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中世、アキテーヌ、文化的先進地域が育む「南」のポリフォニー... [before 2005]

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中世ヨーロッパにおける巡礼熱は半端無い!LCCも、TGVも無い時代、極普通な人たちが、国境などものともせず、点在する聖地を目指した史実。そうした中で、最も巡礼たちを集めたのが、十二使徒、聖ヤコブが眠る、スペインの北西端、ガリシア地方、サンティアゴ・デ・コンポステーラ。ピレネー山脈を越え、イスラム勢力の支配が残るイベリア半島を進み、ヨーロッパの西の果てを目指すことは、そう容易いことではなかったはず... だったが、あまりに多くの巡礼が行き交ったことで、いつの間にやらインフラは整い、サンティアゴ・デ・コンポステーラを終着点とする、整備された巡礼路が、ヨーロッパ中に伸びて行く。そして、ヨーロッパを東西に結んだ巡礼路は、やがて文化をも運び... 前回、聴いた、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂に伝わるカリクスティヌス写本に収録されていた初期の多声音楽も、巡礼たちによってサンティアゴ・デ・コンポステーラにもたらされたと考えられている。で、その初期の多声音楽はどこからやって来たのか?ヨーロッパ各地から巡礼路が集まって来る、フランス南西部、アキテーヌ地方... ということで、初期の多声音楽、"アキテーヌのポリフォニー"に注目!
マルセル・ペレス率いるアンサンブル・オルガヌムの歌で、巡礼路沿いの街、リモージュにあったサン・マルシャル修道院に納められていた写本から、クリスマスの朝課を再現するアルバム、"POLYPHONIE AQUITAINE DU XIIe SIÈCLE"(harmonia mundi FRANCE/HMC 901134)。ノートルダム楽派を準備した、12世紀の"アキテーヌのポリフォニー"を聴く。

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中世、サンティアゴ・デ・コンポステーラ、巡礼が運んだ音楽... [before 2005]

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今、改めて、ヨーロッパにおける中世を振り返ってみると、ちょっとただならない。いや、ただならないというより、「中世」という言葉ばかりが先行して、その中身について、実は、あまりよく知らない?"暗黒の中世"なんて言い方が、それを象徴しているのかも... 何たって、暗黒の一言で説明できるほど、中世は短くない。古代から中世へ、四世紀をも掛ける長い移行期間があって、9世紀、カロリング朝による西ヨーロッパの統一と、それによる政治的安定に裏打ちされたカロリング・ルネサンス(グレゴリオ聖歌が整備される!)が大きく花開いて... が、その矢先、分割相続により、西ヨーロッパには現在に至る国境線が出現。線が引かれたことで、こちら側とあちら側で相争うようになり、王統が断絶すると、王位を巡って、線の内側でも激しく争う事態に... 一方、北からはヴァイキングの侵入、東からはイスラム勢力の圧迫を受け、暗澹たる西ヨーロッパ。だったが、11世紀、農業革命により生産性が向上すると、地中海を渡って十字軍を繰り出せるほどの余力を生み、これが聖地巡礼のブームを巻き起こし、東西の交流が中世に新たな輝きをもたらした。当然、音楽も、そうした波に乗った!
ということで、巡礼たちが紡ぎ出した音楽に注目... マルセル・ペレス率いる、アンサンブル・オルガヌムの歌で、十二使徒、聖ヤコブの墓のある、聖地、サンティアゴ・デ・コンポステーラに伝えられるカリクスティヌス写本から、12世紀、聖ヤコブのための晩禱を再現するアルバム、"COMPOSTELA"(ambroisie/AMB 9966)を聴く。いや、巡礼たちの音楽がただならない...

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グレゴリオ聖歌に追いやられる朗らかさ、ベネヴェント聖歌... [before 2005]

