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象徴主義のテーマパーク!サロネン、L.A.フィルのドビュッシー... [before 2005]

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えーっと、桜、見て参りました!新宿御苑... 千駄ヶ谷門から入り、桜園地のワっと咲いている光景が目の前に広がると、テンション上がる!そして、そのほんわかとした、世知辛い現代社会と切り離された空気感に癒される... 夜桜無し、アルコール禁止の新宿御苑の特性も効いているかな... しかし、枝中、目一杯に花を咲かせてしまう桜の突き抜けたポジティヴさ、淡くふんわりとした色合いが相俟って、何だかヘブンリー。桃源郷ならぬ桜源郷か?散ることにとかく思いを寄せる日本人ではあるけれど、桜の花、そのものが醸す雰囲気は、その下に集う人々を自然とハッピーにさせる魔法を降らせているような... いや、桜って、ポップ!
そんな、春の心地を音で描くような1枚、エサ・ペッカ・サロネンが率いた、ロサンジェルス・フィルハーモニックの演奏で、ドビュッシーの夜想曲、カンタータ「選ばれた乙女」、交響的断章『聖セバスティアンの殉教』(SONY CLASSICAL/SK 58952)を聴く。

夜想曲(track.1-3)、カンタータ「選ばれた乙女」(track.4)という、ドビュッシーがドビュッシーらしさを確立する頃の作品と、そのドビュッシーらしさの集大成としての大作、『聖セバスティアンの殉教』からの交響的断章(track.5-8)... 牧神や海といったドビュッシーの代表作を外しながら、よりドビュッシーらしさが溢れる1枚!印象主義の音楽の曖昧模糊とした魅惑に彩られながら、象徴主義のミステリアスさをファンタジックに響かせて、3作品を、まるで、ひとつの作品のように聴かせてしまう。近現代のスペシャリスト、サロネンの視点とセンス、晴れ渡るカリフォルニアの空の下、映画の街のオーケストラ、ロサンジェルス・フィルが響かせる、明晰かつ瑞々しいサウンドが、ドビュッシーらしさを昇華させ、よりフレッシュなドビュッシー・ワールドを創り出す!
まず、夜想曲(track.1-3)、始まりの「雲」から魅了される... 印象主義ならではの繊細な色彩感を極めるサウンド!サロネン、L.A.フィルらしいスコアをクリアに捉えようとする姿勢が、捉えどころの無い雲の表情を突き詰めて、「ドビュッシー」という雰囲気から、音楽そのものをサルヴェージするよう。そうして得られる思い掛けない清冽さ!それは、続く「祭り」(track.2)で思い掛けないケミストリーを生む... まるで、ブルックナー!海もそうだけれど、意外とマッシヴなドビュッシーの音楽の中にあるかつてのワグネリアンとしての記憶が、サロネンによって掘り起こされ、その進化した形として、ブルックナーと共鳴する姿を見せてしまうのか?女声コーラスによるヴォカリーズが加わる、最後の「シレーヌ」(track.3)では、さらにその先、表現主義を思わせる感覚も滲むようで、おもしろい... 独自の音楽世界を築き上げたドビュッシーの、影響を受けたもの、影響を与えたものを、丁寧に紐解いて、より広がりを聴かせるサロネン。「ドビュッシー」に捉われないからこそ、ドビュッシーが輝くおもしろさ...
さて、夜想曲の後に取り上げられるのが、カンタータ「選ばれた乙女」(track.4)。ローマ大賞、受賞(1884)による、ローマ留学(1885-87)を経て、作曲された(つまり、宿題... )、女声コーラス、ソプラノ(乙女)、メッゾ・ソプラノ(語り)による作品は、後のドビュッシーらしさを垣間見せつつ、フォーレのようなメローさに包まれ、若者らしいナイーヴさが印象的な、隠れた佳曲... で、「シレーヌ」(track.3)からの、「選ばれた乙女」(track.4)という流れが、絶妙!「シレーヌ」での女声のマジカルさが、やわらかく神秘へと変容し、その過程で、乙女が昇天するという運び(この世に残して来た恋人への未練を残しながら、やがて死を受け入れ、天使とともに星の向こうへと飛び去る... )が、清らなるドラマをより引き立たせ、得も言えず美しい!そんな乙女の神秘を引き継いで、神秘劇『聖セバスティアンの殉教』による交響的断章(track.5-8)が最後に取り上げられ... 印象主義の音楽に、丁寧に象徴主義の図像を重ねるサロネン... 単に「ドビュッシー」を聴かせるのではない、ドビュッシーが魅せられた象徴主義を、まるで曼荼羅のように見せる展開が、このアルバムのもうひとつの魅力。
となると、マニアック?いや、けしてそうはならないL.A.フィルの音楽性のおもしろさ!明晰さに楽観が漂うそのサウンドは、象徴主義の仄暗さを鮮やかに拭い去り、その神秘をファンタジーに変換してしまう。シレーヌも、乙女も、聖セバスティアンも、どこかディズニーのキャラクターのようで、ポップ!で、良いのか?とは思うのだけれど、この屈託の無さがあってこそ、ドビュッシーの音楽の全てがクリアにされる。雰囲気で誤魔化すことのないサロネンらしい視点に貫かれ、L.A.フィルが詳らかとするドビュッシー・ワールド。不思議な気安さを放ちながら、音楽的な魅力を増して、聴く者を楽しませる!

DEBUSSY: NOCTURNES・LA DAMOISELLE ÉLUE etc.
ESA-PEKKA SALONEN

ドビュッシー : 夜想曲 *
ドビュッシー : カンタータ 「選ばれた乙女」 ***
ドビュッシー : 神秘劇 『聖セバスティアンの殉教』 による 交響的断章

ドーン・アップショウ(ソプラノ) *
パウラ・ラスムッセン(メッゾ・ソプラノ) *
ロサンジェルス・マスター・コラール(女声) *
エサ・ペッカ・サロネン/ロサンジェルス・フィルハーモニック

SONY CLASSICAL/SK 58952




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