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フレンチ・スタイルのヴェルディ、『ジェルザレム』への進化! [before 2005]

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ヴェルディ、200歳のバースデー(10月10日)が近付いて参りました!
そんなこんなで、『ファルスタッフ』弦楽四重奏曲の弦楽合奏版知られざる教会音楽集バリトンが歌うアリア集と聴いて来て、当blogのヴェルディ熱も、ヒート・アップ。やっぱり、ヴェルディは魅力的!それも、シンプルに魅力的であり、また、より奥深く魅力的でもある。今、改めてヴェルディを聴き直してみて、この2つの魅力が、同時に存在していることに、とても興味深いものを感じる。それは、まるで、クレーム・ブリュレのよう... まず、香ばしく、パリっパリっの面があって、またその下に、濃厚でクリーミーな世界が広がる。異なる2つの感覚が層を成し、ひと所にある絶妙さ!そのあたりに気がつくと、俄然、ヴェルディは、これまで以上に旨くなるのかも...
で、そんなヴェルディの旨さを噛み締めながら、またじっくりとオペラの全曲盤を聴いてみたくなる。ファビオ・ルイジの指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の演奏で、『第1回十字軍のロンバルディア人』のフランス語版、ヴェルディのオペラ『ジェルザレム』(PHILIPS/462 613-2)を聴く。

『第1回十字軍のロンバルディア人』(1843)は、有名ではない。そこに来て、そのフランス語版、『ジェルザレム』(1847)ともなれば、もう... 2001年、ヴェルディの没後100年のメモリアルでリリースされたこのルイジ盤が、世界初録音だったと言うから、そのあたりをよく物語っている。じゃあ、魅力的な作品ではないのか?というと、けしてそんなことはない。多くのオペラを残し、またその多くが定番であるというヴェルディだけに、有名ではない、という、一歩、引けた状況は、そのオペラを、まるで忘れ去られたような場所へと押しやってしまうのかもしれない。だからこそ、メモリアルの意義は大きい!と、再確認される、この『ジェルザレム』の世界初録音。
ミラノのスカラ座で初演された『... ロンバルディア人』を、パリ・オペラ座で上演するためにフランス語訳したものが『ジェルザレム』。となるわけだけれど、単に翻訳したに留まらず、バレエ・シーン(3幕前半、ハレムでのバレエ・シーンの充実ぶりは、もうそれだけでひとつの作品を成しそうな勢い!)を加え、楽曲も増やし、よりゴージャスに、フランス流、グランド・オペラに仕立て直されたのが『ジェルザレム』。タイトルが変えられているように、『... ロンバルディア人』と『ジェルザレム』は、筋こそ同じであっても、同じオペラとは言い切れない部分が多々ある。何より、『... ロンバルディア人』の、ヴェルディらしい一気呵成に進行してゆくドラマとは違い、じっくりと展開されて、より歴史劇の深みを感じさせる『ジェルザレム』は、また新たな魅力を勝ち得ていて、凄い。『... ロンバルディア人』から『ジェルザレム』へ、新たな方向性を探り進化させたヴェルディの器用さには、本当に感心させられる。
で、そのフレンチ・スタイルによるヴェルディというのが、実に興味深い。まず、イタリア語からフランス語に変わっての、異なる語感が生む新たな表情が新鮮!フランス語のオペラならではの流麗さは、ヴェルディにして最初から溢れていて... そうしたあたりに、我を少し消して、フランス流に従うヴェルディの姿が印象的。また、フランス流となったヴェルディに、所々、『タンホイザー』(1845)あたりのワーグナーの姿が重なるからおもしろい。そこに、第1回十字軍を背景とするオペラならではの、教会音楽の要素も加わり。オルガンを用いたり、フランスの作曲家による宗教的な合唱作品を思わせる、メローでやわらかなコーラスがあったり。そして、忘れてならない華やかなバレエ・シーン!ヴェルディ本来の魅力とは違うセンスが、ハーブのように効いて、ヴェルディのジューシーさに、新たな色をもたらしている。もちろん、ヴェルディならではの高揚感、キャッチーさでたっぷりと聴かせ、盛りだくさん!3枚組、全4幕という長丁場ではあるものの、楽しみは尽きず、グイグイと惹き込まれてしまう。
という『ジェルザレム』の魅力を、鮮やかに引き出したルイジが凄い!冗長な印象も与えかねないグランド・オペラ的なスタイルを、見事に引き締めて、熱を籠めて、颯爽と繰り広げてみせる... フランス的エレガンスと、ヴェルディ的パッションを、絶妙なバランスで結び、一瞬たりとも緩む瞬間が無い。というより、全ての音が活き活きと鳴り、そうした音で織り成された音楽は、魔法掛かってさえいる。そんな、ルイジにしっかりと応えるスイス・ロマンド管もすばらしく。美麗かつ熱いという、独特の温度感を生み出して、フレンチ・スタイルのヴェルディという特殊さをしっかり描き出す。そんな演奏に乗って歌い上げる歌手陣も、またすばらしいドラマを紡ぎ出し。注目のプリマ、プリモがいるわけではないけれど、それぞれのキャラクターをきちっと立ち上げ、アンサンブルで息衝くドラマを聴かせてくれる。そこに、ジュネーヴ大劇場合唱団がドラマティックなコーラスで盛り上げ、コーラスの聴かせ所の多いこのオペラで、大活躍!劇的な場面、感動的な場面をガツンガツン作り出す!フィナーレのコーラスなんて、これぞオペラの醍醐味!そうして、全てが相俟って、『ジェルザレム』は、本当に凄いオペラとして迫って来る!久々に聴いて、ちょっと、熱狂してしまう... ヴェルディは定番ばかりじゃない...

VERDI ・ JÉRUSALEM ・ LUISI

ヴェルディ : オペラ 『ジェルザレム』

ベアルン子爵、ガストン : マルチェロ・ジョルダーニ(テノール)
トゥールーズ伯 : フィリップ・ルイヨン(バス)
トゥールーズ伯子、ロジェ : ロベルト・スカンディウッツィ(バス)
トゥールーズ伯女、エレーヌ : マリーナ・メシェリアコワ(ソプラノ)
教皇使節、アデマール・ドゥ・モンテイユ : ダニエル・ボロウスキ(バス)
レイモン : サイモン・エドワーズ(テノール)
イゾール : エレーヌ・ル・コル(ソプラノ)
ジュネーヴ大劇場合唱団

ファビオ・ルイジ/スイス・ロマンド管弦楽団

PHILIPS/462 613-2




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