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ブリュメル、ミサ「見よ、大地が多く揺れ動き」。 [before 2005]

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さて、2015年の始まりは、今年のメモリアルの作曲家に焦点を当ててみようかなと... で、正月一日にも書いたのだけれど、2015年のメモリアルは、ビッグ・ネームこそいないものの、ヴァラエティに富んだ面々が並び、なかなかおもしろい!そのひとりひとりを丁寧に見つめれば、いつもとは違った音楽史の風景が見えて来るのかも。前回、取り上げた、生誕150年のニールセン、そして、やはり生誕150年のシベリウスと、北欧が誇る2人の作曲家のメモリアルが重なるおもしろさ!さらには、この2人と同じ、生誕150年を迎えるグラズノフ、スクリャービン、マニャール、デュカスもいて... 今から150年前、1865年の、実に多彩な個性を持った作曲家たちの誕生に、とても興味深いものを感じる。で、もちろん、1865年ばかりでない、今年のメモリアル!
今回は、ぐんと時代を遡りまして、ルネサンス。没後500年を迎えるフランスの作曲家、ブリュメル(ca.1460-1515)に注目してみることに... ということで、ドミニク・ヴィス率いる、クレマン・ジャヌカン・アンサンブルのコーラス、レ・サクブティエの演奏による、ブリュメルのミサ「見よ、大地が多く揺れ動き」(harmonia mundi FRANCE/HMC 901738)を聴く。

アントワーヌ・ブリュメル(ca.1460-1515)。
フランス北西部、大聖堂で有名なシャルトルの西にある小さな町、ブリュネルで生まれたというブリュメル。で、この時代の作曲家の常なのだけれど、わからないことが多い(実は、没年も定まらない?ので、メモリアルだなんて取り上げてしまって良いのか、若干、自信が持てません... )。そんなブリュメルの確認される最初期の音楽活動が、20代、シャルトル大聖堂で歌手をしていたということ。その後、ジュネーヴ、ランの教会で司祭として務め、15世紀末には、パリのノートルダム大聖堂の楽長として活躍。やがてサヴォイア公に仕え、そこからイタリア・ルネサンスの中心のひとつ、フェッラーラ公の宮廷の聖歌隊長に就任(1506)。その名は、盛期ルネサンスの巨匠、ジョスカン、ラ・リュー、コンペールらと並んで語られ(フランドル楽派を切り拓いた巨匠、オケゲムの死を悼む詩、『森のニンフ』に綴られ... )、ルネサンス・ポリフォニーが大きく花開く頃、国際的な名声を博した。
という、ブリュメルのミサ「見よ、大地が多く揺れ動き」は、ルネサンス・ポリフォニーが大きく花開こうとする頃、早咲きの12声!冒頭から圧倒的な音響で迫って来る。一方で、ホモフォニックに聴こえる瞬間もあり、ルネサンス・ポリフォニーでありながらも独特な風情を生む。「見よ、大地が多く揺れ動き」は、ラウダ(中世イタリアで生まれた民衆的な讃美歌... )のメロディー(復活祭のアンティフォーナ... )で、それを定旋律として作曲されたミサ曲。もちろん、ルネサンスならではのカントス・フィルムス(定旋律)の書法に則った音楽なのだけれど、"ラウダ"というあたりが、某かのスパイスを効かせている?コーリ・スペッツァーティを先取りするように、声部を2つの集団に分け、交互に声を揃えて力強く歌い出す部分もあるクレド(track.3)は、「ルネサンス」の在り様から逸脱するようなドラマティックさを響かせていて印象的。また、美しいポリフォニーから、時折、キャッチーなメロディーがポンと浮かび上がり、耳に飛び込んで来て、はっとさせられる、グローリア(track.2)、「ミゼレーレ」のフレーズ... ミーゼレーレ、ミッゼレーレ、ミッゼレーレ... と、輝かしく繰り返されるリフレインは、何と魅惑的な!それがまた、ライヒを聴くようなミニマルなテイストで盛り上がり、ポップ!ルネサンスならではの、声部が融け合い、ふわぁーっと広がる音響ではなく、塊が聴く者に向かって投げつけられるような、動きのある表情が、おもしろい。
そうしたあたりを強調するのが、声だけではなく、器楽も加えた編成... けして珍しいものではないけれど、声のみによる均質なポリフォニーとは違い、個性派、ヴィスの挑戦的な姿勢もあって、よりパワフル!コルネット(角笛)の鮮やかさ、サックバット(トロンボーンの古楽器)の素朴さを巧みに編んで、やわらかだけれど雄弁な演奏を聴かせる、古楽器管楽集団、レ・サクブティエ。彼らの存在が、声だけでは生み出し得ない深みをもたらし... また、低音部で響くオルガンの音は、何とも言えず温かく... そこに、サックバット、コルネットが重ねられて、湧き上がるように膨らむ声は、何とも言えず感動的!最後のアニュス・デイ(track.5-7)なんて、夕日を見送るような、鮮烈さと切なさがたまらない。で、そうした表情をより濃いものとするのが、クレマン・ジャヌカン・アンサンブルの独特なハーモニー。ヴィスの癖のある高音は、慣れないとちょっと耳に付くようなところもあるのだけれど、そういうある種の歪さも含めて、多彩な声、豊かな表情、器楽を加えたサウンドから紡ぎ出される音楽は、より訴え掛けるものがあって... 清廉なルネサンス・ポリフォニーを編み上げるのとは一味違う、人間味が漂うハーモニーがより大きな感動を引き出すのか。惹き込まれる。

Brumel: Missa "Et ecce terrae motus" ・ Ensemble Clement Janequin

ブリュメル : ミサ 「見よ、大地が多く揺れ動き」

ドミニク・ヴィス/クレマン・ジャヌカン・アンサンブル
レ・サクブティエ

harmonia mundi FRANCE/HMC 901738




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