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フランス・オペラに敬礼! [2005]

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いやぁ... 暑過ぎて、もうかなり、参ってます。
それにしても、今年の夏の、暑くなるペースの速さに、気持ちも身体も、全然、付いて行けてない。梅雨が明けた途端に襲いかかる猛暑... 7月はまだ半ばも過ぎていないというのに、これからどーなってしまうんだ?なんて、先のことよりも、今、すでに、暑さで頭が回らなくなって来ている。オーバーヒートで、思考停止。となると、キーボードを敲く指が先に進まない!ここまで、この5行すら書くのに苦しむ有様...
ふぅ~ 一息ついて、パリ祭前夜祭です。前回から引き続き、フランスを聴く!ということで、2005年にリリースされた、フランスを代表するプリマ、ナタリー・デセイ(ソプラノ)が歌う、フランス・オペラ・アリア集(Virgin CLASSICS/5 45610 2)を聴き直す。

マスネの『マノン』に始まって、古典派の時代にも掛かるボワエルデュー、19世紀、フランス・オペラの全盛期を彩ったひとり、グノー。オペラ・ブッフの王様、オッフェンバック。それから、パリで活躍したイタリア人、ロッシーニ、ドニゼッティによるフランス語のオペラ。最後は、フランス・オペラ切ってのソプラノの聴かせ所のひとつ、トマの『アムレ』の狂乱の場... と、フランス・オペラを幅広く捉えつつ、コロラトゥーラの女王たるデセイの魅力が輝くアリアが並び、それはもう見事なフル・コース!イタリア・オペラに比べれば、馴染の無い作品も少なくないけれど、かえって、その馴染の無さが、フランス・オペラをより新鮮に引き立ててもいて、総花的なアリア集とは一線を画す。しかし、何と言っても、デセイ!始まりの『マノン』から、彼女ならではの世界に、惹き込まれてしまう。
天然キャラ?マノンの、そのちょっと浮世離れした感覚を、デセイのクリアなコロラトゥーラが捉えると、まるで妖精のようなエアリーさが漂い... このフワフワとした存在感が、何だか心地良く。よく知られたガヴォット(track.2)のメロディが流れ出すと、そのキャッチーさが、フワフワに乗って、キラキラと光る... さらに差し替え用のファオブリオ(track.3)が続くのだけれど。ここでは、よりコロラトゥーラが輝き、オペラの、ある種、ヘヴィーなドラマティシズムが薄まって、ソプラノの軽やかさこそが強調され、見事に美しい!そして、トマの『ミニョン』の定番、「私はティターニア」(track.4)の、ポロネーズのリズムに乗って繰り広げられる華麗なコロラトゥーラ!デセイだからこその、ただひたすらに声が舞う感覚の愉悦... 美しい音が、まるでそよ風に舞う羽毛のように、屈託無く揺れる姿を追っていると、重力を忘れてしまいそう。そんなデセイの歌声を聴いていると、イタリア・オペラとは違う、フランス・オペラの浮遊感を強く印象付けられ。その浮遊感が発する輝きを、今さらながらに再発見し、魅了される。
さて、アルバムは、「フランスのモーツァルト」と呼ばれたボワエルデュー(track.6)、「シャンゼリゼのモーツァルト」と呼ばれたオッフェンバック(track.7)と続き、ますます軽快な音楽を繰り広げる。そこから、ロッシーニの『オリー伯爵』の「悲しみに囚われて」(track.8)を聴くのだけれど... かのロッシーニですら、フランス・オペラの後では、ドンと腹に響くようなところがあってヘヴィー?続く、ドニゼッティの『連隊の娘』からの「もう起きてしまったこと... ああ、フランスに敬礼!」(track.9)も、やはり... 音楽としての密度が濃い?オペラの伝統を背負ったイタリア人ならではの、歴史の重みが、ズシリと、より存在感のある音楽生み出しているのかもしれない。
一方で、イタリア人の2つのアリアを聴いた後での、グノーの『ロメオとジュリエット』、有名なジュリエットのワルツ(track.10)は、しっかりと刻む3拍子が、イタリア・オペラに負けない重みを響かせるようで、いつもより印象的に聴こえるからおもしろい。そこから、トマの『アムレ』からの狂乱の場(track.11)!イタリア人に負けず、ドラマティックに狂乱を描き切るも、フランス・オペラとしての美意識は貫かれ、激しさと美しさの綱引きが、よりオフェリ/オフェーリアの錯乱を一筋縄では行かないものとして、圧巻。そこから、美しいオフェリの死(track.12)へ... 奔放なマノンの軽快さに始まって、オフェーリアの純真が生む悲劇へと至る流れが浮かび上がり、じわりじわりとアルバムを盛り上げるような感覚があって。改めて聴いてみれば、その流れがとても新鮮に聴こえ。またそこから、フランス・オペラの性格、魅力も再確認させられ、興味深く感じることができた。
そこには、デセイを卒なくサポートする、プラッソン、トゥールーズ・カピトール国立管の見事な演奏があって... ボワエルデューの『隣村の祭り』(1816)から、マスネの『シャリュバン』(1906)まで、随分と時間的な幅のあるレパートリーをカヴァーしながらも、それぞれの時代の作品を丁寧に捉えつつ、ライトからヘヴィーへという、アルバムの中に籠められた大きなドラマを生み出してゆく巧みさ。そうすることで、デセイの高い技術力、表現力だけでは得られない、フランス・オペラの地盤のようなものを、きっちりと描き出し。あくまでも背景にありながら、これぞフランス・オペラを展開する存在感に感服。

AIRS D'OPÉRAS FRANÇAIS
NATALIE DESSAY . MICHEL PLASSON


マスネ : オペラ 『マノン』 から レーヌ通りのアリア 「私、それほど美しいかしら?」 *
マスネ : オペラ 『マノン』 から ガヴォット 「彼らの声が、甘い恋に誘う時」 *
マスネ : オペラ 『マノン』 から ファブリオ 「いつも笑っている?違うわ... 」 *
トマ : オペラ 『ミニョン』 から ポロネーズ 「そうよ、今晩... 私はティターニア」 *
マスネ : オペラ 『シェリュバン』 から オーバード 「讃えましょう、夢見て燃えあがり、逃げさる愛を!」 *
ボワエルデュー : オペラ 『隣村の祭り』 から ボレロ 「人生を楽しみましょう」
オッフェンバック : オペラ 『ロビンソン・クルーソー』 から グランド・ワルツ 「大好きなあの人のもとへ連れていって下さい」 *
ロッシーニ : オペラ 『オリー伯爵』 から 「悲しみに囚われて」 ***
ドニゼッティ : オペラ 『連隊の娘』 から 「もう起きてしまったこと... フランスに敬礼!」 *
グノー : オペラ 『ロメオとジュリエット』 から ジュリエットのワルツ 「ああ!わたしは夢に生きたい」
トマ : オペラ 『アムレ』 から 狂乱のアリア 「お友達のみなさん、あなた方の遊びにわたしもどうか」 *
トマ : オペラ 『アムレ』 から オフェリの死 「ほら、彼の声が聞こえる気がする」 *

ナタリー・デセイ(ソプラノ)
ミシェル・プラッソン/トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団
レゼレマン(コーラス) *
アンヌ・ゴツコフスキー(メッゾ・ソプラノ) *
マシエジ・コツラルスキ(テノール) *

Virgin CLASSICS/5 45610 2




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