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曲折の果てに... ブラームス、完結。 [2010]

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ジョン・エリオット・ガーディナーと、彼が率いるピリオド・オーケストラ、オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク(ORR)による、ブラームスの交響曲のシリーズ... 交響曲に留まらず、ブラームスに影響を与えた作品、それも、モンテヴェルディ合唱団が歌う合唱曲を添えて、思いの外、広がりを見せたシリーズとなった。が、交響曲そのものに関しては、一筋縄ではいかなかった思いも... ガーディナー+ORRのイメージを裏切って、ビックリさせられた1番(Soli Deo Gloria/SDG 702)に始まり... ビックリさせ過ぎて軌道修正したのか?かえって、進むべき方向を見定められなくなったか?そんな印象も受けた2番(Soli Deo Gloria/SDG 703)があり... その後で、彼らの本来のイメージへと還った3番(Soli Deo Gloria/SDG 704)。と、ポスト・ピリオドの時代に、ピリオドとしての方向性を模索するガーディナー+ORRの曲折が、時にもどかしく、また愛おしくも感じられ、興味深かった。そして、シリーズ、完結、4枚目、4番の交響曲(Soli Deo Gloria/SDG 705)を聴く。

ガーディナー+ORRのブラームスの交響曲のシリーズの楽しみは、ブラームスの交響曲に添えられる、ブラームスに影響を与えた作曲家たちによる合唱曲を中心とした様々な作品だったりする。そして、シリーズ完結編、4番の交響曲には、まず、ベートーヴェンの序曲「コリオラン」が... で、これがはまっている!
ベートーヴェンの序曲の中でも、特に緊張感に充ちたこの序曲のストイックさと、アルバムの最後、4番の交響曲の終楽章(track.13)の、より古典的なセンスが、見事に共鳴!アルバムが締まる!そんな、序曲「コリオラン」の後に、ガブリエリ、シュッツ、バッハの合唱曲が続くのだけれど、いきなり初期バロックまで遡ると、そのギャップが凄い... が、それだけ古風な音楽に触れての、ブラームスの4番の交響曲は、その古典回帰の志向がより際立ち、納得させられる。というより、唸らされる...
もちろん、そこには、ガーディナーならではの学究的な構成があって。4番、終楽章(track.13)に着想を与えたという、バッハの150番のカンタータから「私の目は常に主に注がれています」(track.4)が、ちょうどアルバムの真ん中に置かれていたりと、ただならず凝っている。また、ガブリエリ、そして、その弟子、シュッツ、そうした古い世代のバロックの伝統の上で、独自の音楽世界を昇華させたバッハという並びも、極めて興味深く。ヴェネツィア由来のドイツ音楽、質実剛健さの、骨をなぞるような、そんな感覚も。 しかし、このアルバムの魅力は、そういうアカデミックな部分だけでなく、1枚のアルバムとしての、驚くほどのまとまり。初期バロックからバロック、古典派、そしてブラームスへという、長い時間軸をもろともせず、まるでひとつの作品のように全てを聴かせてしまう求心力に感心させられるばかり。ブラームスを構成する、ドイツの伝統を丁寧に並べたことで、ブラームスという宇宙が目の前に展開されて、この作曲家のおもしろさに、改めて魅了されるような印象もある(それこそが、ガーディナーによる学究の成果なのだよなぁ~ )。
そして、演奏だが... ガーディナー+ORRならではの明晰さがあってこその、より多くの音を体験できる新鮮さ!もちろん、ピリオドならではのキレと、キレが生むパッション!正直に言うと、ブラームスの保守性が、どうも大時代的で、好きになれなかったのだけれど、保守性どころか、初期バロックにまで立ち返って、その古典的な性格を切り開いて響かせたガーディナー+ORR。「古典」に、下手な洗練を求めず、荒削り感すら出して生まれる、緊張感、漲る音楽に、ただただ魅了されるばかり。4番の交響曲、終楽章のコーダなんて、カッコ良過ぎ!色を濃くする悲劇性と、畳み掛けるように展開するスピード感が紡ぐドラマティックさは、爽快感すらある。

Brahms Symphony 4 Gardiner

ベートーヴェン : 序曲 「コリオラン」 Op.62
ジョヴァンニ・ガブリエリ : サンクトゥス と ベネディクトゥス a 12 *
シュッツ : サウル、サウル、なぜ私を迫害するのか? SWV 415 *
バッハ : カンタータ 第150番 『主よ、われは汝を求む』 BWV 150 より 「私の目は常に主に注がれています」 *
バッハ : カンタータ 第150番 『主よ、われは汝を求む』 BWV 150 より 「主は私の足を」 *
ブラームス : 宗教的歌曲 「惜しみなく与えよ」 Op.30 〔ガーディナーの編曲による弦楽伴奏版〕 *
ブラームス : 祭典と記念の格言 Op.109 *
ブラームス : 交響曲 第4番 ホ短調 Op.98

ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティク
モンテヴェルディ合唱団 *

Soli Deo Gloria/SDG 705




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