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音楽史の始まりを、グレゴリオ聖歌とすると、めちゃくちゃ気持ち良くスタートが切れる。一方で、グレゴリオ聖歌以前以後の様子を丁寧に見つめると、一筋縄には行かない状況が浮かび上がって来る。当然、グレゴリオ聖歌以前に音楽が無かったわけではないし... というより、各地に、様々な個性を持った音楽が存在していたわけで、グレゴリオ聖歌を安易に"始まり"としてしまうことの方が、随分と乱暴な話しだったりする。何より、9世紀、カロリング朝によって整備されたグレゴリオ聖歌が、すぐさまヨーロッパの教会音楽をリセットできたわけでもなく、前々回、取り上げた、アンブロジオ聖歌モサラベ聖歌古ローマ聖歌など、古代の伝統を受け継ぐ聖歌は、グレゴリオ聖歌以後も歌われ続けていた史実。そのあたりに再び注目しつつ、やがて古代以来の伝統が、グレゴリオ聖歌をベースとした教会音楽に呑み込まれて行く、中世の成長の過程を追ってみようと思う。
ということで、カタリーナ・リヴリャニック率いる、古楽ヴォーカル・アンサンブル、ディアロゴスの歌で、グレゴリオ聖歌以後のイタリア半島、ベネヴェント聖歌を軸に、多文化な状況を捉える実に興味深い1枚、"LOMBARDS & BARBARES"(ARCANA/A 319)を聴く。

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グレゴリオ聖歌以前、古代を伝える聖歌の諸相... [before 2005]

さて、新しい時代を迎えて、何か特別なこと(って、大したことはできません... )をしてみたいなと、漠然と思い至りまして... 音楽史の始まりへと還ってみる?新しい時代から、古い時代を見つめる。って、実は、当blog、古楽を取り上げることが、最近、めっきり少ないことに気付き、びっくり(古楽、大好きなはずなのに... やっぱり、クラシックの核たる19世紀の音楽の比重の重さに引っ張られてしまうのか?さらに、近代だ、現代だ、バロックだ、古典主義だと、あっちこっち目移ろいしていると、どうも古楽を忘れがち... )。ならば、このあたりで、ガッツリ古楽!で、西洋音楽の種とも言えるグレゴリオ聖歌に立ち返り、そこから、音楽が、どう芽吹き、育ったかを、追ってみようかなと... でもって、まずは、その種が、どこからやって来たかに注目してみる。いや、これが実に興味深い!揺ぎ無く、種としての存在感を見せるグレゴリオ聖歌だけれど、それ以前にも聖歌は存在していて、それはまた、今に至る西洋が確立される前、古代の地中海文化圏に広がっていた初期キリスト教会の姿を垣間見せる、プリミティヴな聖歌でもあって、グレゴリオ聖歌に集約される前の、大地に根差した力強い祈りが響き出す。
という、古い聖歌を、マルセル・ペレス率いるアンサンブル・オルガヌムの歌で... ミラノに伝わるアンブロジオ聖歌(harmonia mundi FRANCE/HMC 901295)、イベリア半島で歌い継がれていたモサラベ聖歌(harmonia mundi FRANCE/HMC 901519)、聖都、ローマに伝わる、古ローマ聖歌(harmonia mundi FRANCE/HMC 901604)の3つを聴く。

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新しい時代に願いを籠めて、世界の調和。 [before 2005]

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新しい時代、令和を音楽で寿ぐ!山田耕筰のおめでたい交響曲に続きまして、令和の「和」の字に通じる、ヒンデミットの交響曲「世界の調和」を聴いてみようと思う。いや、日本は、ゴールデン・ウィーク中、時間が止まり、まるで夢の中にいるような不思議な心地に包まれていたわけだけれど、一転、世界に目を向ければ、あっちでも、こっちでも、不穏な空気が渦巻いていて... 少し前(そう、オバマ大統領がまだホワイトハウスにいた頃... )までは、それと無しに、ハーモニーがあったように思うのだけれど、今や、酷いポリフォニー... 面子にばかりこだわるみっともない権力者たちの行状が荒目立ちし、不満を抱えた人々は、ただ不満をブチまけるだけの不毛が世界中に横溢している現状。まるで世界中が駄々っ子になってしまったかのような、21世紀。ビューティフル・ハーモニーは、あまりに遠い... もちろん、全てが同じハーモニーを奏でられるなんてことはあり得ないし、ハーモニーも強制されれば、全体主義になってしまうけれど、あらゆる問題に着実に向き合うために、世界があと少し隣で奏でられるメロディーに耳を傾けることができたならば、世界はもっと楽に過ごせる気がするのだよね...
ということで、世界に調和がもたらされますように!今一度、「令和」の言葉に願いを籠めて、ヘルベルト・ブロムシュテットが率いた、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏で、ヒンデミットの交響曲「世界の調和」(DECCA/458 899-2)を聴く。

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新しい時代を音楽で寿ぐ!山田耕筰のめでたい交響曲。 [before 2005]

