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シュトルム・ウント・ドランク! [2014]

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さて、キリスト教世界では、カーニヴァルを終えると四旬節を迎えます。非キリスト教徒からすると、何ですか?それ... となるのだけれど、音楽史をつぶさに見つめれば、何かと遭遇するキーワードだったり... 例えば、四旬節に入り、オペラが上演できなくなる。とか、四旬節のためのオラトリオを作曲する。とか... 復活祭の前の46日間を指す四旬節は、キリストの"復活"の前にあたり、キリストの"受難"に思いを寄せ、節制し、悔い改める期間。ま、今では、そう厳密なものではないわけだけれど、かつては、華美な音楽は控えられ、音楽は宗教的なものに限られていた(バッハがいたライプツィヒでは、教会カンタータも取りやめになっていたのだとか... )。で、本日から、その四旬節。当blogも"受難"モード?かつての音楽シーンを追体験してみようかなと...
ジョヴァンニ・アントニーニ率いる、イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏で、キリストの"受難"を籠めた交響曲と考えられる、ハイドンの49番の交響曲、「受難」を中心に、シュトルム・ウント・ドランクの芸術運動に迫るアルバム(Alpha/Alpha 670)を聴く。

ハイドンがエステルハージ侯爵家に副楽長(1761- )として仕え始めて7年目、楽長、ヴェルナー(1693-1766)の死去により、その後任となって2年目の1768年に作曲された交響曲、第49番、「受難」(track.19-22)。「受難」のタイトルは、ハイドンによって付けられたわけではないものの、緩急緩急という教会ソナタをなぞる楽章構成に、短調による重々しく悲劇的な雰囲気が"受難"のイメージを喚起させるということで、「受難」と呼ばれるようになったらしい。で、興味深いのが、当時、受難交響曲というものが多く作曲されており、ハイドンの「受難」も、おそらくそうした交響曲の一曲で、四旬節の山場、聖金曜日(復活祭の前々日、キリストの受難にあたる日... )に演奏されたと考えられている。となると、辛気臭い交響曲なのか?いやいやいや、バッハの受難曲が壮大で聴き応え満点であるように、ハイドンの「受難」交響曲も、聴き手をグイグイ惹き込むような求心力に充ち満ちている。華美な音楽は控えられ、音楽は宗教的なものに限られた四旬節ではあるが、そもそも、そこいらの物語より、よっぽどドラマティックであるキリスト教。何しろ、受難こそ、パッション!なのである。
さて、アントニーニ+イル・ジャルディーノ・アルモニコによるこのアルバムの聴き所は、ポスト・バロックの芸術思潮のひとつ、シュトルム・ウント・ドランク=疾風怒濤(ドイツの劇作家、クリンガーが1776年に書いた戯曲からその名が採られた文学運動... 1774年のゲーテの『若きウェルテル』が代表的な作品で、やがて誕生するロマン主義の萌芽となる... )にスポットを当てること... で、パッション溢れる「受難」交響曲に象徴される、ハイドンのシュトルム・ウント・ドランクの時代(1766-73)を見つめるにあたり、その始まりと目される、1761年、ウィーンで初演されたグルックのバレエ『ドン・ジュアン』(track.5-18)も取り上げる。フランス風のたおやかさを見せながらも、パリの花やぎとは違うしとやかさを感じさせるのがウィーン流か... そこに、イタリアを思わせる味わい深いメロディーが彩りを添えて、インターナショナルなイメージを形成するグルック。が、やがて、イタリア・バロック的な激しさがドラマにエンジンを掛け、フィナーレ(track.18)、ドン・ジュアンが地獄に引き摺りこまれる場面(グルックも含め、いろいろ引用された18世紀の定番?復讐の女神たちの踊り... )の激しさは、まさに疾風怒濤!それは、本国イタリアでは廃れた激しさのリヴァイヴァルだろうか?シュトルム・ウント・ドランクは、ポスト・バロックではあるけれど、イタリア・バロック回顧でもあるように感じる。そこから再びハイドンの「受難」交響曲に戻ってみると、そのドラマティックさが、オールド・ファッションにも聴こえ... もちろん、21世紀の現在に当時の古臭さは意味を成すことは無く... それより、古典主義には無い泥臭さみたいなものがインパクトを生み、惹き込まれるばかり...
で、このアルバムのさらにおもしろいところが、ハイドンの1番の交響曲(track.23-25)を最後に取り上げるところ。それは、ハイドンが初めてポストを得た20代後半、モルツィン伯爵の楽長に就任(1759)した頃の作品で、後に"交響曲の父"と呼ばれる巨匠の、第一歩となる作品("1番"とはいえ、ハイドンにとっての最初の交響曲であるかは、実はわかっていない... )。で、"交響曲の父"の第一歩となれば、交響曲そのものにとっても、まだまだ初々しい頃となるわけだ。が、1番の交響曲は、気持ちが良いくらいに古典主義を展開できていることに驚かされる!それは、青年モーツァルトの作品だと言っても何ら抵抗を感じない雰囲気(ちなみに、モーツァルトはまだチェンバロを弾き始めたばかりの頃... それが3歳だというから、神童、畏るべし!)。古典派ならではの明朗さに包まれ、軽快に音楽を繰り出し、古典主義のポジティヴ感に充ち溢れている。そんな音楽を目の前にすると、ハイドンの方向性というのは、第一歩からしてすっかり見定まっていたのだなと感服させられる。一方で、その後に来るシュトルム・ウント・ドランクの時代が、とても特異なものに思えて、より興味深く感じる。
という、新しさと古さが混在するポスト・バロックの時代を、活き活きと響かせるアントニーニ+イル・ジャルディーノ・アルモニコ。バロック・ロックで鳴らした彼らだけに、シュトルム・ウント・ドランクは、疾風の如く、怒濤に繰り広げて、圧巻!それでいて、シュトルム・ウント・ドランクのバロック性が強調されるようなところもあり、おもしろい。何より、エッジが効きまくった刺激的な演奏に、ハイドンのイメージは刷新されるよう。グルックの『ドン・ジュアン』では、ひとつひとつのシーンが表情豊かに描き出され、フィナーレ以外は何となく印象の薄かったこのバレエを、息衝かせる!そうして浮かび上がる、シュトルム・ウント・ドランクの気分... ある種の不器用さが生み出す迫力、味わいを前にし、目が覚める思いがする。

LA PASSIONE Giovanni Antonini / Il Giardino Armonico

ハイドン : 交響曲 第39番 ト短調 Hob.I-39
グルック : バレエ 『ドン・ジュアン』 〔1761年、初演版〕
ハイドン : 交響曲 第49番 ヘ短調 Hob.I-49
ハイドン : 交響曲 第1番 ニ長調 Hob.I-1

ジョヴァンニ・アントニーニ/イル・ジャルディーノ・アルモニコ

Alpha/Alpha 670




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