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流浪の選帝侯のヴァイオリニスト、ダッラーバコのインターナショナル。 [before 2005]

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普段、当たり前のように「コンチェルト」という言葉を使っているけれど、コンチェルトの始まりに遡ると、その姿、今とはまったく異なるものでして、びっくりする。というコンチェルトが生まれたのは、教会... つまり、教会音楽だったコンチェルト!器楽の伴奏を伴って、聖歌隊が歌っておりました。で、この器楽による"伴奏"という概念の形成が「コンチェルト」の端緒となる。それは、バロックの曙が遠くに見え始めた頃、16世紀後半... ルネサンス・ポリフォニーでも楽器は用いられていたが、声部の一部を声に代わって奏でるもの。歌と演奏は並列(ぶっちゃけ、器楽による穴埋め的なイメージ?)。そこに、前面に立つ側と、伴奏に回る側という役割を持たせたのがコンチェルト。やがて、声楽と器楽という組合せばかりでなく、器楽と器楽という組合せも登場し、我々が知る「コンチェルト」への第一歩が記される... という歌われないコンチェルトも教会で盛んに演奏され、17世紀、教会ソナタのように、教会コンチェルトとして、発展を遂げて行く(って、もんの凄く掻い摘んでお伝えしております!)。
そうして、18世紀に入り、我々が知る「コンチェルト」誕生前夜の教会コンチェルトに注目!ヴェルナー・エールハルトが率いていた頃の切っ先鋭いコンチェルト・ケルンによる、教会コンチェルトを含むダッラーバコの協奏曲集(TELDEC/3984-22166-2)を聴く。

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クララの愛と生涯、そして、作曲... [before 2005]

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3月です。ふと気付くと、そこはかとなしに春めいている。何だかほっとします。さて、明日、3月3日は雛祭り... ということで、女性作曲家に注目!って、あんまりにも安易なのだけれど、いや、改めてクラシックにおける女性作曲家という存在を見つめれば、これくらいベタな時に、意識的に取り上げないといけないような気がして... というのも、当blogがこれまで取り上げた女性作曲家、何人いただろう?と、振り返ってみたら、衝撃を受けた... カッシアヒルデガルト・フォン・ビンゲンジャケ・ド・ラ・ゲールエイミー・ビーチリリ・ブーランジェ... 現代音楽を含めれば、また状況は変わってくるものの、クラシックとしては、圧倒的に男の世界なのだなと、改めて思い知らされる。で、今回、取り上げようと思うのが、今年、生誕200年を迎える、クララ・シューマン。シューマンの妻として、ピアニストとして知られるクララだけれど、作曲家としても、実は、確かな腕を持っていた!
そんな、クララの音楽... シューマンを得意とするベルギーのピアニスト、ヨーゼフ・デ・ベーンホーヴァーの演奏で、クララ・シューマンのピアノ作品全集、3枚組(cpo/999 758-2)を聴く。いや、「シューマンの妻」というイメージ、吹き飛ぶ充実っぷりに、びっくり...

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生誕150年、プフィッツナー、近代音楽に包囲されて、コンチェルト... [before 2005]

1920年代のベルリン... 今、振り返ってみると、何だかファンタジーに思えて来る。第一次世界大戦の敗戦(1918)によって、ドイツは、政治も経済もズタボロ(びっくりするようなインフレ!)、かつ迷走(の先に、ナチスの政権掌握... )しまくりな状態ながら、驚くほど自由な文化が花開き、それをまた人々が享受し、ますます刺激的な表現が生まれるという、ヴァイマル文化!バウハウスの建築家やデザイナーたちが生み出す、フューチャリスティックな風景。新即物主義の画家たちが描く、エグい画面。人を喰ったような『三文オペラ』(1928)。ディストピアを描く映画『メトロポリス』(1827)。表現主義のダークさ、ダダイズムのイっちゃった観、ジャズが一世を風靡し、キャバレーが活況を呈し、それ以前には考えられないほどエキセントリックで、キッチュで、享楽的で... 裏を返せば、ズタボロのリアルから逃避するようで、また旧来の価値観がズタボロになったからこそ、人々は解き放たれ、輝いた1920年代のベルリンなのだろう。しかし、けして人々は楽観視していない... どんなに享楽的であっても、常に闇を孕むヴァイマル文化。その後を襲うナチズムの恐怖は、その闇に予告されていたのかも... ということで、そんなベルリンにて、飄々とロマン主義を響かせていた生誕150年、プフィッツナーに注目!
フォルカー・バンフィールドのピアノ、ヴェルナー・アンドレアス・アルベルトの指揮、ミュンヒェン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、プフィッツナーのピアノ協奏曲(cpo/999 045-2)と、サシュコ・ガヴリーロフのヴァイオリン、ヴェルナー・アンドレアス・アルベルトの指揮、バンベルク交響楽団の演奏で、プフィッツナーのヴァイオリン協奏曲(cpo/999 079-2)を聴く。

