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"Love is Strange" [2008]

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七草粥... 正月、すっかり祝ってしまった胃を休める...
一度、食べてみたいと思うのだけれど、未だ食べたことがない。そして、今年も食べそびれました。残念。なので、「七草粥」とは如何なるものか?と、ちょっと調べてみたら、人日の節句の朝に食べられる行事食(例の如く、wikiにて... )とのこと。1月7日って、節句なんだ!?とか、ちょっと驚いてみる。しかし、正月の飲み過ぎ、食べ過ぎをいたわることまで行事にしてしまう日本文化の隙の無さというか、発想の転換というか、凄いなとつくづく思う。ところで、今年は、飲み過ぎず、食べ過ぎず正月を過ごせたことで、胃の方は至って快調!一方で、どうも気持ちの方がすっかり無気力状態でして、参ったァ。何だかんだで、テンション高い年末年始を乗り切ると、どっと虚脱感。で、何も手に着かない状態がもどかしく、そんなあたりに妙にストレスを感じたりして、空回り中。
そこで、音楽による七草粥の試み!当blog、昨秋あたりから、ちょっと有名どころを聴き過ぎたか?そういう疲労感もあったりで... 七草粥的なアルバムを聴いて、気持ちを整えようかなと... その最初の1枚、イギリスのルネサンス期の音楽を、リュート・コンソートで聴く、ヴァンサン・デュメストル率いる、ル・ポエム・アルモニークによるアルバム、"Love is Strange"(Alpha/Alpha 081)。

"Love is Strange"とは、収録されている1曲(track.20)から採られたタイトルなのだけれど、ストレンジなのは、ラヴというより、ここで鳴り響くリュートを主体としたコンソートの響きそのもの!古楽器が特異なのは当然だけれど、リュートが束となって鳴り響く独特の風合いは、様々な音に充ち溢れているクラシックに在っても、何とも言えずストレンジなものに感じられる。リュートばかりでなく、ギター、テオルボ(巨大リュート?)、シターン(巨大バンジョー?)といった撥弦楽器の、爪弾かれて発する、どことなく金属的なサウンド... それらを撚って生まれる、どこかエレクトリカルなハーモニー... 極めつけは、撥弦楽器のコンソートをコンパクトにひとつのマシーンにまとめ上げたようなヴァージナル(チェンバロの親戚... )が放つ特異な音色!のっけから、そうした音色のひとつひとつと、それらが綾なして広がる不思議なトーンに、目を見張ることに...
1曲目、ジョンスンの「緑なす野のウェイクフィールド」、テオルボによる最初の一音が耳に入って来て、その低音の、深くもヴィヴィットなサウンドに、これは、一体、何っ?!となる。テオルボをまったく知らないわけではないけれど、改めてテオルボの音がボンっと耳に飛び込んで来る衝撃というのか、普段、聴き馴染んでいるクラシックの楽器ではない、ただならない新鮮さ!古楽器のステレオタイプなアルカイックさを、あっさりと裏切って、瑞々しく、現代的にすら感じられる音色が浮かび... そこに、次々にリュートが乗っかって、シンプルな旋律を軽やかに重ね、ポリフォニックな美しい織物を編み上げてゆく!そうして、ヴァージナルが鳴り出すと、もう異次元... ルネサンス期の音楽を、撥弦楽器のコンソートで響かせると、まるでミニマル・ミュージック思わせる感覚を見出して、間違いなく古い音楽ではあるのだけれど、古臭さが微塵も感じられないから刺激的。
そういう現代的なセンスの一方で、イギリスならではというのか、フォークロワなトーンが、ところどころスパイスを効かせていて... キャリノウ(track.4)や、ジョンスンのセレンジャーのラウンド(track.8)の、人懐っこいリズム!思わず踊り出しそうになった後で、定番、グリーン・スリーヴス(track.9)のメランコリックなメロディーなどは、郷愁を誘うトーンに包まれて、心がじんわりさせられて... フォークロワな音楽が持つハート・ウォーミングな空気感が、そこはかとなしに現れるのも、このアルバムの魅力。撥弦楽器が放つ思い掛けなく現代的なサウンドと、フォークロワとそう遠くないイギリスのルネサンス期の音楽から流れて来る懐かしさ。このふたつのトーンが綾なして生まれる不思議さは、どこか魔法掛かっていて、楚々としながらも魅惑的...
そんな魅惑的な音楽を聴かせてくれた、デュメストル+ル・ポエム・アルモニーク。デュメストルを筆頭に、5人の奏者が様々な撥弦楽器を手に、粒立ちのいい音色で、鮮やかなアンサンブルを繰り広げ、彼らの鋭敏な感性が、古色蒼然としたルネサンスの音楽に、瑞々しい色彩を取り戻して、その瑞々しさに驚かされる。そこに、ピエール・アンタイの、さらに瑞々しいヴァージナルが加わって、ただならない音楽が溢れ出す!あまりの瑞々しさに、いつの時代の音楽を聴いているのか、わからなくなるようでもあり、まったく不思議な聴き応えをもたらしてくれるのだけれど、その不思議さが、けしてエキセントリックになるのではなく、ルネサンスの音楽の特徴というのか、ポリフォニックな音楽が生むやわらかな表情を絶妙に捉えて、聴く者にやさしく語り掛けるようでもあり。鮮やかさに魅了され、瑞々しさに驚かされつつ、深く癒されてもしまう。

LOVE IS STRANGE
Le Poème Harmonique - Vincent Dumestre


ジョンスン : 緑なす野のウェイクフィールド
コーサイン : ドリア旋法のプレリュード
ホルボーン : デクレヴィ
作曲者不詳 : キャリノウ
パーソンズ : ド - レ - ミ - ファ - ソ - ラ
ロビンスン : 鐘の音で12通り
ブル : アイルランドのトイ
ジョンスン : セレンジャーのラウンド
作曲者不詳 : グリーン・スリーヴス
ホルボーン : スペロウ
ジョンスン : ふさぎの虫
ダウランド : ラクリメ
ダニエル : パッシミージャー・ガリアード
モーリー : ガリアルダ
作曲者不詳 : 或るトイ
ジョンスン : トレンチモア
ギボンズ : イン・ノミネ 第12番 「喚声」
作曲者不詳 : 麦畑 〔ラワラン写本 から〕
コプラリオ : グレイの旅籠 第1番
作曲者不詳 : 愛は妙なり
作曲者不詳 : カナリア 〔ストラロッチ写本 から〕
作曲者不詳 : レ - ミ - ラの上で

ヴァンサン・デュメストル/ル・ポエム・アルモニーク

Alpha/Alpha 081

1月、七草粥的アルバムを求めて...
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