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南から、北から... ロンドンを歩く。 [selection]

10月に入り、すっかり秋めいて、あの酷暑も、どこかで遠い記憶に... でもないか?けど、間違いなく時計の針は先へと進む。2011年は、もうすぐそこだ。なんて言うと、先走り過ぎのようにも思われそうだけれど、師走は走って来る。そして、走り去ってゆく... なんて思いを強くさせられたのは、グラモフォン・アウォードの発表。今年も総括されようとしているわけだ。何とも、感慨...
は、さて置き、そのグラモフォン・アウォード、レコード・オブ・ジ・イヤーに選ばれたのは... アンドリュー・カーウッド率いる、カーディナルズ・ミュージックのバードの宗教作品集vol.13(hyperion/CDA 67779)。イギリスのルネサンスの爛熟期を飾る代表的な作曲家のひとりだが、渋い... 渋過ぎる... 数々のノミネート、各部門の受賞作を差し置いて、古楽部門、バードとは... いや、それだけすばらしいのだろうけれど... いや、聴いてみたい。
しかし、グラモフォン・アウォードは、どこかでナショナリスティック... 英国贔屓だよね。
さて、18世紀、ハンデル氏とロンドンを歩く... の、つづき... 何気に、英国贔屓な今日この頃...

イタリア、ドイツ―オーストリア、フランスという3本柱で捉えがちの18世紀... となれば、イギリスなんてのは、当然、隅に追いやられがち。ロンドンを拠点としたヘンデルに関しては、その全仕事、網羅されそうな勢いのなのだけれど、国際音楽都市、ロンドンとしての風景はなかなか見えてこない。重要な国際音楽都市であったはずなのに... ということで、ハンデル(=ヘンデル)氏ばかりでなかった、18世紀、ロンドンの音楽シーン。ハンデルから一歩踏み込んで見えてくる、多様なイギリス音楽事情をセレクション。

18世紀、植民地の拡大で、世界中の富を集積したイギリス... まもなく、産業革命も始まろうという、絶好調の頃のロンドンは、ヨーロッパ最大の音楽消費地のひとつ。となれば、ヨーロッパ中の音楽が集まって、ロンドンの音楽シーンは、極めて充実したものだった。例えば、ハンデルと、ナポリ楽派の巨匠、ポルポラが、新作のオペラで競演したり... そんなロンドンを振り返ると、驚くほど贅沢だ。となると、イギリスとしてのローカル性よりも、インターナショナルな一級の音楽が席巻したのが18世紀、ロンドン。そんな音楽シーンを垣間見ることができるのが、先日聴いた『ロンドンのコレッリ氏』(harmonia mundi/HMU 907523)。
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気鋭のリコーダー奏者、シュテーガーと、カンミングス+イングリッシュ・コンソートが、当時、ロンドンで人気のイタリアの巨匠、コレッリの作品を、イタリアからやって来たジェミニアーニがアレンジしたものを取り上げるという凝ったアルバム。ちなみに、コレッリはロンドンを訪れることは無かったとのこと。それでも、その名声はロンドンに届いていたというのだから、18世紀、インターネットの無い時代の音楽ファンたちも、なかなか侮れない。何より、当時のロンドンっ子たちが好んだサウンドというのは、今もまた魅力的で... バロックのケレンではなく、キリっと端正なバロックで、どこかジェントルに響きが整えられたジェミニアーニのアレンジ。そんな仕上がりに英国趣味を感じ、国際音楽都市、ロンドンの、センスの良さも見出す。けれど、大陸では、すでにバロックはオールド・ファッションになりつつあった時代... そうしたあたりに、イギリスの保守性を垣間見るようでもあり、おもしろい。
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そんな、イギリスのセンスを、さらに味わうならば、チャールズ・エイヴィソン(1709-70)... ジェミニアーニの下で学んだイギリスの作曲家だが、彼の代表作のひとつ、ドメニコ・スカルラッティのソナタを合奏協奏曲にアレンジした作品は、まさに、当時のイタリア・バロックの需要に応える魅力的な作品。鍵盤楽器でいろいろ聴いてきたスカルラッティのソナタの数々を、見事に12曲の合奏協奏曲に仕上げて、楽しませてくれる。で、そこから6曲をチョイスして、活きのいい演奏を展開しているのが、フランスのピリオド・アンサンブル、カフェ・ツィマーマンによるアルバム(Alpha/Alpha 031)。そのクウォリティの高い演奏で聴くエイヴィソンは、絶品!エイヴィソンの仕立ての良さが際立ち、スカルラッティでありながら、また違う上質なイタリア・バロックを味あわせてくれる。それにしても、チェンバロ1台から、合奏協奏曲へと華麗に飛躍させるイマジネーション... 見事...
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流行は、アルプスを越えて、ドーバーを渡って、南からやって来る。のが、18世紀、国際音楽都市、ロンドンの音楽シーン。ナポリ楽派、全盛期、イタリアがモードの発信地であったことを考えれば、当然の流れでもあるのだけれど... が、そればかりでなかったのが、ロンドン。北は、スコットランドからも、流行はやって来たのだとか... という、興味深いムーヴメントを紹介してくれるのが、リコーダーの名手、ダン・ラウリンと、パルナッソス・アヴェニューによる"Airs And Graces"(BIS/BIS-SACD-1595)。当時、流行したスコットランド民謡と、当時のロンドンを賑わした作曲家たちによる、スコットランドにインスパイアされた作品を並べるという意欲作... ハンデルや、ジェミニアーニも含めて、繰り広げられるスコティッシュ・モードは、新鮮!何より、フォークロワならではの素朴さと、そこから生まれる人懐っこさは、たまらなく耳に心地よく、華麗なイタリア・バロックの一方で、こういうオーガニックなサウンドが歓迎されていたというあたり、18世紀、ロンドンの多様性に感じ入る。

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Chapter. 1 ハンデル氏とロンドンを歩く。
18世紀前半、ロンドンを彩る、ヘンデルとライヴァルたちを巡って...
Chapter. 2 南から、北から... ロンドンを歩く。
多様なロンドン... 最新のイタリアン・モードに、スコティッシュ・ブーム。
Chapter. 3 バック氏とロンドンを歩く。
18世紀後半、"ロンドンのバッハ"を中心に、古典派のロンドン...




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