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ベックリンを音楽で綴って... レーガー... [before 2005]

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いやー、12月も三分の一が過ぎてしまいました。やっぱり、速い... このままだと、クリスマスはあっという間だわ... で、いろいろやることを思い出し、憂鬱になる。一方、すっかり街並みが息衝いていますね。クリスマスなんて... と、他人事のように思いつつも、普段とは違う華やかな光景の中を歩けば、どこかワクワクさせられるところもあって... 赤と緑と、キラキラと電気って、気分的に某かの効果があるのか?単に単細胞なだけか?という中で、今さらの芸術の秋の続きなのだけれど... クラシックの中の美術を鑑賞する試み、第4弾!マーク・ロスコの抽象から一転、ロマン主義絵画をロマン主義音楽で聴いてみるという、ロマンティックの濃縮還元!
レーガーが、ベックリンの絵画に基づいて作曲した、ベックリンによる4つの音詩... レオン・ボットスタインの指揮、ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団の演奏による、レーガーのアルバム、"Reger & Romanticism"(TELARC/CD-80589)を聴く。

アルノルト・ベックリン(1827-1901)。
スイス、バーゼルで、絹を扱う裕福な一族に生まれたベックリン。ドイツ、デュッセルドルフ・アカデミーで、風景画家、シルマーについて絵画を学び(1845-47)、その後、ブリュッセル、アントウェルペン、パリといった、美術史に輝かしい足跡を残す都市を巡り、偉大な古典に触れ... やがて、その古典の故郷とも言える、イタリアへと渡り、ローマに滞在(1850-57)。北方的な静けさを、イタリアの瑞々しさで以って描き出す、ベックリンならではの画風を生み出す。一方で、印象主義が開花した19世紀後半に在って、そうした新しい動向に背を向けるように、極めて古風な画面を生み出し、そこに、ロマン主義の時代ならではの、幻想性、神秘性を籠めて、独特な世界を見せた。そうしたベックリンの絵画は、幅広く、多くの芸術家にインスピレーションを与え、特に、5枚も描かれた、ベックリンの代表作、『死の島』(1880/1880/1883/1884/1886)は、ラフマニノフが交響詩(1909)にしており、ラフマニノフの管弦楽作品としては、欠かせないレパートリーのひとつに... で、その『死の島』を含め、ベックリンの4つの絵画を音楽として綴ったのが、レーガーのベックリンによる4つの音詩(1912-13)。
『ヴァイオリンを弾く隠者』『波間の戯れ』『死の島』、『バッカナール』という4作品... 最後のロマンティスト、レーガー(1873-1916)らしい、極めてロマンティックな音楽で綴られるのだけれど、これがまた、絶妙にベックリンの世界を捉えていて... 始まりの「ヴァイオリンを弾く隠者」、静けさの中に、隠者が弾くヴァイオリンが浮かび上がる、美しくももの悲しい音楽から、一気に惹き込まれる。続く、「波間の戯れ」(track.2)は、少しユーモラスに活き活きと波間に遊ぶ海の精たちを描いた画面を、スケルツォとして巧みに表現する。そして、「死の島」(track.3)... 美しくも冷たい空気が漂うような、謎めく島と、そこへと吸い寄せられるように浮かぶ小舟を描いた静謐な画面から、レーガーは何を見たのだろう?死を受け入れる安寧とした感情と、死に抗おうとする激しい感情、慟哭と安らぎが波のように寄せては引くその音楽は、どこかマーラーを思わせて、印象的。そこから、一転、「バッカナール」(track.4)の異教的で、やがて熱を帯びて、熱狂的に迎えるカタストロフィー!隠者の弾くヴァイオリンに始まって、バッカナールに至る4つのイメージは、どこかロマン主義そのものの道程にも思えて、おもしろい。
さて、ベックリンによる4つの音詩の後に、ワーグナーを思わせるオーケストラ伴奏付き歌曲、「希望に寄せる」(track.4)と、ロマン派の小説家にして詩人、アイヒェンドルフの詩に基づく、ロマンティック組曲(track.6-8)が取り上げられて... 貫かれる、ロマンティシズム!いや、これぞレーガーだなと。ひとつ年上にはスクリャービン(1872-1915)、ひとつ年下にはシェーンベルク(1874-1951)がいて、もはやロマン主義が行き詰り出した頃に活躍したレーガー。しかし、近代音楽へと向かわなかったその保守性(そういう点、ベックリンに通じる... )は、実に独特であって、興味深い。今や、近代音楽もノスタルジックに響く21世紀に在っては、その一本気さがクールにも感じられるか... 不器用に貫いて生まれる魅力というのも間違いなくある。
という、レーガーを取り上げたボットスタイン、ロンドン・フィル。ボットスタインのありのままをすくい上げる音楽作りが、雰囲気に流されないロマンティシズムを実現していて、十分にロマンティックでありつつも、どこかで軽さを生むのか... ロマン主義にどっぷり浸かるばかりでなく、より古い時代を見つめたレーガーのさらなる保守性もしっかりと捉えて、レーガーの独特な音楽世界を丁寧に切り開く。そうしたボッツスタインの指向を際立たせる、ロンドン・フィルの卒の無い演奏も印象的。だからこそ生まれる、独特なライト感... イギリスならではのセンスだろうか?ライトなロマンティックが、絶妙!

REGER & ROMANTICISM
Botstein / London Philharmonic Orchestra


レーガー : ベックリンによる4つの音詩 Op.128
レーガー : 歌曲 「希望に寄せる」 Op.124 *
レーガー : ロマンティック組曲 Op.125

キャサリン・ウィン・ロジャース(メッゾ・ソプラノ) *
レオン・ボットスタイン/ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

TELARC/CD-80589




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