SSブログ

18世紀、スペイン、リズムが爆ぜる、ファンダンゴ! [before 2005]

3984214682.jpg
暦の上では、すでに秋なのですよね。何気に暑さも一段落したようで、ほっと一息...
さて、クラシックを夏休み!ということで、ワールド・ミュージックからクラシックを眺めたら?ということだった今月なのだけれど、すっかり「スペイン」にはまってしまい... いや、改めて見つめるスペインの音楽の興味深さたるや!これまでスペインを、あまりに漠然と辺境と捉えて来たことを猛省しつつ、スペインの音楽史にグググっと引き寄せられて、サヴァールのイサベル女王マクリーシュのレルマ公と、かなりマニアックに攻めて、夏休み感はどこかに吹っ飛びそうなので、軌道修正。改めて、ワールド・ミュージックから、スペイン!
アンドレアス・シュタイアーのチェンバロで、ソレールで、ボッケリーニで、ファンダンゴ!18世紀、スペインのチェンバロのための作品を集めたスパイシーな1枚、"VARIACIÓNES DEL FANDANGO ESPAÑOL"(TELDEC/3984-21468-2)を聴く。

様々な言葉、文化を持つヨーロッパの国々ではあるけれど、その音楽史に関しては、国境を越えて最新モードに振り回されて来た歴史でもある。そうした中で、19世紀の国民楽派というムーヴメントの出現を待たずして、屈託無く民族性を表現できていたスペインの音楽の自負たるや、なかなか大したもの。もちろん、本場、フランドルからルネサンス・ポリフォニーが持ち込まれれば、すっかり最新モードに染まることもあったけれど、振り子のように必ず「スペイン」へと揺り戻すから、おもしろい。で、「スペイン」へと振れての、18世紀、チェンバロのための作品を集めた"VARIACIÓNES DEL FANDANGO ESPAÑOL"、スペインのファンダンゴ変奏曲集。18世紀、スペインで躍られ始め、やがてヨーロッパ中でブームになったダンス・ミュージックを、チェンバロで鳴らしたら... という、バロックから古典主義の時代にスペインで活躍した作曲家たちによる「スペイン」の魅力が弾けるスパイシーな音楽の数々。もう、のっけから、フラメンコを踊り出したくなるような、スパイシーさ!
始まりは、ファンダンゴの定番、ソレール(1729-83)のファンダンゴ。ちょっとギターを思わせる哀愁漂う前奏の後で、まさにフラメンコなリズムを刻み出すチェンバロのカッコ良さ!いやー、久々に聴いてみると、チェンバロという楽器が、思いの外、「スペイン」にはまってしまうことに、びっくり。ジャッジャッジャッジャッと、キレ味鋭くチェンバロで掻き鳴らされるファンダンゴは、完全にクラシック離れしている。これはもうワールド・ミュージック... という熱っぽいソレールの後で、振り子を揺れ戻し... アルベロ(1722-56)によるレセルカータ、フーガとソナタ(track.2-4)は、ドメニコ・スカルラッティのソナタを思わせる、瑞々しくも華々しい音楽が繰り出され、魅了されてしまう。続く、ガレス(1758-1836)による3つのソナタ(track.5-7)は、多感主義的なトーンに包まれて、センチメンタルが滲むのが印象的。で、そうした雰囲気がまた、「スペイン」に共鳴していて、おもしろい。西欧流の充実した音楽を聴かせながら、「スペイン」をさり気なく効かせる巧みさ... そこから、ガッツリと「スペイン」を繰り広げるロペス(1742-1821)のスペイン風ファンダンゴによる変奏曲(track.8)には、鮮やかにファンダンゴのリズムを刻みながらも、どこかモーツァルトを思わせる古典派的な朗らかさも聴こえて来て、おもしろい。こうして、"VARIACIÓNES DEL FANDANGO ESPAÑOL"を聴いてみると、「スペイン」と最新モードに卒なく対応するスペインの作曲家たちのしなやかな感性に驚かされる。いや、スペインの音楽というのは、実にフレキシブルなのだなと... 中世、イベリア半島における多文化主義の記憶だろうか?そんなことを、ふと思わせる魅惑的な音楽の数々...
という、「スペイン」に目を付けたシュタイアーのセンスが冴えている!そもそも、チェンバロという楽器の古風さと、「スペイン」が放つスパイシーさは、水と油のように感じるのだけれど、それを飄々と結び付けてしまうのが鬼才ならでは... いや、弦を爪弾くというチェンバロの構造を、ギターに重ねる目敏さがあって、巧い!そうして、チェンバロから鮮やかに「スペイン」が繰り広げられるのだけれど、"VARIACIÓNES DEL FANDANGO ESPAÑOL"に籠められた「スペイン」からは、18世紀の最新モードの諸相がこぼれ出すところもあり、おもしろい!ローカルにして、メインストリームを意識させる精巧な構成... 単に奇を衒うだけでない、シュタイアーの鋭い視点にも感服させられる。そして、それらを颯爽と聴かせてしまう、シュタイアーの見事なタッチ!大胆かつパワフルでありながら、徹底してクリアに鳴らし切って生まれるスリリングなサウンドは、チェンバロという楽器のイメージを覆しそうなくらい... いや、チェンバロという楽器は、まったく以ってエキサイティング!
それを思い知らされるのが、ショルンスハイムを迎えての2台のチェンバロによるボッケリーニのファンダンゴ(track.14)。オリジナルのギター五重奏を、シュタイアーとショルンスハイムによるアレンジで聴くのだけれど、まあ、何と言うことでしょう!チェンバロの金属的なサウンドと、シュタイアーの尖がった音楽性がスパークして、ギター五重奏では味わえない迫力に痺れてしまう。とにかく、シュタイアーとショルンスハイムによる、丁々発止の演奏が凄い... で、それをまた強調するカンパのカスタネットが最高!捲し立てて来るように乾いた打音を繰り出して、もう、完全に、フラメンコ... いや、ちょっとカッコ良過ぎ... てか、クラシックであることを忘れてしまう。それほどにスパイシーで、ホット!

VARIACIÓNES DEL FANDANGO ESPAÑOL / ANDREAS STAIER

ソレール : ファンダンゴ
セバスティアン・デ・アルベロ : レセルカータ、フーガとソナタ ト調
ジョゼプ・ガレス : ソナタ 第9番 ハ短調
ジョゼプ・ガレス : ソナタ 第17番 ハ短調
ジョゼプ・ガレス : ソナタ 第16番 ヘ短調
フェリクス・マクシモ・ロペス : スペイン風ファンダンゴによる変奏曲
セバスティアン・デ・アルベロ : レセルカータ、フーガとソナタ ニ調
ホセ・フェレル : アダージョ ト短調
ホセ・フェレル : ソナタ、アンダンティーノ ト短調
ボッケリーニ : ファンダンゴ
   〔弦楽五重奏曲 第4番 ニ長調 G.448 から シュタイアーとショルンスハイムによる2台のチェンバロ版〕 **

アンドレアス・シュタイアー(チェンバロ)
クリスティーネ・ショルンスハイム(チェンバロ) *
アデーラ・ゴンサーレス・カンパ(カスタネット) *

TELDEC/3984-21468-2




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。