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シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、ロマン主義の本質へ... [before 2005]

いやはや、ゴールデン・ウィーク、どう過ごされておりますか?
一昨日、ふらりと出掛けたのだけれど、凄まじい人出に中てられて、もう疲労困憊。やっぱり連休に出掛けるのは無謀だったなと... ということで、家で静かに音楽を聴くことに... いや、家にいるのも悪く無い。周囲の通りはっきりと交通量が減って、いつになく静か!こういう静けさを味わうのもまた連休の楽しみじゃないかなと... さて、そんな静けさの中、春の陽気に包まれて聴く音楽は、もちろんロマン主義!でもって、このあたりでしっかりとロマン主義へ踏み込んでみようかなと... シューベルトから、メンデルスゾーン、そしてシューマンへ...
フランス・ブリュッヘン率いるピリオドの名門、18世紀オーケストラによる演奏で、メンデルスゾーンの4番の交響曲、「イタリア」と、シューベルトの5番の交響曲(PHILIPS/432 123-2)。ピリオドが生んだ鬼才、ニコラウス・アーノンクールの指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、シューベルトの4番の交響曲、「悲劇的」と、シューマンの4番の交響曲(TELDEC/4509-94543-2)を聴く。


メンデルスゾーンの4番、シューベルトの5番、イズムを越えて明朗に歌うブリュッヘン!

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意外と古典主義なシューベルトを聴いて来てのメンデルスゾーンは、しっかりとロマンティックで、そのロマン主義の豪快さに、ちょっと圧倒される。そんな1曲目、今さら説明するまでもない、メンデルスゾーンの4番の交響曲、「イタリア」(track.1-4)、のっけから歌い上げられる、「南」を感じさせる朗らかなメロディーの、魅力的なこと!久々に聴くと、何だか身体に沁み渡るようで、そういうキャッチーさがたまらない。ドイツ・ロマン主義ならではの歌謡性に、南欧の柑橘で香り付けされたような爽やかな仕上がりは、下手にオペラティックにしてイタリア風としてしまうのではない、巧みに「イタリア」の気分そのものを抽出していて、メンデルスゾーンのセンスの良さをただならず感じてしまう。で、圧巻は終楽章、サルタレロ(track.4)!南イタリアに端を発する激しいダンスのリズムに乗って、嵐が吹き荒れるような音楽が展開されるのだけれど、ブリュッヘン+18世紀管の、ノー・ブレーキなスピード感が余計にスリリングな音楽を展開させていて、ただならずカッコいい!細部まで精緻に鳴らし切りながら、激しい音楽を一糸乱れず混然一体となって疾走してみせるのだから、改めて18世紀管の凄さを思い知らされる。
というメンデルスゾーンの後で、シューベルトの5番の交響曲(track.5-8)が取り上げられるのだけれど... その、あまりにモーツァルト風な音楽に、やっぱりシューベルトは古典主義の人なのだなと、これまでの印象に念押しされるかのよう... シューベルト(1797-1828)とメンデルスゾーン(1809-47)は、11歳しか違いはないのだけれど、18世紀生まれと19世紀生まれ、過渡期の10年には大きな開きがあることを思い知らされる。もちろん、シューベルトが5番を作曲した1816年は、メンデルスゾーン少年が母からピアノを学んでいた頃で、メンデルスゾーンの「イタリア」が完成されたのはシューベルトの死後、5年が立った1833年だけに、スタイル的に大きな開きがあって当然ではあるのだけれど... 一方で、18世紀管の演奏は、古典派の時代を脱したサウンドの厚みというものを響かせていて、19世紀という新しい時代の規模を感じさせながらモーツァルト風を展開するという、独特の聴き応えが興味深く... ライトな音楽がヘヴィーに響くアベコベ感が味になっているからおもしろい。
で、メンデルスゾーンの「イタリア」の後にシューベルトの5番を置いたブリュッヘンのセンスが効いている!このアルバムでのシューベルトの5番は、シューベルトの「イタリア」ということか?シューベルトにして屈託なく明るい音楽が、メンデルスゾーンの爽やかな「イタリア」へとつながる道程のように感じられるからおもしろい。ロマン派のメンデルスゾーン、古典派的なシューベルトというコントラストを浮かび上がらせつつ、ライトな18世紀から一転、ヘヴィーな19世紀における明朗な2つの交響曲の近似性も見せる巧みさ。過渡期ならではの音楽に、様々な視点を導き出すブリュッヘンの器用さに感心させられる。

