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没後200年、ガッツァニーガ。もうひとつのドン・ジョヴァンニ... [before 2005]

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突然ですが、18世紀の音楽を、クリスマス・ケーキに例えてみます。すぐに目に付くサンタの飾りは、モーツァルトでしょうか、チョコレートで書かれた"Merry Christmas"の文字は、バッハでしょうか、クリスマス・ツリーの飾りは、ヘンデル?柊の赤い実は、ヴィヴァルディ?それらを美しく取り囲むクリームのデコレーションは、ハイドンかな... そして、みんな、そうした飾りにばかり目が奪われてしまって、ケーキ本体を食べてないよね?幾層にも積まれたスポンジとクリーム、時にはフルーツが挟まっていて... そういうコンビネーションがあって、しっかりと全体を味わってこそ美味しい18世紀の音楽!なんて考えてしまったのは、没後250年を迎えた作曲家たち、コジェルフヴェラチーニポルポラネブラと聴いて来て... ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハ、ハイドン、モーツァルトの周りには、常に豊かな音楽が鳴り響き、共鳴し合い、そこにこそ、おもしろさがあると思う。
ということで、没後200年を迎えたガッツァニーガに注目!で、ガッツァニーガの名前を知る切っ掛けとなる、もうひとつの『ドン・ジョヴァンニ』、モーツァルトよりも9ヶ月ほど先んじて初演され、その台本の下敷きとされたガッツァニーガのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』(SONY CLASSICAL/SK 46693)を、ブルーノ・ヴァイルの指揮、ターフェルムジーク・バロック管弦楽団の演奏で聴く。

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ラヴェル、クープランの墓。 [before 2005]

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今年は、第1次世界大戦の終戦から100年... そして、本日、11月11日が、まさにその100年目の日となります。さて、『惑星』に始まり、第1次大戦中に作曲された音楽をいろいろ聴いて来たのだけれど、戦時下でも、作曲家の創作意欲は衰えず、様々な作品が生まれていたことに驚かされる。一方で、音楽どころではなかったのも事実... そして、多くの命が失われた現実... 音楽界からも多くの犠牲者が出ました。これから才能を開花させただろう若き作曲家たち、イギリスのバターワース(1886-1916)や、ドイツのシュテファン(1887-1915)らが、兵士として戦場に散り... また、民間人にも多くの犠牲を出した第1次大戦、フランスのマニャール(1865-1914)は、西部戦線に近い自らの屋敷に留まって、ドイツ兵と撃ち合いとなり、屋敷諸共火を掛けられ命を落としている。スペインのグラナドス(1867-1916)は、アメリカからの帰国の途上、乗船していた客船がドイツの潜水艦の攻撃を受け、ドーヴァー海峡で亡くなっている。そんな、多くの犠牲を悼み、追悼の曲を聴く。
自らも兵士として戦場に赴いたラヴェルが、戦場に散った戦友たちに捧げたトンボー、ピアノのための組曲、『クープランの墓』を、終戦から100年、レクイエムの代わりに... ロジェ・ミュラロのピアノで、ラヴェルのピアノ作品全集(ACCORD/4760941)で聴く。

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プッチーニ、三部作。 [before 2005]

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今年は、第1次世界大戦の終戦から100年... ということで、前回、第1次大戦中のドイツ=リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)と、デンマーク=ニールセン(1865-1931)に注目してみたのだけれど、南に下って、イタリア=プッチーニ(1858-1924)に注目してみる。で、プッチーニの戦争の向き合い方は、どこかリヒャルトに似ている。『ラ・ボエーム』(1896)、『トスカ』(1900)、『蝶々夫人』(1904)を立て続けに世に送り出し、国境を越えて人気を獲得していたオペラの大家にとって、ヨーロッパが2つに分かれて戦うなんて、ナンセンス... そもそも、プッチーニの国、イタリアは、ドイツ―オーストリアと三国同盟を結んでおきながら、第1次大戦が勃発すると中立を宣言。その1年後には、イギリス―フランス―ロシアの三国協商側に立って参戦するというカメレオンっぷり... こうしたあたりは、プッチーニの行動にも見受けられ、中立国、スイスを介し、敵国となったオーストリア、ウィーンからの仕事をこなしてしまう大胆さ!そうして作曲されたのが『つばめ』... さすがにウィーンでの初演は難しくなり、1917年、中立国、モナコで初演されるのだけれど、いやはや強か。リヒャルトみたいに、アルプスに引き籠るようなことはしない。そして、そんな『つばめ』と並行して作曲されていたのが、意欲作、三部作。
アントニオ・パッパーノの指揮、ロンドン交響楽団の演奏、マリア・グレギーナ(ソプラノ)、クリスティーナ・ガイヤルド・ドマス(ソプラノ)、アンジェラ・ゲオルギュー(ソプラノ)ら、スター、実力派、ふんだんにキャスティングされた豪華歌手陣で、1幕モノのオペラ『外套』、『修道女アンジェリカ』、『ジャンニ・スキッキ』からなる、プッチーニの三部作(EMI/5 56587 2)を聴く。

