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ニュートラルであること、マニアックであること、 [overview]

突然ですが、気になっていることがあります。
「いいね!」、誰が押してくれるのだろう?毎回(自動なのかな?)と、時々と... どんな人が押してくれているのだろうと、気になっている... というか、いつも、心の中で「ありがとう!」のボタン、押しまくってます。押してくれる人がいる... つまり、読んでくれる人がいる... 読んでもらわなくとも、訪れてくれる人がいる... そんな風に思えることが、かなり、励み。モチーベーションやら、テンションやらが、ガックリ下がってしまっても、何とか、またこうして更新できていることの原動力。こうして書いている、その向こう側でこのblogに付き合ってくれているだろうみなさんに、改めまして、ありがとう!であります。なんて書いてしまうと、何だか、店じまいの準備みたいだけれど...
さて、気持ちを取りなおして、またまた2012年を振り返ってしまう。60タイトルを聴いた2012年、2006年にスタートして以来、取り上げたタイトル数が最も少ない数となったことに、いろいろとガッカリである一方で、少ない分、本当に濃密な60タイトル!特に印象に残る12タイトルを選んだばかりなのだけれど、まだまだおもしろかったものがある!ということで、そのあたりを補完!

2012年をざっと振り返ってみて、ふと思ったこと... 古典であるがゆえに、常に後ろ向きなところがあるクラシックというジャンルにも、とうとう新たな感覚が生まれつつある?「これまで」に捉われることのないニュートラルな演奏と、これまで以上にいろいろめぐり会えたことが何だか嬉しかった!新しいことをしようと変に気負うでもなく、下手に個性的なものになるでもなく、どこか飄々とスコアを見つめ、スルスルっとサウンドにしてしまう... ある種のオリジナル主義なのだろうけれど、オリジナル主義のストイックさとも距離を取って、あらゆるイズムからもフリーになる。下手すると、クラシックというジャンルからも距離を取ってしまいそうな、突き抜けたニュートラルさを示すところもあって... そんな姿勢がスカっとしていて気持ちいい!これが21世紀のクラシック?新たな世代がクラシックを担うようになって、現代っ子感覚が老獪なクラシックに持ち込まれて、とうとう新たな時代が始まろうとしている?というのは、大袈裟か?期待のし過ぎ?けど、そういう演奏は間違いなく増えて来ている...

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という8タイトル。まずは、若い世代の活躍が気になった!クリスチャン・ヤルヴィ(b.1972)と、ヴラディーミル・ユロフスキ(b.1972)。この2人の、「2世マエストロ」というポジションが、かえって気負わない、屈託のない音楽性に至らしめるのか、ともにおもしろい存在になろうとしているように感じた2012年。クリスチャンの『カルミナ・ブラーナ』の、聴き知った人気作が、驚くほど解像度を増して、真新しく生まれ変わった様に驚かされ... ウラディーミルの、気負うところのなくモダンからピリオドと飛び込んで、ピリオド云々の特殊さをさらりとかわして、颯爽とメンデルスゾーンマーラーをやってのけてしまう器用さに驚かされ... まさしく現代っ子なればこその感覚!彼らの21世紀流とも言うべきニュートラルさに、大いに魅了され、また強い共感を覚えた。
やはり若い世代... ペシャが弾く、ケージの代表作、プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュードも、衝撃的だった... もはや、ケージは前衛である必要がない!という驚き。「前衛」の頃の生々しさを知らない現代っ子世代にとっては、これくらい突き放してケージを捉える事ができてしまうという興味深さ。いや、だからこそ、様々な逸話からではなく、一作曲家として、その作品がクリアに響いて来て、感動すら覚えた。そして、同じような感覚を、メシアンで聴かせてくれたのが、メルクルが率いたリヨン国立管... ケージに負けず、癖の強いイメージのあるこの20世紀の巨匠も、メルクルのニュートラルさを以ってすれば、また違う感覚で捉え直すことができる。そうすることで、より超越したメシアン・ワールドが浮かび上がり、改めてその存在に興味を覚えるから、おもしろい...
さて、2012年は、ドビュッシー・メモリアル。ということで、当然ながらドビュッシーにも興味深いリリースがありまして。そうした中で、ピリオドからドビュッシーを見つめ直した2タイトルが印象に残る。リュビモフがピリオドのピアノで弾いた前奏曲集と、インマゼール+アニマ・エテルナによる「海」など、オーケストラ作品の代表作を収録した1枚。で、この2タイトルのおもしろい点が、やっぱりニュートラルだったこと... ピリオドならではの癖すら消して、さらりとドビュッシーを鳴らしてみせる器用さから、ドビュッシーならではの雰囲気までが消えて、驚くほど透明で瑞々しい音楽が流れ出す!その清らかさに息を呑み、ドビュッシーの音楽はこういうものだったのかと、目が覚める思い。特に、牧神の午後への前奏曲の透明感!リュビモフは2台のピアノ版で聴かせてくれるのだけれど、アニマ・エテルナともに、それぞれ、清廉なドビュッシーを響かせるからおもしろかった!
そして、最もニュートラルな演奏?というべきだろうか、とにかく、突き抜けていたのが、ダウスゴー+スウェーデン室内管によるチャイコフスキーの「悲愴」。まず、これは「悲愴」なのだろうか?というほど、まるで違う作品を聴いているような感覚に... その後で、これまでの「悲愴」は何だったのだろうか?という思いに駆られる。チャイコフスキー、最後の作品なればこそ、いろいろイマジネーションが膨らむ部分もあるのかもしれないけれど、意外と、そうした部分というのは、「悲愴」には関係のないことなのかもしれない。ダウスゴーが繰り広げる「悲愴」というのは、見事に憑き物を落とし切ったシンプルさに、チャイコフスキーの美しさを再発見させられる思い。「悲愴」の後の「ロミオとジュリエット」がまたすばらしかった!

