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アメリカ、帰って来たアンファン・テリヴル、アンタイル。 [2019]

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7月4日は、アメリカ独立記念日。ということで、当blogでは、アメリカの音楽を聴く日、みたいな流れができつつあるような... 昨年は、バーンスタインのミサを聴きました。一昨年は、バーンスタインのホワイトハウス・カンタータを聴きました。というのも、やっぱり、あの御方(白いお家でつぶやかずにいられない、アッメリカン・ファーストでお馴染み... )と向き合わざるを得なくなって、良くも悪くも、改めて「アメリカ」という存在を見つめ直したくなったからかも... いや、豪放磊落、シンプルなようで、けして一筋縄に行かないのがアメリカ(まさにトランプ現象がそれを象徴... )。音楽においては、長らく極めて素朴な状態(アメリカにおける「古楽」の時代... )が続いた後、20世紀に入っての急展開!アメリカの音楽は、ヨーロッパにある歴史の重石が無い分、間違いなく自由度に長けており、その捉われない姿勢(あの閣下とも通じるのかも... )は、度々、ヨーロッパを驚かせる急展開を生む原動力に... そして、ヨーロッパを驚かせた作曲家のひとり、アンタイルに注目してみようと思う。
1924年、『バレエ・メカニーク』でパリっ子たちを騒然とさせた後、アメリカに帰っての交響曲... ヨン・ストゥールゴールズとBBCフィルハーモニックによるアンタイルのシリーズ、第2弾、3番の交響曲、「アメリカン」(CHANDOS/CHAN 10982)を聴く。

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アメリカ、クレオールというもうひとつの感性、ゴットシャルク。 [2015]

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クラシックにおいて、アメリカが存在感を示すのは20世紀に入ってから... ジャズ・エイジの申し子、ガーシュウィン(1898-1937)、マシーン・エイジの"アンファン・テリヴル"、アンタイル(1900-59)が、第一次大戦後のヨーロッパで旋風を巻き起こし... シェーンベルク、ストラヴィンスキー、ミヨーら、第二次大戦により、多くの亡命者を迎え入れたアメリカは、ヨーロッパの最新の音楽を、直接、学ぶ機会を得て、第二次大戦後、堂々、ヨーロッパに喧嘩を売ってみせたケージ(1912-92)を登場させるまでに!わずか半世紀の間に、アメリカの音楽は恐るべきスピードで成長を遂げたわけだ。が、20世紀以前のアメリカは?なかなか見えて来ない... それもそのはず、実に、実に素朴な状態が続いていた。というのも、アメリカを築いた人々は、音楽を忌避したピューリタンたち。ヨーロッパとはまったく異なる音楽環境が、長い間、続いていたわけだ(そうした抑制的な中でも育まれた音楽はあって、その歩みが、また、実に、実に興味深かったりする!)。が、規格外の人物もおりました!
1842年、パリに渡り、やがてショパンにもその才能を認められたピアノのヴィルトゥオーゾ、今年、没後150年を迎えるゴットシャルクに注目!ということで、スティーヴン・メイヤーの弾く、ゴットシャルクのピアノ作品集(NAXOS/8.559693)を聴く。

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アメリカの音楽の歩んだ道を辿って、シャロンのばら。 [2011]

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アメリカは、言わずと知れた、音楽大国!なぜそうなったのだろう?ちょっと考えてみる。アメリカ"合衆"国という国名が示すように(って、誤訳なのが痛いところ... )、いろいろな地域から移民がやって来て、形作られた、アメリカ。その移民たちが、それぞれに音楽を持ち込んだことで、それまで遠く離れて存在していたものが、アメリカという場所で接点を持ち... そうして生まれた数々のケミストリー!ジャズなどは、まさにその象徴と言える。イギリスから渡って来た最初の入植者たちの讃美歌、ヨーロッパ由来の軍楽隊の音楽、そして、奴隷として連れて来られた人々のアフリカの音楽が、フランスにルーツを持つクレオール文化に彩られたニューオリンズで結び付き、まったく新しい音楽を生み出す。今、改めて考えてみると、音楽史上、驚くべきことのように思う。そして、こうしたケミストリーは、シャズを皮切りに、より多くの移民を集めた20世紀、ますます盛んとなり、それまで音楽史が経験したことの無かった音楽大国を出現させた。いや、アメリカ"合楽"国、なのかもしれない。のですが、今回は、その対極、まだ移民を広く集めていなかった頃、つまり、音楽が素朴を極めていた頃に注目。
ということで、20世紀のアンタイル、19世紀のゴットシャルクと来て、最後に、アメリカの建国まで遡る!アメリカのバス、ジョエル・フレデリクセンと、彼が創設した古楽アンサンブル、アンサンブル・フェニックス・ミュンヒェンによる、入植から南北戦争までのアメリカの音楽の歩みをつぶさに追う、"Rose of Sharon"(harmonia mundi/HMC 902085)を聴く。

