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プーランクで、ピクニック!ダンス! [before 2005]

すっかり日差しが春めいて来ました。しかし、太陽自体は冬と同じなのに、間違いなく日差しは朗らかになって来るのだから、不思議... もちろん、地軸が傾いているからなのだけれど、日々、明るさを増す日差しに、それほど地軸は傾いているのか?なんて、思ってしまう。って、そんなことを思っている頭がすでに春かァ。さて、春の兆しを求めて、フランス音楽の黎明を追って来たのだけれど、このあたりで、「フランス」が花々しく咲き誇る頃を聴いてみようかなと... ということで、時代は下り、20世紀前半、まるで花見の宴会のようなフランス6人組の音楽から、プーランクを聴いてみる。あっけらかんと「フランス」を繰り広げる音楽は、とにかく楽しい!
そんな、楽しいプーランク... シャルル・デュトワが率いたフランス国立管弦楽団による、プーランクの管弦楽曲集を2枚... 田園コンセール、フランス組曲といった、フランスのカントリー・サイドを活き活きと捉えるVol.1(DECCA/452 665-2)に、『牝鹿』、『ジャンヌの扇』、『エッフェル塔の花嫁、花婿』など、お洒落で都会的なバレエを集めたVol.2(DECCA/452 937-2)を聴く。


Vol.1、パリ・ジャン、プーランク、カントリー・サイドをゆく...

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Vol.1の始まりは、第2次大戦後、1947年の作品、シンフォニエッタ(track.1-4)。今、改めてこの作品に触れてみると、とても興味深く感じられる。何だろう?この熟成感!第1次大戦後、プーランクの青春時代、狂乱の時代の気分に乗って、若さをスパークさせ、パリの寵児となった頃の景気のいい音楽とは違う、大人のサウンド... マルティヌーのような、リヒャルト・シュトラウスも聴こえて来るような、ブリテンを思わせるような、プーランクにして、プーランクばかりでない、擬古典主義の広がりと、そこに出現した多様なセンスをブレンドして生まれる豊潤さだろうか...総音列音楽の席巻が目前となった時代の、擬古典主義の大成が雄弁に響き、印象的。そもそも、大人文化=ワグネリズムへのカウンターであった若者文化としての擬古典主義が、ここに至って大人の姿を見せるのだから、時代の流れというのは、おもしろい。そして、大人になったパリの寵児は、魅惑的。
なのだけれど、やっぱり、チャキチャキのパリ・ジャン、プーランクの魅力も捨て難い!そんなプーランクが、フランスのカントリー・サイドを捉えると?という、田園コンセール(track.5-7)と、フランス組曲(track.14-20)。いやー、パリの喧騒を離れて、プーランクの陽気さが、ふわっと花開き、擬古典主義の過去へと還る姿勢が、フランスの原風景としての「田園」と重なり、おもしろい!特に、クラヴサンのコンチェルトである田園コンセール(track.5-7)の、クラヴサンという楽器が「田園」と出会うケミストリー!かつてヴェルサイユのBGMを担っただろう、この楽器の持つ慇懃なイメージは見事に素朴さに変換され、そよ風に撫ぜられる春の野原のような音楽を繰り広げる。そんな、クラヴサンを弾くロジェの演奏がすばらしく、クラヴサンという楽器から実に豊かな表情を引き出していて、驚かされる!多少、冷たくも感じるクラヴサンのサウンドが、俄然、熱を帯び、活き活きと「田園」を描き出す。そして、デュトワ、フランス国立管による躍動的な演奏も水際立っていて、魅了される。
で、ちょっと雰囲気を変えるのがフランス組曲(track.14-20)。古典というより、フォークロワへと立ち返るようなその音楽は、これこそフランスの原風景だろうか?擬民俗音楽とも言えそうなシンプルさを、淡々と、あっけらかんとサウンドにして生まれる清々しいほどの明朗さ!その飾り気の無さが生む瑞々しさは、また格別。プーランクにしても、ここまで素直なのは、冒険だったか...

