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クラシックの実りの秋のロマン主義。 [selection]

10月に入りました。今となっては、あの酷暑も随分と遠くに感じ...
いや、もう秋!空を見上げれば、すでに天高く、流れてゆく雲はうろこ雲、まさに秋空で。そんな空を見上げるたび、ほっと一息付きつつ、若干、寂しさも過り、ちょっと複雑な心地。今年もあと3ヶ月だよ... やっぱり秋はセンチメンタルなのか?というより、単に年食っただけ?ムムム... というあたりはともかく、芸術の秋、クラシックがしっくり来るなと... となれば、秋の深まりを前に、再び、秋に聴きたいセレクション。で、春の古典派夏の近代音楽に続いての、秋はロマン主義。実りの秋とも言える、クラシックの最も実り多き頃、ロマン主義の時代、そのリッチなサウンドと、そのロマンティックから漂うセンチメントに彩られて、秋の心地をしっとりと音楽で包む。
そんな、10タイトルをセレクションする試み... 当blog、四季のセレクション、第2サイクル、秋は思いっきりロマンティックに、クラシックのど真ん中で、浸る!

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ODE12032.jpg4764176.jpgAlpha602.jpgHMC901958.jpgCCSSA28309.jpg

という、10タイトル。それは、まさに、クラシックのど真ん中!で、"ど真ん中"であるといことは、それだけですばらしいのだなと、この10タイトルを改めて聴いてみて、妙に得心してしまう。で、そんな自身のリアクションに、ちょっと笑ってしまう。普段は、どちらかというと、ど真ん中を避けて、クラシックの際限の無い、さらなる広がりを求めて、彷徨っているようなところがあるものだから... 今さらながらに、クラシックの核たるロマン主義の、以前からまったく揺ぎ無い価値と魅力に触れてしまうと、やたら痺れてしまう。
で、そのロマン主義を「秋」と重ねて聴くわけだけれど... 前半、ピリオドによる5タイトルで19世紀の旨味成分をたっぷりと味わい。後半、モダンの5タイトルでロマン主義の最もリッチなサウンドを華麗に楽しむ!そんな2つの視点(もちろん、マニアックな視点もありつつ... )から、ロマン主義に浸る。

そして、最初の1枚は、ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管の演奏、1849年製、エラールのピアノを弾く、ロンクィヒによるショパンの2番のピアノ協奏曲(Narodwy Instytut Fryderyka Chopina/NIFCCD 031)。なのだけれど、ショパンの前に、ポーランドの作曲家、ノスコフスキの交響詩「大草原」が取り上げられていて... 東欧の国民楽派のロカールなトーンが、何とも言えず「秋」の空気を引き立てる。それでいて、「大草原」というタイトルそのままに、ロマンティックに雄大なあたりがまた素敵。という、大きな風景を眺めてからのショパンは、その華麗さが際立つようで。また、ピリオドなればこその、19世紀のリアルを捉える、趣きのある抑えたサウンドが、まさに秋そのもののよう... いや、ショパンは「秋」をイメージさせる作曲家だな... なんて、ふと思う。
で、その「秋」がより深まる?1836年製、プレイエルのピアノで弾く、スホーンテルヴルトのショパンのバラードと夜想曲集(Alpha/Alpha 147)。そのしっとりとした音楽は、晩秋を思わせる寂しさを浮かべ... それをまたアンティークなピアノのサウンドが、より際立たせるようで、作品のセンチメンタルな詩情はより深くなる。それでいて、その深まりに癒されるようなところがあって、おもしろい。というショパンの後で、1830年製、プレイエルのピアノで弾く、ブラウティハムのメンデルスゾーンの無言歌集(BIS/BIS-1982)は、より瑞々しいロマン主義を味あわせてくれる。その楚々としたメロディの数々がひとつに綴られて生まれる雰囲気は、紅葉した並木の下を散策するかのよう... 少し肌寒さを感じながらも、軽やかに落ち葉を踏みしめてゆく心地良さ、木の実などを見つければ、拾って、ちょっと遊んでみるような楽しさを感じさせてくれる。しかし、ピリオドのピアノというのは、センチメンタルを掻き立てる独特のトーンがある。それは、秋の匂いが漂うトーンかなと...