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フランス革命の喧騒に響く、革命歌と反革命歌... [2016]

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7月4日は、アメリカ独立記念日ということで、アメリカ音楽史をざっくり遡ったのだけれど、続いて7月14日は、フランス革命記念日、パリ祭!となれば、今度はフランス革命にまつわる音楽を聴いてみようかなと... いや、フランス音楽史において、フランス革命は、黒歴史とさえ言える事態。ヨーロッパ中の巨匠を集めて、音楽の都として燦然と輝いていたパリだったが、蜘蛛の子を散らすように巨匠たちはいなくなり、その音楽シーンを支えて来たパトロンたち、富裕な貴族、高位聖職者たちは、国外追放されるか、ギロチンであの世に追放された。そして、長い歴史を誇った教会音楽は、革命政府の反教会政策により、壊滅... 18世紀の音楽大国は、その最後で、カタストロフに見舞われる。一方で、瓦解して新たに生まれる音楽も... 外国人の巨匠たちの、かしこまった音楽とは対極を成す、人々の間で歌い出された革命歌!それは、誰もが歌える新しい音楽!
ということで、フランスの歌の歴史をつぶさに探る異色の古楽アンサンブル、アルノー・マルゾラティ率いる、レ・リュネジアンによる、フランス革命期を彩った革命歌、それから、反革命歌も歌ってしまう、"FRANCE 1789"(Alpha/Alpha 810)を聴く。

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フランス革命前夜とその後で、パリ、交響曲の諸相... [2018]

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さて、昨日は、フランス革命記念日、パリ祭!つまり、おめでたい日。が、歴史をつぶさに見つめれば、おめでたいとばかりも言えないフランス革命(画期的だった人権宣言、理想に輝いていた自由、平等、博愛の精神は、あっという間に吹き飛んで、暴力と破壊と混乱の日々... )。そもそも、歴史とは、全てが良くて、全てが悪いなどと安易に白黒付けられるシロモノではない。輝きに満ちた瞬間があれば、必ず影があり、また暗闇の中にも光はある。いや、歴史において、善悪は、複雑に絡み合っていることが常(カの国の青い瓦屋根のお屋敷に住まわれている閣下、そういうものです。今こそ、"ありのまま"の歴史と向き合いましょう!さすれば、口だけでなく、本当に未来へと歩み出せるはず... )。そういう真実を踏まえれば、目の前に散在する問題も、的確に片付けて行くことができるように思う。いや、今、世界各地で起きている様々な問題の背景を考えると、歴史をつぶさに見つめる集中力を欠いているように思えてならない。なぜ現状がそうなのかをきちんと把握できず、あっちでも、こっちでも、ただただ、ただただ、駄々を捏ねるばかり... 嗚呼、明けぬ梅雨空の下、鬱々としてしまいますね。
ということで、キャッチーな革命歌をふんだんに盛り込んだ協奏交響曲で、湿気った気分を吹き飛ばす!フランス革命期に活躍した作曲家、ダヴォーとドヴィエンヌの協奏交響曲に、革命前夜、パリで初演されたハイドンのパリ・セットから、82番、「熊」を、ジュリア・ショーヴァン率いる、ピリオド・オーケストラ、ル・コンセール・ドゥ・ラ・ロージュの演奏(APARTE/AP 186)で聴く。

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フランス革命に翻弄されたピアニストの肖像、モンジュルー。 [2017]

