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ニューヨーク―ブラジル―プロヴァンス―アマゾン、ミヨー流、ヴァカンス。 [2005]

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相変わらず、暑い日が続きます。
ま、暑い、暑いとばかりも言っていられないので、ヴァカンス気分を味わえる音楽を聴こうかなと... ということで、クラシック切ってのお祭り男、ミヨー!まったく、この人の音楽というのは、どーしてこんなに、あっけらかんとしているのだろう?南仏出身の南仏気質?底抜けに陽気で、当然、テンション高め。なのだけれど、どこかショボくもあって、微妙なテイスト... いや、このビミョーさを出せるのは、ミヨーしかいない!
そこで、2005年にリリースされた、独特の存在感を見せるフランスのマエストロ、ジャン・クロード・カサドシュと、彼が創設にも関わり、長年、音楽監督を務めるリール国立管弦楽団による、ミヨーのバレエ『世界の創造』(NAXOS/8.557287)を聴き直す。フランス・バロックフランス・オペラと続いての、フランス近代音楽の鬼才で以って、当blog的「パリ祭」を締める。

久々に聴き直して、おおっ!?と思わされたのが、ジャン・クロード・カサドシュ(b.1935)という存在。往年の名ピアニスト、ロベール・カサドシュ(1899-1972)の甥で... 「カサドシュ」という巨大な名前が、いつもぼんやりと覆いかぶさって、その存在そのものを見つめることは、あまりなかったのかもしれない。また、マイナー担当のようなポジションに固定されてしまった観もあり、地味な仕事ぶりを進んで追い掛けることもなかった、マエストロ、ジャン・クロード。しかし、このマエストロが、長年、積み重ねて来たものは、しっかりとあって。この人のディスコグラフィを丁寧に見つめてみると、フランスものを軸に、実に興味深いリパートリーを持っている。何より、そうしたレパートリーを器用に捌いて培った音楽性は、見過ごせるものではない...
ということを、強く印象付ける、1曲目、『世界の創造』。ニューヨークを訪れたミヨーが、街角で演奏されていたジャズにインスパイアされ、生まれた音楽。クラシックにも大きな影響を与えたジャズ・エイジ(1920年代)... 1923年に作曲された『世界の創造』は、まさに象徴的な作品。ではあるのだけれど、どうも、クラシックというフィールドで奏でられると、ジャズの生々しさは薄れがちだったように思える。そのことを強く感じさせてくれる、ジャン・クロード+リール国立管の演奏。これまでになく、気だるく、着崩したリズム、ジャジーに燻されたサウンドの絶妙さ!クラシックのフォーマルなあたりを忘れさせる、ニューヨークの街角の臭い... ミヨーがジャズから霊感を得た瞬間の瑞々しい記憶が蘇るよう。続く、『屋根の上の牝牛』(track.2)は、ブラジルを旅したミヨーが、ラテンからインスパイアされた音楽が繰り広げられるのだけれど、ジャズからラテンへ、見事に切り返して来るジャン・クロード+リール国立管。ラテンのいい意味での"いい加減"さを、リズムからもハーモニーからもこぼれさせ、クラシックに捉われていては活きて来ないミヨーのテイストを、存分に引き出し、魅惑的な音楽世界を生み出す。
一方、3曲目、プロヴァンス組曲(track.3-10)は、しっかりとオーケストラを鳴らして、クラシックとしての仕事をきちっとこなす。すると、ミヨーが描くプロヴァンスの風景から、往年の西部劇の映画音楽を思わせる、ダイナミックなサウンドが放たれ、これまでになく雄大で、また爽快でもあって、おもしろい。さらに、映画音楽を思わせるのが、最後の『男とその欲望』(track.11-18)。ミヨーをブラジルへと連れ出した詩人、ポール・クローデルの台本による、アマゾンを舞台としたバレエで、バレエ・スエドアにより、パリで初演(1921)された作品だが。いや、タイトルからして凄い... で、タイトルのみならず、奇妙奇天烈... スキャットを思わせる4声のヴォーカルが何気にムーディー... かと思いきや、ホイッスルとパーカッションで、リオのカーニヴァル状態... で、音楽としてかなりチャレンジングな試みがいろいろ盛り込まれつつ、全体としては、食人族?ピラニア?アナコンダ?が襲い掛かって来そうな、おどろおどろしさに包まれて、懐かしのB級ホラーっぽくもあり、いい味、出しまくっている!いや、このビミョーなあたりこそミヨーの真骨頂。そのあたりを、器用にまとめるジャン・クロード+リール国立管...
ダリウス・ミヨー、フランス6人組の一角を占め、フランス近代音楽を担ったひとりではあるのだけれど、20世紀、最新のスタイルを器用に操るエリートとも違う、モダニズムのセンセーショナルな衒いでもなく、我が道を貫いて、真正面から"チープ"を生み出す。その音楽は、原色が踊るセルロイドやナイロン素材の、インダストリアルなポッピズム?これぞ、「20世紀」の有り様なのかもしれない... 色とりどりの造花が花開くような、ある種の毒々しさを含みつつ、下手なイズムで煙に巻かない、徹底して聴衆を楽しませるサービス精神。クラシックにおけるビミョーなミヨーという存在は、ジャン・クロード+リール国立管の、見事にミヨーに共感して得られる、成り切り感を以ってして、「20世紀」を体現するような音楽像を初めて露わにしているのか。それにしても、クラシックの重苦しさを突き抜けて、気持ちいいくらいの割り切り感!いつの間にか"チープ"を昇華させて、ミョーな音楽にはしない、マエストロ、ジャン・クロードの音楽性に感服。

MILHAUD: La Création du monde

ミヨー : バレエ 『世界の創造』 Op.81
ミヨー : バレエ 『屋根の上の牡牛』 Op.58
ミヨー : プロヴァンス組曲 Op.152b
ミヨー : バレエ 『男とその欲望』 Op.48 ****

ジャン・クロード・カザドシュ/リール国立管弦楽団
幕内智子(ソプラノ) *
ジャン・ツァオ(メッゾ・ソプラノ) *
マティアス・ヴィダル(テノール) *
ベルトラン・デレトレ(バス) *

NAXOS/8.557287




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