感傷と、歓喜と、清新に彩られた、特筆すべきゴールデン・ウィークが終わりました。連休も終われば、現実に向かわねばならぬところではありますが、当blogは、まだもう少し、お祝いモード... 新しい時代、令和を音楽で寿ぐ!ということで、日本のクラシック=西洋音楽の草分けにして礎、山田耕筰の、めでたい交響曲を聴く。てか、交響曲がめでたいって、そう無い。例えば、交響曲の父、ハイドンの104番まである交響曲を振り返って、めでたそうなものを探すとすれば、「V字」?いや、あれは、ヴィクトリーの"V"ではなくて、ロンドンでハイドンの交響曲選集が出版されるにあたり、セレクションされた交響曲を"A"から順番にアルファベットを振った結果、22番目、"V"となったというだけの話しでして... おもしろいのは、「V字」だけが、振られたアルファベットを残しているという... いや、"V"だけ残ったということは、ある意味、ヴィクトリーなのかも?なんて、話しはともかく、山田耕筰です。「赤とんぼ」など、誰もがこの人の歌を歌ったことがあるだろうけれど、この「赤とんぼ」の強烈なイメージのせいで、作曲家としての全体像は見え難い。見え難いけれど、改めて見つめてみると、さすがは草分けにして礎!なかなかただならない存在... そして、めでたい!何と、日本人初の交響曲を書いた人物でありまして...
ということで、NAXOS名物、日本作曲家選輯のシリーズから、湯浅卓雄の指揮による山田耕筰の交響曲集を2タイトル... アルスター管弦楽団の演奏で、日本初の交響曲にして卒業制作、交響曲「勝鬨と平和」(NAXOS/8.555350)と、東京都交響楽団の演奏で、邦楽との大胆な融合を試みた異色の交響曲、長唄交響曲「鶴亀」(NAXOS/8.557971)を聴く。

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ロマン主義の深化、そして、その先へ... リスト、『キリスト』。 [before 2005]

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ノートルダム大聖堂が、まさか、焼け落ちるとは... 音楽史から見つめれば、ゴシック期の音楽の中心であり、まさにノートルダム楽派を生んだ場所。それだけに、当blog的にも、その喪失感はただならず(ニュースの映像、まともに見られず... )。また、修復工事中の失火ということで、何とも遣る瀬無い思いでいっぱいに... 振り返れば、度重なるテロ、暴動と、パリには、破壊のイメージが付き纏う昨今、再び、かつての"花の都"の芳しさを取り戻してくれることを、切に願うばかりです。しかし、再建案を公募って... 一度、破壊されている、フランス革命以前のノートルダム大聖堂の姿を取り戻す絶好のチャンスじゃない?フランス人って、時々、わからなくなることがある。ルノーの寄生体質もそうだけど、世界を圧倒するブランド力を持ちながら、活かし切らない... あるいは左派気質か?世界が垂涎の歴史や伝統の重みを、変に軽んじるところ、あるような... いや、もっとドンと構えて輝いて欲しい!我々にとってのフランス先輩は、永遠に「おフランス」なんだから!アッレー!!!
は、さて置き、四旬節、様々な教会音楽を聴いて参りました。そして、本日、イエスの受難の日、聖金曜日!クライマックスです。ということで、総決算の大作... ジェイムズ・コンロンの指揮、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、ベニタ・ヴァレンテ(ソプラノ)、マルヤーナ・リポフシェク(メッゾ・ソプラノ)、ペーテル・リンドロース(テノール)、トム・クラウゼ(バリトン)、スロヴァキア・フィルハーモニー合唱団の歌で、リストのオラトリオ『キリスト』(apex/2564 61167 2)を聴く。

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ロマン主義がバッハと出会う、メンデルスゾーン、『パウルス』。 [before 2005]

