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北欧カラーの、ペール・ギュント。 [2005]

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国民楽派の音楽は、何だか温かいな... なんて感じてしまう、今日この頃...
スメタナに続いて、グリーグを聴いてみる。の前に、春一番は吹いたはずだけれど、立春も過ぎたけれど、まだまだ寒い。そんな寒さのせいか、気分も落ち気味でして。何だか、ここのところ、暗いニュース、多いし。やたら景気が良いのは、株くらいなもので... それがまた、虚しく映ったり... そうそう、当blogを訪れてくれる人の数もめっきり減って来ておりまして、次を書こうというモチベーションも減退気味(ま、ね、嫌われるような曲ばかり取り上げていれば、そりゃ、減るわな... って、わかってはいるのだけれど... )。そんな時は、シンプルに元気付けてくれる音楽を欲してしまう。ということで、国民楽派。フォークロワな素材を用いて、スノッブなクラシックにあって、何とも言えない人懐っこさを見せる音楽。こうして、国民楽派にふらっと立ち寄ってみると、必ず温かく迎えてくれるような... 田舎に帰ったような心地にしてくれる。この感覚って、何だろう?遠い国の音楽が、懐かしいという不思議。
で、グリーグなのだけれど... 2005年にリリースされたアルバム、エストニア出身のパーヴォ・ヤルヴィと、彼がアーティスティック・アドヴァイザーを務める、エストニア国立交響楽団の演奏で、グリーグの劇音楽『ペール・ギュント』からの抜粋(Virgin CLASSICS/5 45722 2)を聴き直す。

あんまりにも有名過ぎて、あまり聴いたことのない曲だったり... ペール・ギュント... で、スメタナのオペラを聴いたものだから、「国民楽派」という括りが気になって、久々に引っ張り出して聴いてみたら、意外とはまってしまった。で、有名な曲というのは、やっぱり、それだけの魅力がある!などと、今さらながら、密やかに感動してみたり。そもそも、8年前に聴いているはずなのだけれど、奇妙なくらい、初めて聴くような新鮮さを覚えてしまう。でもって、再発見!ペール・ギュントはもちろん、グリーグについても、改めて知るような感覚あり。
一方で、何と懐かしいのだろう。例えば、「朝」(track.10)。中学校だったか、朝、登校すると、必ず流れていたことを思い出す。その時は、毎度のことで、心に響くなんてことはまったく無かったけれど、こうして改めて聴くと、懐かしさも相俟ってなのか、やたら深く心に沁みるよう... それから、「山の魔王の宮殿にて」(track.7)。こどもの頃、大好きだったナンバー。おどろおどろしくて、キャッチーで、どんどん盛り上がるあたりが、こどもの耳にはとても刺激的だったのだろう。今、聴いてみると、古いおもちゃ箱を掻き回しているような感触があって、ちょっと楽しい。それから、「ソルヴェイグの歌」(track.14)。もの凄く遠い記憶に、何かのドラマから流れて来た記憶がある。こどもには難解なドラマだったような、そんな印象だけが残っているのだけれど、ソルヴェイグが歌うメロディの、寂しげなところが、本当に薄ら寂しくて、何だか嫌だったことを覚えている。で、やっぱり、「ソルヴェイグの歌」は、寂しい。美しいけれど、やっぱり寂しいなと... そもそも、『ペール・ギュント』の話し自体が、寂しいのかも。
冒険譚として、盛りだくさんではあるのだけれど、結局、寂しいところに行き着く。それは、ペールの身から出た錆だろうけれど、何だか寂しい。そして、この寂しさが、北欧ならではの感覚?組曲ではなく、劇音楽(抜粋だけれど... )として聴くと、そうしたあたりが、より際立つのか。また、その寂しさに、不思議な懐かしさも感じたり。国民楽派ならではの、フォークロワなトーンもあるかもしれない。が、一方で、北欧の、リアルな「寂しさ」の感覚が、聴く者の心を刺激して、寂しい記憶を呼び覚ますような... 不思議な心地にさせられる。ムンクの絵画(『叫び』ばかりではなく... )を目にした時の、ベルイマンの映画を見終えた後の、アンデルセンの童話を読み聞かされての、何とも言えない心地。心がザワザワと波立つのを感じつつも、奇妙なノスタルジーに浸るような。そうか、グリーグの音楽というのは、こういう音楽だったのだ。ふと考えると、グリーグについて、ほんの数曲しか知らないことに、今頃になって思い至る。有名であるというイメージが先行して、どこかで知った気でいたのかもしれない。そして、今、改めて聴く、劇音楽『ペール・ギュント』は、組曲が省いてしまった、劇の余白の部分にこそ、グリーグの、そして北欧の音楽、芸術が孕む、独特の心象が浮かび上がるのだなと、興味深くも、ノスタルジックに聴く。
さて、演奏なのだけれど... パーヴォならではの、また独特な、作品を突き放すような感覚があって、イメージに捉われない、ニュートラルなサウンドを貫く。一方で、エストニア国立響は、北欧ならではと言うのか、クリアで、少し冷えたサウンドを奏で、それがまた、パーヴォの志向にいい具合に添い、おもしろい色彩感を見せる。すると、物語をひとつのトーンで縛りつけるのではない、ひとつひとつの曲をより自由に、屈託無く響かせて、より鮮やかなシーンを描き出す。この鮮やかさが、IKEAや、ABBAのカラフルさと重なるようで、北欧のヴィヴィットな感覚のDNAを見出すのか、興味深い。そんなヴィヴィットさがあっての、ペールの最後は、また、グっと寂しさが引き締まるようで、印象的。忘れてならないのが、歌手陣!大活躍というほどに出番はないものの、ペールを歌うマッティ(バリトン)の雄弁さ、ソルヴェイグを歌うティリング(ソプラノ)の透明感とやわらかさは、すばらしい。それから、活き活きとした表情を見せるコーラスもまた、魅力的。

GRIEG: PEER GYNT
ESTONIAN NATIONAL SYMPHONY ORCHESTRA . PAAVO JÄRVI


グリーグ : 劇音楽 『ペール・ギュント』 Op.23 〔抜粋〕

ペール・ギュント : ペーター・マッティ(バリトン)
ソルヴェイグ : カミラ・ティリング(ソプラノ)
アニトラ : シャルロッテ・ヘレカント(メッゾ・ソプラノ)
エラーハイン少女合唱団
エストニア国立男声合唱団
パーヴォ・ヤルヴィ/エストニア国立交響楽団

Virgin CLASSICS/5 45722 2




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