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ロシアの名曲、ソヴィエトの名曲、2つのヴァイオリン協奏曲。 [before 2005]

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やっぱり、メダルが取れると、嬉しいですね。
単純なものだから、メダリストたちの渾身の滑りを目にしてしまうと、自分もがんばろうと思えてしまう。いや、みんながんばっているし、がんばらないとその場に立てないのがオリンピック... メダルばかりが価値ではないことは十分に承知しているのだけれど、「メダル」が持つパワーというのか、テレビを通しての応援であっても、その先にメダルがあった時の高揚感は、まるで魔法のよう。でもって、ますますテンション上がってます!
さて、ロシア音楽... テンションも上がって来たところで、ど真ん中の名曲を聴いて、さらにテンションを上げてみようかなと... 五嶋みどりのヴァイオリン、クラウディオ・アバドの指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるライヴ録音、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と、ショスタコーヴィチの1番のヴァイオリン協奏曲(SONY CLASSICAL/SRCR 2259)を久々に聴く。

普段、どうもマニアックな方からクラシックを聴いていると、変に名曲に抵抗感があったりして... 今さらながらに名曲というのが、何か小っ恥ずかしかったり... いや、素直に聴けばいいだけか... ということで、久々に聴いたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。もう降参するしかない。間違いなく名曲です。1楽章の、このコンチェルトの顔とも言うべき第1主題、ヴァイオリン・ソロが、少しセンチメンタルに歌い出したのが耳に残る中、展開部でオーケストラがそれを雄弁に歌い上げる!何なのだろう、何度、聴いても、打ち震わされるものがあって... 得も言えずキャッチーで、聴く者の心を揺り動かすテーマ。そんな無敵のテーマをチャイコフスキーが生み出したことに感服。まったく以ってクラシカルで、得も言えずドラマティックで、それでいてカッコよくすらある。こんなテーマ、他になかなか無いと思う。そして、これこそがチャイコフスキー芸術の真価なのだなと、つくづく感じる。
フランス音楽の色彩的なセンス、ドイツ音楽の圧倒的な構築力を前にすると、チャイコフスキーの音楽というのは、どこか薄さを感じなくもないのだけれど、改めてこの名曲に触れてみると、フランスも、ドイツでも適わない、聴く者の心を捉えるチャイコフスキーのメロディー・メーカーとしての力量を思い知らされ... 振り返れば、白鳥にしろ、くるみにしろ、悲愴にしろ、オネーギンのポロネーズにしろ、1番のピアノ協奏曲にしろ、チャイコフスキーはとんでもないメロディー・メーカーだったなと... そして、そのひとつひとつが放つ独特のギャラントさが実に興味深く... 西欧を志向しながらも、ロシアの感覚をベースに立ち上げてゆく、西欧にはないギャラントさと言うのか... チャイコフスキーの伊達っぷりは、極めてクラシカルで華やいだものとして当たり前のように受け入れられてはいるけれど、よくよく見つめると、これにはただならないセンスの良さを感じる。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を久々に聴いてみて、そんな風に強く感じ、チャイコフスキーのギャラントさに、改めて魅了されてしまう。
そして、ロシア音楽の名曲と鮮やかな対を成す、ソヴィエトにおける名曲、ショスタコーヴィチの1番のヴァイオリン協奏曲(track.4-7)が続くのだけれど... チャイコフスキーでいい具合に刺激されたからだろうか、改めて聴くソヴィエトの名曲にも、よりクローズアップされるものを感じて... 強烈な個性を放つショスタコーヴィチの1番のヴァイオリン協奏曲も、よくよく聴いてみると、ベルクあたりの曖昧模糊としたトーンが漂い、またヴァイルなどの新即物主義的な表情も浮かび、ソヴィエトという隔絶された世界に在りながらも、20世紀のモードを意識させる音楽であることに気付かされる。一方で、あんなにもギャラントだったロシア音楽が、革命を経て、これほどまでに荒涼たる景色を見せることに、居た堪れないものを感じたり... しかし、この荒涼とした風景もまたロシアであって、チャイコフスキーとはまた違ったベクトルで、聴く者の心を揺り動かす。いや、これもまた名曲だ。
そんな2つの名曲を並べた五嶋みどり... まず、ロシアとソヴィエトの2つ名曲をぶつけて来る大胆さに目を見張る。それでいて、まったく異なる様相を呈する2つの作品を、鮮やかに弾き上げてしまうマエストラ然とした揺るぎ無さたるや!2曲ともそう容易く演奏できる代物ではないはずだが、何てことなくやってのけてしまう五嶋みどりのヴァイオリンに、今さらながらに感服させられる。さらには、繊細さと芯の強さを持った五嶋みどりのヴァイオリンが、しっかりとスコアを読み解いて、作曲家の安易なイメージに流されることなく、音楽の核心を突いてゆくようで... というアヴァイオリン・ソロを、鮮やかにサポートする、アバド、ベルリン・フィルの性格もあってか、よりニュートラルな音楽が展開され、その先に、2人の作曲家の真価が、見事にすくい上げられ、2つの名曲が、よりくっきりと見えて来るからおもしろい。さらに、ライヴ録音ならではの、次第に熱を帯びて来る空気感もあって、惹き込まれるばかり... 特別なことをするのではない、しっかりとスコアと向き合って、実直に奏で、煽ることなく、熱を帯びさせる、その上っ面ではない、芯から熱い演奏は、唸るしかない。

TCHAIKOVSKY:VIOLIN CONCERTO ・ SHOSTAKOVICH:VIOLIN CONCERTO NO.1
MIDORI ・ CLAUDIO ABBADO ・ BERLIN PHILHARMONIC


チャイコフスキー : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
ショスタコーヴィチ : ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 Op.77

五嶋みどり(ヴァイオリン)
クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

SONY CLASSICAL/SRCR 2259




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