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生誕200年、オッフェンバック、見果てぬ夢、ホフマンの物語... [before 2005]

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えーっ、生誕200年のオッフェンバックに注目しております。で、この人の歩みを追っておりますと、時代の空気がガラりと変わる瞬間に出くわします。というのが、フランスがあっさりと敗北する普仏戦争(1870-71)、それによって引き起こされる不毛なパリ・コミューンの内乱(1871)。戦争前のダメ皇帝を頂点とした見てくればかりの金ピカな時代は薄っぺらだったけれど、人々は状況を笑い飛ばし、粋で、何かピリっとしたものを持っていた!オッフェンバックのオペラ・ブッフは、まさにそうした時代の象徴だったと思う。が、戦争と内乱を目の当たりにした人々は、妙に真面目になり、やたら保守的になり、勢い国粋的にもなり、何だかつまらなくなってしまう。そうした中で、どう新たなオペラを紡ぎ出せばいいのか苦悩するオッフェンバック... オペラ・コミックを書いてみたり、ゲテ座の経営に乗り出したり、アメリカ・ツアーに出掛けたりと、悪戦苦闘の1870年代。1860年代の輝きを取り戻すには至らない中、最後に行き着いたのが、オッフェンバックの代表作にして遺作、『ホフマン物語』。
ということで、人生の酸いも甘いも知っての集大成... ケント・ナガノが率いたリヨン国立歌劇場、ナタリー・デセイ(ソプラノ)、スミ・ジョー(ソプラノ)、ジョゼ・ヴァン・ダム(バリトン)ら、実力派が居並んでの、タイトルロールにロベルト・アラーニャ(テノール)という豪華盤、オッフェンバックのオペラ・ファンタスティーク『ホフマン物語』(ERATO/0630-14330-2)を聴く。

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生誕200年、オッフェンバックは、"シャンゼリゼのモーツァルト"! [before 2005]

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運動会でお馴染みの『天国と地獄』に、よく映画などから聴こえて来る「ホフマンの舟歌」... クラシックという枠組みを越えて、誰もが知るメロディーを生み出したオッフェンバック。こういう、キャッチーなところ、気難しいクラシックに在って、突き抜けているのだけれど、作曲家、オッフェンバックとしての全体像は、あまり知られていないように思う。例えば、前回、注目した、国際的なチェロのヴィルトゥオーゾとしての一面とか... そもそも、オッフェンバックがどういうオペラを書いていたかも、丁寧に紹介されることは少ないのかもしれない。いや、漠然とオペレッタの作曲家として認識されるオッフェンバック... しかし、我々がイメージするオペレッタ(ヨハン・シュトラウス2世らによるウィンナー・オペレッタ... )と、オッフェンバックがオペラ作家への道の突破口としたオペレッタでは、随分と様子が違う。このあたり、生誕200年のメモリアルを迎えた今年、クローズアップされたらなァ。と、淡い期待を抱きつつ、オペラ作家、オッフェンバックのヴァラエティに富むその仕事ぶりを、今一度、見つめてみる。
ということで、マルク・ミンコフスキ率いるレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの演奏、アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メッゾ・ソプラノ)が歌う、オッフェンバックのアリア集(Deutsche Grammophon/471 501-2)。実に興味深く、最高に楽しいライヴ盤を聴く!

