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20世紀、際立つフォーレ、2つのピアノ五重奏曲... [2012]

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ル・サージュのフォーレのシリーズに、エベーヌ!
と、ちょっとテンション上がってしまったアルバム。今、何気に、最も関心のある弦楽四重奏団かもしれない、エベーヌ四重奏団... その若さで、フレッシュなサウンドを響かせつつ、クラシカルな気分というのも、見事に漂わせる。で、漂わせ過ぎず... の、絶妙なるバランス感覚!彼らの確かな技術はもちろんのこと、豊かな音楽性にただならず魅了されるばかり。で、驚くべきは、歌まで歌うこと!映画音楽に挑んだ"FICTION"(Virgin CLASSICS/6286680)でのパフォーマンスには、びっくり!!!特に、ヴィオラのエルツォグが歌った、スプリングスティーンの"Streets of Philadelphia"(トム・ハンクス主演の『フィラデルフィア』からの... そして、アカデミー主題歌賞受賞楽曲... )は、もう... 本業は何?!ってくらいなもので... しかし、今、改めて振り返ってみると、彼らの、歌える... というあたりが、その音楽性をより高い次元へと持って行っているように感じる。あるいは、「歌う」、ということの重要さを、改めて考えさせられたりもする。のだけれど、そのあたりはともかく...
Virgin CLASSICS、注目のクァルテット、エベーヌ四重奏団が、レーベルの枠を越えて、今やAlphaで大活躍のピアニスト、エリック・ル・サージュと共演した、フォーレの2つのピアノ五重奏曲(Alpha/Alpha 602)を聴く。しかし、ル・サージュのフォーレのシリーズ、豪華!

前作は、ベルリン・フィルのコンサート・マスター、樫本大進(ヴァイオリン)らとの、フォーレの2つのピアノ四重奏曲 (Alpha/Alpha 601)。そして、エベーヌを迎えての2つのピアノ五重奏曲。旬のアーティストを贅沢に招いて、ル・サージュ本人が、霞み気味?なくらいだけれど... いや、それくらいだからこそ、極めて充実したフォーレを聴かせてくれる、ル・サージュのシリーズ。今回は、3枚目ということで、より充実したフォーレに... で、そんなフォーレを聴きながら、改めてこの作曲家について見つめるのだけれど...
フォーレといえば、とにかくレクイエム。そりゃ人気もあるだろう... という、クラシックの重苦しい気分から解き放たれた、独特の瑞々しさ、何より美しさが印象に残る希有な名曲。それから、パヴァーヌに、『ペレアスとメリザンド』からのシシリエンヌも有名なメロディで... けど、知っているのはそれくらい?ま、よくあるパターン(前回の、グリーグもそうだったけれど... )というのか、考えてみると「有名」であるということしか知らなかったり... で、改めてフォーレ(1845-1924)という存在について見つめてみるのだけれど。ドビュッシー(1862-1918)より長生きしていたことに、ちょっと驚く。ラヴェル(1875-1937)の先生ということで、印象主義の作曲家たちの父親世代、漠然と印象主義の前の時代の人、というイメージでいたから... が、ロマン主義の爛熟、ワグネリスムに、アンチ・ワグネリスム、そこから生まれた印象主義、さらにはその先を見据えた音楽と、新旧入り乱れていた19世紀から20世紀への転換期... フォーレもまた、その時代の作曲家であったことに、改めて興味深く感じる。
というのも、ここで聴くフォーレの2つのピアノ五重奏曲、1番(track.1-3)は、ドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』(1902)が初演された4年後、1906年の作品で。2番(track.4-6)は、ストラヴィンスキーのバレエ『春の祭典』(1913)が初演された8年後、1921年の作品。ともに20世紀の作品であったことに、また驚いてしまう。近代音楽など寄せ付けない、風格あるその音楽。20世紀初頭と言えば、ロマン主義も進化して行った時代であって、ウルトラ・ロマンティック(例えば、ウィーンの世紀末... )なサウンドを思い起こすと、フォーレの揺るぎない保守性... いや、かえって保守主義へと向かっている姿勢に、独特なものを感じる。ウルトラ・ロマンティックに糜爛するのではなく、ただひたすらにロマン主義を鍛え上げてゆくようなストイックさ... モードに一切、煩わされることなく、我が道を貫く、骨太のサウンドに、思い掛けなく圧倒され、惹き込まれる。それでいて、フォーレであることも忘れさせないキャッチーさと、センスの良いサウンドが薫らせるエスプリ。何て素敵なのだろう!メロドラマちっくにたっぷりと楽しませてくれた19世紀の有名な作品ももちろん素敵だが、2つのピアノ五重奏曲で響く、よりクラシカルに引き締まりつつ、見せる、フォーレならではのトーンの、ビターな中に仄かに浮かぶスウィートさ。それは、大人の音楽... 改めて、フォーレという存在に、興味を持ち、抗し難く、魅了されるばかり。
さて、ル・サージュとエベーヌ... フランスのベテランに、フランスの若手による、生粋のフレンチ・メンバーでのフォーレとなったわけだが、ことさらフランス性が強調されるわけでなく、21世紀流というのか、それは、ニュートラルな演奏で。また、そうした彼らのスタンスが、かえってフォーレの我が道を貫く音楽を際立たせていて、興味深い。が、何と言ってもエベーヌ!前作、樫本大進ら、気鋭のソリストとアンサンブルを組んだル・サージュ... もちろん、すばらしい演奏を聴かせてくれたわけだけれど、それは常設のアンサンブルではないわけで、日々、紡ぎ、織り上げられて来た、エベーヌの密度の濃いアンサンブルに触れてみると、やはり到達し得ない境地というのはあるのかなと... それでいて、現代っ子な性格と、クラシカルな感性もしっかりと持ち合わせているエベーヌならではの、絶妙なバランスを見せる音楽性が、ル・サージュのピアノにも広がるのか... 個性がぶつかり、スパークするのとは違う、ひとつのテイスト(そう、ニュートラルな... )に整えられた見事なアンサンブルに、聴き入るばかり。渋くも、渋過ぎず、クラシカルだけれど、古臭くはない、巧みなさじ加減... 濃厚なソースで仕上げに持って行くのではない、素材を活かす、最高のフレンチ!は、美味い。

FAURÉ QUINTETTES AVEC PIANO OP.89 & 115
LE SAGE | QUATUOR ÉBÈNE


フォーレ : ピアノ五重奏曲 第1番 Op.89
フォーレ : ピアノ五重奏曲 第2番 Op.115

エリック・ル・サージュ(ピアノ)
エベーヌ四重奏団
ピエール・コロンベ(ヴァイオリン)
ガブリエル・ル・マガデュール(ヴァイオリン)
マテュー・エルツォグ(ヴィオラ)
ラファエル・メルラン(チェロ)

Alpha/Alpha 602




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