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ハリウッドの甘き夢、あるいは戦慄の悪夢... を生み出す音楽の妙! [before 2005]

何だか雨が降り続いております。梅雨なのだから、それが当然ではあるのだけれど、こうも降り続く?それでもって、えーっと、当blog、先月後半あたりから、鮮やかに読んでくれる方が減って来ております。ま、ね、つまらんこと書いてりゃ、そりゃ減るわな... という自覚はあるものの、順調に凹み、俄然、モチベーションも落ち込み... さて、どうしましょうか。どうしましょう。という、心の中まで、すっかり梅雨模様の中、映画音楽なんか聴いてみようかなと。ずっと聴いて来たロマン主義の帰結点として、往年のハリウッドに着地してみる。
アンドレ・プレヴィンの指揮、ロンドン交響楽団の演奏で、コルンゴルトの映画音楽集(Deutsche Grammophon/471 347-2)と、エサ・ペッカ・サロネンの指揮、ロサンジェルス・フィルハーモニックの演奏で、バーナード・ハーマンの映画音楽集(SONY CLASSICAL/SK 62700)を聴く。


ロマンティスト、コルンゴルトが生み出す、往年のハリウッドのゴージャス感!

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前回、聴いた、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲は、コルンゴルトの映画音楽のいいとこ取りとも言える作品... ならば、そのコルンゴルの映画音楽を聴いてみようと、久々に引っ張り出して来たアルバム... コルンゴルトがハリウッドで手掛けた数ある映画音楽から、『海賊ブラッド』(1935)、『放浪王子』(1937)、『女王エリザベス』(1939)、『シー・ホーク』(1940)の4つを、それぞれに組曲として編んで並べた1枚。で、組曲としてまとめられると、交響詩にも聴こえるから、コルンゴルトの作曲能力の高さに改めて感じ入る。ワーグナー流のライトモチーフを駆使し、見事に物語を動かしてゆく巧みさ!映像が無くとも、シーンが見えるかのよう...
一方で、それはまさに映画音楽であって... 映画館の暗闇の中、大きなスクリーンを前に味わうワクワクとした気分に充ち満ちている!嗚呼、古き良き映画の時代... 往年のハリウッドならではの、夢見るようにロマンティックで、雄弁なメロディーに彩られ、リッチなサウンドに包まれてのゴージャス感。コルンゴルト(ばかりではないのだけれど... )が、クラシック(ヨーロッパの19世紀の音楽)の伝統を映画に持ち込んで生み出した映画音楽のスタイルというのは、ある意味、ヨーロッパ音楽の結晶なのかも。けれど、ヨーロッパとは何かが違う... ウィーン時代のコルンゴルトも含めて、ヨーロッパの後期ロマン主義には、そこに至る音楽史の重みをひしひしと感じる。が、ここで聴く映画音楽にはそれが無い!ヨーロッパの最高級感をふんだんに響かせながら、アメリカならではのライトな空気感が支配するおもしろさ... 今、改めて、ここで聴く映画音楽を見つめ直してみれば、ヨーロッパの装いとアメリカの気質をさらりとひとつにしてしまったコルンゴルトの器用さ、何より、オペラで培った物語を音楽として紡ぎ出す技術を、苦も無く新しい表現形態であった映画に落とし込んでしまった柔軟性に驚かされる。
というコルンゴルトの映画音楽を聴かせてくれるのが、ヴァイオリン協奏曲と同じ、プレヴィンの指揮、ロンドン交響楽団。やはり、映画音楽で活躍したプレヴィンの先人への共感と、ロンドン響ならではのクリアでニュートラルなスタイルが、往年のハリウッドの輝かしさと、コルンゴルトの希有な才能を鮮やかに引き出していて... ふんわりとドリーミンでキラキラとしたその音楽を、ノスタルジックかつ活き活きと動かすあたりがすばらしい。しかし、コルンゴルトのキャッチーさたるや!ヴァイオリン協奏曲の終楽章のメイン・テーマにもなる、『放浪王子』(track.23-31)のテーマの、たまらなく魅惑的なあたり!嗚呼、なんて素敵なんだ!