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もし生きる時代を選べたら... いつの時代を選ぶだろう?つい、いろいろ夢想してしまう。が、そんなことが叶う人間なんて、誰一人としていない。いや、今、改めて音楽史を振り返ってみると、選べないことの無常を、ひしひしと感じてしまう。モーツァルト(1756-1791)とベートーヴェン(1770-1827)は、わずか14歳の年の差しかない。が、2人の生きた時代は、まったく異なる。短い人生だったとはいえ、18世紀、輝かしき古典主義の時代を、颯爽と走り抜けて行ったモーツァルト... に対し、ベートーヴェンは、モーツァルトが世を去った1年後、1792年にウィーンに移り、遠くパリで始まっていたフランス革命(1789)に大いに刺激を受けたのも束の間、ナポレオン戦争(1803-15)に巻き込まれ、ナポレオンが敗退した後では、保守反動のウィーン体制下、窮屈な思いをしながら世を去った。革命からの戦争、一転、反動という、19世紀、激動の時代を生きたベートーヴェン。その激動があってこそのベートーヴェンの音楽だったのだろうな... という思いにもなるのだけれど、時代が違えば、ベートーヴェンにも、もっと穏やかな人生があったかもしれないと思うと、ちょっと切なくなる。
そして、さらに激動を生きたひとりの女性に注目したいと思う。激動の震源地、フランスで、たくましく生きた侯爵夫人... ピアニストにして、作曲家にして、コンセルヴァトワール、初の女性教授となった、エレーヌ・ド・モンジュルー。エドナ・スターンが弾く、1860年製、プレイエルのピアノで、モンジュルーのピアノ作品集(ORCHID CLASSICS/ORC 100063)を聴く。

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フランス革命が焚き付けた新時代の熱気、ロドイスカ! [2013]

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1780年代、パリの音楽シーンは、まさに花盛りだった。ナポリ楽派の巨匠、ピッチンニ(1728-1800)、サッキーニ(1730-86)に、ウィーンからやって来た次世代の巨匠、サリエリ(1750-1825)らがオペラ座を沸かせ、さらに、ベルギー出身のグレトリ(1741-67)が、オペラ・コミックで話題を呼び、同じくベルギー出身のゴセック(1734-1829)が指揮をしたパリの名門オーケストラ、ル・コンセール・スピリチュエルは、コンサートで聴衆を沸かせた。それに対抗する、カリヴ出身の異色のヴァイオリニスト、サン・ジョルジュ(1745-99)がコンサート・マスターを務める新たなオーケストラ、ル・コンセール・ドゥ・ラ・ロージュ・オランピーク。パリにおける空前のハイドン・ブームに乗り、パリ・セットを委嘱。まるで、ハイドンがパリにいたような錯覚を覚えさせるものの、結局、ハイドンは、パリに訪れることなく、1789年、フランス革命を迎えてしまう。そして、フランス革命が、全てを変えた。が、変わって出て来る新たな芽も... 今回は、その芽のひとつに注目したいと思う。それが、ケルビーニ!
ジェレミー・ローレル率いる、ル・セルクル・ドゥ・ラルモニの演奏、ナタリー・マンフリーノ(ソプラノ)のタイトルロールで、ケルビーニのオペラ・コミック『ロドイスカ』(ambroisie/AM 209)... 革命から2年、1791年、当時の空気を巧みに捉え人気を集めたオペラを聴く。

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フランス革命は過ぎ去って... ルイ16世のためのレクイエム。 [2016]