POULENC: ORCHESTRAL WORKS Vol.1
Dutoit/Orchestre National de France/Rogé


プーランク : シンフォニエッタ
プーランク : 田園コンセール 〔クラヴサンと管弦楽のための〕 *
プーランク : アルベール・ルーセル氏の名による小品
プーランク : 牧歌 〔『マルグリット・ロンを讃える変奏曲』 より〕
プーランク : ファンファーレ
プーランク : 2つの行進曲と間奏曲
プーランク : フランス組曲

パスカル・ロジェ(クラヴサン) *
シャルル・デュトワ/フランス国立管弦楽団

DECCA/452 665-2




Vol.2、パーティー・ボーイ、プーランク、仲間たちと、ダンス!

4529372
Vol.2は、バレエのための音楽を集めた1枚。で、若きプーランクが6人組の一員として脚光を浴び、様々なアーティストたちと交流し、コラヴォレーションした時代、2つの大戦に挟まれた狂乱の時代の賑やかさが詰まった1枚でもあって... 1曲目、ディアギレフに委嘱された『牝鹿』(track.1-5)は、ローランサンの衣装と美術により、1924年、バレエ・リュスにより初演された作品(ここでは、組曲を聴く... )。20代半ばのプーランクの才気溢れる音楽は、ストラヴィンスキーの影響を臭わせながら、都会的な優雅さと、街の喧騒を思わせる軽薄さにも彩られ、人懐っこく、魅惑的。そんな『牝鹿』に続くのが、第2次大戦中の作品、ナチス占領下のパリで生まれた『模範的な動物たち』(track.6-11)。パリ・オペラ座バレエ団により初演(1942)されたこの作品(やはり、ここで聴くのは組曲... )は、戦時下、占領下なんていう悲壮感を吹き飛ばすよう。だけれど、端々に滲む、どこか厭世的なロマンティシズム... 青春の終わりというのか、組曲の最後、「昼の食事」(track.11)の、往年のハリウッド映画のテーマのような重厚感とセピア色の雰囲気はノスタルジックで、何とも言い難い心地にもさせられる。
そこから、再び青春時代へ... 『カンプラへの花輪』(track.12)、『ジャンヌの扇』(track.13)、『6人のアルバム』(track.14)、『エッフェル塔の花嫁、花婿』(track.16)の、6人組によるコラヴォレーションに提供された楽曲が並び、仲間たちとの丁々発止のやり取りが見えて来そうな、楽しく屈託の無い音楽の数々!そのプーランクらしさに、ほっとさせられる。続く、ピアノと18の楽器のための舞踏協奏曲「オーバート」(track.17-24)は、バレエとしての筋がありながら繰り広げられるピアノ協奏曲という、おもしろい作品。田園コンセールでクラヴサンを弾いたロジェが、今度はピアノへと戻って、また豊潤なサウンドを聴かせてくれる!さすが、フランス音楽のエキスパート。一音一音がジューシーで、聴き入ってしまう。そんな、ロジェをきっちりとサポートしつつ、また鮮やかなサウンドを響かせるデュトワ、フランス国立管が見事!何気ないようなフレーズにも、しっかりと血を通わせ、「オーバート」に限らず、エスプリを効かせ、すっきりとしつつも活きのいい音楽を繰り広げる。
アルバムの最後は、6人組が感化されリスペクトしたサティ作品の編曲(track.25-27)。ある意味、プーランクの原点だろうか?Vol.1、Vol.2と、プーランクを巡って来て辿り着いたサティ... そんな展開に、センスの良さを感じずにはいられない。

POULENC: AUBDE LES ・ BICHES
ROGÉ/ORCHESTRE NATIONAL DE FRANCE/DUTOIT


プーランク : バレエ 『牝鹿』 組曲
プーランク : バレエ 『模範的な動物たち』 組曲
プーランク : プロヴァンスの船乗りの踊り 〔『カンプラへの花輪』 第5曲〕
プーランク : パストゥレル 〔バレエ 『ジャンヌの扇』 第8曲〕
プーランク : ワルツ 〔『6人のアルバム』 第5曲〕
プーランク : 将軍の話
プーランク : トルヴィルで水浴する女の踊り 〔バレエ 『エッフェル塔の花嫁、花婿』 第3曲、第4曲〕
プーランク : ピアノと18の楽器のための舞踏協奏曲 「オーバート」 *
サティ : 2つの遺作の前奏曲 と グノシエンヌ 〔オーケストレーション : プーランク〕

パスカル・ロジェ(ピアノ) *
シャルル・デュトワ/フランス国立管弦楽団

DECCA/452 937-2




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