さようなら、2017年。 [overview]
さあ、この日がやって参りました。大晦日です。騒ぎに騒いだ2017年がやっと終わる!今や、清々しさすら覚えてしまう、12月31日であります。そうした中、音のタイル張り舗道。の、2017年を振り返ってみようかなと... という、2017年、酉年ということで、メシアンの「鳥たちの目覚め」に始まり、音のタイル張り舗道。が選ぶ"今年の音楽"、リヒャルト・シュトラウスの『サロメ』まで、132タイトル... 生誕450年のメモリアルだったモンテヴェルディに注目しつつ、モンテヴェルディのその周辺も含め、音楽史、最大の変革期のダイナミズムを追い、それから、モーツァルトの人生も追い、ベートーヴェンの人生も追い、この2人を育んだ、当時のウィーンの音楽シーンを俯瞰し、さらにECM NEW SERIESを大フィーチャー!このレーベルの希有な存在感に改めて感心... そうそう、没後250年のメモリアルだったテレマンも大フィーチャー!18世紀を前のめりになりながら走り切った大家の存在には、さらに魅了された。そして、カタルーニャの騒動を切っ掛けに、スペインの音楽にも注目!いや、カタルーニャという存在があったればこそ、スペインの多様性と、そこから生まれる豊かな音楽を思い知らされた。
しかし、音楽史をつぶさに見つめて浮かび上がるのは、けして分断ではなく、"つながり"のみ!ということ... どの国の音楽も、どの民族の音楽も、それぞれに個性を育みながら、つながり、また、思いの外、自由に移動して、新たなケミストリーを生んで来た史実。そういう音楽のフレキシブルさを、21世紀を生きる、より多くの人々が認識できたなら、自らと世界の捉え方は、また違ったものになるのかも... いや、そうあって欲しい!という願いを籠めて、132タイトルをざっと振り返ります。
しかし、音楽史をつぶさに見つめて浮かび上がるのは、けして分断ではなく、"つながり"のみ!ということ... どの国の音楽も、どの民族の音楽も、それぞれに個性を育みながら、つながり、また、思いの外、自由に移動して、新たなケミストリーを生んで来た史実。そういう音楽のフレキシブルさを、21世紀を生きる、より多くの人々が認識できたなら、自らと世界の捉え方は、また違ったものになるのかも... いや、そうあって欲しい!という願いを籠めて、132タイトルをざっと振り返ります。
こうして、132タイトル、ざっと並べてみると、音楽は「旅」だなと... って、いきなり、ポエムっぽくなってしまうのだけれど、いや、旅なのです。初期バロックのイタリアを巡り、北欧へ、フランスへ、アメリカへ、ロシアへ、カタルーニャからスペイン各地を巡り、時代を遡って、中世の巡礼たちを追い、中世文化の揺籃の地、オクシタニアに思いを馳せ、さらに、古代の地中海文化圏の巫女たちの足跡を辿り、ヴァイルの亡命の道程をなぞり、ヘンデルの時代のロンドンを眺め、モーツァルトの旅も見つめ、1780年代のウィーンから、ベートーヴェンの時代のウィーンへ、音楽で旅し、音楽史の中を旅し、旅するような気分になる132タイトルのチョイスだったかなと... そんな旅を経て、今、思うのは、時間芸術たる音楽の、その時間経過にこそ、ある種の旅が籠められているのでは?古楽の太鼓の達人、エステバンのアルバム、"El aroma del tiempo(時の香り)"を聴いて、時に香りを見出したエステバンの感性に刺激を受けたのかもしれない、音楽を聴くことは、「旅」することに似ているのかもしれない。そんな風に思うと、何気なく聴いてしまう音楽もまた、違った感覚を以って聴くことができるような気がする。
さて、2017年、特に印象に残ったアルバムを挙げてみる。まずは、テレマンの無伴奏フルートのための12のファンタジー。たった1本の笛が繰り出す世界の広大さたるや!普段はちょっと取り澄まして感じられるフルートという楽器から、縦横無尽の音響を引き出し、1本の笛には思えない、深さ、広がりを感じさせてしまうテレマン。改めて聴いてみると、本当に18世紀の音楽なのか?と思わせる、時代感覚を消失させてしまう異様さというか、マジカルさがあって、とにかく驚かされる。そして、そのマジカルさを極める有田正広の演奏!笛の魔性というのか、フルートという形を超越する魔的なる響きを生み出していて、今さらながら打ちのめされた。
さて、時代を一気に下って、1990年代!音楽という存在を新たに捉え直そうとしたブーレーズのIRCAMでの成果を集めた作品集、シュル・アンシーズ、メサジェスキス、アンセム2を取り上げたアルバムもまた強く印象に残る。音響解析から新たな音楽を構築する... それは音楽作品と言えるのだろうか?なんて思ってしまうこともあったのだけれど、音楽史の果てに出現した、そのフューチャリスティックな在り様は、極めて90年代的で、まず純粋にクール!今、世間では、80年代が大ブームだけれど、ブーレーズがIRCAMに籠っていた90年代の繊細さもまた魅力的。そして何より、音楽について、今一度、考える機会を与えてくれた。
それから、もう1枚、カサド、イザイに、ダッラ・ピッコラ、リゲティ、そしてソッリマまで、20世紀の多彩な作曲家たちによる、ブルネロの独奏チェロのための作品集、"ALONE"の凄さに舌を巻く。ブルネロは、ブーレーズのような最新鋭のコンピューターを用いることなく、チェロというひとつの楽器で、音楽を解析してしまう!その恐るべきニュートラルな姿勢に、痺れてしまう!もはや、クラシック、現代音楽、ロック、関係無く、ストイックに突き詰めて、その先に、チェロによるビッグ・バンを引き起こす!いや、"ALONE"、ただひとり、なんて、あり得ないようなサウンド... 何より、チェロという楽器の可能性に驚かされ、圧倒された。
いや、まだまだ印象に残るものはあって... 定番オペラ、『カルメン』、『サロメ』を、もう一度、丁寧に聴き直してみたら、その切っ先の鋭さにショックを受ける!定番だからって、甘く見ては火傷をする。振り返れば、どちらの作品も、初演当時はカウンター・カルチャーとして、めちゃくちゃ攻撃的だったのだよね... いや、その攻撃的なあたり、21世紀に至っても、まったく鈍っていない。それから、1780年代半ばのモーツァルトのピアノ・コンチェルト!まさにお馴染みの名曲の数々なのだけれど、年代を追って、丁寧に聴き直すと、モーツァルトの急成長っぷりが炙り出され、今さらながらに驚いてしまった。そして、ベートーヴェンのピアノ・コンチェルトを代表する「皇帝」!この作品は、戦時下で作曲されていた... ということを意識しながら、改めて聴いてみたのだけれど、まったく違った風景が見えて来る。フランス軍による包囲戦、防空壕の中で、あの華麗さが生まれたかと思うと、切なくなってしまう。いや、音楽って、逞しい。音楽の力を思い知らされる。
なんて、続けていると、切りが無いので、本年はこれにて。
良いお年を!
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