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ファルスタッフ... 世の中、全て、冗談だ! [before 2005]

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2013年は、ヴェルディ(1813-1901)の生誕200年のメモリアル。
なんて、今さら書かんでも... とは思うのだけれど、来月10日が、ヴェルディ、200歳のバースデーということで... てか、東京オリンピックの開会式(1964年10月10日)はヴェルディの誕生日だったんだ!?新国立劇場の柿落としは、なぜに体育の日(1997年10月10日)?と思っていたのだけれど、ヴェルディの誕生日だったわけだ。2020年、2度目の東京オリンピックが決まったこの初秋、ちょっぴり感慨深く思う。さて、ふと思う。当blogで、ヴェルディをいくつ取り上げただろう?あまり記憶がないのだけれど... ということで、ざっと振り返ってみて、衝撃を受けた!デセイのイタリア・オペラ・アリア集(Virgin CLASSICS/514365 2)と、ジャンスの"TRAGÉDIENNES 3"(Virgin CLASSICS/070927 2)で、いくつかのアリアを聴いただけ... という事実...
ヴェルディは嫌いじゃない... というより好き!なはずだけれど、どーしてこーなった?!と、若干、戸惑いつつ、ヴェルディ補給。2001年、ヴェルディ、没後100年のメモリアルにリリースされた、ジョン・エリオット・ガーディナー率いる、オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティクの演奏で、ヴェルディのオペラ『ファルスタッフ』(PHILIPS/462 603-2)を聴き直す。

オペラの国、イタリアならではの、職人芸的な創作から生まれる、「ヴェルディ」ブランドの上質なプレタポルテ... といったところだろうか?同い年のワーグナーとは違い、その間口は広く、また、毎作品、飽きさせない魅力を放つヴェルディのオペラは、これこそ定番でありながらも、実は特異なレパートリーのようにも感じる。あれだけのオペラを残しつつ、その多くが今を以ってして人気作という... ある意味、奇跡?そんな、ヴェルディの最後のオペラ、『ファルスタッフ』(1893)を久々に聴いてみるのだけれど... それまでのヴェルディとは一味違う『ファルスタッフ』。というより、最後にして新たな境地を切り拓いてしまったオペラは、「定番」という既定路線に留まらない、ヴェルディという作曲家の底知れなさを思い知らされる作品。そして、そんな『ファルスタッフ』を、ピリオドで挑んだガーディナー+オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク(以後、ORR... )。このピリオドというあたりが、『ファルスタッフ』に、また新たな表情を見出すのか、久々に聴いてみて、妙に新鮮に感じてしまう。
『ファルスタッフ』が初演された1893年は、プッチーニが『マノン・レスコー』で成功を収め、一躍、注目の作曲家となった年。イタリア・オペラが新たな展開を見せようとしていた頃。そうした時代の流れに乗って、ナンバー・オペラを脱し、より有機的な展開を見せる『ファルスタッフ』。プリマ頼みではなく、アンサンブルを巧みに回して、モーツァルトの昔へと帰ろうとするところもあり、新しくも旧い在り様が実に興味深い。そして、ピリオドで、そのあたりを捉えると、絶妙に結ばれた新しさと旧さとが際立ち、19世紀末に肉薄していながら、そうした時代感覚を超越する感覚が生まれ、おもしろい!『マノン・レスコー』よりも先にあるオペラ(例えば、『ラ・ボエーム』や、『ジャンニ・スキッキ』。場合によってはリヒャルト・シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』や、『カプリッチョ』あたり?)を感じさせつつ、モーツァルトや、ナポリ楽派からロッシーニへと至るブッファの系譜が聴こえて来る。一方で、その間をつなぐはずのヴェルディの「定番」が欠落している不思議さ... ヴェルディにして、ヴェルディであることが奇妙なほど消し去られていて、誰のオペラを聴いているのかわからなくなるような眩惑感。18世紀から19世紀へ、ピリオドで丁寧に追って来たガーディナーだからこそ、『ファルスタッフ』の奇妙な時代感覚が浮き彫りになるのかもしれない。そうして、その奇妙であることのおもしろさ!作品の魅力は、より引き出されている。
その中心にあるのが、粒揃いの歌手たち!ひとりひとり、見事にキャラが立ち、実に表情豊かで、最高のアンサンブルを成し、生粋の喜劇を編み上げてゆく。主役はもちろんタイトルロール、ファルスタッフではあるけれど、全員が主役であるような、活き活きとした動きを見せる歌の数々に、息を呑む。すると、聴いているはずが、いつのまにやら見ているような感覚に陥る。それは、「歌」というより、芝居そのもの。メロディ・ラインが意識から消え、物語の中に放り込まれるような、一緒になってドタバタの喜劇に巻き込まれる楽しさがある。そして、ガーディナーのハイ・クウォリティにきっちりと応えるORRのすばらしい演奏... ガーディナーの音楽作りは、時として、端正過ぎる帰来があるように感じるのだけれど、その端正さがあってこそ、『ファルスタッフ』のスパークリングさが、これまでになく綺麗にスパーク。歌手たちの、息衝く楽しさを、高級シャンパンの金色の気泡が包むような、何とも言えない高級感と口当たりの良さに、ちょっと酔ってしまう。それにしても、76歳、最後の最後で、こういうオペラを書いたヴェルディ... やっぱり、タダモノではない。

Verdi FALSTAFF John Eliot Gardiner

ヴェルディ : オペラ 『ファスタッフ』

サー・ジョン・ファルスタッフ : ジャン・フィリップ・ラフォン(バリトン)
フォード : アンソニー・マイケル・ムーア(バリトン)
フェントン : アントネッロ・バロンビ(テノール)
ドクター・カイウス : ピーター・ブロンダー(テノール)
バルドルフォ : フランシス・エジャトン(テノール)
ピストーラ : ガブリエレ・モニーキ(バス)
アリーチェ・フォード : ヒレヴィ・マルティンペルト(ソプラノ)
ナンネッタ : レベッカ・エヴァンス(ソプラノ)
クイックリー夫人 : サラ・ミンガルド(メッゾ・ソプラノ)
メグ・ペイジ : エイリアン・ジェイムズ(メッゾ・ソプラノ)

ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク
モンテヴェルディ合唱団

PHILIPS/462 603-2




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