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古典派からロッシーニ、そして「ヴェルディの時代」へ... [before 2005]

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只今、ヴェルディを集中的に聴いております。
で、それらが、12年前、2001年のヴェルディ没後100年のメモリアルの前後にリリースされていたことに気付く。もちろん、ヴェルディは人気作曲家、切れ目なく様々なタイトルがリリースされているわけだけれど、2001年の前後というのは、特に興味深いものがいろいろリリースされていて... 今、振り返ると、何だかもの凄く充実していたのだなと感じる。で、12年後、2013年のヴェルディ生誕200年のメモリアルはどうだろう?ウーン、唸ってしまう。クラシックは、かつてのようにヴェルディに興味が持てなくなっているのか?ヴェルディは、20世紀のオペラハウスの中心にいたわけだが、多様化、著しい、21世紀においては、その存在感は薄れているのかもしれない。より多くの作曲家にスポットが当たることは、とても刺激的なことだけれど、ヴェルディの新録音が少なくなっている状況は、やっぱり寂しい。メモリアルだからこそ、いろいろなヴェルディを聴いてみたいのだけれど...
ということで、12年前... これぞメモリアル!という1枚。ヴェルディがブッセートの音楽学校で学んでいた頃の師、プロヴェージによるミサを補筆完成させたグローリア・ミサ。後に、代表作、レクイエムとなる、ロッシーニの死を悼んで共作された、ロッシーニのためのレクイエムから、リベラ・メ。など、恐ろしくマニアックなラインナップ。を、マニアックなマエストロ、リッカルト・シャイーと、彼が率いたミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団、同合唱団で... ヴェルディの教会音楽集(DECCA/467 280-2)を聴く。

シャイーは、とにかくマニアックで、何かと驚かせてくれるわけだけれど、ヴェルディのミサ・ソレムニス(track.1-6)には、思わず、あんぐりしてしまう。てか、これはヴェルディの作品なのか?ロンコレ村で生まれたヴェルディ少年は、早くからその才能の片鱗を見せ、近くの町のブッセートで音楽を学ぶ(1823)。やがて、さらなる研鑽を積むため、ミラノへ(1832)... そうした中、ブッセートでの先生、フェルディナンド・プロヴェージ(1770-1833)が亡くなり、その後任として、ブッセートに呼び戻される。その際、師、プロヴェージが、生前、完成させられなかったミサを、ヴェルディが補筆完成させたのが、ミサ・ソレムニス(1835)となる。
という作品だから、ヴェルディのオペラのイメージで聴き始めると、調子が狂う。何だろう?モーツァルトのミサ・ブレヴィスの1曲か?というような、旧時代のスタイル... 時折、ロッシーニの教会音楽を思い起こさせる部分もあって、わずかに、後のヴェルディを感じるところも無くは無いのだが... 『オベルト』でスカラ座にデビュー(1839)する前の、20代前半の作品。古典派の時代を生きた師の作品がベースとなれば、ヴェルディの定番のスタイルは、まだまだ遠い。が、そこに、音楽史の興味深い瞬間を見出すのもまた事実。古典派からヴェルディへ... このミサ・ソレムニスから聴こえて来る音楽は、19世紀前半、「ヴェルディの時代」(1842-71)が始まる以前の、イタリアの地方のリアルな音楽シーンを垣間見る、貴重な機会と成り得ていることは間違いない。
続く、ブッセートの教会のために作曲された4曲は、ヴェルディのオリジナル。ロッシーニを思わせる軽やかで朗らかなメロディが、ロッシーニの時代を感じさ。古典派からロッシーニへと、ヴェルディの音楽の変遷をつぶさに追うようで、ヴェルディの定番がどういう道を経て生まれたのかを知る、興味深い体験をもたらしてくれる。また、そこから、「ヴェルディの時代」の作品を聴くと、安堵感のようなものを感じるからおもしろい。そして、その完成された美しさに、より聴き入ってしまう... ア・カペラで歌われる「我らの父よ」(track.11)の瑞々しさ、美しいメロディに彩られたアヴェ・マリア(track.12)、そして、劇的なリベラ・メ(track.13)。これがまた興味深い...
かのヴェルディのレクイエム(1874)の元になった、共作によるロッシーニに捧げるミサ、ヴェルディが担当した終曲、リベラ・メ(1869年版)として取り上げられるのだけれど。気になる点が、ヴェルディのレクイエムの聴かせ所、ディエス・イレがまだ作曲されていなかった段階でのリベラ・メの状態。レクイエムでは、最後に、再び、強烈なインパクトを放つディエス・イレが戻って来て、リベラ・メの大きな魅力となるわけだが... そのあたりどうなっているのか?すでにディエス・イレの原石は存在し、未だ整理し切れていないものの、間違いなくそれがディエス・イレだとわかるから興味深い。で、ここから磨いて行って、あのディエス・イレが生まれたのだなと思うと、感慨深いものがある。そして、このアルバムの魅力は、そういうヴェルディの歩みを、炙り出すようなところかもしれない。またオペラから離れることで、そうしたあたりが、より浮き上がるところもあるかもしれない。
さて、シャイー、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響の演奏は、颯爽としていて、前半では、若きヴェルディの初々しさを際立たせ。また後半では、オペラとはまた一味違う、ヴェルディの神を前にした真摯な姿を、瑞々しく捉え、印象的。一方で、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響の合唱団が、前半で、若干、アバウトだったのが残念... ア・カペラの「我らの父よ」(track.11)は、とても美しいのだけれど... ソリストでは、伸びやかで美しいテノールを聴かせてくれるフローレスがすばらしく、聴き惚れてしまう。

VERDI: MESSA SOLENNE ・ SACRED WORKS ・ CHAILLY

プロヴェージ/ヴェルディ : ミサ・ソレムニス(グローリア・ミサ) ****
ヴェルディ : 世の罪を取り除かれる方よ *
ヴェルディ : 大いなる秘蹟を ヘ長調 *
ヴェルディ : 讃えなさい、子らよ ***
ヴェルディ : 大いなる秘蹟を ト長調 *
ヴェルディ : 我らの父よ
ヴェルディ : アヴェ・マリア *
ヴェルディ : リベラ・メ 〔ロッシーニに捧げるミサ から 1869年版〕 *

エリザベッタ・スカーノ(ソプラノ) *
クリスティーナ・ガイヤルド・ドマス(ソプラノ) *
ファン・ディエゴ・フローレス(テノール) *
ケネス・ターヴァー(テノール) *
エルダー・アリエフ(バス) *
ミケーレ・ペルトゥージ(バス) *
リッカルド・シャイー/ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団、同合唱団

DECCA/467 280-2




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