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さて、選曲が光るアルバムも多かったように感じる2012年。凝った選曲というのは、ある意味、マニアックではあるけれど、なればこそ、新しい一面を見せてくれるものであって... だからこそ、「マニアック」は肯定されるべき!なんて思わせてくれる4タイトル。まずは、アーノンクール+ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスがワルツの黎明期を追った"WALZER REVOLUTION"。モーツァルトからヨハン・シュトラウス1世へ、そしてランナーと、ワルツがどうやってワルツとなって行ったかを、巧みに聴かせてくれるおもしろさ!へぇ~ という思いと、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスが思い掛けなくダンサブルな演奏を繰り広げていて、楽しませてくれる!
それから、ウィーンから北上して、時代も遡って、ザクセン選帝侯の宮廷のあったドレスデンの音楽シーンを再発見するアルバム、インターナショナル・バロック・プレイヤーズによる"PISENDEL"が興味深かった。バロック期、ドレスデンの音楽は凄かった!ということが、今一、紹介され切らないもどかしさ... そうしたあたりを補う、ドレスデンのコンサート・マスター、ピセンデルをフィーチャーした選曲は、ドレスデンの音楽シーンの豊かさを存分に聴かせてくれる。こういう、時代、場所を切り取って来るアルバムのおもしろさは、タイム・トラベル!音楽を聴きながら、音楽以上のイマジネーションが広がる... で、バロック期のドレスデンは、やっぱり凄かった...
選曲の妙ばかりでなく、2012年、最もチャレンジングな1枚だったと思う、パールのガンバをメインに、古楽器で現代音楽に挑んだ"siXXes"は、本当におもしろかった!何と言っても、ケージの6つのメロディをガンバで弾いたなら... まるでマショーのよう... 現代と古楽は、どこかで共鳴する部分があるのだろう。共鳴させて、より古楽を、現代を際立たせるという、おもしろい構成は、とにかくセンスを感じさせるもの。センスという点では、ホリガーの指揮、SWRシュトゥットガルト放送響によるケクランのオーケストレーション集、"Magicien orchestrateur"も見事だった... そもそも、ケクランによるオーケストレーション集というあたりが、地味ではあるのだけれど、ドビッュシーに始まり、多彩な音楽が取り上げられつつ、そこにケクランと不倫関係にあったケクランの教え子の存在を絡めて、まるで私小説のようにまとめ上げられている妙!まったく巧い... そういう流れを生み出すトーン... メロドラマティックさというか、ケクランならではのオーケストレーションの瑞々しさは、魅惑的...

ということで、2012年は、これで本当におしまい。そして、すばらしいアルバムに彩られた1年だった。こうして振り返ってみて、改めてそのことを強く感じる。




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