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楽聖の弟子、リースによる、ドイツ・ロマン主義の青春の頃。 [2009]

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先日、ふらふら~っと散歩に出掛けて、新緑の瑞々しい緑に目が奪われてしまった。桜はすっかり終わってしまったけれど、何気に、桜に負けず目を楽しませてくれる新緑。まさに、新しい「緑」なわけだけれど、単にひとつの緑色ではない若葉の豊富なパレット!緑が濃くなる前の、淡さの中に見せる繊細な色を目にするにつけ、その多彩さに感心させられる。何より、綺麗!下手すると、花よりも綺麗かも?なんて思ってしまうほど...
さて、この新緑の季節にぴったりな音楽を聴いて行こうかなと考えております。ということで、ロマン主義がまだまだ新緑だった頃、ベートーヴェンの歌曲を聴いた前回に続いての、ベートーヴェンの弟子、フェルディナント・リース(1784-1838)。ミヒャエル・アレクサンダー・ヴィレンス率いる、ピリオド・オーケストラ、ケルナー・アカデミーの演奏で、リースの2つコンチェルトと2つの序曲(cpo/777 353-2)を聴く。

ウェーバー(1786-1826)の2つ年上となるリース... まさに、ドイツ・ロマン主義の始まりを担った世代となる。そして、ここで聴く音楽も、初々しいロマン主義に充ち溢れていて、師、ベートーヴェンよりも、しっかりと踏み込んだロマン主義を響かせる。のだけれど、その1曲目、1828年、ベートーヴェンの死の翌年、フランクフルトで初演されたリースの最初のオペラ、『盗賊の花嫁』序曲は、ベートーヴェンからの影響がしっかりと聴き取れて... 荘重な出だしに、"疾風怒濤"風のパワフルな展開、オペラというよりも交響曲を思わせる整然とした雰囲気が、まさにベートーヴェン風。師への忠誠すら感じられるようなベートーヴェン風に、微笑ましさえ感じられたり... いや、こういうベートーヴェン風も魅力的!で、その後で聴くのが、そこから17年、時代を遡った、リースがまだ20代だった頃の作品、2つのホルンのための協奏曲(track.2-4)。で、こちらの方がずっとロマン主義的であることが興味深い。2つのホルンというあたりが、協奏交響曲を思わせて、18世紀的なものも感じさせるのだけれど、ホルンという楽器の牧歌的な音色が、ロマン主義の色を際立たせてもいて。何より、終楽章(track.4)の歌謡性!そう、ドイツ・ロマン主義はこの人懐っこい歌謡性だったなと、キャッチーなメロディに思わずニンマリしてしまう。
ドイツ・ロマン主義というと、それはもうアカデミックなクラシックの屋台骨。なのだけれど、20世紀初頭まで続く長いムーヴメントであるドイツ・ロマン主義を丁寧に見つめると、全てが必ずしもそう厳めしいものではなくて... ロマン主義が管を巻く以前の、まだまだフレッシュだった頃の音楽というのは、どこか青さもあって、青春そのものといった雰囲気がある。若々しく爽やかな一方で、若いがゆえの詰めの甘さも感じたり... ドイツ・ロマン主義ならではの歌謡性が生む、キャッチーなあたりが、微妙にチープ感を漂わせることも。しかし、そこがいい!成熟される前のロマン主義の、ある種の若気の至りが、思い掛けなくいい味を醸してしまうおもしろさ!そうしたドイツ・ロマン主義が、鮮やかに繰り出される1番のヴァイオリン協奏曲(track.6-8)!ヴァイオリンなればこその、軽やかでよりメロディアスな性格が、ドイツ・ロマン主義の青春を際立たせて、甘酸っぱさでいっぱいにする。特に終楽章(track.8)の、どこかしょっぱいようなテーマは、一度、耳にしてしまうと、癖になる?けど、これって、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の終楽章のテーマの裏焼き?いや、そういうことも在り得る師と弟子なわけだけれど、ベートーヴェンの長調が、リースの短調となると、グっとロマンティックになる化学変化もおもしろいところ。
さて、そんなヴァイオリン協奏曲の魅力を見事に引き出しているのが、シュテックによるソロ!ピリオドならではのヴィブラートを抑えて生まれる透き通った音色と、少し線が細いくらいの響きが、鮮やかにリースの時代のロマン主義を表現して。そうしたタッチで、リースによるキャッチーなメロディを歌い上げると、若々しく、雄弁ですらあり。管を巻く以前のロマン主義の、まったく以ってピュアな性格を、見事に響かせ、魅了されるばかり。そこに、リースが活躍した頃、人気を博したパガニーニ(1782-1840)を思わせるヴィルトゥオージティに溢れる華麗さもあり、シュテックの無駄の無いタッチがそうした華麗さを瑞々しく捉えると、まるでガラス細工がキラキラと輝くようで、その美しさに聴き入ってしまう。そんなソリストをしっかりと支える、ヴィレンス+ケルナー・アカデミーによる手堅い演奏も印象的。ピリオドなればこその明瞭さの一方で、ストイックになり過ぎることのない、地に足の着いた響きには安心感があり。2つの序曲(track.1, 5)では、よりアグレッシヴな演奏を繰り広げて、ロマン主義の青春の頃を颯爽と鳴らして、胸空く音楽を聴かせてくれる。

Ries ・ Double Horn Concerto ・ Violin Concerto ・ Willens

リース : オペラ 『盗賊の花嫁』 序曲 Op.156
リース : 2つのホルンのための協奏曲 変ホ長調 WoO 19 *
リース : オペラ 『ギレンシュテーンの魔女』 序曲 Op.164
リース : ヴァイオリン協奏曲 第1番 ホ短調 Op. 24 *

トゥーニス・ファン・デア・ズヴァールト(ホルン) *
エルヴィン・ヴィーリンガ(ホルン) *
アントン・シュテック(ヴァイオリン) *
ミヒャエル・アレクサンダー・ヴィレンズ/ケルナー・アカデミー

cpo/777 353-2




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