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ミニマル・ミュージック、半世紀、一巡りしてのナチュラルなパルス、ライヒ... [2018]

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いやはや、2019年が動き出したと思ったら、あっちでこっちで、あーじゃないこーじゃないとエゴがぶつっております。新しい年は、こういうのを断ち切って、前に進みたい気持ち満々だったのですが、年が改まったぐらいで、問題が片付くなんてことは、無いわけでして、溜息のニュースが続きます。てか、年初から、見事にこんがらがっている、日本に、世界に、もう、笑っちゃいます。いやいや、正月ボケの頭には、このこんがらがりが、正直、しんどい。ということで、こんがらがっていない音楽を聴く。複雑でない音楽。シンプルな音楽。ミニマル・ミュージック。むしろ、新しい年を、ミニマルなところから始めるのは、乙なのかもしれない。ミニマル・ミュージックの、いろいろな面で断捨離された姿に触れると、もう一度、音楽の基点に戻れるようで、何か、清々しい心地にさせてくれる。でもって、改めてミニマル・ミュージックに向き合うと、ポジティヴな気持ちを掘り起こしてくれる!
そんな音楽... 巨匠、ライヒの近作を聴いてみようと思う。インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブルの演奏で、2015年の作品、パルスを、コリン・カリー・グループの演奏で、2013年の作品、クァルテット(NONESUCH/7559793243)を聴く。

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没後250年、ポルポラ、飛躍のローマ、『ジェルマニアのジェルマニコ』! [2018]

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2018年は、ポルポラ・イヤー!そう、かのヘンデルを追い詰めたポルポラの没後250年... てか、ポルポラというと、やっぱりヘンデルのライヴァルというイメージ。モーツァルトに対するサリエリみたいな... 主役の引き立て役的な... けど、実際に両者がライヴァル関係にあったのは、ポルポラがヘンデルのいるロンドンにやって来た1733年から1736年までのわずか3年間。ポルポラの82年にも及ぶ長い人生からすれば、ほんの一瞬なのかもしれない。バッハ(1685-1750)が生まれた翌年、1686年、ナポリで生まれ、モーツァルト(1756-91)が最初のイタリア旅行に出る前年、1768年にナポリで世を去ったポルポラ。その間、イタリア各地を行き来し、ロンドンはもちろん、ウィーン、ドレスデンでも仕事をした旺盛な人生を振り返ると、一所に留まれない性格が見て取れるのかもしれない。裏を返せば、流浪の人生... しかし、その流浪があって、ナポリ楽派のオペラをヨーロッパ中に紹介することになるわけで... いや、音楽史にとって、ポルポラの流浪こそ、新たな時代を切り拓く鍵... 改めてバロックから古典主義へのうつろいを考える時、ポルポラの流浪は、大きな意味を持つように思う。
さて、前回は、ヴェネツィアでのポルポラ、オスペダーレ=孤児院付属音楽学校のために書かれた作品を聴いたのだけれど、ポルポラと言えば、やっぱりオペラ!ヤン・トマシュ・アダムス率いるカペラ・クラコヴィエンシスの演奏、マックス・エマヌエル・ツェンチッチ(カウンターテナー)のタイトルロールで、ポルポラのオペラ『ジェルマニアのジェルマニコ』(DECCA/4831523)を聴く。

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グノー、ピアノ作品集。 [2018]

