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ロッシーニのパリ時代、『ランスへの旅』から『オリー伯爵』へ... [before 2005]

あちこちにクリスマスの飾り付け、そしてイルミネーションと、俄然、キラキラとしている年の瀬の街並み... 単細胞なのか、師走の忙しなさがあってなのか、妙にテンション上がり目な今日この頃... でもって、そんな街並みを縫いながら、正月支度の買い物に追われた先日、振り返ってみると、凄い状況だなと... クリスマスと、正月が、錯綜!このスラップスティックに笑ってしまった。まるで、ロッシーニのオペラ・ブッファの1幕の幕切れみたいな感じ、まさに、山場!てか、耳を澄ますと、どこからともなく、ロッシーニ・クレッシェンドが聴こえて来そうな... いや、普段の倍、それも倍速で動き回らねばならないこの年末も、ロッシーニのブッファかと思えば、何だか楽しくなって来る?なんて戯言はさて置きまして、ロッシーニ・イヤーも、残すところあと2週間。年初に、器楽作品、宗教作品、機会音楽と、大胆にもと言うか、メモリアルならではの、いつもと違う視点からロッシーニに注目したのですが、やっぱり、オペラを聴かねば!ということで、ロッシーニのイタリア時代、最後のオペラを聴いた前回... に続いて、今度は、イタリアを後にして、パリに拠点を移してからのオペラに注目してみようかなと...
クラウディオ・アバドが率いたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、豪華歌手陣が結集しての『ランスへの旅』(SONY CLASSICAL/S2K 53 336)と、その改編作、ヘスス・ロペス・コボスの指揮、ボローニャ市歌劇場管弦楽団の演奏、ファン・ディエゴ・フローレス(テノール)のタイトロールで、『オリー伯爵』(Deutsche Grammophon/477 5020)を聴く。


1825年、キラっキラっのイタリアのブッファ!『ランスへの旅』から...

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1823年、ヴェネツィアで『セミラーミデ』を初演したロッシーニ夫妻は、秋にパリへ、年末にはロンドンへと向かう。ロンドンでは、ロッシーニ夫人、コルブランを主役に、ロッシーニ作品が次々に上演されるものの、成功とは言えず... というのも、コルブランの声の衰えが足を引っ張ったのだとか... そんなこんなもあり、1824年、パリへと戻り、そこに居を定めると、イタリア座(イタリア・オペラの専用劇場... )の芸術監督に招聘され、ロッシーニのパリ時代がスタート。折しもフランスは、新国王、シャルル10世(在位 : 1824-30)が即位、祝賀ムードに包まれていた。そして、翌年の戴冠式(フランス王の戴冠式は、ランスの大聖堂で行われるのが伝統... )に合わせ、作曲されたのが、ここで聴く、『ランスへの旅』... ランスでの戴冠式を見るためにヨーロッパ各国から集まった人々が、フランス東部の温泉保養地、プロンビエール・レ・バンにあるホテル、金の百合亭で繰り広げるドタバタ... あーじゃない、こーじゃないとやっている内に、戴冠式に間に合いませんでしたとさ、というストーリーなのだけれど、で、良いのか?!いやー、フランス革命(1789)から36年を経て、王政は復古したとはいえ、その権威も何だか落ちたものです。例えば、神聖ローマ皇帝、レオポルト2世(在位 : 1790-92)、1791年のベーメン王への戴冠式に合わせて、モーツァルトが作曲したのはオペラ・セリア『皇帝ティートの慈悲』。それに相応しい風格があったけれど、ロッシーニが準備したのは、オペラ・ブッファ... で、OKだったことに、時代の変遷を感じてしまう。
とはいえ、祝祭オペラ!パリで人気を博したプリマ、ジュディッタ・パスタら、望める最高のベルカント歌手たちをキャスティングしての、豪華、競演!そのフェス感が半端無い!でもって、ロッシーニ、初めてのパリのためのオペラだっただけに、気合も入っている!前半の山場、戴冠式へ向かう馬車を引く馬が見つかりませんでした、えーっ?!という、スラップスティックの始まりを、14声による大コンチェルタート(disc.2, track.8)で歌うとか、もう、先生、ヤリ過ぎっす。けど、ロッシーニ的には、それを思いっきり楽しんでいる様子で... 前作、『セミラーミデ』からは一転、何か憑き物が落ちたように、若い頃のオペラ・ブッファへと帰り、活き活きと音楽を紡ぎ出している。いや、あのナポリでのセリアは何だったんだ?というくらいに、あっけらかんとブッファに徹する。だから、ああ、ロッシーニだな、という軽快さに彩られて、祝祭云々も忘れ、理屈抜きに楽しい音楽が続く。でもって、戴冠式から間もなくの初演は、大成功!戴冠式を祝う機会音楽だけに、祝祭期間が過ぎてしまえば、忘れられる運命にはあったけれど、ロッシーニ、再びのブッファは、間違い無く、楽しく、キラっキラっに輝いている!
で、そんなオペラの復活に熱を入れていたアバドの指揮、ベルリン・フィルの演奏で聴くのだけれど... 当然ながら、ピカイチです。アバドらしいクリアにして活きの良い音楽を繰り出して、ベルリン・フィルも器用にそれに応えつつ、ひとりひとりのポテンシャルの高さを存分に発揮、ロッシーニの音楽をガッツリ輝かせる!しかし、何と言っても、見事に揃ったロッシーニ歌いたちの妙技!このオペラが忘れ去られた要因のひとつが、"14声による大コンチェルタート"をぶち上げるほどの歌手が必要になること... それを見事にクリアするアバド、ベルリン・フィル盤。で、特に印象に残るのが、このストーリーのミューズ的存在、コリンナを歌うマクネアー(ソプラノ)の息を呑む瑞々しさ... フィナーレ前の即興曲「金の百合の心地良い影の下」(disc.2, track.27)の美しさは白眉!それから、表情豊かに歌うライモンディ(バス)のドン・プロフォンド!まー、次から次へとヨーロッパ各国人のモノマネを鮮やかに決めて笑わかしてくれる、アリア「私、ドン・プロフォンドは」(disc.2, track.6)の圧巻!凄い... で、楽しい... てか、ネタ満載の『ランスへの旅』、おもしろ過ぎ!

