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生誕300年、レオポルト・モーツァルト。 [2013]

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えーっと、二宮敦人著、『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』という本を読んでおります。やっぱ、天才たちのカオスというか、様子、覗き見たいじゃないですか?でもって、はじめに(は、著者にこの本を書く切っ掛けを与えた、彫刻科、藝大生妻の日常の一端がちらと取り上げられる... )、から、すでにブっ飛んでいて、一気に惹き込まれた!いや、天才たちの視点は、我々、凡才が、けして捉えることのできない地平を捉えていて、一見、ヘンテコなのだけれど、実は、圧巻なのだと思う(裏を返せば、我々、凡才が、あらゆる事象を、如何に一面的にしか見ていないか!さらに問題なのは、ある視点を模範解答とし、一面的であれ、という同調圧力まで働く... )。そういう、天才たちの視点は、如何にして生まれるのだろうか?チビチビ読み進めながら、今、もの凄く気になっている。さて、音楽に話しを戻しまして... 音楽史上、最も輝かしい天才、モーツァルトを生んだ、パパ・モーツァルトに注目してみる。というのも、今年は、レオポルト・モーツァルトの生誕300年のメモリアル!
ということで、クリスティーネ・ショルンスハイム(ハンマーフリューゲル)が弾く、レオポルト・モーツァルトのハンマーフリューゲルのためのソナタ、第1番、第2番、第3番と、リュディガー・ロッター(ヴァイオリン)、セバスティアン・ヘス(チェロ)とのトリオで、6つの教会と室内のためのトリオ・ソナタから、第1番、第2番、第3番を取り上げる2枚組(OEHMS/OC 860)を聴く。