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リヒャルト・シュトラウス、ドイツ・モテット。 [before 2005]

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この間、天気予報を見ていたら、本州中央の尾根筋を軸に、紅く色付く衛星写真が映し出されて、びっくりした。木が、森が、山が紅葉するのではなく、日本列島そのものが紅葉している!そもそも、紅葉って、宇宙からもわかるんだ?!そして、そのスケールの大きさ、紅く色付いた日本の姿に、感慨深いものを感じてしまう。毎年、秋になると、紅くなる日本... 普段、何気なく見つめる紅葉も、その視点を宇宙まで引いて見つめれば、また違ったイメージが浮かび上がる。こういう風に、自在に視点を動かすことができたならば、世の中、いろいろ変わるんじゃないかなと、ふと、そんなことを思う。いや、現代人の視点というのは、かつてよりも、随分と低くなってしまって、足元ばかりにしか及ばない気がする。邪魔なら殺せばいいし、気に食わなければ離脱すればいいし、都合が悪ければ改ざんすればいいし、とりあえず反対しておけばいいし... つくづく、不毛だなと思い知らされる今日この頃。10月は、「癒し系」で、癒されるはずが、今や、癒しどころでなくて、厭世です(遠い目... )。はぁ...
そんな厭世気分に、最適?美しきリヒャルト・シュトラウスのア・カペラ!シュテファン・パルクマンが率いたデンマーク国立放送合唱団による、リヒャルト・シュトラウスの無伴奏合唱のための作品集(CHANDOS/CHAN 9223)を聴く。いや、やっぱり癒される。

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シルヴェストロフ、沈黙の歌。 [before 2005]

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2つのヴィオラ・ダ・ガンバでゴルトベルク変奏曲、ボルトニャンスキーの教会コンチェルト、藤枝守の『植物文様』と、バロックに、古典主義に、現代音楽と、幅広く癒されております、10月... それにしても、クラシック=癒し系なんていうレッテル貼りを忌み嫌っていた頃からしたら、何たる軟弱!頭のどこかで、そんな風なことを思わなくもないのだけれど、いやいやいや、「癒し系」上等!クラシックが本気出したら、アダージョだの、イマージュだの、屁だからね。前回、聴いた、『植物文様』なんて、見つめれば見つめるほどに、考え抜かれての「癒し系」であって、何となしの「癒し系」とは明らかに一線を画す。で、久々にその音楽を聴けば、癒されるばかりでなく、癒されていることに、我々が、普段、聴いている音楽が失ってしまった、よりナチュラルだった感覚を意識させられ、感慨深く... 失われてしまった感覚を意識させられることに、某かのセンチメンタルを掻き立てられ、単に癒されるばかりでない感情も滲む。考えてみれば、癒しは、痛みと表裏。「癒し系」が生まれるところには、必ず時代の痛みが介在していたのだろう。ということで、まさに、痛みが生む「癒し系」を聴いてみようかなと...
20世紀後半、東西の冷戦の時代、多くの芸術家が傷を負った、ソヴィエトの全体主義の中、いとも密やかなる音楽を紡ぎ出した、希有な作曲家、シルヴェストロフ(b.1937)を見つめる。セルゲイ・ヤコヴェンコ(バリトン)の歌、イリヤ・シェップスのピアノで、シルヴェストロフのソヴィエト時代の作品、歌曲集『沈黙の歌』(ECM NEW SERIES/982 1424)で、癒される。

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藤枝守、植物文様。 [before 2005]