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フランス革命記念日を切っ掛けに、フランス革命を巡る音楽を聴いて来た今月半ば... 革命歌に反革命歌、革命歌をテーマにした協奏交響曲、革命に翻弄されたピアニスト、革命の波に乗った作曲家... 時代が大きく動く時というのは、泣く人、笑う人、様々である。失ったものも多い一方で、失って芽吹く新たな時代でもあって、フランス革命を改めて見つめると、感慨深い。が、フランス革命は、結局、中途半端に終わる。第一共和政は、大き過ぎる犠牲を払いながらも12年で潰えてしまい、帝政が成立。皇帝による派手な拡大主義は、ヨーロッパ中を戦火で包み、やがて火の粉は自らの身に降り掛かり、結局、王政が復古する。そう、革命による激動の後には、戦争の激動があって、さらに揺り戻しという激動もあったフランス。まるでジェット・コースターのような18世紀から19世紀への世紀の転換... そして、そういう時代を、見事、器用に渡ってみせたのが、ケルビーニ...
エルヴェ・ニケ率いる、ル・コンセール・スピリチュエルの歌と演奏で、王政復古の翌年、1816年、ルイ16世の追悼式で歌われたケルビーニのレクイエム(Alpha/Alpha 251)を聴く。そう、革命の波に乗ってブレイクを果たしたケルビーニは、王政復古でさらなる高みへ!

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モニューシュコ、生誕200年、ポーランドの魂を籠めて、幽霊屋敷。 [2012]

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昨日、7月26日は、幽霊の日でした。何でだろ?と、調べてみたら、歌舞伎の『四谷怪談』が初演(1825)された日なんだって... 普段、オペラとかでワイワイしている身からしますと、ちょっとテンションの上がる由来じゃないですか。そうか、劇場に因むのですか、幽霊の日... ということで、一日遅れ、幽霊の日に捧ぐ、本当に怖い幽霊の出て来るオペラ、ベスト3... 第3位、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』!悪いヤツを懲らしめる騎士長の幽霊は、ちょっとお岩さんに通じるものがあるような... 第2位、ブリテンの『ねじの回転』!ウーン、さすがはスピリチュアル大国、イギリスだけに、幽霊の描き方がリアル... そして、第1位、プロコフィエフの『炎の天使』!わけがわからんこその不気味さ、でもって、ラップ現象を楽譜に書き込んだプロコフィエフの本気度たるや!なんて、選んでみたのですが、オペラに幽霊ってあんま出て来ないのですよね。悪魔とか魔女ならわんさか出て来るのに... このヨーロッパにおける幽霊への態度って、ちょっと興味深いなと思う。というあたりは、さて置きまして、今年、生誕200年を迎えるポーランドの作曲家、モニューシュコのオペラ『幽霊屋敷』を聴く。
ヤツェク・カプシスクの指揮、ポーランド国立歌劇場、本場、ポーランドの実力派歌手を揃えての、モニユーシュコのオペラ『幽霊屋敷』(EMI/5 57489 2)。えーっと、それで、ですね、幽霊屋敷なのですが、幽霊、出て来ません。けど、出て来ない分、楽しい!

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ショパンを"Ghosts"として見つめたなら... 前奏曲集。 [2017]

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国民楽派のスターたちを輩出したチェコに、遅れて来た音楽大国、ロシアと、東欧の音楽は、ローカルながら、実に表情豊かで、西欧とは一味違うおもしろさに充ち満ちている!ところで、チェコとロシアのその間、ポーランドは?盛りだくさんの両隣に比べると、何だか凄く視界が悪い。というのは、クラシック界切ってのスター、ショパン(1810-49)の存在があまりに大き過ぎるからか... 前回、聴いた、今年、生誕200年のメモリアルを迎えるモニューシュコ(1819-72)がいて、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、ヴィエニャフスキ(1835-80)がいて、首相にもなったパデレフスキ(1860-1941)に、異才、シマノフスキ(1882-1937)、それから、モダニスト、ルトスワフスキ(1913-94)に、クラスターのペンデレツキ(b.1933)、アンビエントなグレツキ(1933-2010)などなど、丁寧に見て行けば、実に多彩な面々が彩るポーランドの音楽でありまして... かえって、ショパンという大看板は、邪魔?なんて言ったら怒られるか?いや、そもそも、ショパンは、ポーランドの作曲家なのだろうか?改めて、そのルーツ、人生を紐解いてみると、ポーランドとばかりと言えないような気がして来て...
ということで、ポーランド、国民楽派の顔、モニューシュコに続いて、ポーランドの大看板、ショパン。グルジア出身のピアニスト、ニーノ・グヴェタッゼによる、"Ghosts"と銘打たれた異色のショパンの前奏曲集(Challenge Classics/CC 72768)を聴く。

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