レオポルト・モーツァルト(1719-87)。
ミュンヒェンから北西へ50Kmほど行った、南ドイツの商都、アウクスブルクで、製本職人をしていた父の下に生まれたレオポルト(でもって、モーツァルト家自体は、建築士の家だったらしい... 音楽を構築する作曲家のDNAは、建築から来ているのかも?)。アウクスブルクのキムナジウムで学んだ後、聖職者を目指し、1737年、ザルツブルクのベネディクト会大学(現在のザルツブルク大学... )で、哲学と法学を学び始めるも、さぼりがち... というのも、すでに、レオポルトの関心は音楽に向いており、1739年、出席日数が足らず、大学を除籍となると、ザルツブルク司教座聖堂参事会員(言うなれば、ザルツブルク選帝侯領の参議院議員みたいな... )、トゥルン・ヴァルサッシナ・ウント・タクシス伯に、楽士として仕える機会を得て、音楽家としての第一歩を踏み出す。そこで、6つの教会と室内のためのソナタ(1740)を発表し、作曲家としても精力的に活動。1743年には、ザルツブルク大司教の宮廷楽団のヴァイオリニストに採用され、めきめきと才能を発揮。音楽人として確固たる地位を築き始めた1747年、アンナ・マリア・ペルトゥル(1720-78)と結婚、その後、7人の子をもうける。が、成長したのは、三女、マリア・アンナ(1751-1829)、愛称、ナンネルと、末っ子、ヴォルフガング(1756-91)だけだった。さて、ザルツブルク大聖堂の聖歌隊のこどもたちの音楽教師としても活躍していたレオポルトは、ヴォルフガングが誕生した年、1756年に、『ヴァイオリン教程』を出版。これが評判を呼び、その名は、ザルツブルクに留まらず、広く知られるようになる。そして、1757年、宮廷作曲家となり、さらに、1763年には、宮廷副楽長に昇り、ザルツブルク楽壇の重鎮に... 一方で、1760年代に入ると、自らの作曲活動は控え、こどもたちの教育に力を入れ、ナンネル、ヴォルフガング、ともに才能を開花させ、天才を育てるステージ・パパとしての人生が始まる。
という、レオポルトの作品、まずは、こどもたちが音楽を学び始めた頃に作曲された、3つのハンマーフリューゲルのためのソナタ(disc.1)... バッハが逝って9年目、ヘンデルが逝った年、1759年に作曲された1番(disc.1, track.1-3)から聴くのだけれど、いやー、黎明期のピアノ=ハンマーフリューゲルのための、まさに黎明期の音楽と言ったら良いだろうか、まるで、ナンネルやヴォルフガングのために書かれたのかと思わせるシンプルさ、素直な音楽が印象的。時代はバロックを脱して間もない頃、前古典派の時代であって、ヴォルフガングがウィーンで華麗にピアノを弾くのは20年先... だから、その音楽は、素朴。けれど、ハンマーフリューゲルのチェンバロからの飛躍がしっかりと活かされ、明瞭に打鍵されて、粒立ちの良い音楽が綴られて行く様は、まさに古典主義のそれであって、新しい時代の到来が、得も言えぬ初々しさを伴って響き出す。で、興味深いのは、間違いなく20年先のヴォルフガングを思わせる表情が随所に見て取れること... 2楽章、アンダンテ(disc.1, track.2)の愉悦を感じさせるあたり、終楽章、プレスト、アンダンテ・グラツィオーソ(disc.1, track.3)の、花火を打ち上げるように盛り上げるあたり、間違いなく聴き知った「モーツァルト」を見出せる。1760年に作曲された2番(disc.1, track.4-6)では、1楽章、アレグロ・アッサイの冒頭から登場する特徴的なテーマが、まさに「モーツァルト」!そして、3つ目、1763年に完成された3番(disc.1, track.7-9)では、もはや「モーツァルト」は完成されていると言っても過言ではない。裏を返せば、ヴォルフガングが、如何に、父、レオポルトから影響を受けていたかを思い知らされる。いや、「モーツァルト」のソナタの雛型を作った作曲家、パパ・モーツァルトは、侮れない!
続いて、6つの教会と室内のためのトリオ・ソナタから、室内ソナタ(室内=プライヴェートな空間で演奏されるソナタ... )にあたる、第1番(disc.2, track.1-4)、第2番(disc.2, track.5, 6)と、教会ソナタ(文字通り教会にて、ミサの合間に演奏された厳かなソナタ... )、第3番(disc.2, track.7-9)を聴くのだけれど、それは、ハンマーフリューゲルのためのソナタからさらに20年ほど遡った1740年の作品で、バッハによる『音楽の捧げもの』(1747)の7年前の作品... という見方をすると、衝撃を受ける。いや、驚くほど軽快に古典主義が響き出していて... "教会と室内のための"とか、"トリオ・ソナタ"とか、タイトルからは、イカニモなバロックを思わせるものの、レオポルトの音楽は、何ともあっけらかんとしていて、快活で、表情に富み、麗しい新時代が示される。一方で、得も言えず牧歌的な2番の1楽章、アンダンティーノ(disc.2, track.5)では、チェロがハーディ・ガーディのような音色を奏でて、田舎風?こういうギミックは、バロックっぽいか... 3番、2楽章、アンダンテ(disc.2, track.8)では、チェロが低音部で重々しく響き、しっかりと対位法を繰り出しての教会風。古きも活かすのが、6つの教会と室内のためのトリオ・ソナタの魅力か... 過渡期の弱さではなく、新旧、2つの要素をつないで、卒なくおもしろさを生み出すレオポルト。そのあたりに、息子、ヴォルフガングに通じるセンスを見出せるのか...
そんなレオポルトの音楽を、ショルンスハイムのハンマーフリューゲルを軸に織り成される2枚組。ショルンスハイムならではの学究的実直さと、実直なればこそ息衝く作曲家の創意があって、ありのままなればこそのナチュラルなおもしろさが、パパ・モーツァルトの作曲家としての先進性、技量、センスを際立たせる。いや、ショルンスハイムの明確なタッチが、レオポルトのソナタに、「モーツァルト」を掘り起こし、実に興味深い体験を聴き手にもたらしてくれる。そんなショルンスハイムと、息の合った演奏を聴かせるロッターの明朗なヴァイオリン、ショルンスハイム、ロッターを、しっかりと下支えするヘスのチェロもすばらしく... 彼らが加わっての2枚目、トリオ・ソナタ(disc.2)では、最初の一音から惹き込まれる!ハンマーフリューゲルに、楽器が2つ加わっただけで、こうも色彩は豊かなものとなるのかと... 3人、それぞれの音楽性と、ピリオドの楽器なればこその個性が相俟って、より広がりのある響きを生み出していて、マジック!いや、絶妙にかみ合って生まれるケミストリーは、レオポルトの存在を一段と引き上げていて、聴き入ってしまう。

Solosonaten und Trios von Leopold Mozart
Christine Schornsheim Sebastian Hess Rüdiger Lotter


レオポルト・モーツァルト : ハンマーフリューゲルのためのソナタ 第1番 ヘ長調
レオポルト・モーツァルト : ハンマーフリューゲルのためのソナタ 第2番 変ロ長調
レオポルト・モーツァルト : ハンマーフリューゲルのためのソナタ 第3番 ハ長調

レオポルト・モーツァルト : 6つの教会と室内のためのトリオ・ソナタ 第1番 ヘ長調 **
レオポルト・モーツァルト : 6つの教会と室内のためのトリオ・ソナタ 第2番 ハ長調 **
レオポルト・モーツァルト : 6つの教会と室内のためのトリオ・ソナタ 第3番 イ長調 **

クリスティーネ・ショルンスハイム(ハンマーフリューゲル)
リュディガー・ロッター(ヴァイオリン) *
セバスティアン・ヘス(チェロ) *

OEHMS/OC 860




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