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バロックから新たな花が開く!オペラ・バレ、魅惑のラモー。 [before 2005]

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立春です。春です。けど、まだまだ寒い... ますます寒い... 暖冬からの寒波到来で、桜の開花予想も狂いが出ているのだとか。梅が咲いたというニュースを随分と前に見た記憶があるけれど、春の訪れは相当に引き伸ばされそう。なんて思うと、気分も重くなるので、春を呼ぶような音楽を聴くよ!ゼウスとヘラの娘、青春の女神、ヘーベー(フランス語で、エベ... )、プロデュースの、詩と、音楽と、舞踏によるお祭り... という、ラモーによるオペラ・バレ『エベの祭典』。ルイ14世の儀式ばった時代が終わり、ルイ16世を断頭台に送るような不穏な時代の前の、フランスらしい朗らかさに包まれたルイ15世の時代を象徴する音楽!キャッチーなメロディーに、弾けるリズムと、一足先に春がやって来たような音楽を聴いて、テンション上げてみる試み...
ウィリアム・クリスティ率いるレザール・フロリサンと、ソフィー・ダヌマン(ソプラノ)、サラ・コノリー(ソプラノ)、ジャン・ポール・フシェクール(テノール)、ポール・アグニュー(テノール)らによる、ラモーのオペラ・バレ『エベの祭典』(ERATO/3984-21064-2)を聴く。

1733年、パリのオペラ座で初演されたトラジェディ・リリク『イポリトとアリシ』によって、遅まきながら50歳でパリのオペラ・シーンに進出したラモー(それまでは、オルガニストとして、鍵盤楽器奏者として、音楽学者として知られていた... )。リュリ以来のフランス・バロックの伝統、音楽悲劇=トラジェディ・リリクを型枠としながらも、その音楽は、当時、極めて斬新で、熱狂と議論を巻き起こすことに... そんな第1作に続いてオペラ座で上演されたのが、リュリ後を象徴するオペラ・バレ(カンプラによって切り拓かれたスタイルで、バレエ好きのフランス人を満足させる、ふんだんにダンス・シーンが盛り込まれたオペラ... )による『優雅なインドの国々』(1735)。この作品は、『イポリトとアリシ』を越えて大ヒットし、ラモーは、一躍、パリのオペラ・シーンの中心に... そして、オペラを手掛け始めて6年目となる1739年の作品、オペラ・バレ『エベの祭典』は、さらなる大ヒットに!
という『エベの祭典』を聴くのだけれど、いやー、納得。とにかく、楽しい!あーだ、こーだ、考えず、ただただ、素敵な音楽が次々と溢れ出して来るイメージ... 始まりのプロローグ(disc.1, track.1-13)の序曲、冒頭の鮮やかな疾走感は、もはやバロックを脱しているようで、モーツァルトあたりを予感させるトーンが聴こえ、本当に魅力的。バッハのクリスマス・オラトリオ(1734)の5年後の作品だなんて、ちょっと想像が付かない... それにしても、キラキラと輝いている。ラモーならではの軽快なリズムが、ワクワクする気持ちを掻き立てて、たまらなく楽しい!プロローグの力強いブレ(disc.1, track.7)、第1アントレ、船乗りたちの合唱と、軽やかにして勇壮なタンブーラン(disc.1, track.21-23)、太鼓に導かれての再びのタンブーラン(disc.1, track.30)は、また何とも言えずノリが良く... 第2アントレ、5場、バレエ(disc.2, track.2-7)の、不安げなあたりから、やがて訪れるだろう勝利と喜びを描く豊かな表情... そして、「舞踏」がフィーチャーされる第2アントレ(disc.2, track.18-42)の、牧歌的な景色の中に人懐っこいリズムが煌めく愛らしさ... オペラの中のバレエの音楽が組曲に編まれ、単独でも演奏されるラモーだけに、『エベの祭典』でも、各所に散りばめられたバレエの音楽は大きな魅力となっている。いや、ラモーという作曲家の多彩さを知る、絶好のオーケストラ・ピースになり得て、感心させられるばかり...
一方で、オペラならではの力強いドラマが打ち出されるようなことはない『エベの祭典』。その構成は、古代ギリシアの女性詩人、サッフォーの恋の行方を描く「詩」(disc.1, track.14-34)、スパルタ王女とラケダイモンの戦士の恋の試練と成就を描く「音楽」(disc.1, track.35-38, disc.2, 1-17)、古代ローマの神、メルクリウス(フランス語でメルキュール... )が田園を訪れ、村娘を見染める「舞踏」(disc.2, track.18-42)の3つのアントレと、この3つをエベが企画するというプロローグ(disc.1, track.1-13)からなるオムニバス... それは典型的なオペラ・バレであって、オペラの一般的なイメージで捉えると、随分と散漫な作品に感じられるかもしれない。が、裏を返せば、オペラ・バレならではの魅力が際立ち、3つのハッピー・エンドが醸し出す、ふんわりとした空気感は最高!また、ラモーの音楽の魅力が、物語に縛られることなく、鮮やかに浮き立つようで... そういう点で、『エベの祭典』は、より音楽的な作品と言えるのかもしれない。だからこそ、その魅力に惹き込まれる。
そんなラモーの魅力を、さらりと引き出すクリスティ+レザール・フロリサン。肩の力が抜けつつも、リズムの刻みにキレがあり、芳しさと小気味良さが絶妙。他愛ない物語も、メローにやさしく捉えて、ダンスになればリズムが爆ぜる!心地良く軽快なその演奏に触れていると、ワクワクする。そんなレザール・フロリサンの演奏に乗って、歌手たちも表情豊かに歌い上げ、魅惑的。ダヌマン(ソプラノ)の艶やかさ、メシャリー(ソプラノ)のキュートさ、コノリー(メッゾ・ソプラノ)のクラッシーさ、アグニュー(テノール)の伸びやかにして深みのある表情、フシェクール(テノール)の飄々とした風情... さり気なくもキャラがしっかりと立ち、他愛のない物語に立体感を与えるアンサンブルは巧い。それから、しっかりと音楽を盛り上げるレザール・フロリサンのコーラスも見事。やわらかさと力強さを合わせ持ち、縦横無尽。楽しさを倍増させる。

RAMEAU Les Fêtes d'Hébé
Les Arts Florissants WILLIAM CHRISTIE


ラモー : オペラ・バレ 『エベの祭典』

ソフィー・ダヌマン(ソプラノ)
サラ・コノリー(メッゾ・ソプラノ)
マリー・ズー・ヴィーチョレク(メッゾ・ソプラノ)
ガエル・メシャリー(ソプラノ)
ジャン・ポール・フシェクール(テノール)
ポール・アグニュー(テノール)
リュック・コードー(バリトン)
ティエリー・フェリクス(バリトン)
マテュー・レクロアール(バリトン)
ロラン・スラール(バリトン)

ウィリアム・クリスティ/レザール・フロリサン

ERATO/3984-21064-2




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コメント 2

サンフランシスコ人

「まだまだ寒い... ますます寒い」

今週末の天気予報.......サンフランシスコでは20Cを超える...

by サンフランシスコ人 (2016-02-05 07:04) 

carrelage_phonique

カリフォルニアは暖かいのですね。

こちらは、ラモーを聴いて、気分だけ春です。
by carrelage_phonique (2016-02-05 18:39) 

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