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生誕150年、ニールセン... その個性の芽吹き... [before 2005]

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正月休みというのは、お酒も入って、グダグダに過ごしがち... けど、結構、忙しないところもあって、どうも落ち着かない... 気持ちが緩んだ中、あれやこれやある状況は、変にストレスになり、何だか疲れてしまう。そんな正月三が日。とはいえ、やっぱり年の初めの晴れやかさというのか、澄んだ青空に、最寄りの氏神様に初詣もできたし、お雑煮も食べたし、ささやかながら、ぼんやりと充実感も... しかし、そろそろギアを入れないと!
ということで、2015年は、生誕150年のメモリアル、ニールセンの交響曲を、今一度、じっくりと聴くところから始めてみようかなと... ユッカ・ペッカ・サラステの指揮、フィンランド放送交響楽団によるニールセンの交響曲のシリーズから、1番と2番(FINLANDIA/8573-85574-2)を聴く。

カール・ニールセン(1865-1931)。
デンマーク、ユトランド半島と、その首都、コペンハーゲンのあるシェラン島の間にある、フュン島で生まれたニールセン。貧しいペンキ職人の家の7番目(12人兄弟!)の子として生まれるも、音楽好きの父親の影響で、ヴァイオリンを弾くようになり、14歳の時にはラッパ手として軍楽隊に参加(このために、ビューグルを一ヶ月でマスター!)。正規の音楽教育を受けることの無かったニールセンだったが、これを切っ掛けに音楽の道へと踏み出す。やがて、コペンハーゲンの王立音楽院に入学(1884)、作曲を学び、卒業後は、作曲家として活動を始める一方、王立劇場のヴァイオリニストとしても働きながら、最初の交響曲、1番を完成させる。
という、1番(track.1-4)から聴くのだけれど... 1891年から翌年に掛けて作曲された1番、20代後半の作品ということで、「ニールセン」という独特さはまだ見受けられないものの、若さが生む素直さに溢れ、何とも言えず瑞々しい。一方で、19世紀末にしては、幾分、保守的なのか、ドイツ由来のロマン主義をしっかりと消化して、19世紀の伝統に則り、優等生的な音楽が繰り広げられる。このあたりに、デンマークの音楽が置かれていた辺境性を感じる。マーラーが「復活」を作曲(1888-94)していた頃、ドビュッシーが間もなく『ペレアス... 』に取り組もう(1893-1902)という頃の、デンマークの音楽シーンのワン・テンポ遅れたトーンは、同時代性を意識した時に、多少、物足りなさを感じなくもない。が、この保守性から、独特の音楽世界を切り拓いたニールセン... 続く、2番、「四つの気質」(track.5-8)には、より充実したサウンドが響き、ヒポクラテスの理論に基づくという4つの楽章には、「ニールセン」という個性が生まれつつあって、優等生的な1番からの成長が興味深い。
胆汁質=1楽章(track.5)、粘液質=2楽章(track.6)、憂鬱質=3楽章(track.7)、多血質=終楽章(track.8)... 何ですか?それは... という、古代ギリシアの理論をヒントに、どこか飄々と、時にシニカルに、人間の本質を分析し、それぞれの楽章に豊かな表情を描き出す、おもしろい音楽。ロマン主義の伝統から大きく踏み出すことはないものの、すでに時代は20世紀に突入(1901年から翌年に掛けて作曲... )している中、ニールセンなりの進化を見せる音楽には、奇天烈なところも... 多血質=終楽章(track.8)のテンションの高さは、軍楽隊を経験して得た感覚だろうか?ところどころチープにも感じられるブラスの威勢の良さに、交響曲のアカデミックさとは一味違うセンスを見出し... ブンカブンカブンカブンカと陽気に奏でられるシンコペーションは、フォークダンスなノリ?ドヴォルザークを思わせる国民楽派風に彩られて、楽しい!その裏で、まるでエンジンでも吹かしているようなブラスのトレモロが聴こえて来て、これがまた奇天烈!ロマン主義の進化系が北欧の音楽ならば、その進化に捻りが加えられ、奇妙なセンスが見え隠れし、不思議な味わいを生み出すのがデンマークのニールセンだろうか。同じ「北欧」でも、グリーグの瑞々しさ、シベリウスの清々しさとは違うおもしろさ、味わいがある。
というニールセンの交響曲を奏でるのがフィンランドの指揮者、オーケストラ... というから、またひとつ捻りが加えられるのか、サラステ、フィンランド放送響によるニールセンの交響曲のシリーズ。北欧ならではの明晰さに、カラフルさが加わり、ポジティヴな力強さを生むその演奏は、「デンマーク」の持つ仄暗さから豊かな表情を引き出していて。まだまだニールセンらしさを見つけ難い1番(track.1-4)にしても、目敏く「ニールセン」の蕾を探り出し、さり気なく浮かび上がらせ、この後に続く傑作への予兆を漂わせ、巧い。一方、2番、「4つの気質」(track.5-8)では、躊躇することなく4つの気質、それぞれに踏み込み、どこか戯画的に響かせるようなところがあって、飽きさせない。どうしてもシベリウスの交響曲に比べれば、影に隠れがち、マニアックですらあるかもしれないニールセンの交響曲なのだけれど、あっけらかんとエンターテイメントに仕上げてしまうサラステ... フィンランド放送響が持つ明るい響きも相俟って、新鮮!

CARL NIELSEN: SYMPHONIES 1 & 2
FRSO / JUKKA-PAKKA SARASTE

ニールセン : 交響曲 第1番 ト短調 Op.7
ニールセン : 交響曲 第2番 ロ短調 Op.16 「4つの気質」

ユッカ・ペッカ・サラステ/フィンランド放送交響楽団

FINLANDIA/8573-85574-2




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