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17世紀半ば、対抗宗教改革の波に乗って、ローマで誕生したオラトリオ... 瞬く間に多くの作品が作曲されるようになり、18世紀に入ると、オペラと伍して華麗に大変身を遂げる。のだけれど、オラトリオが、オラトリオらしく大成するのは、フランス革命後、教会の権威が大いに揺らいだ後、19世紀だったように思う。下手なことは言えないけれど、オラトリオが題材とする聖書の世界は、実はロマンティック?19世紀のロマン主義と、相性が良いような気がして... それと、ナポレオン戦争(1803-15)がヨーロッパ中を覆い、フランス流の世俗主義が各地に影響を及ぼすと、作曲家たちは、それまでの教会における実用音楽とは異なる、芸術音楽としてのオラトリオを生み出す。ロマン主義との共鳴と、教会から解き放たれたことで、オラトリオは、より普遍的な宗教性を放ったか... いや、ある意味、真っ直ぐな時代、19世紀だったからこそ、オラトリオは、より真摯に表現され、オラトリオらしく大成したように感じる。アイブラーシュポーアのオラトリオを聴いて来て、そんなことを考えた。
ということで、フィリップ・ヘレヴェッヘ率いるシャンゼリゼ管弦楽団の演奏、メラニー・ディーナー(ソプラノ)、アネッテ・マルケルト(アルト)、ジェイムズ・テイラー(テノール)、マティアス・ゲルネ(バス)のソロ、コレギウム・ヴォカーレ、ラ・シャペル・ロワイアルの合唱で、メンデルスゾーンのオラトリオ『パウルス』(harmonia mundi FRANCE/HMC 901584)を聴く。

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ザルツブルク、宮廷楽士長、ミヒャエル・ハイドンのナチュラル! [before 2005]

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桜が咲き出しましたね。けど、また寒くなったりで... 三寒四温、行きつ戻りつなのが、桜の頃らしい。一方、当blogは、四旬節、一直線!世俗音楽を控えております。キリスト教徒でもないのにね... けど、楽しい!って、かつての教会音楽は、それほど充実していたということなのだよね。いや、改めて、教会音楽、あるいは、教会で演奏された音楽と向き合ってみると、かつての教会は音楽センターであったことを思い知らされる。さすがの総本山、濃密なローマに、リトル・イタリー?なインスブルック、束縛の無いヴェネツィア、意外にインターナショナルなミュンヒェン、とにかく豪奢なドレスデン、敏腕楽長による充実のエステルハーザ... それぞれ、宗教的背景が異なって、カラーがあり、実にヴァラエティに富んでいたなと... いや、ちょっと旅する気分。で、次に向かうのは、注目すべき宗教都市、ザルツブルク。その楽士長を務めた、ミヒャエル・ハイドンによる教会音楽。
ゲーリー・グレイデンが率いる、ストックホルムの合唱団、聖ヤコブ室内合唱団、ミア・パーション(ソプラノ)らの歌、ピリオド管楽アンサンブル、アンサンブル・フィリドールの演奏で、ミヒャエル・ハイドンの聖ヒエロニムスのミサ(BIS/BIS-CD-859)を聴く。

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花咲けるドレスデンの教会音楽、カトリックも!ルター派も! [before 2005]

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四旬節ということで、教会音楽を聴いております。でもって、バロックのもの...
いや、改めて音楽史を俯瞰して思うのです。バロック期は、教会音楽の黄金期!宗教改革があり、対抗宗教改革があって、教会の意識は変わり、人々に開かれた場所となって行く教会。その過程で、教会は音楽センターに進化し、より多くの人々が、より豊かな音楽に触れる機会が生まれ、ますます盛り上がり、発展して行った音楽... そうした教会と音楽の関係をつぶさに見つめると、宮廷の存在が、少し、小さく感じられてしまう。バロックを象徴するオペラは、フィレンツェの宮廷、あるいは、その廷臣たちの邸宅で煮詰められ、誕生(1597)するわけだけれど、その文化が大きく花開くのは、ヴェネツィアに公開のオペラハウスが開場(1637)してから... 一方、器楽曲では、17世紀後半、教皇領の地方都市、ボローニャを拠点とした音楽家たち、ボローニャ楽派の面々が、街の中心、サン・ペトローニオ大聖堂の構造を活かして、新しい音楽の形、つまり現在のクラシックの定番の形(ソナタやコンチェルト... )を提示し、最先端を走っていたわけだ。もちろん、宮廷の支援も欠かせなかったことは間違いない。けれども、より多くの人々と触れ合うことで、バロックの音楽は大きく花開いた。
さて、今回は、その対極を極めます。ヘルマン・マックス率いる合唱団、ラニッシェ・カントライと、ピリオド・オーケストラ、ダス・クライネ・コンツェルト、そして、マリフ・ザードリ(ソプラノ)、カイ・ヴェッセル(カウンターテナー)らによる、ドレスデンの宮廷の主、ポーラント王を兼ねたザクセン選帝侯のための教会音楽集、"MISERERE"(CAPRICCIO/C 10557)を聴く。

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