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ベートーヴェン、シュポーア、マイアベーアの、ロマンティック・プリズム。 [before 2005]

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近頃、何だか"しりとり"をしているような、そんな感じ?
メディチ家のウェディングに続いて、フランス宮廷でのウェディングに始まって、フランスの音楽史を下って、パリにグルックがやって来て、やがてフランス革命が起こり"救出オペラ"がブームになって、その流れに乗って、ベートーヴェンが『レオノーレ』を作曲して... で、こういう"しりとり"がおもしろい!でもって、歴史こそ"しりとり"と言えるのかもしれない。ならば、クラシックは壮大なる"しりとり"!なんて考えると、クラシックもまた違った見方ができるのかも... ひとつの作品との出会いが、次の出会いに導いてくれる。そういうの、いいなァ。
ということで、ベートーヴェンのオペラの後で、歌曲も聴いてみようかなと... アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メッゾ・ソプラノ)が、メルヴィン・タンのピリオドのピアノで歌う、ベートーヴェン、シュポーア、マイアベーアという異色の組み合わせによる歌曲集(ARCHIV/469 074-2)を聴く。

ずっとオペラが続いたので、歌曲の軽さが何とも言えず... それでいて、フォン・オッターがチョイスした朗らかなナンバーが、まるで春風のよう!正直に言うと、歌曲が苦手。ドイツ・リートなどは、どうも辛気臭いような気がして... 根暗なシューベルトとか、闇を抱えるシューマンとか、そういうイメージが強いのかも?そこに来て、フォン・オッターが歌う、ベートーヴェン、シュポーア、マイアベーアによる歌曲は、それぞれにドイツ・リートのステレオ・タイプとは一味違うカラーを持っているようで、興味深い。至高のシンフォニスト、ベートーヴェン(1770-1827)に、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、シュポーア(1784-1859)、グランド・オペラの巨匠、マイアベーア(1791-1864)という3人、ともにドイツ人であり、まさにドイツ・リートが興隆する頃、19世紀前半に活躍した作曲家ではあるものの、「ドイツ・リート」と言われて、すぐに思い浮かぶ作曲家ではないあたり... そんな3人を並べたフォン・オッターのセンス... ドイツ・リートとの絶妙な距離感が、このアルバムのおもしろさにして、魅力。
まず、始まりは、3人の中で最も若いマイアベーアの『40のメロディ』から7曲(track.1-7)... そして、マイアベーアはパリで活躍した作曲家だけに、5曲がフランス語によるもの(track.3-7)。パリの洒落たサロンで歌われたのだろうか?詩の深い世界へと下りてゆくようなドイツ・リートとは違い、どことなしにエンターテインで、朗らかさと豊かな表情が魅惑的。そうしたフランス語のナンバーで、特におもしろいのが、無伴奏で、女声、3声で歌われる、ポリフォニックなルネサンス期のシャンソンのような「こどもたちの祈り」(track.6)。この古いスタイルで遊ぶような感覚が、ドイツではなく、パリを思わせて、素敵。というマイアベーアに続くのが、ベートーヴェン... で、こうして、ベートーヴェンの歌曲を改めて聴くというのが、また新鮮で... 歌曲ならではのシンプルな在り様が、交響曲からはなかなか聴こえて来ないベートーヴェンの歌心を浮かび上がらせて、まったく興味深い。そうした中で印象深いのが、「愛されない者の溜め息―愛のこたえ」(track.12)。後に合唱幻想曲に転用される有名なメロディ!そのオリジナルの愛らしさ!眉間に皺を寄せた"楽聖"とは違う、ベートーヴェンのスウィートさがちょっとこそばゆくもあり、乙です。そして、最後は、シュポーアによる、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾならではの、ヴァイオリンを伴った『6つの歌曲』(track.18-23)。このヴァイオリンのあまやかな響きがもたらす雰囲気が、センチメンタルなウィーンのオペレッタに通じるような香りを感じさせて、程好くメロドラマティックで、酔わされる!
そんな、ヴァラエティに富む歌曲を聴かせてくれたフォン・オッター... けして過剰になることなく、ひとつひとつのナンバーを丁寧に捉え、作品そのものからナチュラルな魅力を汲み上げる巧みさは、さすが。それでいて、フォン・オッターの鮮やかにして重みのある声が、ドイツ・リートの本家(シューベルト、シューマンあたり... )に比べると、ややライトな印象も受けるベートーヴェン、シュポーア、マイアベーアの歌曲に、一本、筋を通して、程好い聴き応えをもたらす。そこに、コンラート・グラーフのピアノを奏でるタンのやさしいタッチがそっと寄り添い、穏やかな流れを紡ぎ出す。さらに、シュポーアの『6つの歌曲』(track.18-23)では、スパルフのヴァイオリンの明るい音色が絶妙で、フォン・オッターのメッゾ・ソプラノに、スウィートさを加えて、何だろう?この感覚... 軽いようでいて、程好く重く、朗らかでいて、雰囲気がある。フォン・オッターのみならず、参加したアーティスト、それぞれの音楽性がさり気なく作用し合い、生まれる、味わい。定番のドイツ・リートにはない魅力を見出して、気が付くと、すっかり魅了されてしまって、歌曲が好きになってしまう?

BEETHOVEN • MEYERBEER • SPOHR: LIEDER
ANNE SOFIE VON OTTER/MELVYN TAN


マイアベーア : 『40のメロディ』 から 第12番 「ミーナ」 (ヴェネツィアのゴンドラ漕ぎの歌)
マイアベーア : 『40のメロディ集』 から 第6番 「おいで」 (美しい漁師の娘よ)
マイアベーア : 『40のメロディ集』 から 第16番 「私の軽やかな小舟」
マイアベーア : 『40のメロディ集』 から 第22番 「逃亡」
マイアベーア : 『40のメロディ集』 から 第27番 「シチリアの人々」
マイアベーア : 『40のメロディ集』 から 第28番 「子供たちの祈り」 **
マイアベーア : 『40のメロディ集』 から 第29番 「嵐のあいだの誓い」
マイアベーア : 羊飼いの歌 *
ベートーヴェン : この暗い墓場に WoO 133
ベートーヴェン : 愛の嘆き Op82-2
ベートーヴェン : 愛する人が去ろうとしたとき (リューディアの裏切りに感じたこと) WoO 132
ベートーヴェン : 愛されない者の溜め息-愛のこたえ WoO 118
ベートーヴェン : あこがれ WoO 146
ベートーヴェン : 恋人に寄せる WoO 140
ベートーヴェン : アリエッタ (口づけ) Op.128
ベートーヴェン : 5月の歌 Op.52-4
ベートーヴェン : アデライーデ Op.46
シュポーア : 『6つの歌曲』 Op.154 *

アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メッゾ・ソプラノ)
メルヴィン・タン(ピアノ : コンラート・グラーフ)
クリスティーナ・ホグマン(ソプラノ) *
クリスティーナ・ハマルストレム(メッゾ・ソプラノ) *
エリック・ホープリッチ(クラリネット) *
ニルス・エリク・スパルフ(ヴァイオリン) *

ARCHIV/469 074-2




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