MENDELSSOHN ・ SYMPHONY NO. 4 ・ SCHUBERT ・ SYMPHONY NO. 5
ORCHESTRA OF THE 18TH CENTURY ・ BRÜGGEN

メンデルスゾーン : 交響曲 第4番 イ長調 Op.90 「イタリア」
シューベルト : 交響曲 第5番 変ロ長調 D.485

フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ

PHILIPS/432 123-2




シューベルトの4番、シューマンの4番、ドイツ・ロマン主義の本質に迫るアーノンクール...

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モーツァルトを思わせるシューベルトの5番の交響曲を聴いてから、4番、「悲劇的」(track.2-5)に遡るのだけれど... これが、見事にロマンティックであって驚かされる。5番と同じ年、1816年に作曲された4番。過渡期の、新旧のスタイルが入り乱れているからこそ、新旧の順序も前後するのか?しかし、5番に比べ、新しいスタイルに挑む若きシューベルトの、意欲に溢れるパワフルな音楽の魅力的なこと!1楽章、序奏の重苦しい雰囲気から、キャッチーなメロディーが疾走してゆく展開は、まさしくドイツ・ロマン主義の交響曲そのものであって、ロマン派、シューベルトを再認識させられる。けれど、ロマン派すら逸脱するような展開も見せる4番... 3楽章のメヌエット(track.4)の、調性が壊れてしまったようなグロテスクなテーマが、もの凄いインパクトを放ち、19世紀初頭ではなく、20世紀初頭の音楽を聴くような感覚がある。また、アーノンクールならではというのか、そうしたあたりを際立たせ、ちょっと悪ノリするようなところもあって、より刺激的な音楽を作り上げて来るから、おもしろい!
というメヌエットの後で繰り広げられる終楽章(track.5)は、すでに「ザ・グレイト」(1825-26)を思わせるもので。息つく暇なくリズムが刻まれるテンションの高い音楽は、まさに「ザ・グレイト」の終楽章のイメージ。で、これが、シューベルト、19歳の作品というから、また驚かされる。そこには、シューベルト芸術の完成形の雛型がすでに表れていて、なおかつその死後、ずっと先に現れるだろう音楽を予兆するようなところすらあって、シューベルトの早熟さに感心させられる。そんな4番、シューベルトの交響曲としては、地味な扱いを受ける番号ではあるけれど、間違いなく、「未完成」、「ザ・グレイト」に次ぐ魅力を備えているように感じる。久々に聴くと余計に... で、そこから、ロマン主義の時代、ど真ん中にあたるシューマンの4番の交響曲(track.6-9)が続くのだけれど、シューベルトからシューマンへ大きなギャップを感じずに2つの交響曲がつなげられるのがとても印象的。
シューマンの4番は1841年に作曲され、ここで聴く一般的な最終稿に改訂されたのが1851年。シューベルトの4番からは随分と時間を経ているものの、違和感なく2つの交響曲が並べられ、なおかつロマン主義の発展を響かせるという展開が絶妙(2つの交響曲の前には、メンデルスゾーンの序曲が取り上げられるのも、ドイツ・ロマン主義を俯瞰するには絶好!)。アーノンクールの巧妙なガイドによって、ロマン主義の本質に近付いてゆくようなおもしろさがある。そして、ひとつひとつの作品から旨味をしっかりと引き出すアーノンクールのシェフぶり!ベルリン・フィルのゴージャスなクウォリティを少しくすませて、古典主義とは違うロマン主義の濃厚なあたり、どこか芝居掛かった露悪さというのか、ドイツ的キッチュを臭わせる仕上がりが癖になる。ところで、2つの交響曲がともに「4番」であるというのが、おもしろい。

SCHUBERT&SCHUMANN:SYMPHONIES NOS.4/etc.
HARNONCOURT, BERLINER PHILHARMONIKER

メンデルスゾーン : 序曲 「美しきメルジーネの物語」 Op.32
シューベルト : 交響曲 第4番 ハ短調 D.417 「悲劇的」
シューマン : 交響曲 第4番 ニ短調 Op.120

ニコラウス・アーノンクール/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

TELDEC/4509-94543-2




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