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近頃、あまりに陽が短く感じられて、びっくりしている。もちろん、冬至が近付けば、そういうものだろうけれど、いつもの年より余計に短く感じられるようで、不思議(もうすぐ、ひとつの時代としての平成が終わることを象徴しているのかな?なんて、漠然と解釈してみる... )。一方で、秋の夜長とは、まさに!その夜長を活かし、『パリ左岸のピアノ工房』という本を読み始めた。まだ、この先、どうなるかは、わからないけれど、ピアノの中身を描く物語(ピアノの修理工房の話し... )って、なぜか、穏やかな空気感に包まれていて、読んでいると、やさしい気持ちになれる(若き調律師の成長を描く『羊と鋼の森』にも通じるなと... )。ピアノという楽器は、極めて華麗なイメージに包まれ、クラシックの屋台骨を支えるマシーンとしての威容も誇るわけだけれど、その中身を覗けば、実に繊細な世界が広がっている。その繊細さに纏わる物語は、当然、穏やかなものに落ち着いて行くのかなと... いや、ひとつの楽器が、内と外で、こうも印象が変わるのが、おもしろい。いや、そのギャップこそが、より深い響きを生み出し、希有な存在感を与えるのだろうな... とか、思いを巡らす秋の夜長、ピアノを聴いてみたくなる。
そこで、パリ左岸生まれ、生誕200年のグノーのピアノ作品を聴く。ロベルト・プロセッダの弾く、グノーのピアノ作品集(DECCA/4816956)... いやー、今月は、第1次大戦だ、第2次大戦だ、ファシストだ、亡命だ、アンチ戦後「前衛」だ、検閲だと、ちょっとヘヴィーに音楽と向き合って来たものだから、無邪気にすら思えて来る19世紀の美しいピアノ響きが、やたら沁みる。

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第1次世界大戦下、兵士の姿を見つめる音楽、兵士の物語、タラス・ブーリバ... [2018]

今年は、第1次世界大戦の終戦から100年... ということで、第1次大戦中の音楽に注目しております。とはいえ、戦時下、音楽どころではなかったのも事実。終戦の年、プッチーニが三部作を初演しようとした時、歌手たちはみな戦場に駆り出されており、ヨーロッパでの初演を見送っているほど... そう、多くの音楽家たちが、戦闘に立たされたのが第1次大戦。ヴォーン・ウィリアムズは、義勇兵としてイギリス軍の砲兵隊に加わり、ラヴェルはフランス軍で輸送兵として働き、イベールは海軍士官を務めていた。さらに、オネゲルはスイス軍(スイスは中立国だったが... )に従軍し、国境警備にあたり、ヒンデミットはドイツ軍の軍楽隊に、シェーンベルクとベルクはオーストリア軍に召集され、それぞれ、故国のために戦っている。いや、まさに、敵味方に分かれて戦っていたわけだ... 音楽性を巡って対立することはあっても、実際に銃口を突き合わせていたとは、かなり衝撃的。もちろん、それが戦争の現実ではあるのだけれど、第1次大戦は、20世紀音楽を彩る作曲家たちを兵士にしていた。
ということで、第1次大戦下に書かれた兵士たちの物語... ジャン・クリストフ・ガイヨーの指揮、オリヴィエ・シャルリ(ヴァイオリン)ら、フランスの音楽家によるアンサンブルで、ストラヴィンスキーの『兵士の物語』(harmonia mundi/HMM 902354)。ジョナサン・ノットが率いた、バンベルク交響楽団の演奏で、ヤナーチェクの『タラス・ブーリバ』(TUDOR/TUDOR 7135)を聴く。

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ボエティウス、慰めの歌。 [2018]