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生誕200年、グヴィ、母の死、戦争、そして、レクイエム... [before 2005]

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1871年、普仏戦争の敗北は、フランスを大いに揺さぶった。皇帝が捕虜になるという屈辱に始まり、第二帝政は崩壊、パリはプロイセン軍に包囲され、プロイセン国王がヴェルサイユ宮でドイツ皇帝に即位するというおまけ付き... フランクフル講和条約では、アルザス=ロレーヌ地方のドイツへの割譲が決定。それに反発した左派勢力が、パリ・コミューンを組織し、徹底抗戦の構えを見せると、ドイツ相手ではなく新政府との内戦に発展。第二帝政の上っ面ばかりの威光は吹き飛び、現実に向き合う時がやって来たフランス... パリ・コミューンの混乱が収束すると、それまで国内に充ちていたおざなりな気分は一変し、ナショナリズムが高まる。そして、影響は楽壇にも及び、国民音楽協会が創設(副会長にサン・サーンス!)されると、「アルス・ガリカ(フランス的芸術)」を目標に、それまでドイツに大きく立ち遅れていた部分、オペラ、バレエ以外の部分に取り組もうという動きが起こる。まさに、印象主義や、それに続く近代音楽が、ここで準備され、育まれることに... 普仏戦争の敗北は、フランス音楽史にとって、重要なターニング・ポイントとなったわけだ。そうした中で、いち早く交響曲に取り組んでいたグヴィは、どうしたか?やっと時代が追い付いたと意気揚々としていたか?いや、深く打ちのめされていた...
生誕200年、グヴィに注目しております、今月。交響曲(1-3, 5番と、4, 6番)に続いて、グヴィ再発見の切っ掛けを作ったアルバムを聴いてみることに... ジャック・オートマンの指揮、ロレーヌ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、スコラ・カントルム・ウィーン(コーラス)らの歌で、普仏戦争から間もない1874年に完成した、グヴィのレクイエム(K617/K617 046)を聴く。

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人類の音楽の記憶を探る"EARLY MUSIC"、クロノス・クァルテット... [before 2005]

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にわかに、ミニマル・ミュージックについて見つめてみて、考えさせられる、1月。前回、ほぼ半世紀前、日本に到達したミニマリズムの波に乗って、がむしゃらにピアノを掻き鳴らした佐藤聰明に圧倒され... 前々回、ミニマル・ミュージックが出現して半世紀を経たライヒの近作の、その洗練された響きに、新たな次元へと上昇した"ミニマル"を意識し... そうした音楽を体験して、それらの前に取り上げたの響きを振り返れば、そこにもまた"ミニマル"を見出せるのかも... いや、ミニマル・ミュージックの、「ミニマル」という言葉の意味に囚われない可能性というか、広がり、深さに、今さらながらに感じ入ってしまう。感じ入って、ふと思う。ミニマル・ミュージックの"ミニマル"には、より根源的なものを感じるのかなと... 単に、西洋音楽史の断捨離の結果ではなくて、ジャンル、さらには文明の垣根をも越えて、音楽における根源的な感覚が、そこに籠められている気がする。で、その根源的な感覚を、さらに探るために、時代を遡ってみる。音楽が"ミニマル"でしかなかった、古い時代へ...
現代音楽のスペシャリスト集団、クロノス・クァルテットが、大胆に時代を遡り、古楽と向き合い、さらに古楽の影響を受けた現代作品、期せずして古楽に共鳴する様々な音楽を並べた意欲作、"EARLY MUSIC"(NONESUCH/7559-79457-2)を聴く。

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"deep silence"、笙とアコーディオンによる、響きの極北... [before 2005]