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どうやら、秋バテらしい... ということで、10月は「癒し系」で癒されようという魂胆であります。さて、クラシックにおける「癒し系」において、何気に存在感を見せるのが現代音楽!現代音楽?音列だの、偶然だの、図形だの、具体だの、電子だの、音響だの、尖がってナンボのもの、といった観が否めない現代音楽のイメージなのだけれど、よくよく見つめると、尖がり方も様々で、複雑怪奇なところへと陥った現代音楽への反動から、シンプルを極めたミニマル・ミュージックが生まれたり... 宗教が禁止されていたソヴィエトで生まれ育ったペルトは、かつての宗教音楽の静謐さを呼び戻すことで、密やかに体制へ反発し、そこから自らの音楽性を確立したり... シンプルだったり、静謐だったり、何に対して尖がるかによって、現代音楽のイメージも様々に広がる。つまり、現代音楽にも「癒し系」は成り立ち得る!というより、難解な"ゲンダイオンガク"に対して、「癒し系」であり得るなんて、何たるラディカル!でもって、まさに、身体に心地良い音楽を追求する作曲家がおりまして...
ただならぬ視点、スケールで音楽を見つめ、極めてラディカルな姿勢を示しながら、ただならず美しい響きを生み出す希有な作曲家、藤枝守(b.1955)。電気的に植物の歌(葉表面における電位変化とのこと... )を読み取り、音楽に仕立て直したという異色のシリーズ、『植物文様』から、箏を中心にした作品(ALM RECORDS/ALCD 52)を、箏曲家、西陽子の演奏で聴く。

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ボルトニャンスキー、教会コンチェルト。 [before 2005]

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20世紀末から21世紀初頭に掛けて、クラシックは、癒し系として持て囃されておりました。いやいやいや、癒しばかりじゃないから。『春の祭典』とかもあるから。なんて、ツッコミを入れずにはいられなかった、あの頃... 「癒し系」なる括りが、どうにも安っぽく感じられて、クラシックを甘く見んな、ボケェ... みたいに、やさぐれておりました。が、今、あの頃の情景を振り返ってみると、なかなかおもしろかったのではないかと、違った見方ができるような気がする。何だか気難しいクラシックが、お手軽なヒーリング・ミュージックとして再ブレイクを果たしたわけです。これって、ある意味、殻を破ったと言えるのでは?「癒し系」なるレッテル貼りの良し悪しは一先ず置いといて、アカデミズムの内で語られないクラシックというのは、なかなか新鮮だったのかもしれない。けど、「癒し系」として紹介されるクラシックって、生温い気がするのだよね。なんか、そういうあたり、不満(「癒し系」拒否反応なあの頃から一周回ってのこの境地!)。そこで、今、改めて、クラシックの癒しを探ってみたいなと... 秋バテ、2018年バテを癒し、浄化するために... 前回、ゴルトベルク変奏曲に続いての、ロシアの聖歌。
ロシアの伝統に、イタリア仕込みの西欧のスタイルを融合させた異色のウクライナ出身の作曲家、ボルトニャンスキー... ヴァレリー・ポリャンスキー率いる、ロシア国立シンフォニック・カペラによる、ボルトニャンスキーの教会コンチェルトのシリーズから、35の教会コンチェルト集の最後、30番から35番を取り上げるVol.5(CHANDOS/CHAN 9956)を聴く。

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18世紀への実験場、ボローニャ、聖ペトローニオ大聖堂の軌跡。 [before 2005]