PREVIN CONDUCTS KORNGOLD
THE SEA HAWK ・ CAPTAIN BLOOD ・ ELIZABETH AND ESSEX


コルンゴルト : 映画 『海賊ブラッド』 からの 組曲
コルンゴルト : 映画 『シー・ホーク』 からの 組曲
コルンゴルト : 映画 『女王エリザベス』 からの 組曲
コルンゴルト : 映画 『放浪王子』 からの 組曲

アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団

Deutsche Grammophon/471 347-2




モダニスト、ハーマンが聴かせる、ヒッチコックのハラハラ、ドキドキ!

SK62700
バーナード・ハーマン(1911-75)。
ニューヨークのユダヤ系移民の家庭に生まれたハーマンは、幼いころから音楽を学び、やがてジュリアード音楽院へ... コープランド(1900-90)が主導する、新たなアメリカ音楽を模索する組織に加わるなど、近代音楽へ関心を強めてゆくハーマン。アメリカの近代音楽の先駆者、アイヴス(1874-1954)に心酔し、卒業後は、新しい音楽を紹介する指揮者としても活動しながら、クラシックの作品も残している。が、やはり映画音楽の作曲家としてのイメージが強いハーマン... その始めての映画での仕事が、1941年、オーソン・ウェルズの『市民ケーン』。同年、『悪魔の金』では、早くもアカデミー作曲賞を受賞し、その才能を開花させる。コルンゴルトも活躍していた時代に、ハーマンは、モダニスティックな切り口から次なる時代の映画音楽を切り拓いて行った。
そんなモダニスト、ハーマンの歩みを追う、サロネン、L.A.フィル... 1曲目は、ヒッチコックの『知りすぎていた男』(1955)から、前奏曲。コルンゴルトのしなやかさとは明らかに違う、アメリカのマッシヴさというのか、ニューヨーク仕込みだろうか、ヴァレーズ(1883-1965)を思わせるパワフルさが印象的。そこから、やはりヒッチコックの、そしてハーマンの代表作とも言える『サイコ』(1960)を、弦楽合奏のための組曲(track.2-12)として聴くのだけれど... モダニズムを巧みに効果音に仕立て直すハーマンの鋭敏な感性に改めて感服させられつつ、お馴染みの恐怖サウンドとしての魅力を、今一度、近代音楽として捉え直す新鮮さ!このスリリングな魅力は、クラシックのコンサート・ピースとして定着させるべき!という、ハーマンの音楽性が見事に活かされたヒッチコックとのコラヴォレーションの後で、トリューフォーの『華氏451』(1966)、最後の映画音楽となる、スコセッシの『タクシー・ドライバー』(1976)まで、ヴァラエティに富むラインナップに大いに魅了されてしまう。コルンゴルトとはまた違う器用さ、柔軟性を見せるその音楽の妙!映画音楽の新たな次元をたっぷりと楽しませてくれる。
ハーマンの映画音楽に、クラシックからスポットを当てた近現代音楽のスペシャリスト、サロネン... このマエストロならではの明晰さが、ハーマンの音楽に籠められた様々なテイストを引き出して、ストラヴィンスキー、バルトーク、フローラン・シュミット、ホルスト、ワーグナー... 必ずしも近代音楽ばかりでない、ハーマンの変幻自在さを詳らかとしつつ、『タクシー・ドライバー』(track.33-37)のジャジーなあたりにもそっと寄り添って、サロネンのフレキシブルさもまた新鮮だったり。そして、映画の街のオーケストラ、L.A.フィルの手慣れた演奏!キレ味の鋭さ、ムーディーさで、ハラハラ、ドキドキさせてくれる。

BERNARD HERRMANN THE FILM SCORES SALONEN LOS ANGELES PHILHARMONIC

ハーマン : 映画 『知りすぎていた男』 前奏曲
ハーマン : 弦楽合奏のための組曲 『サイコ』
ハーマン : 映画 『マーニー』 からの 組曲
ハーマン : 映画 『北北西に進路を取れ』 序曲
ハーマン : 映画 『めまい』 からの 組曲
ハーマン : 映画 『引き裂かれたカーテン』 より 3曲
ハーマン : 弦楽合奏、ハープとパーカッションのための組曲 『華氏 451』
ハーマン : オーケストラとオブリガート・アルト・サックソフォンのためのナイト・ピース 『タクシー・ドライバー』

エサ・ペッカ・サロネン/ロサンジェルス・フィルハーモニック

SONY CLASSICAL/SK 62700




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