SSブログ

ロココが薫るバロック... [2010]

AVSA9877.jpg10orc.gif
1010.gif
ジョルディ・サヴァールが繰り出すアルバムというのは、どれも凝っていて、興味深く、何だかんだで無視できない... そうした中で、特に気になるのが、王様シリーズ(って、勝手にネーミング... 正確には、ひとつのシリーズではないみたいだけれど... )。サヴァールが、ひとりの王様にスポットを当て、その宮廷、時代を彩った音楽をまとめた歴史モノ。いや、そもそもクラシックとは歴史モノではあるのだろうけれど、サヴァールの場合、ひとりの王様に迫って、より歴史色が強く出ているあたり、クラシックにして異色?ありそうで、他に探せなかったり... で、「王様シリーズ」なんて言えちゃうほど、すでに様々な王様が取り上げられている。で、そんな王様シリーズ、久々のリリースが、フランス王、ルイ15世(在位 : 1715-74)の時代を回顧する"LE CONCERT SPIRITUEL"(Alia Vox/AVSA 9877)。フランスの音楽が宮廷から独り立ちした頃、国際音楽都市として存在感を示し始めたパリの音楽シーンを追体験... そんなアルバムを聴く。

ルイ13世(Alia Vox/AVSA 9824)、ルイ14世(Alia Vox/AVSA 9807)と、ブルボン朝の王の治世に合わせて、ルネサンスからバロックへ、フランスの音楽の発展を丁寧に追って来たサヴァールが、ルイ15世を取り上げる。それは、古典派前夜、ロココの頃のパリ... 伝説のオーケストラ、ル・コンセール・スピリチュエルをフィーチャーし、国際音楽都市、パリならではの、インターナショナルなラインナップ。イタリアの巨匠、コレッリに、ハンブルクの巨匠、テレマンを取り上げつつ、締めはフランスの伝統を受け継ぐ、大御所、ラモー... こういう作品が、18世紀前半のパリで人気を集めていたのかと、なかなか興味深い。それでいて、ルイ13世、ルイ14世と聴いてきての、ルイ15世は、ただならず洗練されていて...
ヴェルサイユの宮廷の趣味(時として国策的?な大仰さ... かと思うと、妙に素朴でもあったり... )から解き放たれた、軽やかさと、洒脱な気分が、何とも都会的!コレッリも、テレマンも、もちろんフランスの作曲家ではないけれど、パリっ子のチョイスから生まれるフランス趣味というのか、バロックであることは間違いないものの、バロックという鎧を着たサウンドではなく、バロックがロココの優美なサウンドを纏いつつある、うつろいをほのかに感じさせて、やわらか。もちろん、そこには、サヴァールの配剤があるのだけれど、ルイ15世の時代のパリの音楽シーンのセンスの良さが、1枚のアルバムにセンス良くまとまっているのが印象的。
そんなトーンを、ナチュラルに紡ぎ出すサヴァール... そして、彼が率いるピリオド・オーケストラ、ル・コンセール・デ・ナシオンの演奏。近頃のサヴァールと言えば、恐ろしくマニアックな中世モノ(カタリ派には参った... )やら、大胆にワールド・ミュージック(ケルティックに、オスマン・トルコに... )へと傾いてのタイトルが多かっただけに、"LE CONCERT SPIRITUEL"は、久々に「クラシック」のフィールドに還って来てくれたような、そんな思いもあったり。で、サヴァールならではの、落ち着きと、いい具合に枯れた風合いが、ルイ15世の時代をしっとりと包んで、ただならず魅惑的。また、チーム・サヴァール(何気にオノフリまで参加していて、いや、豪華です!)ならではの、演奏者、ひとりひとりのしっかりとした技術、音楽性に裏付けられて、一音一音にエスプリが漂い、バロックが淡く薫り出すあたりが新鮮... バロックならではのエモーショナルな表情も、常に麗しさを失わず、ありがちな、灰汁の強さで押す"ピリオド"とは一味違う、サヴァール流のしなやかな"ピリオド"が、絶妙。
マニアックな中世モノも、大胆にワールド・ミュージックも、サヴァールならではだけれど、久々に堪能するサヴァールのバロックは、このマエストロの味わい深さを再確認させられ、その音楽性に感じ入るばかり。やっぱり、サヴァールは凄い... となると、気になるのは、今後の行方...
ルイ16世、ル・コンセール・スピリチュエルの後半の活躍も聴けるのだろうか?いや、聴きたい!贅沢を言えば、遡ってアンリ4世、下ってナポレオン1世、ルイ18世あたりくらいまでは、是非、聴いてみたい!

LE CONCERT SPIRITUEL - AU TEMPS DE LOUIS XV
LE CONCERT DES NATIONS ・ JORDI SAVALL


コレッリ : 合奏協奏曲 ニ長調 Op.6-4
テレマン : 組曲 ニ長調 TWV 55:D6
テレマン : フラウト・ドルチェとヴィオラ・ダ・ガンバのための二重協奏曲 イ短調 TWV 52:a1
テレマン : 組曲 ホ短調 TWV 55:e1 〔『ターフェルムジーク』 第1集 より〕
ラモー : 『優雅なインド』 組曲

ジョルディ・サヴァール/ル・コンセール・デ・ナシオン

Alia Vox/AVSA 9877




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。