さて、再びオーケストラに戻りまして、インマゼール+アニマ・エテルナによるリムスキー・コルサコフの「シェヘラザード」(Zig-Zag Territoires/ZZT 050502)。ロマンティックで、エキゾティックで、魅惑的な「シェヘラザード」だけれど、アニマ・エテルナならではの飾らないサウンドが、リムスキー・コルサコフの時代の渋さをすくい上げて。その渋さから広がる「シェヘラザード」の世界は、よりイマジネーションを膨らませてくれる。リムスキー・コルサコフが誇る華麗なオーケストレーションよりも、そこに綴られたファンタジックさこそを大切にする志向は、ピリオドならではの魅力... そうして薫る、東欧のロマンティシズム!そして、東から西へ、ロマン主義の本家、ドイツに目を向ける。エールハルト+ラルテ・デル・モンドの演奏、1854年製、エラールのピアノで弾く、リットナーのブラームスの1番のピアノ協奏曲(MDG/904 1699-6)。壮大かつ華麗で、緩叙楽章は夢見るように美しい... まるで、ロマン主義の大伽藍といった風格... けれど、ピリオドのピアノならではのトーンで紡がれるブラームスの大作は、得も言えぬ温もりを生み出し。一方、ラルテ・デル・モンドの演奏は、その鋭いアプローチが秋空のように突き抜けていて、何とも爽快!ブラームスにして、ブラームスとは一味違う情景を生み出すかのよう。

ここで、ピリオドからモダンへ... その最初の1枚は、リントゥ+タンペレ・フィルの演奏で、シュミットが弾くレーガーのヴァイオリン協奏曲(ONDINE/ODE 1203-2)。ブラームスに負けてない壮大なコンチェルトを、モダンのオーケストラで聴くと、その輝きが眩しく感じられる... ピリオドも魅力的だけれど、モダンも当然に魅力的で、キラキラとしたモダンの楽器が奏でるレーガーは、まるで紅葉真っ盛りのカラフルな山々といった印象。そこに、颯爽と吹き抜ける風のようなシュミットのヴァイオリン!色取り取りの葉が舞い散るような、ファンタスティックさがたまらない... そして、レーガーとはまた違うファンタスティックさを聴かせてくれるのが、ミュラロのピアノで聴くリスト編曲のピアノ独奏版による幻想交響曲(DECCA/4764176)。オーケストラからピアノに音が絞られて、かえって煌めきが増すようなところもありつつ、ピアニスト、リストの冷徹な視点から、ベルリオーズの音楽が綺麗に整理されてゆくようなおもしろさもあって、なかなか刺激的な編曲... 何より、ピアノの鋭い煌めきが印象的...
さて、カラフルな秋、煌めく秋から一転、またしっとりとした秋を探る。そんな1枚、エベーヌ四重奏団とル・サージュのピアノで聴くフォーレのピアノ五重奏曲集(Alpha/Alpha 602)。得も言えぬメローさと、得も言えぬ色彩感を持った、フランスならではのしなやかなロマンティシズム。フォーレの音楽世界というのは、ロマン主義と印象主義の狭間に揺れて、独特の薫り立つ音楽を奏でる。さらに、晩年の2つのピアノ五重奏曲は、落ち着き、深みを増し、息を呑むようなしっとりとした表情に包まれている。そこから、さらに深い世界へ... ノット+バンベルク響によるマーラーの3番の交響曲(TUDOR/TUDOR 7170)。ノットが紡ぎ出すマーラーは、何ともやさしい。特に後半、美しく緩やかな音楽に溢れるやさしさに触れていると、大きく心を動かされて... 最後は大きな感動に包まれる。秋の夜長に最高の1枚?幸せな夢を呼んでくれそうな、そんなマーラー... が、沁みる。

締め括りは、再びブラームス。イヴァン・フィッシャー+ブダペスト祝祭管によるブラームスの1番の交響曲(CHANNEL CLASSICS/CCS SA 28309)。ブラームスという存在は、ちょっと独特なものがある。ロマン主義の時代にあって、その音楽は、ロマン主義とはまた違った性格を持つ。新古典主義と言うのか、古典派やバッハの昔へと立ち返る、端正な音楽も目指す... そうしたあたりが、何か教科書的な堅苦しさを生み、苦手とする部分でもあるのだけれど... その教科書的なあたり、アカデミックなあたりこそ、クラシックのイメージそのもののように感じる。そんなブラームスの音楽を、片意地張らずに、ナチュラルに、スーっと一筆書きのように描き出したのが、イヴァン・フィッシャー+ブダペスト祝祭管。それは、古典主義の復興と、同時代におけるロマン主義を高次元で結び、得られた、クラシックの実り秋、そんな印象だろうか。穏やかに盛り上がりながら、より豊かな感動が広がる。すると、何だか幸せな心地がして来る。




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