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秋バテ?とか言ってたら、風邪だった... みたいな展開になっております。みなさんは、体調など、崩されてはおりませんか?ということで、10月は、「癒し系」で、癒される!前回は、ジョン・ルーサー・アダムス、アラスカの"ルーサー"の、スケールの大きな音楽で癒されましたが、さらに、さらにスケールは大きくなりまして、既存の音楽の枠組みを超越し、この世の全てに音楽を見出す... ムジカ・ムンダーナ(宇宙、世界を調律する音楽)、ムジカ・フマーナ(人間の身体を調律する音楽)、ムジカ・インストゥルメンターリス(声、楽器による、人の耳に聴こえる音楽)という壮大なる音楽像を語った、古代と中世をつなぐ哲学者、ボエティウス(480-525)に注目。しかし、古代、中世の人々は、宇宙にも、世界にも、人体にも、音楽を見出していたわけです。いや、あまりにも壮大過ぎて、ちょっとついて行けないのだけれど、裏を返せば、人々は、宇宙や世界、人体に対して、音楽を意識する感覚を失ってしまったと言えるのかも... いや、考えさせられてしまう。音楽が、ただ耳に聴こえるだけのものとなった現在、世界は不協和音に充ち満ちていて、音楽の捉え方を、今一度、見つめ直す時が来ているのかも...
さて、ボエティウスなのだけれど、哲学者であって、音楽は残していない... ので、ここで聴くのは、そのボエティウスの哲学書、『哲学の慰め』をテキストに、11世紀、イギリス、カンタベリーで音楽が付けられ、歌われたとされる手稿譜を再構成、再現するもの。で、セクエンツィアの歌と演奏による、中世、"ボエティウスの慰めの歌"(GLOSSA/GCD 922518)で、癒される。

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クリスティーナ、王様、辞めるってよ。そして、ローマ... [2018]

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8月は、音楽で避暑... 北欧の音楽を聴くということで、まずデンマークに注目したのだけれど、次はスウェーデン!ということで、前回、デンマーク王、クリスチャン4世(在位 : 1588-1648)を取り上げたので、スウェーデン女王、クリスティーナ(在位 : 1632-54)を取り上げてみようかなと... ちなみに、この2人、縁戚関係。クリスティーナの母の叔母が、クリスチャン4世の王妃。でもって、クリスティーナの父、グスタフ2世アドルフ(在位 : 1611-32)は、クリスチャン4世とともに、ドイツをどん底に突き落とした三十年戦争(1618-48)を、新教側のリーダーとして戦ってる。しかし、グスタフ2世アドルフの陣没により、デンマークとスウェーデンの関係はぎくしゃくし始め、三十年戦争末期、とうとう戦闘状態に... 父の突然の死により、6歳で王位を継承したクリスティーナは、未だ10代。老獪なクリスチャン4世を相手に、試練の時を迎えた。が、父が鍛えたスウェーデン軍は強かった!スウェーデンはデンマークを打ち負かし、北欧にパラダイム・シフトを引き起こす。ルネサンス君主、クリスチャン4世から、やがてバロックを体現する人生を歩むクリスティーナへ... それは、北欧の盟主の座が動いただけでなく、ルネサンスからバロックへと、時代のうつろいを象徴するターニング・ポイントでもあった。
そして、バロックの女王、クリスティーナの、バロックを体現する劇的な人生が始まる。1654年、27歳の時、自ら玉座を降り、聖都、ローマへ!という、ローマでのクリスティーナの音楽生活を見つめるアルバム... マーラ・ガラッシのハープによる"PORTRAIT OF A LADY WITH HARP Music for Queen Christina of Sweden"(GLOSSA/GCD 921304)を聴く。

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グノー、ローマ賞のためのカンタータとローマ留学で生まれた教会音楽。 [2018]

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シャルル・フランソワ・グノー(1818-93)。
今から200年前、1818年、画家の父とピアニストの母の下、パリで生まれたグノー。芸術的に恵まれた環境で育ったグノーは、母から最初の音楽教育を受け、やがてコンセルヴァトワールの教授だったレイハ(ベートーヴェンと同い年で、ベートーヴェンのボン時代の同僚!)に師事し、才能を伸ばすと、1836年、コンセルヴァトワールに入学。アレヴィ(グランド・オペラの作曲家として活躍し、コンセルヴァトワールの教授を務めた、19世紀前半のフランス楽壇の中心的人物... )らの下で学び、1837年、ローマ賞に挑み、2等となる。さらに翌年もローマ賞に挑むのだったが、受賞には至らず、1838年、3度目の挑戦で、とうとうローマ賞を獲得!翌年、ローマ留学に出発。かの地で歌い継がれるパレストリーナ以来のローマ楽派の聖歌に触れ、大いに刺激を受ける。グランド・オペラ、ロマンティック・バレエの人気が高まる中で、若きグノーは、そうした華やかさからは背を向け、独自の道を歩み出す。いや、『ファウスト』(1859)からすると、意外...
ということで、グノーの生誕200年のメモリアル、少しマニアックに、グノーのローマ賞とローマ留学を見つめる。エルヴェ・ニケによる極めて意欲的なシリーズ、ローマ賞のために書かれた作品にスポットを当てる"Collection Prix de Rome"からVol.6(EDICIONES SINGULARES/ES 1030)。若きグノーによる課題のためのカンタータと教会音楽を聴く。