BERLINER PHILHARMONIKER ・ ABBADO
ROSSINI: IL VIAGIO A REIMS

ロッシーニ : オペラ 『ランスへの旅』

コリンナ : シルヴィア・マクネアー(ソプラノ)
メリベーア侯爵夫人 : ルチア・ヴァレンティーニ・テッラーニ(メッゾ・ソプラノ)
フォルヴィル伯爵夫人 : ルチアーナ・セッラ(ソプラノ)
コルテーゼ夫人 : シェリル・ステューダー(ソプラノ)
騎士ベルフィオール : ラウル・ヒメネス(テノール)
リーベンスコフ伯爵 : ウィリアム・マテウッツィ(テノール)
シドニー卿 : サミュエル・レイミー(バリトン)
ドン・プロフォンド : ルッジェーロ・ライモンディ(バス)
トロムボノク男爵 : エンツォ・ダーラ(バス)
ドン・アルバロ : ルチオ・ガッロ(バリトン)
ドン・プルデンツィオ : ジョルジュ・スルヤン(バス)
ドン・ルイジーノ : グリエルモ・マッテイ(テノール)
マッダレーナ : ニコレッタ・クリエル(ソプラノ)
デリア/モデスティーナ : バルバラ・フリットーリ(ソプラノ)
アントニオ : クラウディオ・オテッリ(バス)
ゼフィリーノ/ジェルソミーノ : ボージダール・ニコロフ(テノール)
ベルリン放送合唱団

クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

SONY CLASSICAL/S2K 53 336




1828年、芳しきフランスのエスプリ、漂う、ブッフ、『オリー伯爵』へ...

