SSブログ

グノー、弦楽四重奏曲。 [2018]

AP177.jpg
えーっと、ドビュッシーの没後100年のインパクトが大きい2018年でありますが、この人のことを忘れるわけには行きません。生誕200年のメモリアルを迎える、グノー(1818-93)。明日、6月18日が、その誕生日... おめでとう、シャルル!あなたは、『ファウスト』の作曲家として、今も有名ですよ。てか、『ファウスト』以外について、よく知らない... ドビュッシーが活躍する前の時代、フランス楽壇の中心を占める、極めて重要な存在だったはずなのだけれど、そのあたりが、どうも見え難いのはなぜだ?クラシックは、良かれ悪しかれ、19世紀、ドイツ―オーストリアに引っ張られ過ぎる帰来がある。だから、その時代のフランスなどは軽く見られがち... もちろん、グランド・オペラに、ロマンティック・バレエに、アカデミックな立場からすれば、軽く見られてしまう軽佻さもあるのだけれど、19世紀って、そもそも、そういう世紀... 今、改めて音楽史を振り返って見れば、フランスこそ19世紀のリアル!で、その中心にいたグノーの存在が気になる。『ファウスト』でないグノーを聴いてみたい。
ということで、見つけた!ナクソス・ミュージック・ライブラリーで... フランスを中心に活躍するピリオドの名手たちが結集したカンビーニ・パリ四重奏団の演奏で、グノーの弦楽四重奏曲(APARTE/AP 177)。えっ?!グノーって、弦楽四重奏曲なんて書いていたの!それも、収録されているのは5曲!と、目から鱗の2枚組。ちなみに、これ、日本でもリリースされるのだろうか?

グノーの交響曲なら聴いたことがあるけれど、弦楽四重奏曲があるとは知りませんでした。今さらながらに驚いております。いや、『ファウスト』の作曲家による弦楽四重奏曲となると、目立ち難いかなと... おまけに、グノー自身が、きちんと発表して来なかった経緯もあるようでして... グノーの弦楽四重奏曲は、「3番」と番号を振られたものが、作曲家の死後、2年を経て、唯一、出版(1895)されていた。が、ちょうどグノーの没後100年のメモリアルにあたる1993年、「2番」、「3番」と番号を振られたものと、番号無しのもの、合わせて3つの未知の弦楽四重奏曲のスコアがオークションに出品されたことで、困った事態に... 「3番」しかなかったグノーの弦楽四重奏曲が、その「3番」が2つになってしまった!でもって、「2番」は出て来たけど、「1番」は?ウーン、もどかしい!やっぱりグノーは『ファウスト』の作曲家、弦楽四重奏曲なんて古典的なものは、きちんと整理し記録を残すほど重要ではなかったのかも... けど、カンビーニ・パリ四重奏団が奏でる音楽は、けして片手間のものではなく、それどころか、驚くほど魅力的で、惹き込まれてしまう!そもそもグノーは、劇場に偏向した19世紀のフランスの音楽シーンに批判的であって、ア・カペラで歌われるポリフォニー(ローマ賞受賞により、ローマ留学を果たし聴く機会を得た、パレストリーナの伝統を受け継ぐローマの聖歌... )や、ドイツ―オーストリア(ローマ留学からの帰り、ウィーンやライプツィヒを訪ね、モーツァルト、バッハを聴き、メンデルスゾーンらと交流... )の音楽にシンパシーを感じており、"弦楽四重奏曲"は、そうしたグノーの音楽的志向を象徴するスタイルだったと言えるのかもしれない。
それを雄弁に示す、1枚目、1曲目、1993年のオークションに出品された番号無しのもの、ト短調の弦楽四重奏曲(disc.1, track.1-4)。見事に4つの弦を綾なして、ドイツ―オーストリアに引けを取らない、極めて端正な音楽を構築。そうして、シューベルトを思わせる瑞々しさを放つ!いやー、何と充実した音楽!もう、聴き入るばかり... で、よくよく聴いてみると、ドイツ・ロマン主義とは一味違う透明感があるのか、フランスの作曲家ならではのサウンドに対する鋭敏な感性を見出し、短調の音楽ではあっても重苦しさを感じない。だから、ロマン主義が大仰に主張することなく、ドイツ―オーストリアに比べると、わずかに冴えた印象をもたらす。これが、何とも言えず清々しく、心地良い!続く、「3番」の弦楽四重奏曲(disc.1, track.5-9)は、1993年に再発見された新「3番」。こちらは、5楽章構成で、バロック期のフランス式舞踏組曲のような印象を受けるのか... ヘ長調の朗らかな音楽は、やはりフランス風の華やかさが感じられ、2楽章(disc.1, track.6)のスケルツォでは、『ファウスト』のバレエを思い起こすデモーニッシュさがあって、おもしろい!そして、旧「3番」(disc.1, track.10-13)... 唯一、出版されたグノーの弦楽四重奏曲というだけあって、最も卒が無いのか... ドイツ的な構築感とフランス流の麗しさが巧みにブレンドされて、その上質さが印象的。2枚目は、これが「1番」なのでは?と考えられている小四重奏曲(disc.2, track.1-4)と、「2番」(disc.2, track.5-8)が演奏されるのだけれど、この2作品、19世紀というより18世紀を思わせる気分を纏って、ラヴリー。モーツァルトを思わせる明るさが、ナチュラルに響き出す!
そんなグノーの姿を詳らかにするカンビーニ・パリ四重奏団... まず、ピリオドの名手たちならではの、ヴィブラートを抑えたすっきりとした響きが耳を捉える。4つの弦が放つ研ぎ澄まされたサウンドは、気持ち良いくらいに無駄が無く、しっかりと"弦楽四重奏曲"を構築して行く。いや、下手に飾ることをせず、シンプルに、作品のありのままと向き合う姿勢が、現代的でクール。なればこそ、グノーのおもしろさ、魅力を、再発見できる。一方で、無駄の無い中に、豊潤さも籠められていて、けして貧相なハーモニーにはならない魔法!ひとりひとりが放つサウンドの、ただならない揺ぎ無さが束になって生まれる瑞々しさたるや... その瑞々しさに浸かっていると、グノーの弦楽四重奏曲が、いつの時代の音楽だったかわからなくなるような、不思議な浮遊感を味わう。ロマン主義の時代の音楽だけれど、ウィーン古典派の記憶を呼び覚まし... すると、古臭く感じてしまう?かと思うと、かえって初々しさすら漂って... 澄み切った音楽を奏でると、時代の枠組みは意味を成さなくなってしまうよう。いや、この捉われない姿勢こそ、グノーが目指したものだったように感じる。

GOUNOD INTÉGRALE DES QUATUORS À CORDES QUATUOR CAMBINI-PARIS

グノー : 弦楽四重奏曲 ト短調
グノー : 弦楽四重奏曲 第3番 ヘ長調
グノー : 弦楽四重奏曲 イ短調

グノー : 小四重奏曲 ハ長調
グノー : 弦楽四重奏曲 第2番 イ長調

カンビーニ・パリ四重奏団
ジュリアン・ショーヴァン(ヴァイオリン)
カリーヌ・クロクノワ(ヴァイオリン)
ピエール・エリック・ニミロヴィッチ(ヴィオラ)
酒井 淳(チェロ)

APARTE/AP 177




nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。