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マーク・ロスコを音楽で捉えて... モートン・フェルドマン... [before 2005]

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さて、11月、最後の更新となりました。道理で寒いわけだ。秋も深まる... というより、もう、冬... そうした中、先日の地震、白馬村で被災された方のことを思うと、こう、遣り切れないものが... 少しでも温かい年越しになることを願うばかりであります。しかし、いろいろなことが起こる2014年。でもって、スタップも、佐村河内も、ののたんも、遠い昔に思え... 裏を返せば、月日が経つのは早かったなと... この勢いで、年末なんて、あっという間なのだろうな... などと言っておきながら、当blogは、もう少し「秋」のままでいることに... 様々な秋を巡って来た11月、文学が続いたので、再び美術に戻り、芸術の秋、クラシックの中の美術を鑑賞する試み、クレーボッティチェッリに続いての第3弾は、20世紀、アメリカ、抽象表現主義の巨匠、マーク・ロスコ!
ルパート・フーバーの指揮、SWRヴォーカル・アンサンブル・シュトゥットガルトのコーラスで、フェルドマンのロスコ・チャペル(hänssler/93.023)を聴く。

マーク・ロスコ(1903-70)。
ロシア、帝政末期の不穏な時代、ユダヤ人の大きなコミュニティがあったドヴィンスク(現在は、ラトヴィア、ダウガフピルス... )で、薬屋を営むユダヤ人の一家に末っ子として生まれたマーカス・ロスコヴィッチ。ユダヤ人排斥の脅威を受け、10歳の時にアメリカへと渡り(1913)、やがてマーク・ロスコとなる。そんなロスコが、画家を志すまでには紆余曲折が... アメリカ移住後の一家は貧しかったものの、ロスコは成績がよく、奨学金を得て、名門、イェール大へ。しかし、WASPが支配的な名門大学で、肩身の狭い思いをし、結局、卒業するには至らず、俳優業へ寄り道をしたりと模索しつつ、間もなくニューヨークへと出て(1925)、美術、デザインを学び始める。そうして、画家としての第一歩を踏み出し、ヨーロッパの先鋭的な表現を吸収しながら抽象へと至り、第2次大戦後、カラーフィールド・ペインティング、ミニマリズムへと深化、独自の世界を築き、抽象表現主義、ニューヨーク・スクールの巨匠として、20世紀、アメリカの芸術に大きな足跡を残した。そんなロスコの最晩年を飾る作品が、新たに建てられるチャペルのために描かれた巨大な抽象画の連作... 美術コレクター、デ・メニル夫妻により、ヒューストン郊外で建設が始まったチャペルは、宗教、宗派を超えた祈りの場として計画され、ロスコも当初から深く加わることに... その後、チャペルは、"ロスコ・チャペル"として、1971年に完成(ロスコは、その前年に自殺!)。そして、このロスコ・チャペルの落成式で演奏するために委嘱、作曲されたのが、フェルドマンの『ロスコ・チャペル』(1971)。
ヴォカリーズによるコーラス、パーカッション、チェレスタ、ヴィオラという、一風変わった編成によるその音楽は、フェルドマンならではの、茫洋とした表情に神秘的な雰囲気を漂わせ、印象的なのだけれど、何より、見事にロスコの画面を捉えていて、興味深い。「抽象表現主義」なんて説明されてしまうと、とてつもなく気難しい印象を受けかねないロスコ作品。実際は、トーストにバターとジャム(もちろん、様々なヴァリエイションがあって... )を塗ったような、何とも言えないシンプルさを見せて、意外にポップ!それでいて、大きなキャンバスに光の窓が開いたような、独特の佇まいがあり、何だかその先に違う次元が存在するかのような、不思議さも漂わせる(ロスコ・チャペルに飾られた作品は、よりストイックではあるのだけれど... )。抽象を極めたシンプルさと、その先に覗かせる神秘性... フェルドマンのシンプルなサウンドによるアンビエントな音楽は、次第に秘儀的な色合いを帯びて、深く瞑想状態に... が、最後に、ヴィオラが、やさしげなメロディーを歌い、空気を緩ませて、ブルーミン!この感覚は、ヘヴンリーではなくて、ニルヴァーナ?どことなしに東洋的な、得も言えぬ安らぎをもたらしてくれる。
さて、『ロスコ・チャペル』に続いて、フェルドマンのコーラスのための作品、「シュテファン・ヴォルペのために」(track.2)と、「ケンブリッジのクリスチャン・ウォルフ」(track.3)が取り上げられて... フェルドマンと交流のあった2人の作曲家(ヴォルペは先生、ウォルフはアメリカ実験音楽の盟友... )に捧げられたこの2作品もまた、フェルドマンらしい瞑想的な音楽が繰り出され、『ロスコ・チャペル』の神秘的な余韻がそのまま続く。で、その神秘性をより濃密に練り上げて来る、フーバーが率いた、SWRヴォーカル・アンサンブル・シュトゥットガルトのコーラスが印象的。高機能を誇るドイツの室内合唱にして、また一味違う感覚があるのか、ハイテクでは割り切れない、シンプルが生む奥深いフェルドマンの世界に巧みにアクセスしていて。『ロスコ・チャペル』のみならず、抽象表現主義の絵画にインスパイアされたフェルドマンの音楽だけれど、フーバーがSWRヴォーカル・アンサンブル・シュトゥットガルトから引き出す歌声は、より"表現主義"的なセンスを強調するようで、ミニマリズムに落ち着いて、淡々とアンビエントな表情を綴るだけではない、しっかりとした存在感があり、瞑想的な中にも、ある種の迫力を聴かせて、ミステリアス。いや、まさに、ロスコの世界を響かる。

The Rothko Chapel/For Stefan Wolpe/C. Wolff in Cambridge

フェルドマン : 『ロスコ・チャペル』 *
フェルドマン : シュテファン・ヴォルペのために *
フェルドマン : ケンブリッジのクリスティアン・ウォルフ

ルパート・フーバー/SWR ヴォーカル・アンサンブル・シュトゥットガルト
キルステン・ドロープ(ソプラノ) *
ウルリケ・ベッカー(アルト) *
バルバラ・マウラー(ヴィオラ) *
マインハルト・ジェンヌ(パーカッション) *
マルクス・シュタンゲ(チェレスタ) *
ボリス・ミュラー(ヴィヴラフォン) *
マルティン・ホマン(ヴィヴラフォン) *

hänssler/93.023




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