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明けまして、おめでたいということで、生誕200年のスッペだ、オッフェンバックだと、景気の良い、お祭り騒ぎのような音楽を聴いて来たお正月。も、明けましたので、ここで少し襟元を正すような、スキっとした音楽を聴いてみようかなと... で、和楽器、笙による音楽!いや、お正月というと、笙。初詣で漏れ聴こえて来る響きが、そのイメージを形作っているように思う。のだけれど、笙という楽器を面と向かって聴くようなことは、ほとんどない。だから、いざ聴いてみると、びっくりする。まず、神社から聴こえて来る印象と大分違う!そのあまりに澄んだ響きに、何の楽器を聴いているのかわからなくなってしまう。それは、東洋でもなく、西洋でもなく... 下手をすると、人工的に作られた音?なんて思いかねないほどにニュートラル。突き抜けている... 何なんだ、この楽器は... いや、楽器というより、サウンド・マシーン?見つめれば、見つめるほど、不思議な存在なのです。
ということで、現代邦楽を代表するマエストラにして、現代音楽界のミューズ、宮田まゆみによる笙と、鬼才、シュテフン・フッソングのアコーディオンという異色の組み合わせで、細川俊夫と雅楽からの作品集、"deep silence"(WERGO/WER 6801-2)を聴く。

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生誕200年、オッフェンバック、冥府下りもお祭り騒ぎ! [before 2005]

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正月七日、あっという間でした。が、まだ松の内!最後にお祭り騒ぎの音楽を聴いて、2019年、本番、盛り上げて行くよ!で、生誕200年のメモリアル、オッフェンバック、『天国と地獄』!さて、運動会でお馴染みの『天国と地獄』ではありますが、なぜに『天国と地獄』という邦題になってしまったのだろうか?原題は"Orphée aux Enfers"、地獄のオルフェである。オペラの定番、オルフェウスの冥府下りをストーリーとすれば、天国なんて出てきやしないことは、明白なのだけれど... それでも、『天国と地獄』になったのは、その方が納まりが良いからなのだろうなァ。ま、その程度のストーリーだと認識されたのだろうなァ。しかし、見事に風刺を効かせ、グルックの傑作、『オルフェオとエウリディーチェ』を巧いことパロって、実に手の込んだストーリーを展開する『地獄のオルフェ』であって、それこそが醍醐味で、お約束のフレンチ・カンカンばかりじゃないのだけれどなァ... というあたり、スルーされてしまうのが、もどかしい。いや、オッフェンバックという存在自体が、クラシックにおいて、あまりに安易に扱われているようで、残念無念。なればこその、生誕200年のメモリアルであります!
ということで、ナタリー・デセイ(ソプラノ)のウリディス、ヤン・ブロン(テノール)のオルフェ、マルク・ミンコフスキの指揮、リヨン国立歌劇場による、オッフェンバックの代表作、『天国と地獄』!じゃなくて、オペラ・ブッフ『地獄のオルフェ』(EMI/5 56725 2)を聴く。

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ロッシーニのパリ時代、『ランスへの旅』から『オリー伯爵』へ... [before 2005]

あちこちにクリスマスの飾り付け、そしてイルミネーションと、俄然、キラキラとしている年の瀬の街並み... 単細胞なのか、師走の忙しなさがあってなのか、妙にテンション上がり目な今日この頃... でもって、そんな街並みを縫いながら、正月支度の買い物に追われた先日、振り返ってみると、凄い状況だなと... クリスマスと、正月が、錯綜!このスラップスティックに笑ってしまった。まるで、ロッシーニのオペラ・ブッファの1幕の幕切れみたいな感じ、まさに、山場!てか、耳を澄ますと、どこからともなく、ロッシーニ・クレッシェンドが聴こえて来そうな... いや、普段の倍、それも倍速で動き回らねばならないこの年末も、ロッシーニのブッファかと思えば、何だか楽しくなって来る?なんて戯言はさて置きまして、ロッシーニ・イヤーも、残すところあと2週間。年初に、器楽作品、宗教作品、機会音楽と、大胆にもと言うか、メモリアルならではの、いつもと違う視点からロッシーニに注目したのですが、やっぱり、オペラを聴かねば!ということで、ロッシーニのイタリア時代、最後のオペラを聴いた前回... に続いて、今度は、イタリアを後にして、パリに拠点を移してからのオペラに注目してみようかなと...
クラウディオ・アバドが率いたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、豪華歌手陣が結集しての『ランスへの旅』(SONY CLASSICAL/S2K 53 336)と、その改編作、ヘスス・ロペス・コボスの指揮、ボローニャ市歌劇場管弦楽団の演奏、ファン・ディエゴ・フローレス(テノール)のタイトロールで、『オリー伯爵』(Deutsche Grammophon/477 5020)を聴く。

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