、ローカルにも、大いに盛り上がっていたことを思い知らされる。で、そのル・デュクなのだが...
シモン・ル・デュク(1742-77)。17歳でコンセール・スピリチュエルの第2ヴァイオリンに加わり、やがてソリストとして、作曲家としても活躍し、コンセール・スピリチュエルの中心的なメンバーのひとりとなるものの、35歳で夭折。コンセール・スピリチュエルの他の仲間たちは、長生きし過ぎて、時代の潮流の激しさに苦しんだわけだが、ル・デュクに関しては、あともう少し長生きしていたなら、今に伝わるその存在感もまた変わったかもしれない。そんな印象を受ける、シュナイダー+ラ・スタジォーネ・フランクフルトによる交響的作品全集。そこに収められた3つの交響曲と、3つの管弦楽のためのトリオは、どれも充実した古典派サウンドを響かせていて。コンセール・スピリチュエルがパリに紹介するヨーロッパの最新の音楽のただ中にいたであろう作曲家だからこその音楽であり、そのシフト・チェンジし切った古典派のスタイルが心地良く。また、モーツァルトの後期の傑作交響曲が登場する前夜、古典派の若々しい姿に清々しさを見出し、魅力的。そこに、フランス流の軽さというのか、ドイツ語圏の交響曲とは違うシンプルさがあって、ここでもまたキャッチー!
そして、シュナイダー+ラ・スタジォーネ・フランクフルトの演奏は、そのキャッチーさを丁寧に拾い上げ、端々にエスプリを散し、活き活きとした交響曲、トリオを奏でる。衒うことなく、きちっと音楽を作り上げる生真面目さを感じながらも、だからこそル・デュクがスコアに籠めたエスプリがきちっと弾けて、溌剌。18世紀のフランスの瑞々しさは蘇り、21世紀には新鮮な姿として映る... けして派手ではなくとも、何かウキウキとさせてくれる素敵な仕上がりが、好感触。ル・デュクの再発見を、思い掛けなく楽しいものにしてくれる。

Simon Le Duc ・ Symphonic Works ・ La Stagione Frankfurt

ル・デュク : 交響曲 第2番 ニ長調
ル・デュク : 管弦楽のためのトリオ ト短調 Op.2-2
ル・デュク : 交響曲 第3番 変ホ長調
ル・デュク : 管弦楽のためのトリオ 変ロ長調 Op.2-3
ル・デュク : 管弦楽のためのトリオ ニ長調 Op.2-1
ル・デュク : 交響曲 第1番 ニ長調

ミヒャエル・シュナイダー/ラ・スタジォーネ・フランクフルト

cpo/777 219-2





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