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グノー、弦楽四重奏曲。 [2018]

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えーっと、ドビュッシーの没後100年のインパクトが大きい2018年でありますが、この人のことを忘れるわけには行きません。生誕200年のメモリアルを迎える、グノー(1818-93)。明日、6月18日が、その誕生日... おめでとう、シャルル!あなたは、『ファウスト』の作曲家として、今も有名ですよ。てか、『ファウスト』以外について、よく知らない... ドビュッシーが活躍する前の時代、フランス楽壇の中心を占める、極めて重要な存在だったはずなのだけれど、そのあたりが、どうも見え難いのはなぜだ?クラシックは、良かれ悪しかれ、19世紀、ドイツ―オーストリアに引っ張られ過ぎる帰来がある。だから、その時代のフランスなどは軽く見られがち... もちろん、グランド・オペラに、ロマンティック・バレエに、アカデミックな立場からすれば、軽く見られてしまう軽佻さもあるのだけれど、19世紀って、そもそも、そういう世紀... 今、改めて音楽史を振り返って見れば、フランスこそ19世紀のリアル!で、その中心にいたグノーの存在が気になる。『ファウスト』でないグノーを聴いてみたい。
ということで、見つけた!ナクソス・ミュージック・ライブラリーで... フランスを中心に活躍するピリオドの名手たちが結集したカンビーニ・パリ四重奏団の演奏で、グノーの弦楽四重奏曲(APARTE/AP 177)。えっ?!グノーって、弦楽四重奏曲なんて書いていたの!それも、収録されているのは5曲!と、目から鱗の2枚組。ちなみに、これ、日本でもリリースされるのだろうか?

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ドビュッシーのピアノ作品をエラールのピアノで聴く。 [2018]

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今年、ドビュッシーは、没後100年のメモリアルを迎えたわけだけれど、この100年というのが、ちょっともどかしく感じられる。それは遠いようで、近いような、どちらにも取れる微妙な距離感で... そういう微妙な位置にある作曲家を、ピリオド・アプローチで捉える。少し前なら、衝撃を受けたものの、今となっては、ドビュッシー後の時代を彩った作曲家たち、プーランクやガーシュウィンもピリオドの範疇。モダン楽器と古楽器、というような、対立する解り易い構図は存在しない。楽器にしろ、奏法にしろ、常にうつろっていたのが音楽史の真実であって、そのうつろいに繊細に寄り添うことで、ひとつのピリオド=時代が息を吹き返し、音楽はより息衝いて響き出すような気がする。それは、モダンにも言えることで... モダンの先にコンテンポラリーが存在する今、モダニズムにはヴィンテージな感覚が漂い、ある種の懐かしさとともに、新たな魅力を纏いつつあるのかも...
ということで、ピリオドによるドビュッシーがまだ衝撃的だった前世紀末にリリースされた、スタニー・デイヴィッド・ラスリーの、ヴィンテージのエラールのピアノで弾く2つのアルバム、『ピアノのために』、『版画』、『映像』、『こどもの領分』を集めた1枚と、2つの『前奏曲集』を収めた1枚を、没後100年のメモリアルに合わせ再リリースされた2枚組(ARCANA/A 445)で聴く。

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