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ピアノで弾くラモーの、ニュートラルな魅力。 [before 2005]

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4月1日です。何か大嘘をついてやろうと考えたのですが、なかなかおもしろいのが思い付かない... クラシックで、おもしろい大嘘をつくとしたら、どんなのがあるだろう?ま、どんなのがあるだろう?なんて考えているようでは、きっとつまらないものになるので、今年は、やめときます。さて、あっという間に桜が満開です。ちょっと、急展開過ぎて、びっくり... とはいえ、気温はすでに20℃を超えている!ともなれば、やっぱり、あっという間か... それにしても、20℃?!着るものがまだ冬仕様なものだから、参ってしまう。一方で、窓を開け放ち、うららかな風を部屋に呼び込める季節となったことに、ほっとさせられる。やっぱり、春はいいなァ。
ということで、春、フランスを巡る... いや、巡って来たのだけれど、ちょっとドイツの方へふらふらっと寄り道(?)をしたので、ここで、再び「フランス」の中心へ... アレクサンドル・タローのピアノで、ラモー(harmonia mundi FRANCE/HMC 901754)を聴く。

ピアニストにとってバッハは重要なレパートリーだけれど、その他のバロックの作品となると、珍しい... そこに来て、タローは、バッハに留まらず積極的にバロックの作品を録音している。クープラン、バッハがアレンジしたイタリアのバロックスカルラッティ(は、そこまで珍しくはないか... )、我が道を行くタローだけに、他のピアニストでは取り上げないようなところまで踏み込み、新鮮な音楽像を提示して来た。で、その始まりとなったアルバムが、ここで聴く、ラモーの新クラヴサン組曲集。てか、ラモー(1683-1764)をピアノで弾く?!同世代のバッハ(1685-1750)ならば、何の抵抗もなく聴いてしまうのに、ラモーとなると驚きをもって接することになるのだから、聴き慣れているということは大きいなとつくづく感じてしまう。で、どうなのだろう?ピアノで弾く、ラモー...
やっぱりバッハとは違うラモー、ヴェルサイユの優雅な匂いを纏った音楽(ラモーの活動拠点はパリだったけれども... )は、しゃなりしゃなりと装飾音で飾られ、すでにロココが漂い、独特の繊細さを見せる。また、そうした繊細さは、クラヴサンという楽器の性格によるところが大きく... 弦を爪弾いて生まれるキラキラとしたクラヴサンのサウンドとは違う、弦を叩いて生まれる重みのあるピアノのサウンドが、どうラモーを捉えるのか?懐疑的なところもあるのだけれど、飄々と奏でてしまうタロー... 彼ならではのストイックな姿勢と、研ぎ澄まされたタッチで、スコアと素直に向き合い生まれるニュートラルな音楽は、まったく興味深い響きを紡ぎ出す。ピアノ以前、クラヴサン(チェンバロ)を念頭に作曲された作品を、ピアノで弾くという、作曲者のヴィジョンを超えてしまう冒険のおもしろさ!ある意味、それは、ドビュッシーの前奏曲集をシンセサイザーで弾くようなものかもしれない... それでいて、ピアノという楽器の、マシーンとしての可能性を改めて再認識させられ... クラヴサンによる独特な繊細さこそ薄れるも、豊かな表情が溢れ出し、その表情の数々から浮かび上がる、「ラモー」という既成概念を超えたヴィジョン!
ロココのセンチメンタルには、シューマンの仄暗さを見出し、細かなパッセージには、ショパンの花やかさを感じるところも... もちろん、フランスならではのメローさ、キャッチーさも強調され、そこにはドビュッシーへと通じる雰囲気がすでに見受けられるのか... 裏を返せば、ドビュッシーの古風さ、古雅な「フランス」へのリスペクトが浮かび上がる。そのあたりを裏付けるように、アルバムの終わりにはドビュッシーのラモーをたたえて(track.22)が取り上げられ、ウィットを効かせる。単にラモーを弾くのではない、なぜラモーを弾くのかが、そこに籠められているような気がする。一方で、そういうコンセプトに囚われない姿勢も見せるタロー... 気負うことなく、ナチュラルに紡がれる新クラヴサン組曲集の、全体を通して生まれる不思議な真新しさ!そこには、タローの現代っ子感覚、何物にもとらわれない指向が絶妙に作用していて、彼なればこその飾らないラモーが魅力を放つ。
また、そんなラモーの後で聴くドビュッシーというのが、たまらない... で、ラモーをたたえて(track.22)なのだけれど、ピアノのために書かれた音楽の雄弁さが、これでもかと広がり、結局、どちらが主役だったんだ?とすら思えて来る。で、いいのか?いいんです!というマイペースさが、タローの真骨頂なのだろう。だからこそ、瑞々しさが際立つドビュッシーであって、ラモーをたたえて(track.22)、1曲だけだからこそ、突き抜けて魅力的でもあって... 何だか狐に抓まれた心地に...

Rameau ・ Nouvelles Suites ・ Alexandre Tharaud

ラモー : 新クラヴサン組曲集
ドビュッシー : ラモーをたたえて 〔『映像』 第1集 から〕

アレクサンドル・タロー(ピアノ)

harmonia mundi/HMU 807553




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