4775020
1825年、『ランスへの旅』を大成功させたロッシーニは、翌、1826年、ナポリ時代の意欲作、けど、ナポリっ子たちの受けが悪かった『マホメット2世』(1820)をフランス語に翻訳し、トラジェディ・リリク『コリントの包囲』に改編。フランス・オペラの殿堂、パリ、オペラ座(フランス語のオペラしか上演できなかった... )に進出を果たす。言うなれば、ロッシーニ版の改革オペラだったオペラ・セリア『マホメット2世』は、ドラマの展開により注意を払ったフランス・オペラ、トラジェディ・リリク(18世紀半ばに登場する改革オペラは、そもそもトラジェディ・リリクからの影響が大きくあったわけで... それはナポリ楽派でもまたそうで... )と親和性があったのだろう、改編されて、今度は成功!これにより、"王の首席作曲家"にして"フランスにおける歌唱総監督"の称号を賜り、さらなるフランス・オペラの制作に関する契約を交わす。そうして、1827年に、ナポリ時代の『エジプトのモーゼ』(1818)を改編した『モーゼとファラオン』を、さらに1828年に、『ランスへの旅』を改編した『オリー伯爵』をオペラ座で上演。で、次の作品が、唯一の書き下ろしのフランス・オペラにして、最後のオペラとなる『ギヨーム・テル』(1829)となる。さて、ここで聴くのは、『オリー伯爵』。しかし、初演からわずか3年での改編... ナポリから持って来た他の改編作とは訳が違う、みんな『ランスへの旅』の記憶が残っていただろうに、ハードルを上げて来るよな、ロッシーニ...
いやいやいや、もはや別作品?『ランスへの旅』を大いに楽しんだとしても、まったく以って新鮮な感覚で接することができることに驚かされる。まず、フランス語による新たなストーリーが用意されていて... 兄が十字軍へと参戦し、城を守る妹、貞淑なアデルに、あの手この手で言い寄ろうとするオリー伯爵のトンデモ変装大作戦!『ランスへの旅』以上に、しょうもない話しなのだけれど、よりフランス趣味と言えるのかも... その音楽もまた、巧みにフランス趣味に仕上げられていて、新たに書かれた音楽はキャッチーで、メローで、より息衝く感覚もあり、パワフル!『ランスの旅』の音楽があちこちから聴こえて来るし、1幕の幕切れ(disc.1, track.17-19)では、あの"14声による大コンチェルタート"で大いに盛り上げる(こちらでは、コーラスが加わる!)のだけれど、全体は、オペラ座のスケールに合わせて、音楽に厚みが増し、よりドラマ性が際立っているのが印象的。2幕の冒頭、嵐の場面(disc.2, track.2)のドラマティックさは、ロッシーニ流のロマン主義を見出せて、新たな時代の到来も意識させられる。そうした点で、『ランスへの旅』からの進化がしっかり聴き取れる『オリー伯爵』は、ロッシーニの作曲家としての力量が雄弁に示される。ウーン、さすがの対応力、器用さに感服。で、ロッシーニは、イタリアより、フランス流儀の方が肌に合った?そんな印象も受けるから、おもしろい。そんなロッシーニに、魅了される。
という『オリー伯爵』を、フローレス(テノール)のタイトルロールで聴くのだけれど、さすがは現代を代表するベルカント・テノール!その花々しく、瑞々しい歌声には、惹き込まれるばかり... で、オリー伯爵は、大したクソ野郎でして、行者に、尼僧に扮装して、城を守る伯爵令嬢を籠絡しようと奮闘するだけに、単に美しいばかりでなく、実に表情豊かに、行者に、尼僧になり切って、見事。このオペラのおもしろさを引き立てる。そんなフローレスの脇を固める面々が、またキャラが立っておりまして、活き活きとドラマを紡ぎ、オリー伯爵が巻き起こす騒動を盛り上げる!1幕の幕切れ="14声による大コンチェルタート"なんて、聴いているだけで、メキメキと元気出ちゃうよ... そして、ロペス・コボスの指揮、ボローニャ市歌劇場管の演奏!ロッシーニならではの息衝くリズムと、パリ、オペラ座仕様の華やかなサウンドを、密度を以って響かせて、ただ楽しいだけじゃない、魅惑的な音楽を創出。『ランスへの旅』には無かったエスプリを漂わせて、素敵...

ROSSINI: LE COMTE ORY
FLÓRES ・ BONFADELLI ・ TODOROVITCH ・ LÓPEZ-COBOS


ロッシーニ : オペラ 『オリー伯爵』

オリー伯爵 : ファン・ディエゴ・フローレス(テノール)
教育係 : アラステア・マイルズ(バス)
イゾリエ : マリ・アンジュ・トドロヴィチ(メッゾ・ソプラノ)
ランボー : ブルーノ・プラティコ(バリトン)
アデル : ステファニア・ボンファデッリ(ソプラノ)
ラゴンド夫人 : マリーナ・デ・リソ(メッゾ・ソプラノ)
アリス : ロセッラ・ベヴァクア(ソプラノ)
プラハ室内合唱団

ヘスス・ロペス・コボス/ボローニャ市歌劇場管弦楽団

Deutsche Grammophon/477 5020




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