さて、前回、ボローニャ楽派の父、カッツァーティのヴェスプロ、聖アンドレーアの晩祷を聴いたのだけれど、あれは、ボローニャのためのヴェスプロではなかったのが心残り... やっぱり、ボローニャ楽派に注目するのにあたって、彼らが活躍した場所、ボローニャのシンボル、サン・ペトローニオ大聖堂のために作曲された作品が聴いてみたい!何たって、ボローニャ楽派の音楽的特徴は、サン・ペトローニオ大聖堂の建築的特性(教会建築としては未完成に終わりながらも、結果的に、今となってはあまりに一般的な、シューボックス型コンサートホールの最初とも言えそうな形となる... )があってこそのもの。18世紀の音楽の扉を開いたとも言えるボローニャ楽派にとって、サン・ペトローニオ大聖堂は、新しい音楽を構築する実験場だったような気がする。またより大きな視点から見つめれば、サン・ペトローニオ大聖堂は、今に至るコンサート(この言葉の語源とも言えるコンチェルタート様式、器楽を伴奏に歌うスタイルを完成させたのはボローニャ楽派だったかなと... )の在り方、その方向性を決めた場所とすら思えて来る。いや、サン・ペトローニオ大聖堂は、音楽史において、極めて重要な場所だったのかも... ということで、ボローニャ楽派、ポスト・カッツァーティ世代によるサン・ペトローニオ大聖堂での音楽!
サン・ペトローニオ大聖堂の聖歌隊、楽隊である、カペラ・ムジカーレ・ディ・サン・ペトローニオの歌と演奏で、サン・ペトローニオ大聖堂でチェリストを務めたフランチェスキーニ、1676年のディキシット・ドミヌスを中心に、サン・ペトローニオ大聖堂での祝祭を再現する"VESPRI CONCERTATI DELLA SCUOLA BOLOGNESE"(TACTUS/TC 650001)と、後にサン・ペトローニオ大聖堂の楽長に就任するペルティの1687年の12声のミサ(DYNAMIC/CDS 707)の2タイトルを聴く。

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カッツァーティ、聖アンドレーアの晩祷。 [before 2005]

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17世紀、オペラの誕生が象徴するように、世俗音楽の世界ではバロックが始動する。が、教会音楽の世界は保守的で、まだまだルネサンス・ポリフォニーがスタンダード... オペラの影響を受け、聖書を歌うオラトリオがじっくりと収斂されて行くも、教会音楽の本丸たる典礼音楽に新たなバロックの精神、語法が用いられることは忌避される傾向にあった。例えば、第2作法(ルネサンス・ポリフォニー=第1作法に対する新たな語法... )の巨匠、モンテヴェルディが、その第2作法を織り交ぜた野心作、『聖母マリアの夕べの祈り』(1610)を、教会音楽の家元、聖都、ローマに持ち込み、就職活動を試みるも、相手にされなかった。が、第2作法の巨匠を生んだ北イタリアでは、また違った状況が生まれ始める。次第に高まるオペラの人気、器楽曲の発達を柔軟に取り込み、より花やかに、そして劇場的に典礼音楽を織り成して、後の教会音楽の在り方を切り拓いた。
で、その牽引役を果たしたのがボローニャ楽派の面々... フランチェスコ・モイ率いる、アカデミア・デリ・インヴァギーティの演奏と歌で、ボローニャ楽派の父、カッツァーティの音楽による、聖アンドレーアの晩祷を再現した1枚(TACTUS/TC 610301)を聴く。

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シベリウス、5番の交響曲、初稿と決定稿。 [before 2005]

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最初は、涼めるかなァ。くらいの、軽いノリで聴き始めた「北欧」の音楽だったのだけれど、改めて北欧と向き合うと、ちょっと、ドギマギさせられる。いや、IKEAだ、H&Mだ、さらには「ヒュッゲ(デンマーク発の「足るを知る」的なナチュラルでシンプルなライフスタイル... そんな感じ?)」だ、とか、21世紀の「北欧」のイメージは、実にクールであって、そのクールさに引き寄せられて、遠い遠い日本に在っても、いつの間にか身近(名古屋市のレゴランドに続いて、飯能市にムーミン谷がやって来るしね!)な気がしていたのだけれど... 甘かった!本物の北欧は、ただならない。アイスランドのレイフスの豪快な音楽を聴いて、そこに反映される北極圏を目前とした自然の厳しさ、ヴァイキングの記憶を呼び覚ます荒々しさ、北欧神話を思い出させるミステリアスさ、栄光ばかりでない歴史が放つ仄暗さ... 何だろう、北欧は、濃密?ヨーロッパにしてヨーロッパではないような、独特な居住いを見出して、驚かされ、そして、惹き込まれる。西欧の美しさとは一味違う、北欧の密度に呑み込まれる。
ということで、オスモ・ヴァンスカが率いたラハティ交響楽団による、シベリウスの交響曲全集から、5番の交響曲、1915年に作曲された初稿(これが、初録音でした... )と、1919年に完成された決定稿を収録した意欲的な1枚(BIS/BIS-CD-863)を聴く。

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