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リヒャルト・シュトラウスの最初と最後を聴く、2つのホルン協奏曲と... [before 2005]

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今年は、リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)の生誕150年のメモリアル。
ということで、ここから少し、リヒャルトの音楽をいろいろ聴いてみようと思うのだけれど。すっかりロマン主義に浸ってからのリヒャルトというのが、また興味深いものがあって。ここまで、ロマン主義の源流を探り、ゆっくりと下って来た分、ロマン主義の最後を飾るリヒャルトの音楽には、感慨も覚えてしまう。また、リヒャルトの音楽に表れるロマン主義の最後の姿の在り様、近代音楽に包囲されてしまったロマン主義の変容ぶりが印象的。ロマンティックでありながらも、かつてのロマン主義とは異質とも言えるギャップがおもしろい。
そんな、ロマン主義... アンドレ・プレヴィンの指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と、その腕利きのメンバーをソリストに立てての、リヒャルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲、2つのホルン協奏曲、二重小協奏曲(Deutsche Grammophon/453 483-2)を聴く。

1曲目、1945年、第2次大戦直後に作曲されたオーボエ協奏曲(track.1-4)は、リヒャルトにとって最晩年の作品となるわけだけれど... そこに響く音楽の、独特な佇まいは何とも印象的。リヒャルトらしく、とてもロマンティックでありながら、これまで聴いて来た19世紀のロマン主義の音楽とは明らかに違う。で、何が違うのだろう?ロマン主義の音楽というのは、常にそのベースに古典主義の型枠というものを感じ... あるいはそこから脱しようとする葛藤を意識させられて来たのだけれど、リヒャルトによるオーボエ協奏曲には、そうしたものを感じない。すっかりロマン主義は裏漉しされてしまって、古典主義の形は消え、とってもクリーミーなものに。でありながら、古典主義の時代への憧憬が強く打ち出される不思議... それは、『ばらの騎士』以後のリヒャルトの特徴ではあるけれど、最晩年となって、よりそういうトーンが強まっていて。この時代錯誤な感覚が、何か過去の亡霊を見るようで、少し奇怪でもありつつ、ファンタジックであるというリヒャルトの境地!これが、本当におもしろい。
続く、1番のホルン協奏曲(track.5-7)は、オーボエ協奏曲から半世紀以上も遡り、1883年、リヒャルトが18歳の時に完成された作品。となると、まだまだロマン主義の時代。オーボエ協奏曲からは一転、竹を割ったようなロマン主義が繰り広げられていて、その教科書的なロマン主義の姿に、得も言えない爽快さを味わう!リヒャルト青年の、まだ何物にも染まらない素直さそのものといった音楽は、ウェーバー、メンデルスゾーンといったドイツ・ロマン主義の先人たちが培って来たものをしっかりと受け継ぎ、若々しくも堂に入って、見事!リヒャルトにとって、1番のホルン協奏曲は、その後の長い創作活動のスタート・ラインではあるのだけれど、そこに響く音楽は、すでにロマン主義の集大成のようであり、とても興味深い。しかし、響き渡るホルンの音の、そよ風のような爽やかさ!この明朗にして牧歌的なロマン主義が、時を経て、次第、次第に、変容して行くのかと思うと、そこに青春の一瞬の輝きのようなものも感じ... リヒャルトの晩年の作品と並べられると、余計にその輝きが際立つよう。
そして、再び晩年の作品へ... 第2次大戦中、1943年に作曲された2番のホルン協奏曲(track.8-10)。リヒャルトの死の2年前、1947年に作曲されたクラリネット、ファゴット、弦楽オーケストラとハープのための二重小協奏曲(track.11-13)が取り上げられるアルバムの後半。1番のホルン協奏曲の後に聴くからこそ、その音楽の独特さを再認識させられる。"リヒャルト・シュトラウス"の中で独自に進化して行ったロマン主義の不思議さ... シェーンベルクらによる、無調への前段階としてのウルトラ・ロマンティシズムや、シベリウスや、ヴォーン・ウィリアムズなど、ヨーロッパの周縁で繰り広げられたナショナル・ロマンティシズムとも違う、20世紀、近代音楽の大波の只中に在って、独自の道を貫き通したリヒャルトの、どこか浮世離れした境地... そのあたりを見つめ直すと、百花繚乱の近代音楽にまったく引けを取らないオリジナリティを見出し、改めて魅了される。
そうしたリヒャルトのオリジナリティを、気負うことなくさらりと響かせるプレヴィンの妙!ウィーン・フィルの流麗さをシンプルに活かし、ロマンティックだけれど、モーツァルトのような朗らかさ、やわらかさを持つ、晩年のリヒャルトならではの音楽を、輝きを以って紡ぎ出す、すばらしさ。そんなウィーン・フィルに乗って、軽やかに歌い上げるソリストたちがまたすばらしく。ウィーン・フィルの首席奏者(1996年の録音当時... )によるソロだけに、オーケストラとは息の合ったところを見せて、より密度の濃いコンチェルトを味合わせてくれる。そうした中で、特に印象に残るのが、1番のホルン協奏曲の、ストランスキーの澄み切ったホルン!若きリヒャルトの真っ直ぐさと、ロマン主義が煮詰まる前のすっきりとした音楽を鮮やかに捉えて、思い掛けないほど清々しい。そんなホルンが、晩年のリヒャルトと絶妙なコントラストを楽しませてくれる。しかし、最初と最後を並べると、リヒャルトの歩んだ道程の、一筋縄では行かなかったろうことが滲み出るようで、何だか深い。

R. STRAUSS: KONZERTE FÜR HORN UND ORCHESTER NOS.1 & 2, U.A.
WIENER PHILHARMONIKER/PREVIN, U.A


リヒャルト・シュトラウス : オーボエ協奏曲 ニ長調 AV 144 *
リヒャルト・シュトラウス : ホルン協奏曲 第1番 変ホ長調 Op.11 *
リヒャルト・シュトラウス : ホルン協奏曲 第2番 変ホ長調 AV 132 *
リヒャルト・シュトラウス : 二重小協奏曲 ヘ長調 AV 147 〔クラリネット、ファゴット、弦楽オーケストラとハープのための〕 **

マルティン・ガブリエル(オーボエ) *
ラルス・ミヒャエル・ストランスキー(ホルン) *
ロナルト・ヤネツィク(ホルン) *
ペーター・シュミードル(クラリネット) *
ミヒャエル・ヴェルバ(ファゴット) *
アンドレ・プレヴィン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

Deutsche Grammophon/453 483-2

リヒャルト・シュトラウス、生誕150年に、リヒャルトを聴く!
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