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ヴェルディにして、ヴェルディではない?弦楽合奏版、弦楽四重奏曲。 [before 2005]

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さて、ヴェルディが続きます。
『ナブッコ』のテンションの高さ、『エルナーニ』のノリの良さも好きだなぁ... 『ラ・トラヴィアータ』の隙の無さは、凄い... それから、『運命の力』のジェットコースター展開!『ドン・カルロ』や『アイーダ』の王朝スペクタクル!いやぁ、オペラはやっぱりドラァグ!さらに『アイーダ』はエキゾティック・フェスティヴァル!そんなヴェルディが大好き!けれど、普段はあまりに定番過ぎて、どこか通り過ぎてしまうのかもしれない... これまで、ほとんどヴェルディを取り上げていなかった当blogの傾向が、まさに!我ながら、自身の中でのヴェルディという存在の強烈にして希薄なあたり、びっくりしてしまう。そこから、改めて見つめ直すヴェルディの存在。ふと思い出す、オペラではないヴェルディの作品。弦楽四重奏曲があったはず。どんな曲だったっけ?
ということで、引っ張り出す。2000年のリリース、アンドレ・プレヴィンの指揮で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による、ベートーヴェンの14番の弦楽四重奏曲と、ヴェルディの弦楽四重奏曲の弦楽合奏版(Deutsche Grammophon/463 579-2)を聴く。

さて、ヴェルディの前に、まずはベートーヴェン... 14番の弦楽四重奏曲(track.1-7)、40分弱という大作(ここで聴く版は40分を越える!)にして、7楽章構成というイレギュラー。ベートーヴェンの芸術が爛熟期を迎え、形に捉われず、時代から超越した音楽へと至る頃の作品(1826年に完成... )を、20世紀前半に活躍したマエストロ、ミトロプーロス(1896-1960)が弦楽合奏用に編曲したものを聴くのだけれど... 久々に聴くと、その深く、滔々と流れてゆく音楽の大きさに、目を見開くような感覚を覚える。弦楽四重奏によるタイトな響きとは違う、弦楽オーケストラによる豊かな響きは、ベートーヴェンの音楽に新たな発見をもたらしてくれるような、そんな鮮烈さがある。で、1楽章は、まるでマーラー!マーラーにいち早く取り組んだミトロプーロスによるオーケストレーションも、もちろんあるだろうけれど、この弦楽合奏版で聴くと、マーラーがベートーヴェンの系譜にあることをしっかりと認識させられ、また、マーラーの独特な音楽世界の萌芽が、ベートーヴェンの後期にあったかと、楽聖の時代を超越する在り様に、今さらながらに感服させられる。そして、オリジナルとは違う感動に包まれる。
そんなベートーヴェンの後で聴くヴェルディは、聴き劣りする?例えばロッシーニなど、イタリア・オペラの作曲家による純音楽というと、学生時代の習作的作品が、時折、聴かれるわけだけれど... ヴェルディの弦楽四重奏曲(1873)は、『アイーダ』(1871)が作曲された後の作品。音楽的経験がしっかりと蓄積されての、晩年の作品となる。が、ヴェルディは、純音楽に関しては、自信のない素振りをみせて。この弦楽四重奏曲について、随分とシニカルな物言いを残している。ま、オペラの大家に、交響曲や弦楽四重奏曲は期待するなと、予防線を張っているのだろうけれど、実際にその作品を聴いてみると、ちょっとシニカルが過ぎるように思えて来る。また、トスカニーニにより弦楽合奏用に編曲されたことで、その魅力は、オペラの序曲や前奏曲で味わう豊かな感覚を招き入れ、雄弁ですらあって。オペラの華やかさと劇的なあたりに、純音楽としての端正さが絶妙に響き合い... すると、チャイコフスキーの音楽を思い起こすような魅力が広がる。特に終楽章(track.11)のフーガの力強く展開されるあたり、オペラばかりでないヴェルディをしっかりと感じ、大いに魅了される。こういうヴェルディを体験してしまうと、ヴェルディが交響曲を書いていたならば... と、つい妄想したくなってしまう。そんな充実の1曲。
で、オリジナルでは得られない魅力を、たっぷりと聴かせてくれたプレヴィン、ウィーン・フィルがすばらしい!久々に聴くと、何だか余計に感じてしまう。それは、古き良きクラシックを感じさせる部分もあり、そうしたあたりに懐かしさのようなものを感じつつ... いや、クラシックの真髄たる、気品、唯美主義的な姿勢に、深く納得させられる。一方で、プレヴィンならではの、明るく麗しい音楽性は、仄かにポップな気分も誘って、クラシックに付き纏うステレオタイプの重々しさから解放し、ウィーン・フィルの美しいサウンドをシンプルに引き出す。すると、弦楽四重奏のストイックさは、魔法掛かって花やぎ、ふんわりと響き出し... 良い意味で像はブレ、ベートーヴェンにしてベートーヴェンではなく、ヴェルディにしてヴェルディではない不思議さが広がり、思い掛けなく魅惑的。ウィーン・フィルのブルーミンさに、心地良く、酔ってしまう。

BEETHOVEN・VERDI: STRING QUARTETS
WIENER PHILHARMONIKER/ANDRÉ PREVIN


ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 Op.131 〔ミトロプーロスによる弦楽合奏版〕
ヴェルディ : 弦楽四重奏曲 ホ短調 〔トスカニーニによる弦楽合奏版〕

アンドレ・プレヴィン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

Deutsche Grammophon/463 579-2




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