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古典主義にロマン主義を重ねて... ブラームス、2つの弦楽六重奏曲。 [before 2005]

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ブルックナーって、一体、何なんなのだろう?
そう、つくづく感じたのは、ブルックナーをしっかりと味わった後で、ブラームスに触れて... ブルックナーの後のブラームスは、衝撃的なくらいにスウィート!というより、音楽へと還って来た!という安堵感すら湧いて来る。つまり、ブルックナーは音楽ではない?いや、音楽なのだけれど... 音楽史における優等生、ブラームスの教科書的な音楽を聴くと、ブルックナーの音楽のイカレ具合を思い知らされる。裏を返せば、教科書を逸脱するほどのオリジナリティを生み出したブルックナーに感服させられる。同時代の音楽風景を眺めて、ブルックナーに焦点を合わせた時の衝撃は、ただならない。一方で、ブルックナーもブラームスも、ロマン主義の時代に在って、古典主義がその音楽の核にしっかりと存在している興味深さ!まったく違う色合いを見せながら、同根であるというおもしろさ... ともにウィーンを拠点とし、ウィーン音楽院で教えていたブルックナーとブラームス。この2人の音楽には、それぞれに色を変えながらも、ウィーン古典派の伝統が生きているのかもしれない。
ということで、ブラームス... ピリオド・アンサンブル、ラルキブデッリによる、ブラームスの2つの弦楽六重奏曲(SONY CLASSICAL/SK 68252)を聴く。

ブラームスがウィーンへと移る前、デトモルトの宮廷にピアニストとして仕え、ハンブルクでは女声合唱団を指揮し、忙しくしていた27歳の1860年に完成された1番の弦楽六重奏曲(track.1-4)。1862年、ウィーンへと移った後、32歳の1865年に完成された2番の弦楽六重奏曲(track.5-8)。若きブラームスによる2つの弦楽六重奏曲を聴くのだけれど、その音楽の何と瑞々しいこと!ブルックナーの後でのブラームスは、その魅力がより引き立つようで、弦楽のやわらかな響きが美しく流れてゆくのが印象的。で、この「流れる」感覚がたまらない!この流麗さに、西洋音楽の本質を見るよう。そして、ブルックナーの音楽と比べれば、ブラームスの音楽は際立って洗練されていることを思い知らされる(もちろん、ブルックナーには突き抜けたオリジナリティがある!)。
そんな1曲目、1番の弦楽六重奏曲... 始まりの1楽章は、冒頭のメロディーからブラームスの交響曲を聴くような深淵さが広がり、ああ、ブラームスだな、という匂いが立ち込める。それでいて、六重奏という規模でありながら、後の交響曲に負けない充実感が生まれていることに、ブラームスの音楽を構築していく力量の確かさを再認識させられる。まさに新古典派としての本領発揮!そこから、一転、ロマンティックな2楽章(track.2)の、エモーショナルな表情はロマン主義そのもので、この有名な悲しみを湛えたメロディーのキャッチーさというのもまたブラームスの魅力。そして、後半は再び古典主義へと回帰し、ベートーヴェンを思わせる3楽章のスケルツォ(track.3)、さらに時代を遡って、モーツァルトやハイドンのような、アンシャン・レジームの愉悦を感じさせる終楽章のロンド(track.4)と、輝きに充ちた音楽にも魅了される。新古典派として(1楽章)、ロマン主義の時代の作曲家として(2楽章)、ウィーン古典派の伝統を受け継ぐ者として(3、4楽章)、オリジナリティと19世紀のモードと伝統、全方向に目を向け、まとめ上げる妙!ブラームスの卒の無さと巧みさ、それを成し得るセンスに感心させられる。
続く、2番の弦楽六重奏曲... やはり、ブラームスらしい深淵さを見せる1楽章(track.5)の冒頭。そこから、明るく穏やかな音楽が豊かに繰り出されて行くのが印象的。ここには、かつての婚約者、アガーテ・フォン・シーボルトの名が刻まれたアガーテ音型が織り込まれているのだけれど、それこそが極めてロマンティック!で、音楽も、かつての恋愛をポジティヴに回想しつつ、ふと切なさが滲むようなところがあって... その切なさは、2楽章(track.6)でより色を強め、どこかシューベルトのセンチメンタルなリートを思わせるところも... 3楽章(track.7)では、メランコリックなテーマと、それを素材に変奏されて行く音楽のアカデミックさが、かえってドラマティックな起伏を生み出し、おもしろく... 1番に比べて、よりロマン主義的なトーンを見せる2番。一方で、古典主義の語法はしっかりと押さえ、より手堅く音楽が紡ぎ出されている興味深さもあり... そうしたあたりに、古典主義とロマン主義を絶妙に重ねる、新古典派、ブラームスならではのスタイルの成長を感じずにはいられない。
という、2つの弦楽六重奏曲を、瑞々しく、それでいて軽やかに奏でたラルキブデッリ。彼らの演奏があってこそ、若きブラームスの音楽も、断然、映える!まず、ピリオドならではの透明感が、ブラームスの「新古典派」という性格を明確にし、そのすっきりとしたフォルムをきっちりと見せてくれる。そこから、ピリオドの楽器の持つ渋さが、味わいとなって浮かび上がり、2つの弦楽六重奏曲、それぞれを、やわらかな気分で包む。そうして生まれる明朗さ!これまでブラームス作品に感じて来たアンティーク感が見事に拭い去られ、瑞々しく、真新しさすら感じられるから凄い。そうした中で、特に印象に残るのが1番の2楽章(track.2)。あの思い入れたっぷりに響く名旋律が、さらりと奏でられてしまって、まったく違ったものに聴こえるから衝撃的。けれど、これくらいのライトさで捉えてこそ、全体がフワっと浮上するような効果が生まれ、心地良い流れを創り出すから見事... 身構えることなく、ナチュラルに紡がれる音楽の美しさは、格別!

BRAHMS: SEXTETS OP.18 & OP.36 ・ L'ARCHIBUDELLI

ブラームス : 弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 Op.18
ブラームス : 弦楽六重奏曲 第2番 ト長調 Op36

ラルキブデッリ
ベラ・ヴェス(ヴァイオリン)
マリリン・マクドナルド(ヴァイオリン)
ユルゲン・クスマウル(ヴィオラ)
フース・ジューケンドゥルップ(ヴィオラ)
アンナー・ビルスマ(チェロ)
ケネス・スロウィック(チェロ)

SONY CLASSICAL/SK 68252




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